●イギリスのメーカーKEF。ケフと言ってしまいがちだが、正式にはケーイーエフ。
モニターとして有名なロジャースに代表されるイギリス製品は、
メーカーも種類も豊富でアメリカを越すスピーカー大国。
ヨーロッパは石造り家、日本は木造建築、そんな環境の違いがセッティングの違いであり
出てくるの音のフィーリングは全く違うのも特徴的。
以前床と壁が総大理石の部屋があり、そこで鳴らしたダイヤトーンは最悪だった記憶がある。
この、モデル104。30年以上前の明記があるが、はたしてどんな音が出るのだろう。
●片側TWの音が出ないものを入手。サランネットも無い。ダメージがひどそうで、大変な作業になる予感がした

●ユニットを全て外します。TW以外は爪付きナットで止まっているが、これが大問題。錆びで固着してるものが多々あった。裏側からペンチで押さえて、なんとか外したが、
中にはどうしても外れないネジがあり、ボルトに穴をあけて、ねじ切りました(;´Д`A ``` 
白い粘着テープのようなものが見えると思うが、これも、もうベトベトで剥がすのが超大変!シンナーで溶かし、少しずつ剥がしました。すでに挫折気味(^^;
エンクロージュアは20mmのパーチクルボード。内側に、黒いスポンジゴムのようなものが貼ってあり、さらに写真で見える緑のスポンジで囲ってある。この黒いスポンジ状なもの、ベトベトで・・・(^^; 
緑のスポンジは、弾力が生きているので、水洗いし陰干しします。
パッシブラジーエーターといっても機密性はたかく、密閉どうよう内部損傷がひどい。
●これはTW(ツイーター)。あれっ?外してテストすると両方音が出ました。問題はネットワークにあるようです。
1974年の明記がありますね。少し中域よりのダイナミックなサウンドでした。
片方少しザラツキ感があったので、バラして組みなおします。
●20cmウーハー。特徴は俺はウーハーだっ!と主張するかのような幅広エッジ。ゴム製で弾力は問題ありません。
片側ユニットはシワだらけで、センターが出ず歪まくり。コーンは全体にボンドを塗ったような不規則な模様があります。これは元々の仕様のようだが、メンテナンスしずらい。
だが、音出ししてビックリ!!!w(゚o゚)w 
すばらしくイイユニットでした!
低域の太さに負けず、クリアーで程よい厚みのある中域。分解能力も高い。フルレンジとしても十分使えそう。
この何気ないプラコーンが何気に良い音出るのがヨーロッパ製品。
だがダンパーがヘロヘロで新品に交換したい。そして超錆だらけ、しかも赤錆で超やばい・・・
ネジを緩め軽く触れただけで軽くマグネットが外れた・・・
●赤錆、白錆び除去後、錆び止め剤を塗ります。白錆は比較的簡単に落ちた。
浮いていただけで、侵食によるダメージは無かったのでやや安心。
●パッシブラジエーター(ドロンコーン)。最初見たとき、口みたいで変わった形だなぁ〜と思ったw
ダンパーにヘタリあり、補修した。ゴムエッジの弾力は問題ない。裏側コーン部の白が見えると思うが、これ発砲スチロールでした。なるほど、これなら軽さに加え強度もでますね。
装着状態でこのコーン押すと、ウーハーがストロークするすごい気密性です。
●問題のネットワーク&コントロールスイッチ。
写真で見た時、TWの能率を変えるアッテネーターかと思ったが、よく見るとアコーステックコントロールという文字が。
これクロス値を変えるものでした。すごい、珍しいですよね。だがスイッチのノブが動かない( ̄□||||!!ガーン
●さびで固着してました。酷いでしょ。動いてもこの錆びじゃ接点不良がおきますね。錆びは全て除去します。
●単純なロータリースイッチなので、接点が回復すれば機能にはまったく問題ない。ペーパーがけてせっせと錆びを落とします。以外に大変でした。すべての接点をチェック後、コーティング、可動部はグリスを塗ります。
●個々のユニット、ネットワークをチェックします。1個ガサツキのあったTWは錆の影響が強く、ヨークにゴミのようなものが付着してました。単体で聴かなければ解らないほどの症状だがキッチリやります。バラして取り除き、再接着しました。
TWの音が出ない原因はコンデンサーにありました。1個、容量抜けしてました。全てチェックし、実測値で左右のバランスも取ります。
ビンテージものにはビンテージのコンデンサーがやはりイイ。
左右交換。4μF、5μF、5μFが付いてます。数値の差が少なく、音に差が出るのか心配だったが、他のコンデンサーもおかしいので、結局全部交換するはめに。トホホ
高域の能率ではなく、中域の出方に着目点を置くなんて、発想が違いますね。自作スピーカーを作るときには、ぜひ参考にしたい。
●フレームやネジも全て再塗装しました。ユニット・ネットワークのオーバーホール完成。
片側ウーハー、エッジのシワが癖づいていました。ミバを良くしようと、シワを伸ばした状態で接着すると、どうしてもセンターが取れない。参りました(^^;
シワは付いてますが、きっちりストロークして、動作は問題無く仕上がりました。テスト漬け。
●箱はかなりてこずりました・・・がここまでやったからには、最後までやりとおしましょう。
これ汚れを落とすというレベルではない。なんか古〜〜〜い学校にある机のような・・・黒ずんで、コ汚い。他の104をネットで見ても同様のものがあり、塗料の問題のようですね。
古い塗料を削りとります。ツキ板なので、やりすぎ注意!ハゲます。角は黒ずみが酷かった為、剥げました(^^;
ただこの黒ずみ落とすのに、やりすぎたくなるんですよ。
ギリギリの所まで削り、オイル(メイプル)で再塗装。蜜蝋でほんのり艶を出し仕上げます。
不安だらけの作業の中、新品とはいきませんが、わりといい感じで仕上がりました。
●続いてターミナル部。元はこれ。普通のバナナは入らない。アングルピンやミニピンプラグじゃ緩すぎる。
どうしようもなく不便なので、ターミナルを装着する事にしました。右は一般的な角型金メッキターミナル。
●エンクロージュアに直付けするターミナルは問題ありませんが、こういうケースを取り付ける場合、排圧・振動がネックになります。そこで、写真のようにブチルを貼り付けます。ベタベタとひっつかないよう、片側にはクラフト紙を貼りました。こういう所から大きな差が生まれます。
●内部に仕切りがあるので、それを避けてカット。右はカットしたものだが、半分は板で半分は、例の黒いベトベトスポンジのようなもの。このベトベトが抵抗になり、カットしにくかった。
ただこのベトベト、
かなり箱鳴りに貢献しているもよう。勉強にもなりました。
●内部配線は、すずメッキされたテフロン線。テフロンとしてはわると太くて耐久性もよさそう。
メッキにより高域の伸び・透明感、本数、太さにより低域の量感という具合。バランスの良さそうな線材です。
ハンダは抵抗の少ない銀ハンダを使用。
●取り付けました。ネジなしでもキツくはまるので、でっぱりが出ないようサラネジにしました。
●さて、ここまで仕上げたからにはネットも作ります。
一般的な平らじゃ芸が無いので、ここはひとつデザイン重視で作ってみます。木材はバルサと強度が必要な部分にはネオランバーを使用、大変軽いです。
●原寸合わせで仮組み。布地で調整できるので、スキマは左右2mmづつあけました。
●接着し、さらに削り加工します。各部はサラッと補強しました。
●木製なので塗装します。せっかくなので炭塗料にしてみました。私が塗料に炭を混ぜたものではなく、最初から配合されてる市販品を使いました。ザラザラはありません。腐食による耐久性も。独特の炭色ですね。
●ついでにユニットにも塗ってやりました。 ●せっかく炭塗料で塗ったのに、もったいない気もするが、ニスを上塗りします。これは湿気対策で、変形を防ぐ為のものです。
●2種類の生地を用意しました。左の黒はTシャツなどに使われる綿。少しブ厚いもの。
右は高級なウール地で、黒に近い濃紺。同量なのに写真でわかるほど厚みが違います。
ウールはかなり吸音しそうですね。
●1個張って組んでみました。あれ?あれっ?
イメージと違い、なんかカッコ悪いですぅぅぅ。
●ピーンと張れば張るほど、ゆがみが大きくなる???
カーブしないように張るとゆるすぎ、困りました。
●この骨組みではダメだったようです( ̄□ ̄;)!! ●フレームを追加します。
●傾斜部に2本入れました。後から追加したので、かなりメンドウでした。 ●おぉ!できました。理想通りのエッジです。
構造がダメだったんですね(^^;
●上から見るとエッジ部がよくわかると思います。ドンピシャサイズにしたので、マジックテープは必要ありません。
パコッとはまり、ガタツかないようにしています。
●いい感じで仕上がったでしょ。自分で言うのもなんだが、色合いもいいなぁ〜♪ ●ネットワーク・ユニットを取り付けます。ユニットは全てハンダ付け。ネジを1本変えました。
●完成!!!エッジのシワが目立ちますね(^^:
●あとから調べてわかったのだが、ヨーロッパ製品にはこういう台形方ネットがあるようですね。
●で、フルオーバーホールの完成!!!
完成にこぎつけ、ホッと一安心。長い道のりでした。

インプレです。私はかなりの数のスピーカーを所有、試聴してきました。HPを立ち上げる前、5年も10年も前に聴いた物は印象しか残ってませんが、この104最高です!
2wayスピーカーとしての評価ですが、とにかく上から下まで、「 バランスがいい

20cmあれば、大抵そこそこの低音は出ます。ただその出方が問題で、
これは
ブッとい音が出るのに「 キレが抜群!
バスレフに似ているがキレが良く密閉のような高解像度も併せ持つ。
恐るべしパッシブラジエーター!?

低域の良いONKYOのモニター500と比べても、まったく引けをとるどころか、こちらのほうが少し良い気がする。
そして、この低域に
負けない中域
ドスドス低音が出る場合、たいがい中・高域が負けてしまうのだが、これも力強い中域。
高域の「
分解能力 」も高く、聞こえないような音まで聞こえてくるのは、この古さなのに不思議。
ボーカルのクリアー加減は、モニター500より少し分厚く、ビクターのSX-V1より少しクリアーな感じ。
アコースティックコントロールなる切り替えも、ガツンと効くわけではないが、中域の厚みをほどよく変化でき、おもしろい。

どちらかと言うと、モニター的な音に近いので、どんなジャンルでもいけ、ソースを選びません。
サイズはでかいが、奥行きが薄いので、薄型TVの横で、5.1のフロントとしても使えそうだ。音も今風です。

SX-V1で感動し、さらに負けない位の感動を与えてくれた、この104。
30年以上前の物とは、
ほんと驚きです。オーバーホールのテクが良かったのかな(^^;
同時に、いかにスピーカーが進化していない、とも感じました。
30年前にこれ出された時の評価はどうだったんでしょう?
国産はたじたじだった事と思います。20年前のベンツのような圧倒的印象というか。
参考になるヶ所が多々あり、とにかく勉強になりました!

最後に
結局全部変えたコンデンサー、変える前の音をまともに聴いていないのが心のこりだが、おかしなコンデンサーから推測すると、おかしな音だったのでしょう。
おかしいだけならいいが、コンデンサーのせいでツィーターが飛びました。注意が必要です。
SX-V1、この104と聴いて、次に聴くスピーカーが可愛そうですが、オンキョーのD-502Aになりそうです。

   2016 最新レストア記録は「 こちら 」

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