●2016.4.12
 スピーカーメンテナンス&チューニングも今回からパート11に突入します。
時が経つにつれ、ますます往年の名機が入手困難になってますが、
今回ご紹介する機種もその一つ、かなりのレア度を誇る
ONKYOScepter SC-2 です。
●1968年、ONKYOは音を聴くことを最大限楽しむために、こだわりを詰め込んだScepterシリーズが誕生。
その後シリーズは差別化をはかられながら進化していきました。
 1990年代初頭、オーディオ黄金期の熱も少しずつ冷めていき、本物だけが生き残る時代へと突入します。
そんな最中に生まれたのが今回紹介する
 「 Scepter(セプター) SC-2(以下SC-2) 」

 スピーカーの研究・開発・生産、蓄積したノウハウを基に、「真にいい音で音楽を楽しみたい」というオンキョーのコンセプトに基づいたクエストシリーズのスピーカーシステム。
というコンセプトの元に生まれました。

 大型3wayが¥59,800〜¥120,000円ほどで買える時代、小型2wayで1台¥125,000円と高額な価格設定な上、日本製という事もあり、欲しくても手が出しずらかったのではと思われます。
 同じ頃、売れに売れまくったダイヤトーンDS-500などは、20年以上経った今でも中古があふれていますが、このSC-2は皆無、ヤフオクでも1年1台見つかるか見つからないかというほどの状態です。
 もしかしたら存在自体すら知らない人も多いと思われます。今この時、このタイミングで現れるのは、何か理由があるのかもしれません。
いったいどんな音色なのか!?
そしてどれだけのポテンシャルを秘めてるのか!?
想像すらできません。

●さて、元箱から開封後、まず目に付いたのがこのFバッフル。
パッと見黒に見えるような紫色は品のいい洋服、コーデュロイのような素材です。
革やコルクはたまにありますが布は珍しいですね。
ただ汚れが付かないようと神経を使いそうですが。
●写真だとサイズ感が伝わりにくいと思い
私の大好きなスピーカー、JBL4301と並べてみました。
(メンテ中のものですが(^^;

高さはほぼ同じ500mmほどですが、幅が250mmと
少し細い分、並べて見るとけっこうスリムに感じます。
●奥行きは逆に3cmほどSC-2の方が長い330mm
容量は4301に比べ7、8割程度と思われますが、内部は凝りに凝った作りのようで、たぶん半分くらいではないかという感じです。
●お次はこちら。右はパイオニアの S-A4-LR という機種で、
こちらもわりとレアなスピーカーです。
 サイズも近く、ウーファーの下にある角型フロントポートが同じなので並べてみました。
写真だとSC-2のポートが見えませんよね(^^;
のちほど見える写真が出てきます。

90年代以降のONKYO製品は、このようなフロント角型ポートが増えていきました。
特徴はポート臭さ、バスレフ臭さが出ないと言ったところでしょうか。メーカーの味を出すための差別化というはからいもあるようです。
●箱から出してすぐ↑ウーファーのエッジを確認しました。
素材はゴムで白ぼけした状態、やや硬めに感じましたが、 

コーンはストロークするのでとりあえずそのまま音出し 
まずは一言
 「 あっ、ONKYOの音だ 」

 ONKYO製品を所有してる方ならわかるこの質感は、まぎれもないONKYOの音でした。 
ONKYOと言えばあまりドスを効かせない密閉に近いようなフィーリングで 
中域・ボーカルの声質をナチュラルにしてやるぞ!という意欲が感じられるメーカーです。 
こだわりも強く、独特の音色が癖と感じることもしばしあります。 
私の好きなモニター500しかり、このSC-2もやはりメーカー色を濃く受け継いると感じる音色でした。 

 高域はヨーロピアン風のやや控えめな金属質。 
中域もそれに追随したクリアー質で、ボーカルの声質や輪郭はわりとシャープ。 
ギスギスしたような不快感は無く、サ行の強い女性ボーカルでもナチュラルに聴くことができます。 
ただ柔らかめのセッティングを出すためにウーファーからの中域を多くしてるせいか、 
煮詰めすぎたせいか?クリアーだけど曇りも感じる、そんなちぐはぐ感が多少あります。 
 低域は中域のボーカルフィールをじゃましないよう控えめな性格で、 
ボーボー感の少ない密閉のようなタイトな傾向です。 

 J-POPをパッと聴いた感じでは特別不満はありませんが、クラシック系ですと少しふんづまった感が 
出てるのと、もう少し中低域の厚み、重厚感が欲しいと感じました。 
低域がやや不自然に感じたのは、もしかしたらエッジの劣化が原因かもしれません。 

まずはユニットのO/H(オーバーホール)をおこない、動作を完璧にしてから再度検証する必要がありあそうです。 
そんなところで、さっそく内部検証にいってみましょう。 
●まずはこちら
これはメーカーが発表してるカットモデルですが、
パッと見何がどうなっているのかわかりづらいほど凝った作りが伺えます。
メーカーの強い意気込みを感じます。
●さっそく実物を分解していきます。
まずはツィーターから。
四つのネジを外しても、やや固着気味でスムーズには外れません。
そしてこのバッフルなので、傷つけぬよう慎重な作業になりました。
ケーブルは装着が困難なほど短い、ギリギリなのもONKYOの特徴です。
●次にウーファーを外します。
ご覧のよう巨大で重量があるので、ツィーターの穴か手を突っ込み、ウーファーを持ち上げて外します。

スピーカーを起こした状態のままネジを外しても、棒があるので外れません。逆にバッフルの布を傷つける恐れもあるので、慎重な作業が要求されました。
こういう凝ったスピーカーは、背面板を外せるようにしてくれるとありがたいんですけどね。
●こちらはやや問題のあったネジ。ツィーター、ウーファー共に共通のボルト&ナットが使われてます。
矢印の部分、少しネジ山が埋まってるのがわかるでしょうか。
これは緩みを防止するためのネジロック剤が付けられていた、もしくは箱とユニットの間に挟むガスケットの粘着剤が付着してしまった、そんなケースが考えられます。
そしてネジを外すさい何本かが固くて回りにくかったので、
 
超冷や汗ものでした。
この粘着のせいでネジが回らずナットが空回りする・・・なんて事になったら大変です。
OILを垂らしながら、少しずつ回していきました。
●こちらはウーファー。
ウーファーから出る振動を吸収させる為に、マグネットの後ろに大きな鉛が装着してあります。
よくデットマスなんて言いますよね。
メーカーではこれをアコースティック・スタビライザーと呼んでおり、ONKYO製品では多い構造でもあります。
重いです。
そしてこの棒のせいで作業がやりづらいです。
●重量を支えるためのフレームは鉄で頑丈に作られています。これでスチールのプレスフレームだったら変形しそうですよね
フレームは強度や振動、音質まで考慮したのか凝ったデザインです。
●正面。メーカーがバイオクロスコーンと呼んでいるコーン、簡単に言うと紙を塗料でコーティングした、そんな素材感です。
硬めのプラスチックとは違い柔らかいので、エッジを剥がすさいには折れないよう注意が必要です。
中央部、なにやら不思議な構造です。
写真でわかり難い構造は、実物を見ても???です。
中央にフェイズプラグらしきものがありますが、その周りから飛び出ているボビン?通常は内部に納まってるボビンを外側まで伸ばしたような構造です。茶色の素材感もそのままですね。
センターキャップは柔軟性のある網です。

そしてエッジ。写真でもわかるよう白く劣化しています。
ひび割れの無いこのくらいの状態は非常に微妙で、復活できる場合とできない場合、50/50です。
●ダンパーは一般的な構造ですが、薄めで柔らかく動きがスムーズ。
このダンパーの動きからすると、エッジで動きが阻害されているという事がわかります。

丁寧に作られたフレームは焼付け塗装とフェルトでしっかりカバーされており、錆はまったく出ていませんでした。
●お次はツィーター。
まるでヨーロッパ製品かと思えるような大きなフレームです。
JBLのLE26(右)と並べてみると、その大きさが伺えますね。

マグネットはほぼ同じくらいサイズですが、ONKYOはフレーム全体が鉄なので、持つと少しずっしりきます。
●背面。このガムテープ・・・には参ります。
ガムテープやブチルやら、やたらべたべた貼ってるのもONKYO製品に多い特徴です。
メーカーでの故障修理はツィーターそのものを交換するので、このべたべたを剥がす必要はありません。
何十年後かにメンテナンスする者がいるなどとは、きっと想像すらしなかったのでしょう。
網はわりと簡単に外れました。
ダイヤフラムはぺこぺこする素材なので、誤って凹ましたり折れたりしないよう注意が必要です。
クリーニングしてOILを塗って戻します。

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