●「 KEF104再び! 」
KEF104をレストアするのは、8、9年ぶりでしょうか。
当時はまだ経験が浅く、まともな音を出るようにするのが精一杯でした。
3ポジションに切り替えられるコントローラには驚き、そのフィリーングも印象深く残っています。
そして2016年、あれから何百台もレストアしてきたのでスキルも実績も十分になりました。
私が今再び104を聴いた時どう思うのか?さっそくはじめたいと思います。
●左がKEF104で右がCELESTION(セレッション) UL6
どちらもイギリス製で、パッシブラジエーター付き(以下ドロン)。
イギリスはスピーカーのメーカーが多い国だが、外装は一貫してチーク材が多く、70年代の日本製のようどれを見てもぱっとわかる、そんな特徴もあります。

並べた2台も概観はおろか、見た目のインパクトや構造、そして音質のフィーリングまで似ています。
イギリス製品は国色が強いのも特徴的ですね。
●さっそく音出しチェックしてみると、UL6はまともな美音だが、KEF104(以下104)は何かおかしい。3段階に切り替わるスイッチを切り替えても音に変化が無い・・・
気になったのでネットワークを外してみると・・・何だこれ。
ご覧のようぐちゃぐちゃにいじられてます。
配線は切られたり直結(ウーファー)されており、音は出るのものの繋がりが悪く、聞くに堪えない音色でした。
傷の多い筐体やウーファーのコーティングがボロボロなのもあいまり、先が思いやられるほど程度の悪い状態です。
●ということで、所有している104を倉庫から引っ張り出してきました。1台はご依頼品。もう1台はいつかレストアしようと思っていたが、程度が悪すぎてやる気が出ず放置してあった104。
そしてユニットが最悪で部品取りにしようと、これまた放置してあった104。所有してる事さえ忘れていました(^^;
逆にこんな日が来て、ようやく日の目に出会え良かったのかもしれません。
一同に集めると壮観ですが、どれも傷だらけです(^^;
●ここからはご依頼いただいた104を主役にレストア模様を紹介していきます。

まずは部品を全部外します。
内部のスポンジもターミナルカバーも銘板も、外せるものは全部外します。ネットワークも部品をバラバラに外します。
●一番の手のかかる外装、箱から攻めます。
フロント上半分に白いラインが付いてるが、これはマジックテープが剥がれ残った糊の跡。
104のサランネットはJBL L100のようなALLスポンジだったらしく、長めのマジックテープで固定していたようです。
40年も前の物ですから、スポンジグリルは見たこともありませんし、ネットを探しても写真すら出てきません。
そんな白い痕跡はベトベトしており、剥がすのも容易ではありません。こすりすぎると下地を痛めるので、シンナーで丁寧に除去していきます。
●べたべたを剥がし全体をクリーニング。
その後表面を研磨、塗装ムラが無いか確認しながら再度表面を均し→乾燥後OIL仕上げ。さらに乾燥後UVコートを施して完成といった内容で、ここまで(OIL)約40日かかりました。
傷が薄ければプレミアム施工も考えましたが、やたら多く深めなので、全体は軽めにサンディングで整えました。
綺麗にすると言うよりは、傷を目立たなくするほうに心血注がれた感じです。
←写真だとかなり綺麗に見えますが、実際は小傷が目立ち、それほどでもありません。最初よりはぜんぜん良いです。
●箱の乾燥中、サランネットを作ります。
まずは本体に合わせてフレームを組みました。
マジックテープは使わず、本体にぱこっとはまるようにしたいので、前後左右で1mmずつ、計2mmほどの隙間に調整します。
現物合わせしかできない微妙なさじ加減です。
●細かいパーツを作っていきます。
これはダイソーで売ってる木材で、バルサ材のように軽いのに、バルサより強度のある優れた木材です。
ただし反りが強く精度が悪いので、加工しない方にはおススメできません。すでに廃盤で数が揃わないのも難点です。
ペアで約20本(2000円)使うので、そんなに安くはありません。加工する労力を考えるとホームセンターの方が良いですが、とにかく軽くて丈夫、サランネットのフレームに最適な素材です。
●歪みが酷いので一つ一つ接着しては完全に固定するまで次の作業に移れません。
ここだけでも日にちがどんどん過ぎていきます。
●完全に接着されたら加工し整えます。
今回は当時のスポンジグリルの形を木材で再現してみました。ここでだいたい折り返し地点。細かい作業がまだまだ続きます。
●箱の乾燥中にフレームを製作しています。
少しでも早く乾かしたいので部屋の加湿器はOFF。
自作系の作業場(倉庫)よりはましな場所での製作ですが、冬の製作は塗装の乾燥が遅いなど、色々と辛いものがあります。外気20度くらいがいとおしい。
●凹み加工を3ヶ所に施した後、塗装して仕上げます。
今回は角材を組んで作りましたが、一枚板をルーターで削り加工して製作した方が楽のような気がします。
サイズが分かったので生地を注文しました。
届くまでネットワークを仕上げます。
●こちらが104のややこしい?ネットワーク。
まずは汚れを徹底的に落とします。
矢印、メイドイン・イングランドの刻印がありました。
●全ての部品を外していきます。
一番大きな黒い物はコイルですが、何やら途中から黄色とオレンジの線が出ています。
どうやらこれでコイルの値(mH)を変化させるのが、アコースティックコントロールのベースらしい。
この特殊コイルや構造が悪いのかは不明ですが
●見てくださいこのコンデンサー。4uFと5uFx2、それぞれ3セット分の数ですが、なななんと「 全滅 」してました。
劣化したコンデンサーは容量が増えるか0(反応なし)かがほとんどです。

念入りに2台の測定器で計測し数値を書いていったのですが、手前の方68.3って・・・わかります?
ツィーターの5uFが何回計っても68uFなんです。しかも綺麗に左右で同じ!(笑 ツィーターに68って・・・これじゃーツイーターも飛びますわな。他もそう、一番小さいのでも10uFくらい。ネットワークをテストしてる最中から「 ああ、これまともな音じゃないな 」というのがすぐにわかったほどです。

KEF103の誤差は許容範囲内でしたが、同じコンデンサーが使われてるロジャースは×でした。
ただ過去何百台もレストアしてきたが、コンデンサーがダメになっているネットワークは「 まれなことで 」、スピーカーはよほどの事が無い限りコンデンサーは劣化しません。実証済みです。
ですがここまで全滅してるのもまた事実であり、なぜこうなったのか?不思議でなりません。10年前の104も同じ症状でしたので、たぶんコンデンサー自体の問題だと思います。104お持ちの方は計ってみてください。たぶん×なはずです。

●そんなコンデンサーを全て交換します。
サイズが大きく基盤からはみ出すと本体に装着できなくなるので、コイルの位置をずらしたりと工夫して組んでいきます。
表面の黒プレートと基盤はボルトで繋がっており、そこにかませる30mmスペーサーやボルトが錆びています。交換しようと思いホームセンターに行くと20mmまでしかありません。15mmx2も考えましたが、カタカタと振動が出ても困るので◎型のプラ棒をカットして使う事にしました。好きな長さに調整できるし錆びる心配も無く、逆に良いかもしれません。
ケーブルはイギリス製の純正で多く使われてるタイプに全て交換しました。
●そして右下の穴にはスイッチを装着しました。これも基盤の幅からはみ出ると装着できないため、いつもより小型の物に変更です。小型でも金メッキで品質は○。
このスイッチは何かと言うと、ずばり
 「
マイルドコンバーター 」のON-OFF切り替えSWです。
マイルドコンバーター?詳細は伏せますが、中域のアバレを削るものです。セッティング〜設計まで1ヶ月以上かかりましたが、コンバーター効果は絶大で自信作です。

ちなみに基盤は4点留めではなく3点留めですが、この基盤は4点留めで強く締めると簡単に真っ二つに割れます。そのように力が伝わる場所にネジがあるからです。
だから3点留めの方が良いのです。ただ基盤が割れないよう補強や振動対策もしております。



●さて、注文していた生地が到着したので、サランネットの仕上げに入ります。
←これは唯一あるサランネットの写真。
この写真を参考に「 忠実再現 」を試みました。
●ですがスポンジではなく生地なので、問題も数多くあります。特に真ん中の大きい凹みの両サイドにあるライン。
それをどう再現するかに試行錯誤。
素材がスポンジだったらいいのですが、生地の場合は色々と無理が生じます。忠実に再現するためにはある方法を思いつきましたが、とほうもなく時間と手間がかかるので打ち切りました。
材料も塗装も労力もかなり無駄が出ました。自作系はいつもそんな感じなんです。
●こちらは生地に貼るプレート。
写真ではわかりずらいですが、ベースはアルミなので質感は上々です。
●ユニットのオーバーホール作業も大詰めです。ウーファーは分解して錆を取り、一番重要なヘタったダンパーとエッジを入念に再調整。その後ズレないようがっちり組みます。
←フレームやマグネット周辺をコーティング中。乾くとやや透明になります。

ツィーターも同様、錆を取りコーティング、コイルは磨いてOILをたっぷり塗ります。オーバーホールの前後では繊細な音の出方、透明感がまったく違います。
ヴァリアスクラフトは何で音が良いの?の秘密は、ユニットをしっかりやってるからです!他業者さんと比べてください。
●ウーファーコーンとドロンの表面にはダンプ材が塗られていますが、それを均し再塗布しました。
写真が暗くてすみません(^^;
エッジ交換のみ、錆処理どころか掃除も拭きすらしない業者がほとんどなのが現状です。車の車内やエンジンルームが汚くても車は走りますが、ピカピカで新しいOILだと性能も気分も違いますよね。そんな感じでしょうか。
●そしてようやく、ようやく
箱、ユニット、ネットワークと全てのオーバーホール、
チューニングが完了しました。
●これが「 マイルドコンバーター搭載
切り替え式・フルチューンネットワークです。
ネットワークは元々3段階の切り替え式ですが、効果がより感じられるよう、可変率を少し大きくしました。
さらにスイッチのON-OFFで、ノーマルとコンバーターの切り替えができるスペシャルネットワークです。
(写真では構造を伏せています)
●ターミナルはこのように加工しました。
簡易加工ですが、プラスチック表面の凸凹に染み込んだ汚れを徹底的に落としたので綺麗です。
●ターミナルとネットワークを箱に装着後、ウーファー、ドロン、ツィーターの順で取り付けていきます。密閉型なので圧でウーファーコーンが動かないよう、YAMAHAのテンモニ同様ウーファーを先に装着します。ただ木ネジではなくボルト&ナットでネジ穴が貫通してるので、それほど気を使わなくても大丈夫です(テンモニも同じ)
●こちらは簡単に書いたドロンの機構図です。
左は今回のウーファー+ドロンで、右はたまにあるWウーファー、もしくはWフルレンジ。
ウーファー+ドロンはウーファーコーンの動きに対しドロンは反しますが、Wウーファーでは同じ動きになります。
そのあたりに良質の低域が生まれる秘密があるのかもしれません。
そして数ヵ月後、ようやく祝!完成!
●レストアやセッティングに4ヶ月以上を費やしたKEF104、ようやく完成しました。
弱音が出そうなほど大変な作業の連続でしたが、その甲斐ありたぶん新品以上の音色が出ているはずです。 
U

ネットワークを徹底的に調べ実験しているうちにうるささの原因がわかりました。 U
そして中高域のうるささを減少させる「
マイルドコンバーター 」の誕生です。 U

スイッチOFF↓(下)でノーマル音質。  U
スイッチON↑(上)にすると嫌みの消えた「
ウルトラクリアー 」質へと変化。 U
どこまでも透き通る海のような透明感や静粛性を得る事ができました。 U
クラシックやジャズで繊細な音を聞きたいとき特に有効です。 U
スピーカーの目の前 ▽ 位置で、両手でスイッチをバチンと変えてみてください。 U
まるでヘッドフォンで聴いてるような、そんなフィーリングにも感じられるはずです。 U

JBLやイギリス製に多いモニター調の音色は、真空管アンプのような特徴とは違い U
全ての音をありのままに出す 」のが特徴で、そこが好みの分かれるところです。 U
クラシックや楽器系音楽、楽器系ジャズは録音された音をそのまま再現してくれます。 U
そんなあたりがヨーロピアン流「
モニターの真髄 」かもしれません。 U
以前製作した「
最強の4301 」と、どことなくフィーリングが似ているとも感じました。 U
逆の特徴である真空管アンプとの相性が◎です。

最後に。
 ヴィンテージスピーカーはどこまでレストアするのか難しい素材ですが、 U
徹底的にやるとこんなにも古いスピーカーから「
なぜこんな繊細な音が出るの? 」 U
とびっくりするほど素晴らしい音色を再現してくれます。 U
KEFはロジャースやタンノイのように前へ前へと出ず控えめな存在ですが、 U
ヨーロッパ中のメーカーにユニットを卸してるだけの実力を大いに感じました。 U

今回残念なのは箱に小傷が多いこと。 U
JBLの厚い突き板(ウォールナット)とは違い、イギリス製品に使われている突き板(チーク)は U
薄く、十分に削れないので小傷が目立つ難しい素材です。 U
ただJBLの厚突き板とは違い、現在売られている普通の突き板で張り替えたとしても U
違和感が出にくいところが長所です。 U
費用がかかるのは短所ですが、完全に新品復活できます。 U
そして一番びっくりしたのはネットワーク(コンデンサー)。現存する104はたぶん全て×でしょう。 U
ツィーターに68uFのコンデンサーって・・・、コンデンサー無しで鳴らしてるのと同じような状態です。 U
焼き切れ断線など簡単に飛ぶ恐れもあるので、所有してる方はご注意ください。 U
正常値に戻すだけでも、うるささは少し軽減されるはずです。 U
104は手間がかかりすぎるのでもうお引き受けできませんが、104を所有されてるお方は U
ぜひこの音、フィーリングを堪能して欲しいものです。 U
(ネットワークとサランネットは1組だけヤフオクに出す予定です) U

 ハイポテンシャルなユニットをドロンコーンという特別なシステムで U
  駆動させているKEF104、イギリス製品の実力をまざまざと見せつけられた結果でした。 U

 約10年前に書いた記事は「 こちら 」になります。

次回、ウルトラチューンド待ちのLE8Tがあるのですが(笑) U
   セットするツィーターで悩んでいるところです。 U
   LE8Tは沢山在庫してるので、オーダーお待ちしております♪ U

KEF 104 1973年頃 1台推定¥130,000円くらい
メーカー解説:最新の研究成果を取り入れて開発されたリファレンスシリーズのスピーカーシステム。
 低域には20cmウーファーであるB200/SP1039と、パッシブラジエーター(ドロンコーン)を搭載しており、
30Hzまでの低音再生を可能にしています。
高域にはドーム型トゥイーターであるT27/SP1032を搭載。
圧力成形されたメリネックス・ドーム部とロールエッジ部とが一体構造。
model104では耐熱性ボイスコイルにより連続使用の場合でも180℃までの耐熱性を実現。
これによりユニットの耐久性を向上し、故障による問題を低減しています。
ネットワークは3kHzで18dB/8veのロールオフスロープ特性を持っており、音の領域を2分割しています。
スピーカーのレスポンスを部屋の形状に応じて調整できるよう、グリル裏面にアコースティックコントロールを搭載しています。
このコントロールでは中音域のレスポンス特性を3通りに調整できます。
 エンクロージャーは共鳴を防ぐため、密度の高い構造材、頑丈な内部固定材、吸音性防湿材、共鳴防止用特殊内装材を採用しています。〜中略〜
方式 2ウェイ・2スピーカー・密閉型・パッシブラジエーター方式
使用ユニット 高域用:2cmドーム型(T27/SP1032)
低域用:20cmコーン型 (B200/SP1039)
低域用:32×21cmパッシブラジエーター (BD139/SP1037)
再生周波数帯域 30Hz〜40000Hz
インピーダンス
出力音圧 96dB/W/m
クロスオーバー周波数 3KHz (3コントロール可変型)
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