●次はユニットに入ります。
こちらはツィーター。

ロジャースやハーベスなど、ヨーロピアンモデルの特徴そのままのツィーターですね。
優しくマイルドで癖が無い、とても心地よい音色です。
●この白いのはサビ。
手で触ったくらいでは落ちなので、ペーパーやブラシで丹念に落とします。

古い密閉はサビが出てるものがほとんどですが、これは
ぜんぜんマシなほうですね。
内部のコイルやヨークはたぶん大丈夫でしょう。
一番やばいのは茶色や緑のサビ。
茶色や緑は完全に腐食・劣化した証で、根こそぎ取らないと再発してきます。

 これオーナー様には端子仕様にして欲しいと言われてます。箱の開口部とフレームのクリアランスを考えると、装着が悩みどころです。
●お次はウーファー。
パッと見小さめのセンターキャップが飛び込んできました。
おにぎり型のフレームも特徴的ですね。
コーンはヨーロピアンモデルにありがちなプラコーンでこだわりの素材、
ただ失礼な言い方ですが、見た目や手触りは普通のプラです。
ロジャースに代表されるイギリス製の多くはこんなコーンですが、
この音をだすには、かかせない素材のような気もします。
とにかく見た目以上に良いユニットです。
●背面。
マグネットは大きくも小さくもない普通サイズ。
ただツィーター同様にサビが出ています。
程度は悪く無いのでたぶん大丈夫だと思うが、一応コイルやヨークもチェックします。
●矢印のリード線、途中が接着してありますよね。
これはコーンが動くさい、コーンとリード線の接触を防ぐものなんです。。
音楽に混じってカサッ、カサッてする微妙な音なんだ?
なんて事が極まれにありましたが、リード線がコーンに接触したことが原因でした。
万が一と言えるほどですが、きちんと対策してある点は
日本的に言う「
粋な仕事 」ですね。
さすがです。
●ユニットを分解します。

左写真はツィーターのドーム部分。
何か物が当たっていたような癖が付いてます。

だいたいは熱と圧縮で直るのですが、これぜんぜん直りません(TT)
最初はある程度綺麗になるのだが、2、3日経つと元に戻ってくる。くぅー
ONKYOやDENONのドームと比べると、非常に薄くて柔らかい素材です。
もう固めてやろうか!なんて思ってしまうほどだが、オリジナル音質を保ちたいので矯正を続けていきました。
●ツィーター、ウーファー共予想通り、ヨーク内は綺麗でサビは出てませんでした。
一安心です。
今後サビが出ないよう、一度OILを浸し洗い流します。

コイルやフレームはネジ以外にしっかり接着されているので、外すときは壊さぬよう慎重な作業が必要になります。
ダイヤトーンまではいきませんが、丁寧に作ってる感はすぐに感じられるほどでした。
作りも設計も組み立ても、とても良いユニットです。
●全体をクリーニングしたあと、マグネットがずれないようしっかり接着補強します。
最後にサビ止め剤をまんべんなく塗り
ユニットのオーバーホールの完成です。

バスレフなら30年は大丈夫と言いたくなりますが、密閉なので10年にしときます。
機会があれば、10年後にまたメンテナンスしたいです。
●箱に入ります。
外装は傷や欠けを補修、全体をサンディングし再塗装。
底面も綺麗に磨き、塗装しました。

ていうかこれ、ツキ板が薄くて塗装が乗らず、色合わせなどなど、めちゃくちゃ大変でした。

やりながら昔の記憶が戻ってきて、
「 あっそうだ、ヨーロピアンはツキ板が・・・ 」
と思ったときは時すでに遅し。
アメリカ製の大雑把で大胆な作りとは違い、ヨーロピアンは緻密に作られているので、補修も大変です。
やる前にしっかりとした計画が必要で、材料を選ぶ箱でした。
●時間がだいぶかかりましたが、箱もだいぶ綺麗になったと思います。

ネットワークは点検後、再整備。
純正ケーブルはとても貧弱な物が付いていたので、同年代の一回り太いケーブルに変えました。
コネクター回りは大変でしたが、機能はそのまま使用してます。
これでよりストレートに、
より高解像度を堪能できるはずです。
●ツィータードームの癖が完璧に直らないのが心残りですが(オーナー様すみません)、ウーファー、ツィーター共に動作は完璧です。
ツィーターは端子仕様に変更しました。
●箱に全てのパーツを取り付け、
最後にユニットを装着し
●祝!完成!
いかがでしょう。

サランネットは洗濯しました。
少し色が焼けてるので交換しようかどうか悩みましたが、とりあえずオリジナルのままにしました。
●天板によくあるコップ跡も、ご覧のよう綺麗になりました。
●傷を隠すため、色が若干濃くなりましたが、
かなり綺麗に仕上がったと思います。
で、さっそくエージング無しでいきなりの音出し
まずは一言
 「 素晴らしい!言うこと無しですね

 癖が無く、見事に調和の取れたバランスの良い音が
いきなり出てきた日には、もうレビューのしようがありませんね。
なんだろ、この心地良さは。

 高域は程よいサラサラ感があり、中域はボーカルが程よく前に出る。
低域はぶよぶよしておらず、それでいて低いところもしっかり出ており
物足りなさはまったくない高解像度。

 全体音はとにかく柔らかくバランスが良いの一言。
聴いてて心地よくなるほどで、色々なソースをとっかえひっかえかけたくなる。

サイズはJBLの4301とほぼ同じだが、低中高域の全ての出方がまったくことなる。
KEF104をレストアした時もそうだが、オールドKEFはなんでこんなに音がいいの?
私的にはロジャースよりもハーベスよりもオールドKEFの方が好みで、
さらにKEF104よりも女性ボーカルが見事にマッチしている印象がある。

褒めすぎだろ!と思われるかもしれないが、とにかく好みの音です。
しいて弱点を上げるなら
高域の煌びやかさが足りない 」と言ったところでしょうか。

もしこれでオーケストラや室内楽を聴きたいなら
中域の透明感がやや足りない 」と感じるかもしれません。

ただユニットがオーバーホール直後の状態なので、
エージング進むにつれ、特に高域はどんどん出るようになるでしょう。
私も自分用に入手したくなるほどのスピーカーでした。


最後に。
 ここのところずっとアメリカ製のレストアをおこなってきました。
こうして久々にイギリス製を見てみると、構造や材料の違いなどからも、
作り手の設計思考が何となく感じられる気がしました。
そして日本製は、アメリカとイギリス(ヨーロッパ)の「 良いとこ取り 」だな。
そんな風にも感じられました。
だたスピーカーの場合、「 良いとこ取り=良い音 」とはならないのが残念ですが。

アメリカの大胆さに加え、ヨーロッパの緻密性、それら全てを取り入れた日本製。
日本製に何か足りないとしたら「 オリジナリティ 」ではないでしょうか。

次回、日本製の反撃となるか!?お楽しみに♪
KEF Reference Series Model 103.2  1980年 
メーカー解説:
方式 2ウェイ・2スピーカー・密閉方式
使用ユニット 高域用:2.5cmドーム型 ・低域用:18cmコーン型
再生周波数帯域 60Hz〜20000Hz
インピーダンス
出力音圧 86dB/W/m
クロスオーバー周波数 2.5KHz
外形寸法 幅265×高さ508×奥行250mm 約19L
重量 8.6kg



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