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●ネットワークが外れました!

構造は4311Bまでと同じシンプルな物ですが、
アルニコユニットのせいか、コンデンサーの容量がだいぶ違いました。
●そしてこのアッテネーターなんと日本製でした。

 カバーにはツメが無くはめごろしの構造です。
より精度の高いものが作れるという、日本のプライドでしょうか
凄いけど中々分解できません(TT)
●少しずつこじ開けてようやく外せました(^^;

 このタイプのアッテネーターは表面の円接点に目がいきがちですが、実は左の矢印部の金具と、その内部接点が一番の弱点なんです。
O/Hするさいにはまずそこを見直し、動かないよう固定してやるのがベストです。
 ダイヤルも固めな動作なので、
爪を調整しグリスを塗りなおします。
●ダイヤルがスムーズに回るようになると、あることに気づきました。それは極わずかだが、カチッカチッといったノッチのような感触が手に伝わります。
これが日本の技術でしょうか、凄いです。
 コンデンサーの容量も問題なく、テストでも十分な性能を発揮しました。

 今回は「
オリジナル 」仕上げが目標であり、ネットワークもオリジナルコンディションを維持させます。
 パーツ交換は後からいくらでもできるので
とにかく”
オリジナル ”にこだわって仕上げていきました。
●これはJBLではおなじみのターミナル。
外装がまっ黒で汚れが酷く、
矢印部、接点も錆びついてボロボロです。
●ターミナルは分解整備、表面は磨いてコーティング。ケーブルをつなぐ端子は金メッキ、厚金物に交換しました。
 そしてこのターミナルで特に重要なのがネジ。
固定と同時に電流を伝達させる大事な役目を担ってます。
 ここをしっかり仕上げるだけでもクリアになります。
写真にある銅ネジを使いたかったのですが、ピッチが合わず断念、同じピッチの新品に交換しました。
銅の棒で自作しようとも考えましたが、引き続きネジを探すことにします。
 オリジナル仕上げだからこそ、細かい部分が重要であり、音質を作りあげる大事な要素になってます。
●そしてターミナルはこちらを使いました。
←黒-側のボディがなんと銅です。

 私も磨いてる途中に、ん?何だか色が違うな?
なんて感じで気づきました。
 今まで100個以上はこのターミナルを見てきましたが、
こんなのは初めてでびっくりしました。
今だ同じものは見つかっていません。
 だから大切に取っておいたのですが、希少な4310にこそふさわしいと思い、使う事にしました。
●そして全ユニットのO/Hオーバーホールが完成。
●MID・スコーカーとウーファーは超リコーンにより見た目も綺麗で音質もバッチリです。
 ツィーターはせっせと染み抜きし薄めに再塗装
だいぶ綺麗に復活したと思います。

 テスターのみで計る数値は車で言うカタログ上の燃費と同じ。
だから他の2213やLE5、LE25などと音質を比較しながら作業をおこないました。
 だからこそスピーカーの命であるユニットが完璧に仕上がったと言えます。
●背面もきちんと処理してます。
スコーカーとウーファーのフレームは塗装してませんが、防錆用のコーティングはおこないました。
完璧な物に仕上げるには、徹底的に手を入れてやることが基本です。
●いよいよ大詰め、キャビネットにとりかかります。
 今回は完全な新品仕上げということで、
まずは塗装を全て落とす事から始めました。
←そしてこれと下の写真が完全に塗装を落とした状態です。

 矢印部、左端にある4301(仕上げ前)は比較用に撮りました。
4310は元々、写真にある4301よりもさらまっ黒でムラだらけ、小汚くて写すのも躊躇するほどでした(^^;
そんな箱がここまで復活したというわけです。

 実は今回作業を始める前に、ベテランの大工さんと修理を専門におこなってる宮大工さんに会う機会があったので、色々とレクチャーを受けました。
 そして薄いツキ板、木目にダメージを与えないで塗装を落とすには「
との粉 」が良いと教わりました。
え!?との粉で塗装を落とす?最初は???でしたが、その結果がこんな具合になりました。

 メリットはツキ板、木目にダメージを与えないという事で、機械・サンダーを使った物とはぜんぜん違う仕上がりです。
プロの職人いわく、ツキ板にサンダーは使わないそうです。
確かに木目が薄くなり、再塗装しても木目のキレが無くなりますよね。特にヨーロッパ製品では歴然です。
 ムラや傷が酷い箱はガーとサンダーをかけてましたが、これからは控えようと思いました。地道に手作業が一番ですね。
 ただ1面仕上げるだけでも心が折れるほど大変です。
そして腕が上がらなくなりました(TT)
●続いてフロントバッフルと背面を仕上げます。
4310は4311と板の組み方が違うのと
所々にピンが使われており、その形跡が残ってます。

 フロントバッフルにパテの使用は控えたいところですが、綺麗に見えるよう最低限均していきます。
●下地が整ったら塗装に入ります。
黒い部分、艶消しだとマットすぎる
半艶だとテカテカしすぎる
ということでこだわりの2部艶で仕上げてます。
●背面も同じように仕上げます。
●苦労して元の塗装を完全に落とした木目部分。
なんだか塗装するのがもったいない気さえするほどです。
なので着色はせず、クリア(OIL)で仕上げました。

 本来ある木目の色味、違いや差がハッキリ出ており、
それが「
」となって表現できました。

 これは完全に塗装を落としたからなせる技であり、塗料が残っているとムラになったり、木目が平面的になったりします。
 40年前にアメリカの職人が仕上げたウォールナットを私が再仕上げ、実物を見せられないのが残念です。
●最後は日光で変色しにくくなるようUVコートで仕上げます。ウレタンやアクリルのクリアとは違い、落とそうと思えばペーパーで簡単に落とせます。だからほとんどのキャビネットでおこなってます。ただこの塗料で艶消しにすると、普通の塗料よりも白っぽくなってしまうので、いつも2、3部艶で仕上げているというわけなんです。
今回はオーナー様のご希望が艶消しなので、白くならないよう色々と調合を繰り返し、
 「
0.5部艶仕上げ
というこだわりの艶消し、0.5部艶仕上げが完成しました!
●言われなければほぼ艶消しですが、実際の見た目はだいぶ違います。
とにかく喜んでいただきたくて、こだわりまくってます。
そのせいで時間ばかりかかってしまいますが(^^;

 私の作品を購入して頂くお客様の多くは、名前の通った業者様からの購入も多いです。
だからたまに比べられる事もありますが
こちらの方が「
綺麗だね」なんてお褒め頂く事もよくあります。
それが自信となり、次への活力源になっております。
●さてさて、ユニット、キャビネットが仕上がり最後の大詰め、細かいパーツを仕上げていきます。

 プレートやシールなどはこんな風にイラストレーターで作ってます。
←簡単な物すぎてお恥ずかしいですが、アニメや3Dなんかもできます。
ただたまにしか使わないプリンターがいつも不調で困りものです(^^;
●問題?のツマミ
 このツマミはオールアルミ製で重量もそこそこあり、しっかりとした作りです。
 肝心の正面はどうなっていたのか分かりませんでしたが、うっすら残っていた跡から推測しプレートを作りました。
たぶん元は黒に白(銀)棒だったと思われます。
 それでもいいのですが、何かパッとしなかったので反転してみました。白だとプレートの色に結構合います。
それよりもっと高級感が出るようツキ板に印刷してみました。手持ちで一番薄色のチェリーです。
ここは気軽に変更できるので、何種類か作ってみました。
●こちらはオリジナルのプレート
金属なので一度凸凹の跡を付けてしまうと
元に戻す、フラットにするのが用意ではありません。
地道にこすって均します。

 ある程度直ったら表面の汚れを落とし、薄くなった部分を再塗装、最後にUVコートで仕上げます。
だいぶ綺麗にはなりましたが、新品と言えるレベルではありません。
代用品で作れば新品に近いものができますが、若干風味が違ってしまいます。プレートは新品が欲しいところですね。
●こちらはネジ。
CRCに2、3日漬け込んだあとブラシで磨き
徹底して錆を落とします。
 するとかなり綺麗に復活してくれます。
これもオリジナルの為なので、努力を惜しみません。
●完成したキャビネットにネットワークを取り付け、
新しい吸音材をセット、大きい順でユニットを取り付けていきます。
●最後にプレートを装着。
JBLロゴプレートは今後外す事、ネットワークチューンの事を考慮し、できるだけ粘着を弱くしました。

 ツィーターのプレートはオリジナルでもいいのですが、
音質を優先しフェルトのプレートに変更しました。
ただし粘着を弱くしたので、交換も容易です。

そして・・・
 どれくらいの月日が経ったのか
  ようやく、ようやく

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    ・・・ 
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