●今回はわりと数の少ない4312BMKUを紹介します。
MKUと言えばJBLブルー・青色バッフルの定番モデルと往年のグレーがあり、 U
2213H(ウーファー)最後のモデルとしても印象深いモデルです。 U
そして今回紹介するMKUは、箱の表面がエンボス加工された特殊形状の黒です。 U
それはまるでギターアンプを思わせるような無骨なスタイルの持ち主。 U
そんな4312BMKU凸凹黒(以下MKU)は、見た目だけではなく中身にも工夫があるのか? U
そして同じ箱が使われている4312Dとの違いは?などなど気になる点がいくつかあるので、 U
そのあたりを検証しながら進めていきたいと思います。 UU |
|
●もしサランネットが付いてる状態だったら
誰もが4312Dと思ってしまうでしょう。 U
そんなキャビネットが共有されたMKUですが、 U
ツィターとスコーカーの位置が斜めに付けられてるスタイルが独特で、パッと見MKUと判断できるポイントです。 U
詳しく書くとJBLの黒には、木目、エンボス加工(大きい凸凹)、フラットエンボス(小さい凸凹)の3種類あり、 U
←のような写真だと U
どの黒なのかわかりにくいですよね。 |
←これくらいUPにすると判断できると思います。
このエンボスはMKUからが最初のモデルで、4312D、Eと引き継がれています。 U
あとは白いJBLマークの位置。 U
やや上気味に書かれているのが凸凹の強いエンボスで
中央に書かれているのが弱エンボス U
書かれていないのが木目(4312Eは木目+ロゴも有り)、というところでも判断できます。 U
これは以前紹介した4312Dと同じもので、滑り止めのために加工されたもののようです。 U
スピーカーを大音量で鳴らすと振動で少しずつ動きますが、それを防ぐ為の加工と言ったところでしょうか。 U
詳しくは分かりませんが、木目やグレー箱に比べると
確かに滑りません。ただ部屋使いだと、動くほど音量上げないですけどね。
|
●さてこちらは前回紹介した4313WX(左)青で
並べてみました。
4313は4311〜4312とほぼ同じサイズですが、 |
●上から見ると薄いですね。
4311〜4312はボーカルの声が独特で、特徴のある音色ですが、その癖をよりマイルドにしたのが4313WX。 U
並べて聴くとより自然だということが感じられます。
ただロジャースのStudio1を並べて聴いたら、 U
そっちの方がさらに自然でした(^^; U
でもJBLの気持ちよさは格別です。 U |
●MKUの鬼門であるウーファー(2213H)は
他種に比べエッジが固く動き(ストローク)が鈍いです。
MKUはこちらを含め6セット扱いましたが、どれも同じ症状が出ていました。 U
なのでウーファーの調整は、他種よりも必要以上におこなわなくてはなりません。 U
まずはユニットを外します。
ウーファーのみナット式であとは木ネジです。
ユニットが箱にくっついているので、外すのにやや難儀しました。 |
●左の黒い植木鉢は
スコーカーのバックキャビティです。 U
4312A〜の作りで、現在も引き継がれています。 U
それにしても、めちゃくちゃ綺麗ですね。 |
●キャビネットの傷が「 零 」という上物です。
スピーカーを数多く扱ってきましたが
無傷の箱はめったにありません。
ただし綺麗でも必ずクリーニングします。 U
この箱は凹部分に汚れやゴミが付きやすいので、凹の奥までクリーナーを浸透させる必要があります。 U
そこで中性洗剤を水で溶かしたものを用意、さっと軽く塗り、よくすすいで拭き取ります。 U
すると白ボケも無くなり、かなり綺麗になります。 U
ただし白のJBLマークはこすると落ちるので厳禁です。
あとは外装シートのつなぎ目を水でぬらさないなどなど、木目と違い注意が必要です。
丸一日乾燥させたあと、白のJBLマークを再塗装しました。
|
●次は表面。
この凸凹黒はノーメンテだと、車のタイヤのよう、だんだんと白っぽくなっていきます。
それを防ぐには半年に一回くらい、アーマオールやクレポリメイトなどを塗ればいいのですが、シリコンを含んだものだとツルツルと滑ってしまうのと、艶が出すぎるという難点もあります。 U
そこで、できるだけツルツルにはならないよう、
かつ、なるべく黒グロとした風味が維持できるよう U
試験的に特製OILを底面に施工してみました。
アーマオールほどの艶も出ず中々いい感じです。
たぶん1、2年は持つと思うし、汚れも付きにくくなるはずです。
|
●左が施工後で右が施工前。
塗装と同じですが、表面コートをする場合はその前の下地処理が重要で、仕上がりも大きく左右されます。
半艶や艶消しなどは人により好みがあるので、
とりあえず全体の施工は保留にしました。 |
●ユニットのレストアが完了。
まず一番肝心なのがウーファーの2213H。 U
前モデルの4312XPではポタポタと垂れ落ちるダンプ材だったせいか、MKUでは逆に垂れない素材に変更されました。U
そんなせいもあり、MKUのウーファーは4312シリーズ中、最も固く動きの鈍いウーファーです。 U
コーンの動きが鈍いので、つい低音出そうとパワーをかけると、コーンに負担がかかり、いつのまにか割れていたりヒビが入っていた!?なんて事があったりします。 U
音質はもちろんですが、それらを回避するためにも、MKUのウーファーはしっかりメンテする必要があります。 |
●そんなリコールもののウーファーですが、
エッジを柔らかくするだけではなく、ダンパー調整が必要になってきます。 U
そして動きがスムーズになったウーファーを鳴らしてみると、驚くほど軽快な音に変わります。 U
音もナチュラルになり、2213H本来のポテンシャルが復活したと言ったところでしょうか。 U
しつこいようですが、4311〜のシリーズでは、このウーファーが音質の鍵をにぎるほど重要です。 |
●MID・スコーカーもエッジが固いので柔らかくします。
ツィーターはO/Hしたので新品のようになりました。
無傷の箱同様、ユニットもまた極上。 U
ただしマグネット部には若干の錆が出てたので、しっかり落としたあとコーティングしました。 U
ネットワークは4312Aからの流れでフィルムコンデンサーが採用されており、交換の必要性はありません。 U
ただしアッテネーターは接触不良の強いもので U
O/H(分解整備)が必要です。 U
良い所も悪い所も、4312Aから引き継がれていました。
そして最後にユニットを取り付け |
●祝!完成!
極上の4312BMKU |
●こちらは以前扱った4312D
箱とネットワーク類は同じですが、 U
ユニットがモデルチェンジされてます。 U
特にウーファーの2213Ndはだいぶチェンジされており
フレームからマグネットまで違うものです。 U
長所は小音量でもレスポンス良く鳴ってくれるのですが、
やはり2213HのほうがJBLらしいと言いますか U
厚みのある質感や心地良さに違いを感じます。 |
●この凸凹黒も、見慣れてくるとなかなか良いものです。
綺麗だからという理由もありそうですが。 U |
●さて、音質は割愛させていただきますが、
4312DやEは、往年の4311〜とは若干フィーリングが違います。 U
4311の音色を引き継いでいるのは「 このMKUが最後 」というが私の印象でした。
最後に。
以前より少しに気になっていたのですが、 U
4312Dや今回紹介したこの凸凹エンボス加工の黒は、木目やグレーに比べ U
外板が若干薄い?そして重量も若干軽いような気がします。 U
それが逆に低域の量感が増え、より弾むように鳴るのも特徴的です。 U
JBLの音質は、ユニットの程度に依存するので判断も難しいですが、 U
木目やグレータイプよりも少し音がいいような気がしました。 U
ただジャンルを問わずどんな曲でもノリノリになれる、弾むビートはJBL意外の何者でもありません。 U
今回の4312BMKUは、20年以上経ってるとは思えないほど程度が良く U
音質もまたシリーズ最後と言えるMKUで、見事に復活を遂げました。 U
やはりこの音は飽きないし、いつまで聴いてても心地良いものです。 U
4312DやEを狙っている方は、一度こちらに目を向けるのもいいかもしれません。 U
これからも大切に扱われて欲しいと 心から思える、そんなMKUでした。 U
次回はいよいよ記念すべき第200回目です!お楽しみに♪
|
JBL 4312BMKII 1999年頃 |
●メーカー解説:低域には銅リボンエッジワイズ巻ボイスコイルを採用した30cmホワイトコーン2213H。
中域には12.5cmのミッドレンジドライバー104H-3。
高域には25mmピュアチタンドームトゥイーターの035Tiを搭載。
エンクロージャーは滑り止めのエンボス加工を施したブラック仕上げで、
音源の集中をめざした特徴的なレイアウトとなっています。〜中略〜 |
方式 |
3ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式 |
使用ユニット |
高域用:2.5cmドーム型(035Ti) 中域用:13cmコーン型 (104H-3) 低域用:30cmコーン型 (2213H) |
再生周波数帯域 |
45Hz〜20000Hz |
インピーダンス |
6Ω |
出力音圧 |
93dB/W/m |
クロスオーバー周波数 |
1.1kHz、4.2kHz |
外形寸法 |
幅362×高さ597×奥行298mm 約L |
重量 |
一台約20kg |
|