●2018年1月2日
新年 あけまして おめでとうございます
2018年の1発目、第221回は日本製 Victor SX-V1A と DENON SC-E757 の2機種を
ご紹介します。特に今回は元の音色を完全に変える「 スーパー(超絶)フルチューン 」
をおこないました。最初に757をフルチューンしたのが約9年前ですが、今は当時よりも
スキルアップしておりそれを越える結果となりました。
動画もUPしてますので、どうぞご覧ください。U |
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●左からDENON SC-E757
ビクターSX-V1A
ロジャースLS3/5a
SC-E757(以下757)とV1Aは共に日本製なのでフィーリングが似てますが、イギリス製のロジャースは真逆の特性です。 |
●写真だと757が一番大きく見えますが、サイズ的にはV1とほぼ同じです。
どれもコンパクトな2wayですね。 |
●まずはV1Aのオーバーホールから
V1シリーズは30台以上レストアしており、分解はもう手馴れてるはずですが、何回やっても緊張します。ウーハーもツィーターもアルニコ。本体を透明なアクリルケースにしても良いくらい、内部も画になりますね。 |
●V1の最大の難点はこの”紙コーン ”この汚れをどうやって取るのか、今まで試行錯誤してきた私の必殺技です。他業者では真似できません。まずはコーンの裏に大量のティッシュをあてがい、表から霧吹きで「
魔法水(改) 」をかけます。表面の汚れを裏側に落とすためです。このとき絶対にコーンに触れてはいけません。魔法水をかけたあと、エッジやキャップは速やかに拭き取ります。 |
●左上のティッシュはコーンの裏側にセットしたもので、これだけ汚れが取れてます。左下の綿はコーン表面についた汚れを取るもので、けっしてこすらず、超・軽く触れる程度でおこないます。1回目をおこなってから2回、3回と続けていくのですが、2回目に入るときは必ずコーンを2日くらい放置し、完全に乾燥させてから作業をおこないます。それがコーンにとって一番優しい作業です。 |
●1週間以上かかりクリーニングが完了しました。だいたい2、3割くらいは綺麗になります。コーン表面のダメージもありません。軽い染みなら場合により簡単に落とせます。これは最近多いスーパークリーニング店の技法を取り入れておりますが、機械や高圧がかけられないので時間と手間がかかります。YAMAHAのような紙コーンと違い、ビクターやタンノイは和紙的な質感なので、へたにやるとすぐボロボロになります。 |
●こちらはツィーター。V1AとV1Xはツィータードームが多めにコーティングされてますが、ほとんどが時間と共に劣化しています。それを自家配合したダンプ材で再コーティングしました。その他V1Aのウーハーはゴムエッジなので、復活させるために自家配合の液体に1週間浸け置きします。繊細な作業の連続なので、間違っても真似しないでください。ボロボロになっても責任取れませんから(^^: |
●続いてはキャビネットの補修です。V1シリーズはマホガニーの細板を並べて接着しており、全体の統一感を出す為、最後に全体を濃い目で塗装してます。一般的な木目はOIL仕上げですが、塗装仕上げの場合、傷にペーパーをあてるとすぐに塗装が剥げ、逆にそこだけ目立ってしまいます。部分的にステインを塗ってもあまり綺麗には仕上がりません。綺麗に仕上げるなら全塗装が必要になります。なのでこのような打痕や傷には |
●こんな樹脂を使って補修します。樹脂の下あたりが↑の凹みヶ所の補修後です。樹脂のあと木目を書いてますので、綺麗に復活できました。このあと最後に全体を磨けば、さらに綺麗に仕上がります。これは通常のペーパーは使わずに仕上げており、経験とコツが必要で、何度も何度も試行錯誤してやってきたからできる技なんです。 |
●続いてネットワークに入ります。V1Aをオーバーホールすると、ウーハーが3割くらい動きが良くなり、低音も出るようになります。そのため全体のバランスを整えるため、高域を調整していきます。ただV1シリーズのウーハーはわりと完成された音なので、音色を変えるフルチューンをおこなうと、バランスが崩れる、V1じゃなくなる、といった感じになってしまうため、いつもどこまでやるかで悩みます。 |
●その点こちらの757は声質がこもっていたり、低域がボーボーするので、逆に完全改装したくなります。ユニットは六角ネジで簡単に外れます。ウーハー、ツィーター共にデンマークのピアレスという、有名なメーカー製です。この時期のDENONはピアレスを多く扱っており、キャビネットは日本製でもユニットはヨーロッパ製という異色の組み合わせ。 |
●757はV1ほどではないものの、過去に12、3台くらい扱ってきました(757をUPするのは約7年ぶりですが)。シリアルが5万あたりを境に前期と後期に分かれます。こちらは後期物で、コンデンサーが追加されていたり、いたる所に貼ってある黒いブチルゴムのベタベタが緩和されてます。矢印のコンデンサーは片側だけで4個も追加されており、メーカーの音に対する意気込みも伝わってきます。が、肝心の音は・・・・ |
●さてこちらの固体はウーハーのセンターキャップに穴が開いてました。このキャップは紙なので、裏側から和紙を貼り、丁寧にシワを伸ばして補修していきます。平面だったらアイロンをかけるのですが、曲面なのでそうはいきません。いろいろと駆使してシワを伸ばしていきます。 |
●こちらはツィーター。構造は日本製のようなネジ留めとは違い、単純な爪の固定式です。ただ回りのベタベタがじゃまで・・・手がまっ黒になります。こちらもV1と同じようドームをコーティングしますが、塗る液体の配合は変えてます。コイルにOILを再塗布し、慎重に組み上げてオーバーホールの完成です。素直で癖の無い良いユニットです。 |
●キャビネットの背面板はネジ留めで、簡単に外すことができます。背面板を外し吸音材をずらすとネットワークが顔を出します。 |
●で、超久々のフルチューンに取り掛かります。まずは写真のような状態で、2、3種類のセッティングを出しておきます。その後ユニットを箱に組み込み、再度調整していくのですが、箱にセットしてからが大変です。ぶっちゃけ最初は1日もあれば十分だろ、なんて高を括っていたのですが、不自然な中域を自然にするだけでも1週間以上かかりました。757の中域は超やっかいです。ユニット自体の音は素直なんですけどね。 |
●ある程度セッティングが決まったら、最後にキャビネットの補修に取り掛かります。757は鏡面仕様なので傷が付くとすぐに目立ちます。左は浅い傷で、右はやや深めの傷と色褪せ。表面に付いた傷はほぼ綺麗になりますが、クリア層の下、下地の黒がひび割れや劣化してる場合もあり、それだと消す事ができません。薄い傷だな、簡単に消えるな、なんて思っていたら下地のひびで(TT)こともよくあります。 |
●表面の傷かどうかは、一度手を入れて確認するしかありません。ペーパーは耐水の1000番、1500番、2000番と番手を変えながら仕上げていきます。1000、2000でも問題ないでしょう。深い傷には透明に固まる接着剤を流し込んで平らに整えます。 |
●2000番のペーパーが終わったら、最後にコンパウンドで仕上げます。コンパウンドは2種類使い、はじめに細めで磨き傷を消していき、次に極細で仕上げていきます。写真のドリルは細目用で、極細は違う機械を使ってます。 |
●極細のコンパウンドがけが終わったら、これでもかというくらいタオルでふきあげ、最後にガラスコーティングをして完成です。右はガラスコーティングする前。表面は真っ平らですが下地のMDFが凸凹してるので完璧な状態ではありません。ですが実際に見るとデロデロに濡れたような艶が出ており、写真ほどは気になりません。ちなみV1Aはガラスコーティングすると艶が出すぎるのでテフロンを使っています。 |
●フロントは造形が複雑なので磨くのも大変です。757みたいに、斜めの造形があったりすると、見る角度で反射の具合も変わるので、超かっこよく見えます。こういうのは鏡面が活かされると感じます。箱が仕上がったらネットワークを装着。背面板をセットしてから、内部の吸音材を整えたり追加したりと調整します。 |
●写真ではわかりにくいですが、背面の塗装は正直手抜きですね(メーカーがです)。それとこの手のターミナルは劣化でくすんだものも多く、汚れというより表面が酸化した濁りです。濁りを落とそうとごしごし磨いたり、強力な溶剤に浸けると金メッキが一気に剥げるので注意が必要です。軽く磨くか交換するかしかありません。最後にヴァリアスクラフトのステッカーを貼り |
●ユニットを取り付け |
●フロントバッフルを組み込み |