●今回はJBL4312Aのご紹介です。
431シリーズは4310に始まりウーファーが上に設置された4311、そのままひっくり返された4312、
そしてツィーターが変更された今回の4312Aという具合にモデルチェンジされてますが、
ツィーターとネットワークが変更された4312Aがアメリカ生産最後のモデルであり、もっとも変革されたモデルだと感じてます。
4311はメンテナンスが必須で激変しますが、ノーメンテで唯一いける
しっかりと作りこまれているのが、4312Aの特徴とも言えます。
だから431シリーズの中では好きなモデルでもあり、過去何度かカスタムしています。
そんなところですが、今回の4312Aはどのようにカスタムされるのか、どうぞご覧ください。
 U
●4312Aには、外装がウォルナットの4312Aと
今回のようにブラックの4312ABK、
そしてブラックの木目タイプ、4312Bと4312Cがあります。
唯一グレーが無い(あったらごめんなさい)ので、
私は以前フルグレーにカスタムしました。

Bはたまみ見ますが(所有しています)、Cはまず見かけませんよね、どこが違うかもよくわかりませんが、JBLはラインナップの多さに驚きます。
●そんな4312ABK(以下4312A)、まずはユニットやネットワークなどのパーツを全部外した後、徹底的なクリーニングから始めます。
この黒は表面に細かい凸凹加工がされており、パッと見綺麗ですが実はけっこう汚れてます。
まずは中性洗剤で木の断面部を濡らさぬよう、丁寧にクリーニングしていきます。
JBLの白ロゴはゴシゴシやると消えるので、やさしく丁寧に黄ばみを落としていきます。
●ボディを濡らすことにより、このような凸凹や傷が見えやすくなります。
クリーニングを終えじっくり乾燥させた後、傷や凹みを補修していきます。
●この表面素材は塩ビなので、傷に対してペーパーをかける事ができません。さらに傷だらけになってしまいます。
2000番くらいの耐水ペーパーを使い、ゆるりゆるりとやれば大丈夫そうですが、傷に対してあまり有効ではありません。
浅い傷には消しゴムのようなゴムを使い、深い傷には熱を加えて補修していきます。
ただし加減が難しいです。
傷や凹みを補修後、最後は全体をコーティングします。
←左が施工前、右が施工後
●どうでしょう。
元々は少し白ボケした感じで安っぽさも感じるほどですが、UVコーティングにより黒々とした色が復活しました。
できる限り艶を抑えた仕様で、汚れも付きにくくなります。

 深い傷跡は若干跡が残りましたが、薄い傷はほぼ消えて見えなくなりました。
JBLのロゴも、一段と白さが増しました。
この仕上げは一見簡単そうに見えますが、実は意外に難しく、ムラにならないよう、繊細な作業が必要になってきます。
同じAやBはもちろん、4312DやEを隣に並べても、こちらの方が綺麗な見え方です。
●さて、今回はオーナー様のご希望により、フロントバッフルを青に変更しました。
一口に青と言っても、JBLの青には前期の淡い青と、後期の濃い青の2種類があります。
黒いボディなので、MKUのような濃い青よりも、前期の淡い青の方が合う気がしますし、オーナー様もそちらで良いとの事だったので、往年の青、淡い青に決定しました。

 そして青は「
塗ればいいってもんじゃありません
JBLでは黒と青の組み合わせが無いだけに、黒と青がどれだけ馴染むか、どのようにして純正風に見せるか、フレームやポートの塗り分け、艶の加減などなど、細部までこだわりが必要になりそうです。
それらこだわりがあるからこそ、初めてカスタムと言えます。
●さて、塗装の乾燥中に内部を仕上げていきます。
まずはネットワーク、ツィーターがLE25から035Tiに変更された今回の4312A、それにともないネットワークも変更されました。パッと見わかるのがコイルの追加ですが、クロスオーバーも変更されてます。
今回の4312A、概観はわりと綺麗でしたが、中身はもう30年近く経ったスピーカーです。だからアッテネーターや接点など、ちらほらとダメージが見られました。
←こんな錆だらけでは音が途切れるのもうなずけます。
●接点復活はもちろんですが、接続部をやり直すにあたり、ケーブルも全て交換します。
一点集中的な硬めの配線ではなく、高域まで自然に伸びるワイド感を出すため、柔らかめで本数の多いOFC線を採用しています。
クリアーで力強く、かつノイズにも効果的なツイスト構造とし、質量投資をおこなった自作ケーブルです。
431系では約12〜14メートルほど使います。
もちろん全ての接続部も、こだわって製作しています。
●コンデンサーは問題ありませんが、女性ボーカルを際立たせたいので、スコーカー側のみ同メーカー物と交換しました。
ちなみに過去500台以上のスピーカーに触れてきましたが、コンデンサーがダメになる事はほとんどありません。
こちらは4312Aの初期型で、基盤が使われていないタイプのネットワークです。こちらの方が音的に好きですが、コイルの取り回しなど見ていられないほどなので、全て一からやり直しました。
元に比べ、クリアーな質感と安定感が増してます。
●こちらは背面のターミナル。
右の赤黒が純正ですが、ネットワークに合わせてターミナルも交換しました。
音質的にはそれほど変わりませんが、金メッキになったので耐久性が上がったのと、見た目がかっこ良くなりました。
気分もだいぶ変わるはずです♪
●さて、次はユニットに入ります。
アンプやCDプレイヤーなどのオーディオ機器では、スピーカーにより音質が大きく左右されますが、JBLの場合、ツィーター、スコーカー、ウーファーの中で、最も大きな割合を果たすのがウーファーです。
このウーファーしだいで、全体の音が変わると言っても過言ではありません。だからウーファーのメンテナンスでは、エッジやコーンのストローク量など、可能な限り完璧に仕上げる必要があります。
まずは垂れ落ちて固まったダンプ剤を綺麗に取り除き、エッジ全体に残ったダンプ剤も綺麗に除去します。
エッジは布ですが繊細なので、周りのスポンジ以上に丁寧におこなう必要があります。
●JBLのエッジに塗られているダンプ剤は、年代により質が違います。4312Aあたりまでは、わりと垂れてしまう液が使われていますが、それ以降MKU〜は、わりと垂れにくい物に変わりました。垂れてベトベトになるXPなどはやばいですが、MKUの硬すぎるダンプ剤もまた、音質的にはXです。
エッジをどれだけ丁寧にやるかで、
 「
ウーファーの音質=JBLの音質 」が変わってきます。

私はエッジの調整だけでも1、2週間はかかるので、同時にコーンも仕上げていきます。
まずは丁寧にクリーニング、ある程度汚れ落としてから、再塗装をおこないます。
←左が元で右が塗装後(まだ途中、乾燥前)
●ここで一つわかって欲しいのは、JBLは適当にベタベタ塗られたものを多く見かけますが、私のそれとは違います。
目的は「
新品のように復活させる事 」であり、真っ白にする事ではありません。
←あくまでも自然に、新品に戻るよう努力しています。
 白は薄塗りだとムラになりやすく、色ムラを隠すために厚塗り、結果ぼてっとした不自然な白になります。
写真じゃフィーリングが伝わり難いですが、そんな感じにメンテナンスされた物とは、まるっきり違います。
同じ程度だと思われたくないので書いております。
●だからこそ私のようなチューナーが際立つのかもしれませんが、気持ちは複雑です。
 私は綺麗に見せる為ではなく、動作も含め新品に近い状態に戻すのを目標としております。
白で塗りたくるのは3時間もあればできますが、私は選び抜いた塗料を極薄にし、スプレーガンで少しずつ、自然に見えるようかさねています。

←だからこのように「
超自然な仕上がりになります

少し薄暗い部屋でライティング無しで撮ったものですが、自然な感じが伝わるでしょうか。
ただし元の状態に左右されてしまうので、左右で色差が激しい物は、その形跡が少し出てしまう場合もあります。
●さてこちらはツィーター。
4312A〜の035Tiは、ネジ類が錆びやすいのが短所です。
外からではわかりませんが、内部も少し錆が出ている物がほとんどです。
左はレストア後で、コイルにOILも塗ってます。
音質も完璧に仕上がりました。
●こちらはスコーカー
スピーカーの中で、女性ボーカルの帯域を占めるスコーカーもまた、重要な部分です。

JBLのスコーカーはエッジが硬く、動きの鈍い物が多いので、それを柔らかくして、ストローク量が増えるように仕上げてしいきます。
ただしコーンが破れやすいので、慎重な扱いが必要です。
10%程度柔軟になっただけでも、音質はガラッと変わります。
フレームは磨いた後コーティングします。
そして全てのレストアが完成!
ご依頼品の多くは、毎回遅れ気味でご心配をおかけしておりますm(_ _)m
一つ一つ入念におこなっているので、結果は必ずともなっております。
なのでどうかお楽しみにお待ち頂ければ幸いです。
●そんな全パーツを箱に取り付け、完成・・・の前に
●今回はプレートを自作しました!
 JBLは、ほとんどが黒プレートで統一されているので、よりオリジナリティを出すために自作してみました。

 他には無い 「
オンリーワン

 これも私をご指名くださったオーナー様への、せもてもの感謝の気持ちから生まれたものです。
のちほど工程を詳しく載せますが、素材選び〜デザインまで、30種類以上になるほどの量で、ぼうだいな時間がかかりました。ですが構想はまだ3割程度しか完成しておらず、別の物がたくさんあります。
とりあえず今回は黒いボディにブルーバッフル、それに合いそうな物を作ってみました。
●ベースはアクリルプレートで仕上げてますので、純正プレート同様しっかりしたものです。
純正プレートの上貼りはもちろん、純正プレート、ベースが無くてもこのまま使えます。

今はシルクスクリーン印刷に挑戦中です!
●そんなカスタムプレートの雰囲気がこちら(仮止めです)。

純正と同じデザインの場合、単調でシンプルすぎるので、ややアクセントのある4310ベースに、少しアレンジを加えたデザインにしました。
もう無限大ですね。
ただ青やグレーバッフルとプレートを同色、ステルス的に仕上げるのに、色合わせで手こずっております。
●そしてようやく

 
祝!完成!

いかがでしょう。
このようなプレートは見たことが無いと思うので、見慣れるのに少し、時間がかかりそうですね。
●ですが実物は、純正風で良い仕上がりだと思います。
ネットをつけた状態でもかっこいいですよ!
黒いボディにオレンジが栄えまくりです。
●どうでしょう。まだまだ見慣れてないので、何か小さいMUにみえてしまいそうですが、
まぎれも無い4312A、フルカスタム・フルチューンのスーパー4312Aです! 


 こういったプレートしかり、パーツを作るにはデザインから始まり、 
素材選び〜印刷工程など、想像以上に時間がかかってしまいます。 
プレートを作る為だけに、15万円のレーザープリンターの導入は躊躇しましたが、 
紙やインク、ベースになる木材やアクリルなどなど、創作にはお金もけっこうかかります。 
 以前自作の金属ホーンを作る為に、金型を特注しようとした事があるのですが、 
びっくりするほどの金額な上、金型の完成だけでも4、5ヵ月かかると言われ、あきらめた事があります。 
 0から作るには、想像以上に大変なんです。 

 私は車のエアロパーツを作ったりと、元々デザイン創作が好きなので、 
時間と根気は苦になりません。ただ途中で挫折したり、失敗も多く繰り返してきました。 
そんな経験を重ねていき、少しずつスキルと完成度が上がっていきました。 
プレートはまだまだこれからなので、今後も開発を続けていく予定です。 

さてさて
肝心の音質は割愛させて頂きますが、納得のいく最後の最後まで、音の微調整も入念におこないました。 

最後に。
 今回のスーパー4312Aはいかがでしたか。 
木目や色など、まったくのオリジナルで作る事は簡単ですが、 
私はあくまでもJBL風、純正の雰囲気を壊さぬよう、純正に見えるよう心がけています。 
 特に今回の青の場合、木目ならどんな青でも合いそうですが、 
黒に合う青は難しく、全体を同じ艶で統一するなど、違和感が出ないよう様子を見ながらの作業になりました。 
だからいつも以上に時間がかかってしまいましたが、創作パーツしかり 
すべては私にご依頼くださったオーナ様に、喜んで頂きたい一心でやっております。 
なので時間がかかるのは、大目にみてやってください(^^; 
これからも喜んでいただけるよう、そして「
オンリーワン 」を目指し、突き進んでいきたいと思います。 

次回、まだやった事のないカスタムやパーツがあるので、それらを純に紹介していく 
    予定です。もしかしたら小粒ちゃんが出てくるかもしれません、お楽しみに♪

JBL 4312ABK 1986年 1台 約12万円
メーカー解説:
方式 3ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式
使用ユニット 高域用:2.5cmドーム型(035Ti)
中域用:13cmコーン型 (104H-3)
低域用:30cmコーン型 (2213H)
再生周波数帯域 45Hz〜20000Hz
インピーダンス
出力音圧 90dB/W/m
クロスオーバー周波数 1.1kHz、4.2kHz
外形寸法 幅362×高さ597×奥行298mm 約L
重量 20kg


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