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●お次はターミナル
こちらが取り外した純正ターミナル、金属部分の酸化や汚れの付着が目立ちます。これもスピーカーにとっては大事なパーツなので、まずは徹底的に磨き上げます。
磨いた後はケイグ(GOLD)という保護材で入念にふきあげて完成。これだけでもぜんぜん違ってきます。
あとはプラ部分の色抜け(焼け)を修復します。
黒の方もけっこう抜けてくすんでました。 |
●プラ部分は軽くペーパーをかけ、浸透力の高い油性で塗装します。
レストアは音質だけでなく見た目も重要ですので、出来ることを全部やるのが私のモットーです。 |
●そしてネットワークパーツの完成。
いい感じで復活できたと思います。
もちろん イギリス製品に多い接触不良も完全完治しました。小音量でも安定した音質が見込めるはずです。 |
●最後に最大の難関、箱の仕上げにとりかかります。
イギリス製品の多くにはチーク材が使われており、ツキ板が薄めの上、表面には何かが塗られています。
(ワトコオイル?)
だからJBL製品に多いウォールナットと比べますと、傷を落として再塗装一つとっても、多くの手間がかかります。
そしてこちらの箱、オーナー様には申し訳ないのですが、お世辞にも程度が良いとは言えない状態です。
傷や欠けも多く、全体の色ムラも激しいものでした。 |
●底面もキザキザです。 |
●まずは所々にある傷や凹み、欠けを修復します。
色目の近い合板の無垢部分を削り取り、形を合わせて埋め込んで修復します。
角の潰れや歪みも全て修正しました。 |
●次に表面の色ムラやコップ跡の除去。
イギリス製品の箱は、表面にニスのような何かが塗られています。なのでまずはそれを落としていきます。
使うのはホームセンターで買えるラッカーうすめ液。
ホームセンターでは買えない業務用シンナーの方が強力で簡単に落とせますが、それだと強すぎて木材にダメージを与えてしまいます。
だからホームセンーターのこれが、強すぎず弱すぎずで一番具合の良いものです。
←ただしムラを均一にするにはテクニックが必要のなので、安易にまねされても責任取れません。 |
●表面のテカテカとコップ跡のような色むらがある程度落ちたら、丸一日乾燥させます。その後残った塗料を確認しながら、との粉を使い表面を整えます。
まだ色むらや跡が残っているときは、同じ事を繰り返します。
←そしてようやく下地の完成です。
サンダーのような電動工具を使うと木目が薄くなり、見た目も平面的で木の風味がなくなってしまいます。
めちゃくちゃ傷が多いなんて箱でしたら、サンダーでもいいと思いますが、仕上がりはぜんぜん違ってきます。 |
●一週間ほど十分に乾燥させたのち、塗装に入ります。
塗装が乾いたら軽く磨き、様子を見ながら2、3度繰り返します。
そして最後は私の十八番でもある
「 UVコート 」で仕上げます。
前回おこなったこだわりの4310(JBL)、それと同じ約1部艶に配合した塗料で仕上げました。
←いかがでしょう。
写真は上手くないので、実物の方が高級感あります。 |
●ようやく箱も仕上がり、最後に全てのパーツを組み上げていきます。
まずは背面板にネットワークを装着。
ターミナルのネジのみで基盤を取り付けるので、歪みを確認しながら慎重に取り付けていきます。 |
●その背面板を本体に装着します。
普段見えない背面ですが、やはり綺麗だと気分もぜんぜん違いますよね。
ほぼ新品のように復活できたと思います。 |
●こちらは背面用のネジ。
錆付いていたのでステンレスとの交換も考えましたが、サイズが同じでもピッチが微妙に違ったので、純正を使う事にしました。
錆を完全に落としたあと塗装します。
ネジの塗装には染めQを使いました。
染めQは普通の塗料より密着力が強く、ネジの塗装に向いてます。だからといって強くこするとはげますが、一般の塗料よりは安心です。染めQの後、艶消しでコートしました。 |
●フロントバッフルも本体に装着します。
フロント部分はツィーターのプラフレーム以外、ウーファー、バッフル、ネジと全て同じ塗料を使いました。
統一感が高級感につながります。
吸音材の綿はそれ自体問題なかったので、軽く汚れを落として再利用しました。 |
●そして全てのパーツの完成です。
ヨーロッパ製品に多いツィーターコイルへのOIL塗布はもちろん、錆が出ないよう全てをコーティングしました。
ウーファー内部の鉄粉は、コイルとヨークの隙間、ギャップ部にも入り込んでいましたが、全て完全に取り除きました。
これでガサツキは皆無ですし安心して鳴らせます。 |
●そして交換予定だったゴムエッジですが、様々な音質チェックをクリアするほど、しなやかに復活したので、当面はこのまま使っていただこうと思ってます。
DENONとONKYOのゴムがぜんぜん違うよう、ゴムにも成分の違いが色々ありますが、やはり品質の良い物はぜんぜん違いました。
ただしゴムの復活(オリジナルなので教えられません)には何種類もの溶剤を順番に使い、塗り分け作業などで1ヶ月ほどかかってしまうのが難点です。
もちろん交換にはいつでも対応しますので、ご安心ください。 |
●最初にぶちあたった問題のねじ、
+よりも安心できる「 六角 」に変更しました。
ユニットを外す事はそうそうありませんが、いざというときに安心できるはずです。
色もご希望通りの黒で、艶消しコートも施しました。
そしていよいよ最後
ユニットを取り付け |
●祝!完成!
いかがでしょう。
純正はネジだけが銀色なので、見ようによっては違和感を感じて気になるととまりません。
黒に変更することで統一感が増し、それにより不思議と高級感も出てきます。
←こちらの写真、私てきには60点。
黒は普通に撮るとまっ黒になってしまうので、解りやすくするため、けっこう露出を上げて撮りました。
実際の目で見えるような実在感が出せなくて苦労してます。
写真がへたですみません(^^;
5年くらい前のデジカメを使ってるんですが、最新型ならもっと綺麗に写りますかね?
白と黒はいつも四苦八苦しています。 |
●色むらもほぼなくなり、コップ跡も消えて綺麗になりました。
もちろん底も丁寧に仕上げております。 |
●自分で言うのもなんですが、かっこいい!
パッと見新品に見えるほど復活したかと思います。
苦労の分だけ説明が多くなってしましましたが、たぶん低料金でここまでやるのは
日本でも”私だけ ”だと言わせてください(^^; |
●さて、完成したHLCのインプレに入ります。 U
はやる気持ちを抑えさっそくの音出し U
まずは一言 U
「 すごい広がりだなー、自然だなー 」 U
ツィーターの形状といい、ゴムエッジの劣化具合といい U
前回紹介したONKYO SC-2 に何から何までそっくり(^^; U
ONKYOがハーベスを参考にしたかどうかは分かりませんが、 U
あきらかな音質の違いは「 臨場感 」、音の広がり方にありました。 U
そしてHLCの女性ボーカルは、声質がウルトラナチュラル。 U
それはまるで春風のような、ふわふわとした優しい音色が自然に広がってくる感覚です。 U
「 なんと心地のいいことか 」 U
こんな音の出し方をされれば、日本製品はぐうの音も出ません。 U
低域はエッジが固く、合わせてポートがほぼ塞がってた事により密閉のようなフィーリングでしたが、 U
しなやかさを改善させることで、より深く解像度の高い音が出るようになりました。 U
ただしあまり量感を出しすぎると、綺麗な中高域が台無しになるので、10%程度の増加で調整しました。 U
そしてネットワーク、全接点を見直したことも相まり、 U
「 これが本物の美音 」だと言えるほどのスピーカーに変貌を遂げました。
ロジャース、B&W、タンノイ、スペンドールなどなどヨーロピアンスピーカーは数多くありますが、 U
女性ヴォーカルをよく聴かれるのなら、一度「 ハーベス 」をチョイスしてみるのも良いかもしれません。 U
最後に。
ハーベスは過去4台ほど扱ってますが、メンテのみで写真が少なかったり、 U
自分所有という事で後回しにしたりで、B&Wやタンノイ同様HPでは紹介しませんでした。 U
今回は問題の多さに加え、レストアのご依頼という事もあり、隅々まで紹介させていただきました。 U
古い製品にとっては、「 レストア・オーバーホールが効果絶大 」だという事がわかって頂ければ幸いです。 U
もしオーバーホールが必要でしたら、ぜひ私におまかせくださいm(_ _)m
イギリスは日本と同じようメーカーの数が多く、ロジャース、B&W、タンノイなど、どれがいいのか迷ってしまいます。U
ただどれもハイレベルで上級者向けなので、一度はそんなスピーカーとじっくり付き合うのも、また一興かもしれません。U
ハーベス HL コンパクト U
日本製でもないアメリカ製でもないヨーロッパの音が、ここにありました。
次回、また間があいてしまいそうですが、何が出るかはお楽しみにお待ちくださいませ♪ |
HARBETH HL Compact ハーベス HL コンパクト 1987年 1台 118,000円 |
●メーカー解説:アラン・ショーが、ダドリー・ハーウッドからハーベス社を受け継ぎ最初に開発したスピーカーシステム。
低域コーンに新素材TPXを採用した20cmコーン型ウーファーを採用。
HL TypeIVにも採用されたこの素材は、セルフダンピングに優れた軽量の熱可塑性物質で、
加工が困難なのが難点でしたが、これを克服し、コーン紙に採用しています。
ユニット中央には、長い突起状の音響レンズが取り付けられています。
高域にはアルミドームを採用した2.5cmドーム型ユニットを採用。
エンクロージャーには、コンピューター解析を駆使したバスレフ・ポートを設計・採用。
外装は、ナチュラル・チーク材による仕上げとなっています。 |
方式 |
2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式 |
使用ユニット |
高域用:2.5cmドーム型 ・低域用:20cmコーン型 |
再生周波数帯域 |
60Hz〜20000Hz |
インピーダンス |
8Ω |
出力音圧 |
87dB/W/m |
クロスオーバー周波数 |
推定4〜5KHz |
外形寸法 |
幅270×高さ525×奥行290mm 約L |
重量 |
13kg |
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