●2作目のスピーカー「 WV-00 」を作り、
それにあわせたネットワークを本格的に作ってみた。
最初は「 みようみまね 」だったが、最近は色々とわかってきた気がする。
自作暦2年で2作品だが、実験にかけた時間は膨大。
まだまだ経験を積まねば、とも思うが、ここらで解ってきた事を書いてみます。
グラフは大まかなもので、ニュアンスでとらえてください。
内容に間違いがあれば、ご遠慮なくご指摘ください。
●クロスオーバーとは特定の周波数帯域を分割するフィルターのこと。
フルレンジ1本では難しい、超低域から超高域をカバーする為に複数のユニットを使う場合にもちいられます。
フルレンジとの大きな違いは「 ワイドレンジ 」でしょうか。
私の目指す特徴はズバリ中域・「 ボーカル 」の質感と「 バランス 」です。
おもに張り出し具合クリアー加減。そこにネットワークの奥深さがあります。
ここでは、2way(ウーハーとツイーターの2個)のネットワークを基準にしていきます。
●材料はコイル、コンデンサー、抵抗を使います。
コンデンサー(電解)と抵抗は1個100円位、コイルは300円位の物ではじめは十分。
コンデンサーの質については二の次で、まずは特性を知る事が大事です。
基盤や木のベースに取り付けるのも後からで十分。気軽にやりましょう!
●ウーハーとツィーターの位相を合わせるために(体感的には音のまとまり)
6dB/octの場合、どちらかを逆相(+と-を逆に接続)にします。
●この他に18dB・24dB/octがあり、スロープの角度が急になっていきます。
●ウーハーだけではなくフルレンジで試す事もできます。
6dB/octの良い所は自然で聞きやすい音。
悪い所は、ハモリというか重なりが多いので雑身が感じる。ボーカルまわりの音が多くなる為、ボーカルは薄く味気のない音。
12dB/octの良い所は、濃厚で深みがでる事。ボーカルまわりの音が少ない為、輪郭がくっきり浮いてきてシャープになる。
悪い所は、ボーカルが不自然につっぱったり、変な響き音などが生じてしまう。これはカットする場所にもよるが、エンクロージュア自体の響き・箱鳴りとは別ものです。
エンクロージュアが響く素材で、さらに中域を響かせてしまうと、中域凸でうるさく感じるスピーカーになりかねません。
最終的にどれくらい響かせるのが気持ちよさのカギとなります。
メーカー製スピーカーのほとんどは12dB/octが採用されてます。
●あばれの少ない落ち着いた音色、気持ちいい音がでるよう目指していくと自然に能率が低くなります。メーカー製スピーカーはその影響で能率が低い物が多いです。
●私はよく大音量で合わせるので、小音量にした時こもったように感じる場合があります。そこで便利なのが可変式アッテネーター。ほとんどはツィーターにセットします。
コイルとコンデンサーで組み合わせたネットワークのみで、ほぼバランスが取れているならアッテネーターは必要ありません。高域・ツィーターだけ少し落としたいなと感じたなら、直列コンデンサーの後に抵抗3Ω〜6Ωあたりを入れて調整してみてください。
メーカー製で「 ぜんぜん音が変わらないよ 」ってものありますよね。それは固定式アッテネーターを3通り作りロータリースイッチで可変させてる、そんな場合によく見られます。
●これもカットする場所により変わってきます。
ディッピングフィルターはフルレンジにも有効なので変化もわかりやすいですが、2wayではわりと高度な技術となり、諸刃の剣とも言える装置でもあります。
●よく高級スピーカーなどで、静粛性があるとか、分解能力が高いなんて言われているものは、このへんをしっかり整理していると思われます。
グラフで
赤いほう(20cm)は、より低い位置での山があるが、50Hz〜100Hzでピークのある青(13cm)の方が聴感上、実際に聴いた場合気持ちよく感じる場合もあります。
JBLの4312系はウーハーがスルーなので、ソースによっては凄く耳障りな音、ボーカルがうるさく感じる事ってありませんか?
そんな時はコイルでカットしてもいいのですが、それだと音数がかなり減ってしまうので、高度なテクニックですがディッピングフィルターを用いられる事もあります(モニター系スピーカーの場合)。ですがスピーカーの味、「 JBLらしさ 」がなくなってしまうのが弱点です。
●上のサインスイープF特測定は、PA用スピーカーで野外用に調整されたもので、見事なフラット感です。ですがグラフ上でフラットだからといって、実際に出てくる音が良いとは限りません。周波数特性はあくまでもスピーカーやユニットの音のメモリ、雰囲気であり、音質=にならない場合が多いのだと経験しました。
上のグラフは野外での特性であり、室内の場合はまた変わってきます。高域がうるさく感じられるかもしれません。だから音とは、実際の環境でより気持ちの良い音を出せるのが、ベストな周波数特性だと思っています。
●中高域がじゃまで低音が聞こえにくくなる場合がありますが、それらの多くは能率合わせでも解決できます。ネットワークで低域の量感を増やしたいなら一般的に、1Kや1.5K等、低めでズバッとカットしてやるのがベストです。
その場合下が出る、低い周波数まで出せるツイーター必要になり、中域・ボーカルはツイーターの能力が音質に反映されてきます。500Hzあたりから出せるホーンなど良い組み合わせだと思います。一般的なドームツイーターはだいたい2kHz〜が目安になるので、あまり下まで出してしまうと不安定な音になったり、変な残響音・エコーのような音が強くなってしまう場合もあります。それらをうまく組み合わせて倍音成分として活躍させる高度なテクニックもあります。1.5kHzあたり以上の低い位置でのクロスは、一般的に3wayとなってくるので、2wayの場合は1.5kHzあたりがギリギリだと思います。8cmや10cmの小口径ウーハーやフルレンジでの2wayの場合、クロスは低いほうがより低域の量感を感じやすいです。
ツィーターの役目を少なくして、ウーハーから出る中域・ボーカルを重視する場合クロスは高め、4〜5kHzに設定します。スーパーツィーターを追加する場合は、7kHz〜10kHzあたりの組み合わせが多いです。
●ネットワークって何?くらいに思っていた最初の頃、カタログにクロスオーバー周波数3Kとあれば、ウーハーもツイーターも3Kでカットするものだと思ってました。
ですが実際にはそれよりも離れた数値でカットしてあり、周波数特性表の重なるポイントでクロスオーバー値を決めているようです。
他に私の教科書であるメーカー製スピーカーを数多くメンテしていると、けっこう間をあけてカットしてる事も多いです。。
クロスオーバーが3k表示なら、ツイーターは3.5Hz〜4.5KHz位。ウーハーは500Hz〜1KHz位に設定してるなど。もう一つ、
例えばウーハーの3Kカットがフォステクスのデータシートで見ると
コイル1mH・コンデンサー10μFだが、メーカー製スピーカーではコイル1mHにコンデンサー15μFとか20μFとかコンデンサー値が大きく摂られており、データーシートにあてはまらない組み合わせがほとんどでした。なのでデータシートはあくまでも基本的な目安であると思ったほうがいいかもしれません。
メーカー製ネットワークの不可解な組み合わせは、なんとなくやってみたというような味なのかもしれません。そんな設計者の意図までわかるようになってくると、自作スピーカーとメーカー製スピーカーの差がぐんと縮まってきます。
●つながりは=気持ちよさにもなるので、数字上のスペックはあまり気にする必要はありません。これもネットワークを作る上でのテクニックの一つです。
●ここで言うバランスとは好みの問題も多く、やはり低域から高域まですべて気持ちよく聞こえる音というのが、ご自身にとってのバランスの取り方でしょう。
一般的にはツィーターとウーハーは高域4:6低域くらいにしてるのが多いです。
あくまでもバランスは=好み、と感じる割合が大きいので、メーカー製でバランスの良いスピーカーに当たる事のほうが少ないです。
自作でネットワークを作る場合は、バランスを完全に好みで合わせらるメリットがあります。ですがバランスを取るのも簡単ではないので、最初は可変式アッテネーターに頼るのが得策さと思います。それとベンチマークになるスピーカー。自分好きなスピーカーを基準にすれば、より合わせやすくもなります。
●図のように、リスニングポジションの違いでも聞こえ方が大きく変わってきます。
普段何気に聴いているスピーカーですが、場所をずらしてみる、上下反転させてみる、ネットワークをいじらずとも、そんなやり方もありです。より気持ちいいと感じるベストポジションを探してみてください。私はウーハー=腹の前が好みです(^^;
それともう一つ、「 耳慣れ 」とは怖いもので、普段シャリシャリしたスピーカーを聴いていると、どんなにバランスの良いスピーカーを聴いても、一瞬こもって聞こえたりもします。逆も、もちろんあります。関西の人が東北の味はしょっぱすぎて食えない!といった感じでしょうか。なので私がメーカー製スピーカーの聞き比べをする時は、多種類同時におこない、必ずベンチマークにしているスピーカーもあります。
プロのスタジオでスピーカーが何個もあるのは、部屋で聴いた場合、車聴いた場合、大きいスピーカーで聴いた場合、ラジカセで聴いた場合などを、違う環境を想定してのものです。
●コンデンサーと抵抗は安くて気軽に使えるが、コイルは中々そうもいきませんよね。
私は10個セットなどの安いコイル(0.5mH)をほどいたりして0.1〜0.4mHのものを作り試したりもしています。(測定器が必要です)
ツイーターにコイルの組み合わせは、わりとシビアなセッティングが要求されます。ワンポイントテクニックであるように、コンデンサーは最初から種類にこだわる必要はありません。電解コンデンサーは高域が出ないので低域が多く出てるように感じますので、高域をもっと繊細な音にしたいときはフィルムコンデンサーにするえばいいし、低域を出したいなら電解コンデンサーにすればいい。そんな特性を利用するのもテクニックの一つです。ただ電解はコストでの意味合いが大きいものなので、フィルムにしておけば間違いはありません。より求めるなら、耐性を400Vに、抵抗は無誘導にしたほうが効果的です。
●さて、なんとなく意味を理解してきた所で、実際に作ってみましょう!

↑のオススメは普通の考え(定義)ではやらないような事を、あえて載せてみました。
ネットワークの奥深さが体感できると思います。
インピーダンス補正用のコンデンサーは6.8μF・12μF・22μFで調整してください。
ツイーターのエネルギーがなくなる場合は、つけないほうがいいです。
ツイーターのコイルを0.3mHにして、6.8μFのコンデンサーを抵抗とコイルの間にたし、18dB/octにしても深みがでておもしろいです。
抵抗やツイーターはシビアなので色々試してください。

抵抗や電解コンデンサーは表記の数字よりも、実測値が高いものが多いです。
2Ω→実測2.6Ω、3Ω→実測3.8Ω。3.0が欲しいときは苦労しました。
0.5Ω表記が、実測2.2Ω!なんて物もありました(^^;

なぜネットワークにこだわるのか?
私はボーカルの質感が、ガラッと変わる所に魅力を感じてます。
どんなにすばらしいユニットでも、ネットワークがダメなら、安っぽい音になってしまいます。逆に安いユニットはそれなりですが、ここをビシッと決めてやればすばらしい音に変わるのも事実です。それだけネットワークは重要視していいパーツだと思います。まずは、お手持ちのメーカー製スピーカーのネットワークいじりから始め、次に自作したネットワークを試すのもいいでしょう。「 データシート 」はあくまでも目安なので、それにとらわれる必要はまったくありません。数値にこだわり過ぎるとおもしろ味が無くなるかもしれません。

ネットワークで変化のでやすい中域。
特に男性ボーカルや、女性の低くなる瞬間の声、なんというか演歌のコブシみたいな音。
そんな所を力強く、クリアで生々しい音を出すのには苦労しています。
●最後に。
吸音材は全体音のまとまりに大きな役割をもたらします。タップリ入れると高域が吸われ中域が響くようになります。ここもやはりバランスが大事ですが適度な響きは、音楽を聴く上で心地良さをもたらしてくれます。響き過ぎや、逆にまったく響かない音は気持よくありません。オーケストラやピアノなど響きすぎて気持ち悪く感じる時は、吸音材を全部取っ払っても構いません。ですが吸音材がぎゅうぎゅうに詰められたモニタースピーカーとは逆の特性になるので、正確性には欠けるかもしれません。
ただクラシック愛用の人は音質よりも、演奏にこだわる人が多そうですけどね。

無垢やフィンランドバーチなどの高級な材料は響きがいいとありますが、値段の安いコンパネ(合板)やパーチクルボードでもチューニングしだいでは、それら以上に綺麗な響きを出せます。これであなたも、マニアの世界に片足をつっこんだことでしょう(笑

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