●今年はずいぶん涼しい気がしますが、みんさまはいかがおすごしでしょうか。
毎年この時期にパソコンの大掃除をするのですが、ちょっとやらかして(TT)ておりました(笑 U
さて、今回はお初となるビクターのSX-V05(以下V05)。 U
パッと見その風貌はV1の弟分と思えるほどだが、どれほどの実力なのかが気になります。 U
そして毎月1台は触れているSX-V1。今回は私の中の鬼門であるV1Aと一緒にご紹介します。 U
V1はかれこれ30セット以上メンテしてきましたが、V1Aは今回で5セット目。 U
そして過去のV1Aはいずれも故障しており、1台はコイル焼けにより修復不能な状態でした。 U
V1とV1Xは致命傷が無かっただけに、「 なぜV1Aは壊れる? 」とちょっと不思議な偶然が重なってました。 U
そして今回のV1Aも修理依頼・・・ U
でも今回はターミナルの破損なので、ツィーターの断線や U
ウーファーの固着に比べるとぜんぜんたいしたことありません。 U
そんな経緯から、V1Aと聞くと無意識に体が拒否反応を起こしてしまいます(^^; U
という事で、故障の内に入らないほどの軽症、ターミナル交換に加え U
メンテナンス + チューニングとフルメニューでいきます!それではどうぞご覧ください♪ U |
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●左がV05で右がV1A。
V05は12cmウーファーでV1Aは14.5cmウーファー。
数字だけでみると大差ありませんが、並べてみると倍ほどサイズが違います。
とにかく「 小さい 」という印象のV05です。 |
●パッと見V1と同じようなパーツが使われており、とても1/3ほどの価格で売られていたとは思えないほどです。
厳密に言うと長くなるの割愛しますが、随所にコストダウンの努力がひしひしと伝わる素材使いです。
たぶん原価はV1と、そんなに変わらないんじゃないですかね。 |
●さっそくユニットを外します。
表面に見える4つのネジ以外、V1と同じよう背面(内部)のネジを外す必要があります。 |
●小さいけどしっかりスパイダーサスペンションでした。
右はノーマルのネットワークです。
コンデンサー以外はV1と同じもののようです。
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●メンテナンス完了。
ツィーター・コイルにオイルがまったく塗られていなかったり、ウーファーのスパイダーがずれていたりと(たぶん中華製造?)、雑な部分がちらほら見えました。
個体差の問題では無いように感じます。
スパイダーのズレを直しただけでも、ポテンシャルがかなり違ってきて、はっきりと音質に表れました。 |
●そのポテンシャルを完全に引き出すべく、ネットワークもチューンしました。 |
●次はV1Aの修理とメンテナンスにとりかかります。
以前V1を4セット(8台)同時進行でメンテした事があり、頭が混乱するほど大変な思いをしたので、それからは1セットずつやる事にしました。
ネジ1本でも入れ替わったりしたら気持ち的に大変ですので。
今回はV1とV1Aですが、ほぼ同じ部品なので慎重に同時進行していきました。 |
●左がV1で右がV1A。
使われてる素材、部品はほぼ同じですが |
●エッジが違ってます。
左のV1は布エッジで、右のV1Aはゴムエッジ。
たったこれだけの違いですが、音質を大きく左右する重要な素材です。
布エッジがレコードならゴムエッジはCD?
余韻が多めで弾む感じのゴムエッジは個人的に好きですが、V1に限っては品のある布エッジが合ってる気がします。
だからV1Xしかり
「 なぜゴムエッジに変えたの? 」と毎回思ってしまいます。
あと表面上見えませんが、V1Aではスパイダーが短くなりました。 |
●そして背面。違いが一目瞭然ですね。
そう、ツィーターがフェライトからアルニコに変わりました。
いいなーアルニコ。
V1Aではツィーターがアルニコに、ウーファーのエッジがゴムに変わりましたが、その他はネットワークを含め同じです。
音質の要となるネットワークが同じなので、こうして隣に並べて聴き比べない限り、極端には変わりません。
アルニコツィーターはややシャープと言った印象です。 |
●横から。
スピーカーと言うより、もう芸術作品の域ですね。 |
●ユニットのオーバーホールに入ります。こちらはツィーター。V1はプラカバーですが、V1AとXは金属に変わります。
写真だとわかりにくですが、オイルが所々に飛び散ってます。これはコイルの熱を逃がす?質感を上げる?のが目的で、ヨーロッパ製品に多く見られます。
若干上品な音に変わる気がするので、私は塗られていないコイルにも塗ったりしています。
このときソフトドームの凹みなんかも修復します。
ヨーロッパ製品の布ドームはかなり薄く、経年により自然と凸凹してしまいますが、日本製は厚く、経年では凸凹しません。その代わり指で押して凹んだままにしておくと、その跡がクッキリ残ってしまい、修復も難しくなります。 |
●さて今回の修理依頼、ターミナルの破損。
V1シリーズは他のスピーカーよりも重心がかなり前寄りです。
だから移動させる時は意識してしっかり持たないと危険な目に陥ることがあります。
それが原因かはわかりませんが、V1のターミナル破損は何台かありました。 |
●純正品に交換しました。
似たような社外品もありますが、並べてみると品質の違いが一目瞭然です。
当時近所にビクターの営業所があり、V1の部品、サランネットやネットワーク、ターミナルなどを何点か買いだめしてました。それも残すところターミナルの1セットで最後です。
いつ頃だったか、もう完全に部品が無くなったと同時に、営業所も移転してしまいました。
今はTEACにタンノイの部品を注文してますが、中々入手できない状況が続いてます。 |
●ネットワークをフルチューンしました。
コンデンサーと全端子を交換。
接続も少しやり直します。
ノーマルに比べ高域の伸びが良くなり、全体がふわっと広がるようになります。
解像度も向上するので、ボーカルの輪郭もより鮮明に変わります。部品点数が少ない物は、各部を入念に作らないと綺麗な音が出ません。 |
●上がノーマルで下がチューン後。
写真のよう素材はもちろんですが、
配線がユニットの端子に直で接触するようになど、
細かいところまで気を使っております。 |
●ユニットのオーバーホール、ネットワークの製作が終わり、最後は箱の仕上げに入ります。
その間同時にコーンのクリーニングをします。
繊細なコーンなので組み上げた後、最後に作業してます。
これは特殊な洗浄液に浸した状態で、こうすることで写真のように、染みが発見できます。
もちろん染みを発見するだけではなく、汚れや黄ばみを落とすのが一番の目的です。
ですがこのクルトミューラー社製の紙コーンは和紙のように繊細で、へたにやるとすぐにボロボロになってしまいます。
だから慎重な作業はもちろんですが、もし破損してしまったら
「 弁償するくらいの気持ちでやってます 」
それぐらいの気持ちが無いとできない作業です。
極力ダメージを与えたくないので、超極薄の洗浄液を1日に1回塗り、乾いたらまた塗るを5、6回繰り返します。なので10日くらいはかかる気の遠い作業です。
繊細な素材だけにやらないに越したことありませんが、やはり綺麗になると気持ちがいいものです。
TVでやってるプロのクリーニング屋さんじゃないですが、色々な紙を使い、かなりの実験を繰り返してきました。
今はタンノイの紙コーンを練習しています。
*適当な洗剤で絶対にやらないでください。
必ず染みになり(TT)羽目になります。 |
●箱も仕上がり、チューンドネットワークを装着します。 |
●ヴァリアス・クラフト、チューンの証を貼り |
●逆の手順で組み上げ |
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●一般的な8cmフルレンジ箱よりも小さいSX-V05のインプレッションから
まずは一言 U
「 ちょっとびっくり、ボーカルが綺麗だな 」
よくある安物のスピーカーとは一線を画す音質で、鳴らした瞬間からそれは感じられました。 U
特に高域はV1Xとフィーリングが似ており、レンズのおかげか?広がりも中々のもんです。 U
そんな高域に合わせられた中・低域は、程良い塩梅でバランスよくまとめられている。 U
中域・女性ボーカルは初代V1には劣るものの、色気や艶の出方がスムーズで U
綺麗な声質を十分に堪能できます。 U
低域もV1と比べてしまうと、あと一歩の重み・深みが欲しいところ。 U
ですがウーファーをオーバーホール、スパイダーのずれを直した事により、 U
さらに深い音が出るようになりました。 U
チューニング効果もよく表れており、このサイズでは考えられないほど立派なスピーカーです。
●さてお次はV1とV1A
V1Aの長所はツィーターが「 アルニコ 」になったこと。 U
フェライトよりもピュアで、透明度、静粛性が若干増したような感じです。 U
ですがウーファーがゴムエッジになり、布のV1に比べるとブヒブヒとやや下品に。 U
それが仇(短所)となり、相殺されているような気がします。 U
(変な言い方ですみません。個人的にはゴムの音は好きです) U
肝心の女性ボーカルは若干リアルに、輪郭が明瞭になりましたが、 U
V1に比べると、ほんの少し引っ込んでしまったのが残念に感じます。 U
V1Aはなぜウーファーをゴムエッジにしたのか? U
もっと低域を出したかったのか?残念でなりません。 U
それとV05の製造時期が1997年、V1Aも同じ1997年、そして両者とも雑な作りが目に付いた。 U
推測ですが、もしかしたら製造場所が同じ(中華?)で、それが故障に繋がっているのかもしれません。 U
最後に。
私が扱ってきた数を10とすると、V1は6、V1Aは1、V1Xは3くらいの比率になり、 U
市場でも圧倒的にV1Aが少ないです。 U
それだけV1Aは希少なので、大切にしてやりたい気持ちも強くなります。 U
もし物が余ってるなら、V1の布エッジウーファーにV1Aのアルニコツィーターを U
組み合わせたスピーカーを作ってみたいです。 U
残った材料で組んだ物には、ヨーロピアン張りの複雑なネットワークをあてがう・・・ U
いつかそんな物を製作してみたいものです。 U
ややこしくてm(_ _)m U
未だ色褪せない音色のV1シリーズ U
大切に残していきたい、そんな名機と言えるスピーカーでした。 U
次回、JBLのオンリーワン、スペシャルカスタムのご紹介です。 U
同時進行で作っていたので、すぐにUPできると思います。お楽しみに♪ U
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victor SX-V1A 1997年 ¥158,000円(ペア) |
●メーカー解説:SX-V1の改良型にあたるスピーカーシステム。
マホガニー無垢材と真鍮ダイキャストによるユニフレームなどの新技術を投入して作られたスピーカーシステム。
低域には14.5cmのウーファーを搭載。
クルトミューラー社製コーンを採用、内磁型アルニコ磁気回路でドライブ。また、新形状のスパイダーサスペンション。
高域には2.5cmソフトドーム型トゥイーターを搭載。
振動板には優れた指向特性をもつ羽二重シルクソフトドームを採用しており、厚さ2.5mmの真鍮ベースプレースを介してバッフルと一体化しています。これをポット型ヨークのアルニコ磁気回路によって強力にドライブしてます。
また、ポールピースには低炭素鋼にアニール処理を施して採用しており、音のねばりを向上しています。さらに、ショートホーン型のフォーカシングダイレクターの採用などによって明確な音像と広がり感のある音場を実現しています。〜中略〜 |
方式 |
2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式 |
使用ユニット |
高域用:2.5cmドーム型 ・低域用:14.5cmコーン型 |
再生周波数帯域 |
55Hz〜30000Hz |
インピーダンス |
4Ω |
出力音圧 |
87dB/W/m |
クロスオーバー周波数 |
4KHz |
外形寸法 |
幅200×高さ343×奥行263mm 約L |
重量 |
8.3kg |
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victor SX-V05 1997年 ¥58,000円(ペア) |
●メーカー解説:ビクター独自のユニフレーム・ユニットを採用した小型スピーカーシステム。
低域にはフルレンジとしての能力を持たせた12cmのコーン型ウーファーを採用。
コーンはクルトミューラー製、軽量で駆動力に優れたエッジワイズボイスコイル。
さらに、新形状のスパイダーサスペンションを振動板、ボイスコイルと一体化し、微少信号まで再生することを可能にしています。
高域には1.9cmハードドーム型トゥイーターを採用。ダイアフラムには厚さ35ミクロンの純アルミドームを採用。
さらに、トゥイーター前面に設けた特殊形状のスーパーソニック・ウェーブディフューザーにより、指向性をより広げています。
ネットワークには、空芯コイル、プレーン箔コンデンサ、無酸素銅ワイヤ、真鍮削り出しターミナルなどを採用。
ユニットをアルミダイキャストフレームに取り付け→そのフレームをキャビネットへ。
エンクロージャーにはチェリー無垢材を採用、楽器設計と同じように響きを美しく再現するため、1変性SBR樹脂で接着。
またリアバッフルには楓合板を採用、キャビネット全体を自然な響きにまとめ上げています。
さらにふくらみのある低音を実現するために、ツイン・ダクト・バスレフ設計としています。〜中略〜 |
方式 |
2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式 |
使用ユニット |
高域用:1.9cmドーム型 ・低域用:12cmコーン型 |
再生周波数帯域 |
70Hz〜50000Hz |
インピーダンス |
6Ω |
出力音圧 |
88dB/W/m |
クロスオーバー周波数 |
4.3KHz |
外形寸法 |
幅144×高さ248×奥行205mm 約L |
重量 |
3kg |
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