●2006年2月にHPを開設したヴァリアスクラフトも、今年2016年で10周年を迎えました! U
そしてメーカー製スピーカーのメンテ&チューンでは、記念すべき200回目に突入! U
そんな栄えある栄光を手にしたのは、超希少な「
JBL 4310 」です。
記念モデルという事もあり、いつも以上に気合が入り U
説明文が多すぎかもしれませんが、どうぞご覧くださいませ♪
 U
●今回は希少な4310をレストアします。
左は私の元に入庫した状態で、
程度は上中下の下、5段階評価では2と言ったところでしょうか。
20年以上倉庫に放置してあったそうで、焼けや汚れは酷いが、動作に問題なくヤニ汚れも少ない、そして箱に大きな傷が無いところが幸いでしょうか。
ただしユニット、箱、ネットワークや細かいパーツなど全てを完璧に仕上げるには、かなりモチベーションを維持する必要がありそうです。
気力体力勝負になりそうですね。
●まずは全てを分解します。
今回4310をレストアするにあたり
オリジナル仕上・新品復活 」という目標を掲げました。
だから分解一つとっても、外したパーツを再利用するので慎重に進める必要があります。
←そしていきなり難関にぶつかったこの鉄プレート。
これはJBLロゴプレートと同じで、力まかせに取ろうとするとシワが入り、復元が困難になります。
熱で粘着を溶かせば剥がれやすくなりますが、熱をかけすぎるとユニットが損傷する恐れもあります。
代用品があれば気にせずに取りますが、そうもいかないので、いきなり慎重な作業が要求されました。
●そして数時間後、ようやくプレートが剥がれました。
再利用しないなら5分程なんですけどね。
プレートをめくると6つのネジが出てきました。
外側はユニット自体を外すネジで、内側はマグネットを外すネジです。
←外してひっくり返すとご覧のよう、カバーが錆だらけでした。

ネットでLE20と検索したりヤフオクを見てみると、LE20は錆だらけのものが多いですね。
素材によるところが大きそうですが、カバーの表面だけではなく、内部まで進行してそうで怖いです。
●何気なく持ち上げたりすると、手が錆だらけになってしまう。それほどの量でした。
逆にネームプレートが超綺麗。
素材はアルミかな。さらに印刷してあるのでぜんぜん錆が出ていません。これだけ差があるのも不気味です(笑

細部を観察していくと、ケーブルの付け根が微妙です。
ケーブル→ ピン端子→ 絶縁ワッシャー→ 本体
という構成で、動かさなければショートする事はありません。
ただ微妙すぎるので、絶縁対策を強化したほうが良さそうです。
●フレームを外します。
左、コーンはフレームに直接接着されている
ダイレクトラジエーターという技法。

右はマグネットとヨーク(真ん中の黒いもの)で、
表面とその隙間(コイルが入る所、ギャップ)に錆が出ています。
●ガスケット(紙)を剥がすとフレームとマグネットの境界線が見えます。
 アルミ意外の素材には全て錆が出ていたので、とにかく落として落として落としまくります。
その後再発防止のための錆止め剤を塗り、さらにその上から塗装して完成となります。
コイルが入る隙間(ギャップ)も重要で、たとえ接触してなくても音に影響が出る場合もあるので、入念に磨き落とします。
 ウーファーでのコイル接触はビビリやカサカサしてるなんて事がありますが、ツィーターではビビリやノイズが出る、なんて事があり、ここ(ギャップ)とコイルの腐食による問題も多いです。
●コーンは強度に問題がなかったので、できる限り汚れを落としてから、薄めに再塗装します。
LE20のエッジは繊細なので、慎重な作業が要求されます。
右は外したばかりのプレート
あまり熱を入れられなかったので凸凹がついてしまいました。
凸凹は平らな面に押し付け、ゴリゴリと均して修正します。
●お次はMID・スコーカー。
パッキンが箱に固着してましたが、わりとスムーズに外れました。ネジ穴をばかにしないよう注意します。
左が外したスコーカーで型番が2105。
右は4311から外したLE5-2で後期物。

 2105は珍しいので並べてみました。
形・外装はほぼ同じのようです。
フレームの材質やコーンも同じと思われます。
音質は単品で聞き比べても分からないほどで、ほぼ同じでした。ただ右のLE5は後期型ということもあり、かなり綺麗です。
●O/Hオーバーホールに入ります。
2105のコーンはこのようなシミが出てる事が多く、エッジに塗るダンプ剤やコーンの素材によるところが大きいそうです。
 私の場合、まずはフレームから磨きます。
ペーパーをガーガーかけてトリマーで仕上げれば簡単ですが、それだとヘアラインが取れてツルツルになってしまいます。専門家はヘアラインを再度作れるようですが、このサイズだと厳しいようです。だからヘアラインが消えぬよう手作業でこつこつやるしかありません。
途中酸を使いながら磨いていきます。
シミだらけのコーンは一応しみ抜きしてみましたが、汚れが頑固すぎて綺麗になりませんでした。
●そこでコーンを交換することにします。
最近はリコーンキットが多く出回ってますが、
純正とはハーマン(JBL)から取り寄せたもので、メキシコから取り寄せたものもほぼ同じ物が多いようです。
こちらはハーマンから取り寄せました。

通常はこれらパーツを組み合わせて使うのですが、
●希少な 4310 ですので、どうしても
 「
オリジナル 」を維持したい気持ちが強い。
だから
 「
コーンのみを交換 」する作業にしました。

←右端にあるオリジナルコイル
 
エッジワイズ巻きボイスコイルを使うので
 変形させて壊さぬよう、慎重に分解していきます。


左、中央の黒いヨークの回りに錆が出ていました。
右のフレームは取り除いた後です。
●左がキットに付属していたコイルで右がオリジナル。
銅線の素材は同じに見えますが、ルーペで見るとやや形が違いました。
それとボビン(わっか)の素材や高さが微妙に違います。
 素材や重さによる違いはもちろんですが、コイルの高さも重要で、コイルとヨーク、マグネットが干渉する位置の違いでも音質が変わってしまいます。
 オリジナルのボビンは紙を固めた物でわりと硬めでしたが、
紙なので溶剤も使えず、ガチガチに固まった接着剤を剥がすのに骨が折れました。
●そしてどのくらい経ったか忘れるほどの時間が過ぎ
ようやくスコーカーの「
超リコーン 」が完成しました。
 ダンパー、コーン、エッジの消耗品のみ交換で、
コイルはオリジナルを使用。
高さもバッチリで音質もオリジナルと言えるでしょう。
 世の中に修理業者さんは沢山ありますが、
私以外このような作業はしないだろうということと、
オリジナルを維持した形態なので、
リコーンではなく超リコーンと名づけました。

とにかく困難極まる作業でしたが、完璧に復活しました。
●ふぅ〜、最後はウーファーです。
これも見ただけでタメ息が出そうですね(^^;
●ネジは現行機種と同じ4点留め、パッキンが箱に固着しており中々外れませんでしたが、少しずつ浮かせて外しました。
そしてウーファーをひっくり返してみると

 「
2212(アルニコ) 」の文字が。

123A-1が付いた4310後期?もあるようですが、123A-1はホームユース、2212はプロユース志向というイメージなので、2212が見えたときは思わず「 ラッキー 」と思ってしまいました。
 それと123Aや2213は多少見かけますが、2212は中々見かけない希少なユニットでもあります。
●右は4311の中期から外した2213(アルニコ)です。
こうして比べるとフレームの違いが一目瞭然ですね。
 4つ足は2213より細いですが高さが設けてあり、強度的にも問題なさそうです。コーンの排圧がより抜けそうで、低域に有利な感じが伺えます。
 JBLのアルニコユニットは、ネジに赤い封印がほどこされてるのが特徴ですが、ウーファーはネジが大きいのでそのまま回せます。
手を入れたか入れないかがすぐにわかりますが、日本製のよう分解による破損もしにくい構造なので、それほど神経質になる必要はなさそうです。
それよりもクリアな音がしっかり出てるかが重要です。
さっそくコーンをクリーニングしてみました。
最初よりはだいぶ綺麗になりましたが、それでもまだまだですね。
私は極力塗装しない方向で仕上げているので、このレベルだとぜんぜんダメです。
●そこでスコーカーと同じよう「 コーンだけを交換 」する
 「
超リコーン 」をすることに。
 わりと程度の良い4311Bからの移植です。
年代的に近い4311(アルニコ)からの移植が理想ですが、
4311からではちょっともったいないので(^^;
←程度の良い4311Bを探しました。

 程度が良いと言っても30年以上前の物ですから、4312DやEなんかと比べるとそれなりに劣化も感じますが、
そこは技術でカバーします。
エッジも4311Bのもので、ダンピングを復活させました。
●さて、ユニットのO/Hが終わり、次は箱を仕上げます。
通常は時間のかかる箱から作業を始めるのですが、
今回は希少な4310。
とにかくユニットを復活できるか心配だったので、先にユニットから始めました。
 キャビネット内部はパッと見現行と同じで、初代から引き継がれている事が伺えます。組み方は多少違うようです。
その他細かい違いを上げると、まずポートの長さ、そしてMID・スコーカーのバックキャビティのサイズが4311よりもだいぶ大きく作られています。箱の容量が大きくなると、スコーカーからはより厚い音が出るようになります。
ではなぜ小さくしていったのか?
話すと長くなりますが、それは「
」の問題でしょう。
●癖の話はおいときまして、プレートを剥がしました。
ここは熱を入れられるので、比較的楽に剥がせます。
←そしてアッテネータのつまみ。中央は汚れ?錆?色落ち?
実物を見てもよくわからないほどです。
 他の4310で使われているツマミは細い物ですが、こちらは逆に径が太い物が付いていました。
後付?かとも思いましたが、この太さに箱穴が合わせられていることや、外した痕跡がないので、たぶんオリジナルと思われます。2212もそう、初期型でしょうか?
 色々と謎の多いJBLですが、実はこのツマミ
なんと!
アルミ製でした。
しかも分厚くて超重厚な作りです。当たりですかね(笑
●さらに分解は続きます。
プレートを外し出てきたネジを外す、そしてターミナルを外せば



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