●今回はようやくお披露目、JBL 4311WX-A の登場です。 |
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●この43シリーズは1971年の初代4310から始まる。
2年後の1973年に4311(1st)にモデルチェンジ、その後
1976年〜今回の2ndにマイナーチェンジ
1979年〜3rd、フェライトモデルの4311Bへ。
1982年〜4312にモデルチェンジし、現代へ引き継がれている。
こうして見るとなんと息の長いモデルか。
それだけ愛され、支持されているメーカーですね。
オールアルニコモデルの初代4310は別として、2ndまでがアルニコモデル、3rd以降はフェライトモデルになる。
4312Aからはツィーターが変更され、フィーリングが一気に現代風に変わる。
JBLらしさの感じる音色と言えば、個人的に2ndが一番だと感じている。 |
●そんな4311の2ndモデル、発売からゆうに30年は経過しており、ところどころに劣化がみられます。
まずはしっかりとレストアをおこない、気になる箇所があればパーツを変更しチューニングをおこないます。
30年前のスピーカーを新品同様によみがえらせ、その音色を堪能したいとう気持ちが強いので、できるだけオリジナルを尊重したレストアをおこないたいと思います。
そんなところで、さっそくFullレストアの始まりです。 |
●最初に目に付く外装。
ユニットのダメージも、もちろんだが、この年式になると箱の劣化が気になります。
こちらはウォールナットのツキ板仕様で4311WX-A
グレーの塗装仕様は4311Aとなる。
43シリーズはグレーの人気が高いですが、私は木目の雰囲気が好きなので、ついつい木目仕様をレストアしがちなんです。
丁寧に仕上げれば仕上げるほど見違えるのがツキ板の特徴ですかね。 |
●さて、開封後まずネットを外すわけだが、この木製ネットは超もろく、扱い注意なしろものです。
このタイプはほとんどが破損してますが、素材となるパーチクルボードが原因でしょう。
メーカー製スピーカー、約70%以上に使われている素材のパーチクルボード。理由は合板(2級コンパネ以外)に比べ圧倒的にコストが安い。それと個人的感想だが「
音質が素晴らしくいい 」素材なんです。
以前自作スピーカーで実験したことがあり、合板、パーチクルボード、MDFを比較した結果、一番響く合板と響かないMDFのちょうど中間的存在で、適度な響きと量感はとてもいい塩梅でした。
特に8cm等の小型ユニットの場合、低域のフィーリングが数段良くなります。
音が良くて安いということで、数多くのメーカーが採用していました。 |
●そんなパーチクルボードだが、弱点が2つあります。
1つ目はご覧のよう、もろい。
細かいチップを固めた構造は空気層も多く、年数が経つにつれ水分がたまっていき崩れやすくなる。
新しいうちは極端に強度が弱いわけではなく、乾燥された環境下にあったものは、いまでも強度を保ってます。
湿度の高い日本では、こんな状況が多く見られますね。
2つ目の弱点は入手困難(現在)ということ。
パーチクルボードを扱っている店は極端に少ないです。
似たようなものやOSB合板などもあるが、接着剤の質や量の違いから、音質がぜんぜん変わってきます。
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●昔のような空気層の多いパーチクルボードは、今となっては貴重品に感じます。
そんなパーチクルボードですが、一度膨らんだ(変形)ものは、乾燥させても元には戻りません。
だから矯正するのも難しい素材で、このような細い形の場合は、合板で一から作った方が早いかもしれません。
今回はとりあえず細板をあて矯正・補強をおこないました。
これでバラバラになることは無いが、油断するとまた折れるので神経の使うフレームです。 |
●ちゃちゃっと直そうと思っていたフレーム補修ですが、以外にも手間のかかる作業となりました。
ようやくユニットを外します。
各ユニットには粘着付きのガスケットやら、粘着?のゴムなどなど、
くっついているので中々外れません。
もし簡単に外れるようでしたら、一度外された経緯があると思ったほうがいいでしょう。
それだけ頑丈に付いてるのがオールドJBLの特徴です。 |
●慎重な作業をおこない、ようやく全部外れました。
私の場合は、最初にツィーターから外します。
紙製のガスケットが付いてるので、そこにカッターをそっとねじ込み、序々にこじあけていく。
ウーファーはネジを外した後、木槌などを使い軽くコンコン。
MIDはツィーターと同じ要領で。
気楽に外れるものじゃない!との心構えがあれば大丈夫です。 |
●内部。
特別な補強はなく、いたってシンプルな箱。
全面に吸音材(グラスウール)が敷き詰められている。
ちなみに山水のLE8T箱は同じサイズになるのだが、補強などが加えられており、これよりも1.2、3倍ほど重い。
完璧主義者の多い日本人的な計らいだと思うが、逆にこちらの箱こそ補強が必要に感じました。 |
●ユニットに入ります。
まずはウーファー。
白い紙コーンとアコーディオンエッジが特徴的な30cmウーファーで、モデル名は2213となる。 |
●パッと見わかるよう、フレームはとても重厚な作りです。
アルニコモデルの特徴か?外装はしっかりした塗装処理が行われており、錆びの発生や劣化がしにくくなっている。
とても作りの良いユニットです。
ただし以外な落とし穴が一つだけあります。
それはヨーク周辺(ダンパー内部)になり、そこは金属むき出しで錆が発生してる可能性もあります。
確立は50/50と言ったところで、ダンパーを外してみるまで解りません。
私の場合、ダンパーを一部めくって確認します。 |
●左の写真、配線の接続部は、オールドJBLの象徴的なプッシュターミナルが装着されてます。
ターミナルが直で付いてるユニットは、何か高級感ありますね。
右はダンパー。
標準的な厚みのダンパーだが、物が大きいだけに動き(ストローク)も大きくなり、その分柔らかく感じます。
柔らかいダンパーと大きな動き(ストローク)は、すべてエッジで調整されてます。
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●そのエッジがこちら。
余分な振動が出にくいのがアコーディオンエッジの特徴となり、大型ユニットではより有利な構造でもあります。
ほとんどのアコーディオンエッジはダンプ剤で動きを調整してるわけだが、年数が年数だけにご覧のよう、ほとんどのものが劣化しています。(左は白くてカサカサ、右は大幅な偏り)
このダンプ剤はダイヤトーンのよう、固まって完全に動かないというものはありません。
ですが逆にすかすか状態だったり、ダンプ剤がたれ落ち、コーンの動きが偏っているものがほとんどです。
音が出るから大丈夫!
なんて思っていても、それは本来の音ではありません。 |
JBLはウーファー命というほどウーファーに比重が多くかかっているので、ここはしっかりした補修が必須になる。
アコーディオンエッジの場合、まずは元のダンプ剤を取る・均すところから始めるわけだが、やらなくていいように感じる項目ほど、意外と大変な作業になったりします。
本格的にfoなどを図る装置は無いので、私の場合は経験と感での作業となり、とても神経を使います。
右の116A(20cmウーファー)も同時にメンテしてました。
一緒に動画を撮ったので、じっくり見てみてください。
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●次はMID・スコーカー。
モデル名は LE5-2 で、アルニコモデルになります。
パッと見10cmフルレンジくらいに見えるユニットです。 |
●こちらもウーファー同様、非常にしっかりした作りになっており、外装の塗装も凝っておりほぼ完璧です。
←JBLの特徴”赤封 ”が見えました。
車などと同じで、いじったかいじってないかがすぐに分かります。 |
●コーンの素材は紙になり、色が抜けた(焼けた)状態です。
所々に染みや傷もありました。
右写真、ダンパーはやけに小さく、動きも極小です。
オールドJBLは、ほとんどのユニットが布エッジ(+ダンプ剤)になっており、使用頻度や環境により、程度が大きく変わってきます。
MID(スコーカー)はウーファーと違い、ネットワークで下がカットされてる分、音出しでの動き(ストローク)も少なくなる。
だからダイヤトーンばりに、エッジがガチガチに硬くなってるものがほとんどなので、ここも入念にメンテしていきます。 |
●一般的3wayの場合、MID(スコーカー)の役目はボーカルにあり、人の声を活き活きさせる重要な役割があります。
だからこそ動作(ストローク)が大事になり、特に男性ボーカルでは著しく変わってくる。
ということで、こちらも動画を撮りました。
メンテ前→メンテ後の違いをお楽しみください。 |
●最後はツィーター。
初代4311から初代4312のほか、2wayの4301やLE26などなど、数多く採用されてるのがLE2シリーズ。
JBLの顔とも言えるほどのツィーターです。
スペック的には〜15kHだが、上の伸びも上々で物足りなさを感じさせません。
それと紙コーンという特性上、下の音に余裕があり、癖の少ないマイルドなフィーリングです。
耳当たりが良く、いつまでも聴いていられる音色なのも特徴です。 |
●LE25じゃないものはJBLの音じゃない、なんて言われる方もいるほど、人気のあるユニットです。
そんなLE25ですが、やはり年数による劣化がでており、布エッジ+ダンプ剤の状態もよくありません。
ツィーターだからメンテの必要はない!?
そんな事ありません。
LE系はメンテにより、ウーファー以上に音質が変わるのも特徴です。だから中途半端なメンテナンスではなく、しっかりしたレストア作業が必要なわけで、自信をもって紹介できるスピーカーに変わります。 |
●基本構造の良いLE系ですが、一番の弱点は
やはり”エッジ ”となる。
元々しっかりストロークするユニットでもあり、動く動かないでは音色のフィーリングがガラッと変わってきます。
それと表面に付けられたスポンジ。
無くても音は聴けるが、ツィーターから出る音の輻射・反射音などが考慮されたもので、やはり大事な素材と考えます。
今回は純正のウレタンスポンジ以上に効果を発揮する
「 低反発スポンジ 」を採用しました。
ヨーロピアンハイエンドモデルではよく使われている、音質に有利な素材です。
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