●今回は「 JBL J520M 」の紹介です。
JBLのスピーカーは”プロフェッショナルシリーズ ”と”民生用 ”の2種類に分類されてます。
有名なスピーカーのほとんどはプロフェッショナルシリーズのもので、
民生用の方は一般的に「 えっ?これもJBLなんだ 」という感じで知られていない機種も多いです。
今回はそんな民生用から「 J520M 」の紹介です。
   ●写真じゃ大きさがわかりにくいと思うが、これフロント面がだいたいA4ほどで、スピーカーとしては小型タイプ。
パッと見、小さいな〜、なんて感じの大きさです。

サランネットを外すとご覧のようエッジがXでした。
このままではまともな音は出ませんので、まずはエッジを張り替えます。

サイズ的にはコントロール1あたりが近いが、いったいどんな音色が出るのやら、さっそく始めましょう。
●まずはユニットを外します。
ネジは全て+(木ネジ)。
●ネジ、ユニット共に固着も無く簡単に外れました。
箱の材質はパーチクルボード。
補強とかはなくいたってシンプルな、鳴らすタイプの箱です。
内部は吸音材(グラスウール)が全面にひき詰められている。

ポートはプロ・民生ともにJBL全般で見られる、開口がやや大きめな特徴のポートです。
接着はされてないので簡単に外れました。
●背面ターミナル。
接着はされていたがかなりアバウトで簡単に外れました。
ターミナルにネットワークが直付けされてます。
●ウーファー
口径は12.5cmで一般的な小型サイズ。
サイズの割にはマグネットがやや大きめ。
馬力が出そうな感じもします。
コーンはポリマーコーティング・ファイバーコーン
というもの。
触った感じでは紙コーン+コーティングのようなのりで
かなり柔らかい。
●213PROのウーファーがあったので比較してみました。
サイズも見た目もほぼ同じですね。
時代のせいか?個体差か?耐入力用か?
213はダンパーが固めで、520は一般的な柔らかさでした。
音質の違いはその硬さの違い程度です。
●こちらはツィーター。
外して見るとおもちゃのように感じてしまうが、一応れっきとしたツィーターです。
マグネットはネオジウムでしょうか?
作りもややアバウトです。
ドームはチタンで聞き慣れた感じの音質です。
216のソフトドームツィーターよりも柔らかなフィーリングで、聴きやすいというのも特徴的です。
●ウーファーを綺麗にしました。
コーンの周りにはゴムボンドがしっかり張り付いており、けっこう力を入れないと剥がれません。
だがコーンが柔らかいので、変に力を入れると変形し、形が○でなくなるから注意が必要です。
小さいのはやりにくいですね。

さて、このサイズのエッジは豊富に売っており、ウレタンとゴムがありましたので迷わずゴムをチョイス。
●張替え完了。
ネットで「 エッジの張替え 」と検索すると、たまにコーンの上に重りなどを載せて接着してる画を見ます。
ですがそれをやるとダンパーが下がってしまい、下がったまま固定されてしまうのでまともな音は出なくなります。
特に小型の場合、コイルとヨークの位置関係で音質のフィーリングが変わってくるので、そういうのは止めたほうがいいでしょう。
変に曲がっているとかはほぼ無いですから、上げない下げない自然のまま接着するのはBESTだと思います。

右のガスケットは作りました。
●さて、こちらはウレタンエッジにゴムコーティングしたものです。
元のウレタンエッジは加水分解してるもので、軽く触れただけでもボロボロ崩れるほどのものです。
そんなエッジを崩さぬよう、薄めの液剤を何度も浸透させ成型したのが右(グレー)のエッジ。
●これだけ引っ張っても千切れませんし
 (かなり引っ張ってます)
収縮性が良いので、そのままレスポンスの良さに繋がります。

小型の場合はコレくらい柔らかい物がBESTだが、作るのも大変なので既成のゴムエッジを付けました。

他にも自作エッジが多くありますが、布やシリコンなど使う素材によっては本来の音が出なくなるので、よく調べてから選んだ方がいいでしょう。
●こちらは今でも大人気の、サンスイLE8Tの格子ネット。
その欠けの修理です。

左写真のよう綺麗に欠けてるものもあれば、ぐちゃっと欠けてるものもありますが、基本的には同じです。

欠けてる部分に木材を接着

同じように削って成型


表面を馴染ませて塗装
●最後に全体をもう一度塗装して完成。
パッと見どこを修理したかわかり難いレベルになりました。

もっとぐちゃぐちゃっと削れているものもあるが、そんなものは部分カットして大きく作り直します。
今回修理したのは6箇所。
これは修理依頼品なのでやりましたが、正直これ以上多いとかなり大変で、これくらいが限界ですかね(^^;
ただ貴重な物なので、大切に修理してやりたくなりますよね。
●さてJ520Mに戻ります。
真ん中部分のみ汚れを落としてみました。
けっこう汚れてますね。
ただこれ、出品者は「かなり綺麗」と言って出してたんですよ(笑
汚れが均一化されててわからなかったんですかね。
もちろん写真ではわかりませんが。
●箱の汚れを徹底的に落としました。
この民生用シリーズっぽい特徴の出てるバッフルだが、何か味気ないので塗装することに。

JBLということで、まぁお決まりと言われそうですが(笑
ブルーにしました。
●概観は汚れをしっかり取ると、けっこう明るめのオーク色でしたので、ブルーもそれに合わせ、やや明るめに仕上げました。
かなりいい感じになったと思います。
●ユニット、箱、ネットワークの全てが仕上がり
●ユニットを取り付け
●祝!完成!

自分で言うのもなんですが、元に比べるとかなりかっこよくなったかと思います。
私の中では JBL=ブルー というイメージ強いのでこうしましたが、そのあたりは好き好きですかね。
●エッジを張替えたのでさっそく音出し U
ますは一言 U
 「
無難な音色だ

ここが凄い!という特別な特徴は無いが、逆に悪いところも無いので U
無難な音色という言葉しかみつかりませんでした。 U

ただし普通にJ-POPなどの音楽を聴くのなら、プロシリーズよりも民生用の方が良く感じます。 U
それは「 中域・ボーカル 」の帯域に差があります。 U
プロシリーズのほとんどはシンプルなネットワークでフルレンジ的に鳴らしているが、 U
民生用はその部分をネットワークで調整しているからです。 U
だから嫌みな音や変な癖が無くマイルド、スッキリして聴きやすいというのが特徴的でした。 U

仮に1から10の数字にすると U
ヨーロッパの凹みが1、日本が7、JBLプロの凸が10とするならば、JBL民生用は5の中間位置。 U
日本の設計思考はアメリカ寄りですが、そのアメリカらしさが少なくマイルドなのが民生用 U
という印象でした。よけいわかりにくいですかね(^^; U
インフィニティ(アメリカ)の音色にもよく似てました。 U

最後に。 U
メーカーの説明で、ネットワーク部に最適な設計を施すことで、
トゥイーターとウーファーの音のつながりを改善しています。

とありましたが、まさにそのとおりでした。 U
JBLにも「 こんな繊細な部分があったのだな 」と感じられたJ520Mでした。 U
ただ人って、なぜか癖のある方を求めがちですよね。 U
優秀すぎるのは飽きやすいと言いますか。それもプロシリーズの魅力なんでしょう。 U

次回、大胆なアメリカ、緻密なヨーロッパと書きましたが、 U
本物の緻密なヨーロッパの紹介です。お楽しみに♪ U
JBL J520M 1995年
メーカー解説:本格派アメリカン・サウンドとJBL伝統の技をリーズナブルな価格で実現したJシリーズのスピーカーシステム。
ネットワーク部に最適な設計を施すことで、トゥイーターとウーファーの音のつながりを改善しています。
方式 2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式
使用ユニット 高域用:1.0cmドーム型 ・低域用:12.5cmコーン型
再生周波数帯域 70Hz〜20000Hz
インピーダンス
出力音圧 87dB/W/m
クロスオーバー周波数 4.5KHz
外形寸法 幅190×高さ305×奥行216mm 約L
重量 3.6kg
   ・・・  
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