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●ユニット、ネットワークときて、最後は箱(キャビネット)の加工に入ります。こちらは青色が特徴の4301Bの箱。なぜこのB箱を使うのか?自作箱を作られてる方ならおわかりだと思いますが、スピーカーにとっての箱は”強度が命 ”です。余計な共振で不快な音が出る箱鳴りなど、メーカーでも色々と対策されてますが、当時のJBL製品はパーチクルボードという水に弱い素材が使われており、湿気の多い日本では意外とダメージが出ています。つまり黒の4301よりも年代の新しいBの方がシャキッとしてる事が多いので、あえてB箱を使いました。これも最高品にするためです。
●LE20カバー付の場合そのままでは装着できないので、加工する必要があります。黒の4301ではツィーター部分は●穴だけですが、Bは■加工で溝が彫ってあります。なので最初に●と端子部の凸穴、ネジ穴を埋めてやり、その上から写真のよう■材を接着、最後に隙間をパテで埋めていきます。接着剤はカチカチに固まるタイトボンドを使ってます。
●完全にフラットな状態に整えたら、LE20を装着する穴を開けていきます。まずは同サイズの型紙をあてがい、ツィーターの位置を決めていきます。ウーハーにできるだけ近い位置で、強度に問題のない場所を選びました。マーキングしたあと、慎重に穴を開けていきます。4301Bはツィーターもウーハーも両方埋め込まれている”インライン ”なので、LE20も同様にします。トリマー使って溝を掘っていくのですが、加工しやすいパーチクルボードでは、ちょっと滑るととガーっといってしまうので慎重に作業します。
●溝を掘り終えて表面を整えました。次に側面と天底の4面をフラットにする為、アクリルを貼りました。
しっかり貼らないと見栄えが悪くなるので注意が必要です。突き板と違ってアイロンが使えないぶん、1面ずつプレスしていくという手間もかかります。地味ですが以外に大変な作業でした。写真で見るとアクリルが輝いてますね。
●最後に全体を塗装します。
前後は専用の凸凹施工で仕上げていくのですが、今回前後で微妙に色を変えました。写真は下地段階になり、このあと3回塗り重ねます。
この時点では前後同じ色に見えますが、重ねていくことで徐々に変化していきます。
●前後以外の4面は通常塗装です。
もちろん色にもこだわっており、通常の黒ではなく黒85%、青、赤、白などを混ぜたオリジナル色です。その後JBLロゴを入れ(塗装)、最後に全体をUVコートして
●完成!
フロントは4層、背面は3層、
側面と天・底は5層にするなど、こだわりの作業です。ロゴの上からもコートしてるので、剥がれるような心配もありません。
●こだわりの配色、いかがでしょうか。
超かっこよく仕上がったと思います。普通のデジカメのせいか写真だと凸凹が潰れてしまうので、実際の見た目の雰囲気が伝わりにくいかもしれません。最高のフルカスタム写すには性能の良い一眼レフが必要だったかもしれません。
●すべてのパーツが完成しました!

・ツィーターLE20(後期型)
・ウーハー116A(自作エッジ)
・箱(4301B)
・専用ネットワーク(切り替え式)
●LE20も116ウーハーも私が所有してる中で一番良い品をあてがいました。116ウーハーはフレームを完全分解、隅々までコーティング。さらに着磁もしてある一級品です。
キャビネットもあえてBのシャキッとした方を使用。

 それらすべて

  ”
最高傑作 ”を作る為だからです。
●最後はサランネット。
完全カスタム品ということもあり、上品なシルバー生地(音響用)を使いました。色が薄めな生地の場合フレームが透けるので、同色に塗装します。こいうところも抜かりなくおこなうのがこだわりです。シルバーのスピーカースタンドにも合いそうですね。
●こちらLE20。
右はカバーを丁寧クリーニングしたあと、クリアコートしたもので、左はその上からバッフルと同色にしたものです。
LE20カバーのようなJBL焼付け塗装品は、経年劣化によりぼろぼろと剥がれる場合が多いので慎重な作業が必要です。表面をクリアコートしてるので剥がれ難くもなります。
●こちらはクリアーコートしたLE20。
かっこいいですね。ただちょっと輝きすぎかな。バランスを取るなら、もう少し艶を抑えてもいいかもしれませんね。
●こちらはフロントバッフルと同色の
 「
ステルス仕様
これも渋くて良い。自然で純正のような雰囲気になりますね。
●吸音材を追加・交換後、ひとつひとつのパーツを丁寧に取り付けていきます。
●ターミナルノブはアルミに変更しました。

最後にユニットを取り付け
●祝!完成!

 フルカスタム
 
 「
至高の4301

 超渋〜

 かっこいい〜
●背面はこんな感じ
●ネットを装着するとこんな雰囲気

正面の小さなJBLエンブレムも、側面のロゴに合わせた自作品です。
●どのくらいの期間を費やしたのか、猛暑日をのり越えてようやく完成しました!

 ひとつひとつ厳選したパーツを惜しげもなく採用、これぞまさに最強のフルカスタム
そしてスピーカーは見た目だけではなく「
音が命

 元々良い音の出る4301ですが色々と弱点もあります。ひとつめは音が引っ込み気
味な事。これはモニター系の傾向とも言えますし、アルニコ特有の性質とも言えます。
音が引っ込んでいる傾向のスピーカーはヨーロッパ製品に多く、得にB&Wなどはとて
も引っ込んだ傾向です。引っ込み傾向の特徴は音が「
リアル 」な事。だからモニター
系で多い傾向とも言えます。
そしてもう一つの弱点は「
臨場感 」。これもモニター系には必要無い特徴でもありますが
、古いツィーター、特に紙コーンツィーターの場合、現代のアルミやチタン、マグネシウム
に比べると上の伸びが少なく、広がりが感じ難い傾向にあります。それは紙という特性
上いたしかたありません。だからできるだけワイドになるよう使う部品を考えたり、ネット
ワークのセッティングを試行錯誤して改善するなどの努力をしています。JBLのメーカー
では、少しでも臨場感が得られるよう、ホーンを多く採用しているのも理由の一つです。
加え日本人に馴染みのある音、日本製スピーカーの特徴は、ほとんどがヨーロピアンと
は逆の傾向で音が前に出るタイプが多い。そんな事もあり、モニター系を初めて使う馴染
みの少ない人にとっては、音がこじんまりと聞こえてしまう場合もよくあることです。

 個々のユニットは素材の制約があるので、それら弱点を克服するのが
 「
チューンドネットワーク 」になり、そこが”腕の見せどころ ”でもあります。
 だから今回は「
切り替え式 」ネットワーク を採用しました。全てのパーツを
 厳選し、ダンパーやエッジなど動作に関わる調整もぬかりなくおこない、完
 全動作のパーツを組み合わせることにより、「
完璧な音が生まれる

 
ここにパーフェクトな最強音質 「 至高の4301 」 が誕生しました!


最後に。
少し長編になった今回のフルカスタムはいかがでしたか。
どんなスピーカーでも音が広がる臨場感を得られれば、それは癒しの音に変わります。
でも実際にはユニットから出る音を改善させるには限界があり、部屋に吸音パネルや
反射パネルを設置したりなど工夫してる人も多くみられます。それだけスピーカーにと
っての臨場感は重要で、皮膚で体感する度合いも変わってきます。スピーカーで臨場
感を得るには2wayよりも3wayで、サイズが大きい方が有利ですが、2wayでもネットワー
クのセッティングによっては、3wayを凌駕する実力を具えることもできます。今回のフル
カスタムでは、それらすべて取り入れた至高の一品であり、最高のスピーカーが完成
しました。そして縦横無尽に飛び交う音はまるで、「
スピーカーの存在が消えた 」瞬間
でした。消えるという表現はこういう事を言うのだなと、大いに感じられました。

ネットワークが完成し仮組みしてチェックする時にも、ある程度の傾向は掴めましたが、
完成後にエージングして出た音がこんなにも素晴らしいとは、心から感無量しました。
最高の作品を作るフルカスタム最高!みなさんにもこの音を聴いて欲しいものです。
また新たなる伝説が生まれた日になったかもしれません。

そしてオーナー様より素晴らしい贈り物をいただきました。ありがとうございますm(_ _)m


次回。最強の後は気持ち的にやりずらいんですよね(^^:
 民生用のLシリーズか、他のフルチューン品かは未定です。お楽しみに♪

 途中で紹介したボーカルの為の「 最強の自作2way 」の前身となスピーカーは「 こちら

JBL 4301BWX(フルカスタム) 1977年〜発売
ヴァリアスクラフト解説: とにかく臨場感にこだわったネットワークにより、お部屋いっぱいに音のシャワーが広がります。
方式 3ウェイ・3スピーカー・バスレフ方式
使用ユニット 高域用:3.6cmコーン型(LE25→LE20アルニコに換装)
低域用:20cmコーン型 (116Aアルニコ)
再生周波数帯域 45Hz〜15000Hz
インピーダンス
出力音圧 88dB/W/m
クロスオーバー周波数 2.5kHz
外形寸法 幅291×高さ483×奥行306mm 約28L
重量 12kg(1台)



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