●2017.10.12久々の更新。今回は4312MKIIの超絶フルカスタム2種をご紹介します。
毎回お客様のアイデアには驚かされてばかりですが、今回も凄いカスタムの登場です。
そのおかげで私のスキルも徐々に上がってますが、それでもまだぜんぜんダメなとこ
ろも多く、最後にHPに上げるとき写真を確認するとまだまだ甘ちゃんだと痛感するこ
とが多いです。いつになったらプロ中のプロの域に達するのか!?5年前より手先が
鈍くなった気もしますが、とにかく今は前に進むのみです。今回のMKII超絶フルカスタ
ム特集はパート1パート2と2週にわたりお届けです。それではどうぞご覧ください!
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●まずはMKIIカスタムパート1
左がノーマルのMKIIで、右は別口ですが作業途中の4311WX-A。WX-Aの方は定番のフルチューン+、オリジナル新品復活で仕上げです。
そしてMKIIはユニットをアルニコに全変更するのですが、そのユニットが驚き!
●まずは全てのパーツを取り外していきます。
ここで一番やっかいなのがプレート外し。MKIIは比較的新しいせいか、WX-Aに比べると外しやすい方です。ただ新しいと言っても20年以上は経ってますけどね。あせらず慎重に作業します。
●さていきなりですが、こちらはJBLの30cmフルレンジユニット「 D131 」です。もう一回り大きい38cmのD130はよく見かけますが、D131はけっこうレアですよね。もう40年選手なので所々やれてますが、逆に考えるとこれだけ維持されてるのは丁寧に扱われてきた証拠です。エッジはコーンと一体成型された紙です。昔のユニットはこういうのが多かったようです。ただエッジにしなやかさがないので交換となりますが、今回はオーナー様のご希望でリコーンすることに。
●左がD131で右が2213、どちらもアルニコです。
D131を最初に見たとき「大きくて重いなー」という印象で、2213と並べてみるとこんなにも差がありました。重さは2213H(フェライト)と同じくらいです。
しかしマグネットが大きいですね〜。大迫力の中低域が出そうな予感です。
●とりあえず箱にセットしてみました。片方はOKでしたが、なぜかもう片方は箱の穴を軽く削ってのinになりました。あとネジ穴もほんの気持ち微妙な感じですが、取り付けはほぼOKのようです。
右は購入したリコーンキット。純正ではないですが精度も良く、肝心のコイルは銅ではなくオリジナルと同じアルミということで音質も安心できそうです。ただこの手の物は加工などが必要になってくるので最後まで油断できません。
●リコーンの作業模様はまた改めてお送りします。

本体の作業を始めます。まずは箱の加工から。
こちらは以前おこなった4311と同じ
特大ターミナル 」を取り付けます。
MKIIのターミナル開口部は4311より一回り大きいので、写真のような加工で済みました。
●4311では中央でしたが、MKIIではやや下方なのでバランスはいい感じです。
このあと木目の下地仕上げをおこない、一度全体をクリーニングします。次に木目の一次仕上げから二次仕上げ。その次に前後の再塗装をおこない、乾燥中木目の三次仕上げというのがだいたいの手順です。
●箱の乾燥中に別の作業に入ります。こちらは4312Aと同じMKIIのネットワーク。4311から4312まではコンデンサーのみですが、4312Aからはツィーターがハードドームに変更され、その特性に合わせてコイルの追加や基盤へと変更になりました。スコーカーは機種によりコンデンサー値が度々変更されており、この後の4312Dもさらに小変更が加えられています。
●左がMKIIで右が4311WX-Aのネットワーク。MKIIはコンデンサーのサイズが小さいのでコンパクトにまとめられてますが、容量はWX-Aよりも大きいです。それと部品のすべてが基盤にハンダ付けされており、アッテネーターの交換など容易ではありません。もしおこなうならハンダ吸取り機があれば便利です。
(撮影時の位置が逆になってしまいましたが)
●全ての部品を新品にしてフルチューンネットワークの完成です。今回のMKIIは標準ユニットを使わないので、アルニコユニットに合わせたネットワーク特性に変更しました。細かい事ですが、例えばスコーカーの2115とLE5-2は見た目が同じですが、特性が違うのでコンデンサー値も違います。メーカーはそんな微小な変化も捉えているので、チューンする場合も適当ではなく、メーカーの基準値を崩さないよう繊細におこなう必要があります。
●その基準値をまもった上で部品グレードを上げてこそ、=イコール良い音になるというわけです。元のコンデンサーが7.0uFなら6.8uFでいいだろ、なんてぜんぜんダメなんです。スコーカーの104Hは4311の実測値を参考に仕上げられたとも言われてます。
←こちらはオーナー様よりお預かりしたJBLのモニターケーブル「 JSC550 」。太いのにしなやかでグレードも高く良い音が出そうです。今回はこちらへの交換ですが、太いケーブルは接続部分をいつも以上に強化してやる必要があります。
●フロントバッフルの塗装が終わりました。
●写真じゃわかりにくいのですが、凸凹を多めに施工しました。いつもは3回塗り+クリアーですが、こちらは5回塗り。他の大工作業もそうですが、塗装も道具が重要なわけで、仮に手作業で何百回やったとしてもプロの域には達しません。逆に素晴らしい道具があれば、素人でもかなりの状態まで仕上げられます。ただ最後は手先の器用さとセンスでしょうか。
●こちらはおなじみの黒。純正ではほぼ100の艶消しですが、私は90の艶消しにして、より黒々さを出しています。純正と並べると微小な変化ですが、その微妙な加減が高級感を醸し出してます。このあたりは私のオリジナルで他では真似できないこだわりでもあります。
●さて、箱の乾燥中に別のユニットに入ります。
こちらはアルニコのスコーカーでLE5-2。
2017年現在、中古市場で4、5万はする希少な高級ユニットです。フレームは錆が多めで、コーンは劣化により色抜けや染みが多めです。
●ギリギリレストアできそうなレベルですが、オーナー様のご希望でリコーンすることにしました。新品のコーンは見ていてやはり気持ちのいいものですね。
●こちらはJBLでおなじみ現役バリバリの音が出るツィーターLE25。こちらもリコーンしました。フレームも全体を磨いてから再塗装したので新品同様に仕上がりました。ここまで綺麗になれば良いですね。物が小さいのでリコーンはけっこう難しかったです。
LE25は同じ物でも音がまったく違う当たり外れがあるので、そのあたりの確認も忘れずにした方がいいでしょう。
●今回のMKII、D131オールアルニコ仕様のツィーターはLE20です。これも40年以上経ってるとは思えないほど良い音が出るツィーターです。さらに写真でわかるようとても程度が良く、ぱっと見綺麗だなーという第一印象でした。でよくよく見ていくと、「 あっ、これ16Ωだ。ネットワークの調整が必要になるなー 」と一瞬曇り顔になりましたが、逆にそれが功を奏す結果になることに。

●赤封印
JBLの古いユニットでは簡単に分解できぬよう、ネジ頭にロウで”赤封印”なる封印が施してあります。これは開封したかどうかの目印にもなるわけで、私のようなレストアをする者にとっては封印されていれば最高の状態です。ですがほんとどはメンテナンスをしないでそのまま使う方が多いので、封印された物より外してメンテナンスしてある物の方が10倍良いです。さらにその経緯、誰が外してどのようにしたのかがわかれば完璧です。骨董品と同じでルーツが大切なわけです。


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