●今回は日本のオーディオ黄金期の真っ只中、1986年に発売された JBL 4312A の紹介です。
431シリーズは息が長く、2015年の現在でも後継機種(4312E)が発売されてます。 U

第一世代
初代4310(極めてレア・ALLアルニコ)、4311、4311A、4311B、4312(初期、ツィーターがLE25)
第二世代
4312A(ツィーターが035Ti)、4312XP(やや変り種)、4312MKU、4312SX(やや変り種)
第三世代
4312D(ツィーターが054Ti、MIID、FWもネオジウムに一新)、4312E(Dのマイナーチェンジ、現行機種)

 4312と4312Aをなぜ分けた?と言われそうですが、分岐点となった理由は”ユニット ”の変更です。 U
特にJBLプロシリーズの場合、フルレンジ+ツィーター的な音色なので、搭載ツィーターによって U
その雰囲気、フィーリングがだいぶ変わってくるからです。 U
 そんな理由から、私が音を聴いて感じたままに世代分けしてみました。 U
初代4310(ALLアルニコ)とアルニコの4311Aはまた少し別なのと、XPとSXは少し変わり種の機種ですが、 U
4311Bと4312A,4312Dを聞き比べると、想像以上にフィーリングの違いが感じられます。 U
すこし混乱しそうですが、そんなところで、第二世代に生まれ変わった4312A、さっそくレストアしたいと思います。 U
●4312Aブラック
1986年頃の発売という事は、すでに25年〜30年近く経った物ですね。30年前と聞くとものすごく古いイメージが湧いてきますが、こちらはぜんぜん古さを感じないほどです。
たぶん現在(2015)でも、同じ風貌(4312E)で発売されてるからでしょう。

←写真だとわかりにくいですが、角が所々欠けてました。
ユニットはかなり状態良いです。
●そんなユニットを外します。
4311〜4312までのユニットは、接着されてるの?と思えるほど強力にひっついておりますが、こちらは若干新しいせいか、わりとすんなり外れました。

内部は4311から変わらずですが、とても綺麗な状態です。
吸音材まで塗装されてる機種もあり、それは小汚く見えてしまいますが、こちらは新品?とも言えそうなほどの状態でした。
●右の黒い凸凹はMID・スコーカーのバックキャビティで、ウーファーからの排圧の影響を受けないようにしたものです。箱にして容量も与えられてるのは、スコーカーの音質をより厚いものにしたからだと感じました。
4311ではただの紙筒ですが、この4312Aからは写真のよう、表面を凸凹に加工された頑丈な箱で、より排厚の影響が受けにくく、音質的にも良さそうな感じのするものです。
●30cmウーファーの2213H
コーンの素材は紙がベースで、その上から表面処理されたものです。
JBLではこのウーファーによる音質が
そのまま「
JBLの音
と言っても過言ではないほどです。
そんなウーファーは、4310、4311〜Aの2機種がアルニコで、4312D〜4312Eの2機種は
ネオジュームに変更された2213Nd、それ以外すべてがこの「 2213H 」です。
2213Hは、JBL43シリーズの顔みたいなものですね。

←こちらはわりと状態の良い物です(エッジは作業中)。
年代や扱い方(鳴らし方)によっては、悲しくなる物も沢山あるので、JBLを選択するなら、ウーファーの状態で選ぶのが賢明だと思います。
●初代4310から変わらないのが
この
アコーディオン型「 ギャザードエッジ 」。
 このエッジには、不要な振動や余波の影響を受けぬよう、動きを制御するダンプ剤が塗られてます。
ダンプ剤は年代により違ってきますが、そのほとんどは垂れ落ちたり固まったりしています。

←これはあまり鳴らされていなかったようで、垂れ落ちがほとんどなく、全体的に固まった状態でした。
このように固まったダンプ剤は一度全てを取り除き、新しいダンプ剤を塗布してやります。
ほとんどが垂れ落ちてスカスカ状態の物も、クリーニング後新しいダンプ剤を塗布します。
その後音質に影響がないか、ビビリなどが出ていないかをチェックし調整していきます。使う材料はもちろん、経験も出るところなので、技量の差がでます。
●こちらはMID(スコーカー)で型番は104H
4312まで使われてるものはLE5という機種で、使われている素材や見た目もほぼ同じですが、表面をコーティングしたりなどの変更が見られます。
表面のコーティングは、耐久性を著しく上げるので大賛成です。それにより音質はどうなの?と心配ですが、裸聴きでも、ほとんど変わりませんでした。
それよりもこの機種も「 エッジが固まってます 」ので、
きちんとメンテナンスしてやり、少しでもストローク量を増やせれば、より厚い音、男性ボーカルがより自然に出るような音色に変わります。
ここも腕の見せどころです。
●フレームを磨き、エッジの調整が完了しました。
コーンの動きは元に比べ、だいぶスムーズになりました。
元々ストローク量の少ないユニットなので、無理に押したりすると、
コーンが破けるので注意が必要です。

←状態の良さが感じられますでしょうか。
●最後はツィーター、型番は035Ti
4312(初期)までのLE25とは見た目が違うので、パッと見すぐに違いがわかるのがこのツィーターです。

こちらは年代物の劣化、ネジに錆びが出ています。
たぶん内部にも錆の影響が出てると思うので、オーバーホール(分解)していきます。
●ネジを外すと簡単にカバーが外れます。
その後ネジ部のサビやベースフレームの錆を取り除きました。最後に錆止め剤(透明)を塗って完成です。

 中央のドーム
ダイヤモンドエッジパターンという模様で加工されたもので、材質はチタンのようです。
4312A、4312XPで使われており、MKUではデザインが少し変わってきます。
チタンのせいかアルミのようなシルバー色ではなく、ややガンメタのような色合いです。
素材は薄くて柔らかく、簡単にペコッといくので注意が必要です。
●最後にプラスチックのフレームを処理して完成。
錆はネジとベースフレームに影響してましたが、ボイスコイルには影響がなかったので安心しました。
マグネットは接着されているので、中央のネジ(インチ六角)を外すだけは分解できません。
それとJBLの場合、リード線がむき出しになってるので、切れないよう注意が必要です。
●すべてを組みなおし
オーバーホールの完成です。
音質はもちろん、錆が取れドームが綺麗になっただけでも
精神的にはまったく違いますね。

ダイヤトーンやONKYOなどの日本製にくらべると、オーバーホールも快適に進める事ができました。
外国製品は合理的にできてますね。
●さて、箱のメンテナンスに入ります。

この黒は216PROにも採用されている塩ビ(ビニール系)シートです。
この黒と木目調の黒、4312Dのような凸凹の深い黒と、黒だけで3種類あります。

4312Dのような深い凸凹は、傷の修復や汚れ落としが大変ですが、こちらの黒は比較的楽に作業できます。
ただし傷を目立たなくするのは、色々とテクニックが必要になってきます。
今回はフルカスタムということで「
全塗装 」したいと思います。
●全体を徹底的にクリーニングしたあと
●えいっ、と塗りました。
さよならJBL(ロゴ)

このJBLロゴは塗装で凹凸があるので、1回目の塗装では、まだうっすら跡が見えますね。
箱の完成後、ロゴも再塗装し直します。
●塗装→乾燥を4回ほど繰り返し完成しました。
塗装する前に、下地を完璧に仕上げる事が大事で、完成後の質感が大きく変わります。
色目は4312MKUの黄色系ではなく、初期の4311の青系グレーに合わせました。
4312Aでグレーはとても新鮮ですね!
ひょっとしたら無いのかもしれません。


  NEXT↓

   ・・・