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●続いて箱の検証に入ります。
内部には吸音材が無く、代わりに小さく切られたフェルトやスポンジが至る所に貼ってあります。
中央の矢印、通常は板状のものでウーファーを支えますが、これは板ではなく背面まで続いてる構造。
まるで「 こたつの足 」が入れられてるかのようです(笑
ここまでやる必要があるのかと思えるほど堅牢な作りは、ある意味日本の特徴かもしれません。

一番右の赤■で囲んだところがポート
●写真でも見えづらいですね。
ライトを使いあれやこれやと確認していると、

←あることに気づきました。

ポート内部に何かが垂れ下がっており
ポートが少しふさがれた状態になってました。
●その垂れ下がったものはこれ(矢印)
ポートを延長するために使われいていたフェルトでした。




中央の棒は
響き棒のようです。
●写真で見てもわかりづらいので絵にしてみました。
ポートの仕切り板が写真の赤い部分で、黒い部分は空洞
その空洞を塞ぐ為にフェルトが使われています。
 ONKYOはポートをスポンジで塞いだり、ポート自体をスポンジ作ったりなど、奇抜な特徴があります。

ただ←のようにフェルトをかぶせているので、下部分がたるんでおり、そのたるみでポートがふさがっている状態でした。
設計者はこうなる事を予想してなかったのでしょうか。
ポートの開口径によっては音質が大きく変わってしまいます。
もう密閉にすれば?と言いたくなりますが、とりあえず修復します。
●なんだかわかりづらいですよね。
実際に見ても何がどうなっているのか理解に苦しみます(笑

写真の赤丸はネットワークで
ご丁寧に3分割されてました。
●そしてこれ、ネットワーク基盤を止めてる
 

これが車のパーツを留めてる爪と同じで
非常にやっかいです。爪はバネのような弾力があるので、その爪を押し込んだ状態のまま基盤を抜かないと外れません。
両手が使えれば問題ありませんが、狭いキャビネットには片手しか入りません。
メーカーでは専用工具があるのか?2、3mmほどで長めの筒状のものがあれば良いですが、手持ちで一番小さいソケットレンチ、3.5mmではスカスカでした。
●ふぅ〜、ようやく外れました。
この爪は90年代以降のONKYO製品に多く使われています。
と言うか
振動に対してこだわってるメーカーがなぜ強固なネジ止めにしないのか?
かたかた揺れるネットワーク基盤では本末転倒ではと、つい思ってしまいます。
●さて、ONKYOのこだわりはネットワークにも表れてます。
 基盤の裏側には配線そのものが使われていたり
配線をそのまま延長して接続するなど、他のメーカーではやらないような事までやってます。
そして配線が多い?
パッと見この線なんだ?なんて余分な線があり、それはアース的と言いますか、マイナス側を強化したものでした。
高級なRCAインタコケーブルでは、たまに見られる構造です。
まさにメーカー製チューンドと言えるほどのネットワークでした。
●ONKYO製品に多く使われいるブロック型形状のコンデンサー。
形は四角ですが、中身は電解コンデンサーと同等品と思われます。
ただ厚めのブチルで覆うなど、一つひとつが丁寧に作られている事が伺えます。
なので余計に爪が残念ですね。
●さて、今回はハイエンド機種ということもあり、
ネットワークもグレードアップをはかります。

まずはコンデンサー
すべてジャンセンのものに交換します。
コンデンサーを銅で巻いてるのでは、目に見えないノイズの影響をシャットダウンするもので、私のこだわりです。
●メーカー製のケーブルもわりと良質なものが使われていますが、オーナー様のご希望によりこちら、ACROTEC製のもに交換します。
太くて固いので取り付け難いですが、ややピンボケ気味の音質にはピッタリで、解像度が上がる事を期待します。
●少しでも解像度を上げるべく
端子も全て金メッキに交換しました。
絶縁対策も完璧に処理します。
●できる限りハンダを使わず、
ハンダが必要なヶ所は銀ハンダを使用しました。
そして細部まで丁寧に仕上げた
チューンドネットワークの完成です。

ケーブルが固いので取り付けづらそうですが、爪+αでがっちり装着します。
●そして全てのパーツが完成。
ツィーターは分解、サビ取り、コーティング、ボビンのOIL処理。
ウーファーは結局エッジの交換をおこないました。
 キャビネットはツキ板なので、無垢板に見えるようほんのりとした艶が出るよう磨きました。

●ゴムエッジはやや固く動きが鈍い状態でしたが、亀裂が入っていないので、交換する前にとりあえず復活剤を塗ってみましたがダメでした。
劣化の度合いは見た目で判断できず、やってみないとわかりません。
ONKYO製品はゴムエッジが多く、どれも微妙なサイズでピッタリ合うものが中々ありません。
先日交換したモニター500もそうですが、コーンのサイズが微妙すぎるんです。
他の方はウレタンや布エッジに換えてるようですが、このくらいの機種になるとやはり
オリジナルに復活させてやりたいのが心情です。

近い物を何種か購入してみましたがどれもダメ・・・。
自作も考えましたが、近いサイズのゴムエッジを加工してなんとか装着しました。
そしてウレタンや布とは違い、動作そのものがゴムなので
 「
限りなくオリジナル 」に近い音質のはずです。

 とにかく本来の音、元々の音を出してやりたくて
手間のかかる作業を永延とやっておりました。

←完璧です。
●仕上がった箱にネットワークを装着、
べとべとを処理したネジでユニットを取り付け
祝!完成!
●背面、バイワイヤ仕様
●ユニットのO/H
ネットワークをフルチューン、基盤もしっかり留めるなど
きっと新品以上に復活したと思います。
●はやる気持ちが抑えられず、エージングもせずにさっそくの音出し
まずは一言 

 「 やばいなこの解像度、激リアルだっ 」

 メンテナンス前、最初に音を出した時は何かベールに包まれてるような寝ぼけ気味でしたが、 
フルチューンをおこなったSC-2、磨かれ抜かれたクリアーな質感はまるで 
 「
女性ボーカルがそこにいる 」と思えるほど、解像度の高い音へと生まれ変わりました。

 エッジ交換とポートの補修により、低域のフィーリングが最初とは比べ物にならないくらい良くなりました。 
日本の名機、ビクターSX-V1やDENONのSC-E757以上の存在と言えるかもしれません。 
私も欲しいくらいです。 

最後に。
 今回のSC-2、その激変ぶりには驚くほどで、私の中の日本製ランキングが換わるほどの衝撃でした。 
モニター500で散々苦労しましたが、たぶんウレタンや布エッジではこのフィーリングは出ないはずです。 

 それとSC-2をメンテナンスしてみて、もう一つ感じた印象があります。 
それはこのSC-2が発売された以降のONKYO製品は、SC-2の構造や音質をベースとしており、 
102や202に代表されるLTDモデルなどに、この血統、音質を受け継がせてるような気がしました。 

 
それこそがONKYOの原点、Scepterシリーズなのかもしれません。

きっとオーナー様も「 同じスピーカーなのか!? 」と驚くことと思います。

 日本でしか作れない音「
ONKYO Scepter SC-2
大事に後世に残してやりたい、そんな気にさせるスピーカーでした。 

次回、続けて弟分のSC-1といきたいところですが、残念ながら未だ入手できずにおります。
 自作機種も何台か残っているので、何が出るかは楽しみにお待ちください♪
ONKYO Scepter SC-2 1992年 1台 125,000円
メーカー解説:
方式 2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式
使用ユニット 高域用:2.5cmドーム型 ・低域用:18cmコーン型
再生周波数帯域 30Hz〜45000Hz
インピーダンス
出力音圧 88dB/W/m
クロスオーバー周波数 3KHz
外形寸法 幅254×高さ470×奥行334mm 約L
重量 18kg
★エッジについて

 例えばカチカチに固まったエッジが0で、完全に柔らかい状態を100とするなら 
ダイヤトーンのカチカチエッジは約0〜20 
ZXシリーズのねっちょりした感じでも20〜40くらい 
JBLのランサロイ(ゴム)は0 
2213などの30cmウーファーは程度にもよるが40〜80 

私の基準で完全に動作するには最低でも70以上が必要。 
今回のSC-2ゴムエッジは50くらいの状態でした。 
そのままでも音は出ますが残念な音です。 

とまぁそんな感じですが、ダイヤトーンのカチカチは柔らかくすれば済むけど 
今回のようなゴムエッジはそうはいきませんので、ある意味ダイヤより大変です。 
外国製も含め10年以上のゴムはほとんどがXなので、本来の音が聴きたいなら一度ご相談くださいませ。 
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