●ALL金属製ボディを身にまとった、フォステクス G700
かなり小さいが、ズッシリ重く、手に持った瞬間驚いた。
使用ユニットは、7cmウーハーに、2.5cmのドームツイーター。
小さいエンクロージュアだからこそ、振動をよせつけない高剛性ボディにする!
正解だと思います。
ただ年式は解らないが、20年は経ってるもよう。エッジが×になってる可能性が高い。
隣り(左)にあるG750と違い、ネジすら見えない700。
どうやってバラそうか?
とにかく、オーバーホールして、元気にしてあげましょう。
●↑右がG700。
家にあるデジタルスケールメーターが1.5Kgまでだが、計測不能。
G750よりも1.5倍ほど重く、おそらく片側2〜3Kgはあると思う。
ネジの痕跡すらありません。しばし眺めたあと、とりあえずエンクロージュアの作業に入ります。
右写真は、無垢ウッド部を、染み抜きしています。この作業を3回繰り返します。
●染み、汚れも綺麗に取れました。
この後、最低でも3日は、自然乾燥させます。
●矢印がボディの傷。このボディはヘアライン処理がしているため、傷を消すのは簡単だがラインも消えてしまう。
で、私がおこなう処理は、ペーパーなどあてずに、赤線のようにスジ彫りしてやります。
そうすると、傷は消えませんが、より目立たなくなります。
右写真、金属製ネットを外しました。小さいので慎重な作業を心がけます。
●これが7cmウーハー。センターキャップがでかいですね。
共振を打ち消すような、凸凹になっている。
サブウーハーユニットなど、よくこのような大きいセンターキャップが付いてますが、
ボイスコイルの大きさが気になるところです。
動作はたぶん、フルレンジでしょう。
右の黒いものは、スポンジ両面テープ。これで付着したゴミを取り除きます。
●ゴミを取り除いたあと、クリーナーで綺麗にします。
思っていたとおり、エッジがスカスカです。
右写真は真上から撮ったもの。うっすら、黄色っぽいダンパーが見えますね。
●さて、ひととおりエッジのクリーニングできたら、ダンプ剤を塗ります。
いつもは、黒い液体ゴムをベースにしたものを使いますが、今回は透明タイプを使います。
小口径なので、極力負荷がかからないよう極薄で、
かつ気密性を維持できるように、粘着力にも気をつかいます。
●1日乾燥させた後、テストします。
右の写真で解るとおり、ツイーターの3点ネジが水平ではありません。
たぶんユニットそのものが、ネジのような取り付け方法なんでしょう。
左回転で外せると思うのですが、手では無理でした。車のオイルフィルターを外す工具があれば・・・
とも思いますが、傷だらけになりそうなので、内部が気になりますが止めておきます。
●金属ネットを接着し、ボディの磨きにはいります。
右写真はリングの比較。丹念に磨いてやると、これだけ綺麗になります。
●ウッド部は染み抜き後、1週間自然乾燥させました。
次に蜜蝋ワックスを塗ります。
まず、柔らかめに配合した、ソフトタイプの蜜蝋をタップリ塗ります。
その後、3日ほどじっくり浸透させ、2日おきにハードタイプの蜜蝋を塗りこんでいきます。
ハードタイプを3回すり込んだら完成!
完全に保護したい時は、ウレタンクリアーを吹いてやればいいのですが、
自然な木の温もりを大切にしたいと思い、蜜蝋ワックスを使ってます。「 こちら
ウッドの仕上げだけに、20日ほどの時間を要します。
私がオーバーホールに時間がかかるのは、こんな作業もあるからなんですよ。
●完成!! 比較物が無いと、大きさがわかりづらいが、かっこいい!でしょ。
新品同様によみがえった事と思います。もちろん音もね^^

で、じっくり6時間エージングした後、インプレにはいります。
まず驚いたのが「 ボーカル 」浮いて聞こえるような感じで、「 ビシッと定位 」する。
これにはほんと、驚きました。

中域周辺の音は多めなので、ウーハーがフルレンジ動作だと思います。
高剛性・金属ボディは木材に比べ、共振・歪・響きが少ない。
共振・歪を押さえ込もうとすると、響きまで失ってします。
そこで、気持ちいい響きを出す為に、ツイーターを下までひっぱっている感じがうかがえます。
なので、歪を抑えた輪郭は、ほどよいシャープさを保ちつつ、響きもある。
だから、気持ちの良い音が聞こえてくる。
という教科書のお手本のようなスピーカー。ビクターのSX-V1も同様の傾向にあります。

定位感を作る部分で、密閉、金属製ボディという条件が重なり
ウーハーの中域部分を、よりいっそう引き締めている。
低音の量感は、見た目どおり少ないが、尾をひかないキレのある音。
エッジの補修も、バッチリ効いてます。
低域を生かすような、柔らかい高域の為、中々バランスがいい。
安っぽい小口径の音とは違い、深みもあるし、全体の質を高めようとする「 意気込み 」が感じられます。
一言でいうと、「 モニター調 」の音質。

最後に。
4Ωという事もあり、能率がかなり低く、最初どこまで音量を上げていいのかとまどったが、
能率の低いスピーカーは高いものに比べ、音におちつきがある。
能率が低いと「 音やせ 」する、というような低次元のレベルではない。
小音量が前提だが、それがリアルで「 深み 」や「 高級感 」を生んでいる作りこみには、
立派なものと、関心しました。
これはかなり「 貴重 」でしょうね。
小さいサイズだが、存在感のあるG700。何か、引き込まれるような世界観があるスピーカーでした。

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