●出ました!久々のダイヤトーン!しかも激レアのDS-700です。
時代は1989年、盛り上がりをみせるオーディオ業界の渦の中で、ダイヤトーンも新作を次々に発表。
同時期に発売されたDS-500は、TVCMも流れる注目の機種でした。
そんなDS-500に目が行ってしまったのか?DS-700はあまり目立たない存在でした。
今回はDS-700を、26年の時を経て今ここに復活(レストア)させます。

↓の写真、DS-700の弟分になるのか?DS-500ですが、並べて見ると違いがあきらかです。
DS-300は500にそっくりなのに、どうして700はこんなにも変わってしまったのか?
謎の多い一台です。
そんなところですが、さっそく謎を紐解いていきましょう。 U
●左のDS-700、ややノッポなスタイルは、Wウーファーとツィーターの構成。外装はマホガニーで武装しており、フレームの輝きもあいまり、高級感の漂うモデルです。

そんなWで備えられたウーファーは、ダイヤトーンのお決まりでエッジがカチカチに固まっています。
このままでは本来の音はでません。

とりあえずどんな音色なのかをチェックがてら
軽く音出ししてみると、
 「 な、なんだこの変な音は・・・ 」

エッジが固くて低音出ないとかいうレベルではない・・・
なんだこれ?やばすぎだろこの中域・・・
 (とある構造上の問題と後から判明)
●という???の音出し結果ということもあり、
不安な気持ちが残ったまま分解することになりました。
正直、聴かなきゃよかったかも(^^;
気を取り直してユニットを外すことにしましょう。
●まずユニットにはめ込まれたゴムリングを外します。
これはハメコミ式になっており、手で簡単に外れます。
リングを外すとネジが4本表れました。
ネジは長めの木ネジ(+)で、本体にがっちり噛んでます。
●ネジを外したあと、ウーファーをそっと持ち上げると
さらっとウーファーが外れました。
内部
パッと見、整理整頓された優等生のような雰囲気で、綺麗にまんべんなくフェルトが貼られてます。
そしてフェルトをずらすと、ネットワークが顔を出します。

そして変な音の原因がわかりました!

ネットワークを全交換か?なんて事も頭をよぎっていたので、
とりあえず良かった良かった。
●作業が続きます。
ツイーターは正面からは外せなく、箱の裏板を外し内側から外す構造です。
この時期のダイヤトーンはこのツィーターを多く採用しているのが特徴です。
ハードドームですがあたりが柔らかく、繊細で透明感のある質感は、とても聞き心地の良いツィーターです。
外国製のソフトドームツィーターを聴くと、うわっいい音だな、なんて思うが、このツィーターもぜんぜん負けてません。
 「
この音なんか落ち着くな〜
そんなメロディを奏でる優秀なツィーターです。
●この時代は箱も入念に作られているのも特徴です。
例えば自作箱を作ったとき、ここまで補強すれば完璧だろ!
なんて思って作り込んでも、ダイヤの箱を目の当たりにすると、それはまるで普通の事だったと思い知らされます。
そんな綿密で頑丈に作られた箱は質量もあり、めちゃくちゃ重いです。
最初に持ったとき、
 「
なんだこの重さは 」と感じるほどでした。
今これ作ったら、倍の値段はするでしょうね。
●フェルトをずらすとネットワークが見えます。
ユニットはツィーター+Wウーファーの構成ですが、ネットワークは3wayのような3構成で作られており、さらにそれらは完全独立で配置されてます。
ここまでやらなくてもいいんじゃないのと、思えるくらい
もの凄い作りこみです。

ケーブルはたぶんOFCだと思うが、一本一本がやや硬めの銅寄り線で太さは約3mm。
接続は全て圧着方式になっており、
 「
限界まで解像度を高めてやる!
そんな意気込みが伝わってくるほどの作りです。
ダイヤトーンのネットワークを見ると、軽い気持ちで部品交換できない、躊躇するほどの作りこみです。
●ウーファー。
フレームが綺麗ですね〜。
これ何だろ?と思っていたのですが、どうやら
塗装されているようです。
カッパー色・ブラウン、何と言うか銅と真鍮の間くらいの色調でしょうか。微妙なニュアンスの色ですね。
当時のダイヤはほとんどがアルミ合金製です。
そんなアルミは経年劣化で
サビが出て見た目が悪くなりますが、これは塗装されてるのでサビがまったく出ず、綺麗な状態を保ってました。
過去に扱ったダイヤトーンのユニットは、そのほとんどがクリアコーティングが必要な状態でしたので、このような綺麗な状態を見ると、何か嬉しくなってしまいます。

あとはセンターキャップの違い、左は小さいキャップの上に編み網のキャップが貼られた2重構造のもので、DS-200シリーズなど、多くに採用されたタイプです。
右はしっかりした硬めのキャップが貼られたもの。
裸での音出しで違いはほぼ感じられませんでしたが、きっと微妙なニュアンスが違うのでしょう。

コーンはダイヤの顔とも言えそうな、
やや青みがかった「
LCP 」というプラスチックのような素材です。うっすらと入った縦じま模様が、まるでブルーアイのような雰囲気を醸し出してる、すごく凝ったものです。
ただしこのコーンは割れやすいのが難点で、固まったウーファーを無理に鳴らそうとすると、いつの間にか割れていた!なんて事があったりします。

●背面
マグネットサイズは普通。
通常のマグネットに+してキャンセリングマグネットが配置されており、それをカバーで覆ったものです。
当時のTVはブラウン管なので、
横に置ける
防磁設計が主力でした。
●特筆すべきは、なんといってもこのフレームです。
いいですね〜
最近の外国製単品ユニットでもダイキャストフレームはありますが、ダイヤのアルミは厚みがあり、触れただけで質感の違いが感じられるほどです。
大音量でも微動だにしない、そんな高剛性のフレームです。
●端子付近やカバーにはガムテープが貼られてます。
これはショート対策で貼られたものですが、
こういうところが
 「
日本人の粋 」を感じさせます。

外国製もこういうのありますが雑と言いますか、きっちり正確に貼ってあるところが日本人、メイドインJAPANです。
いい仕事してます。
●矢印はエッジの裏側で、固まったビスコロイドです。
これはシンナーで溶けるの、匂いは別としてわりと簡単に落とせます。
●塗装されたフレームが傷つかぬようマスキングし、さらにスポンジをあてて作業します。

ユニットをひっくり返し、エッジが床に接触しない水平な状態を確認して、エッジの凹にシンナーを流し込みます。
数分後マイナスドライバーで軽くこすると、ビスコロイドが見る見る取れていきます。
●これが取り除いたビスコロイド。
これは軽く取り除いた1本分で、けっこうな量が付いてます。
●裏返して柔らかさを確認します。
最初のカチカチを10とすると、2、3割くらい柔らかくなった程度でしょうか。
このままでは不十分なので、作業を繰り返しおこないます。

エッジは布製で、細かい網状になっており、その隙間に染みこんだビスコロイドを取るのは容易ではありません。
2、3回やってけっこう取れたな!
なんて思っても、数日経つとカチカチになっていたります。
だからヘロヘロにもっていくにはビスコロイドを取るだけではダメで、ほかの作業も併用する必要があります。
●そして数日間十分に乾かして完成。
これで8、9割、ほぼヘロヘロ状態に柔らかくしたものです。
柔らかくて良い状態をキープできるようするには、けっこう大変な作業になります(エッジ交換の方が楽)。

エッジの硬さはものによりけりですが、私の経験上バスレフは5割程度でも能力を発揮できます。
ただし密閉の場合は、それ以上に柔らかくする必要があります。軟化剤なるものも売られてますが、しばらく経つとまた固くなったり、小・中型密閉には不十分な柔らかさだったりします。ここまでやって初めて
 
ユニットのポテンシャルを発揮できるといったところでしょうか。まったく出音が違います。

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