●続いて箱の補修に入ります。

←これは底面のスリ傷
これは普通に移動させただけで付くような軽い傷で
簡単に消すことができる。
だがこれ以上深い傷や打痕の場合
形は綺麗になるが補修痕は残ってしまう。

箱は年代物であり、使われた環境も様々です。
仕上がり具合は元の状態に左右されますが、
できるだけ綺麗に仕上げるには
丁寧な作業が必要になってきます。
●まずは軽く表面の汚れを取ります。
次に深い傷や打痕の補修。
表面の塗装ムラや染みが大きい場合は
軽くサンディング(サンダー)します。
最後は水研ぎ。
丁寧に軽く、そしてすばやくおこなうのがコツ。
表面の状態にもよるが、
私は800番から1000番からはじめ
1500番で仕上げます。
●ムラの状態を確認しながら吹上げます。
これは汚れではなく塗料。
ここまでやれば、ほとんどのムラはなくなり
新品のようなオーラをまといます。
●最後に仕上げ。
表面の状態により道具や素材も使い分けるのだが、
状態の良いものならワトコOILで3、4度塗り。
その後OIL研ぎをすれば新品同様に仕上がる。
 状態の悪い物は削り方も多いので
もっとウエッティーなオスモや蜜蝋を使います。
←は私が配合して作った蜜蝋で、品のある艶が特徴
2、3部艶で仕上がります。

真ん中は塗り込んだ状態。
全体に塗り2、3日放置し、また塗る。
それを状態を見ながら繰り返します。3、4回やれば完璧。
すぐに直したいなら、スプレーしてしまえば手っ取り早く綺麗になるのだが、やはり味は大事です。
手間はかかるが、年代物は丁寧にやるのが一番でしょう。
●さてこれはBWXのブルーバッフル。
JBLの代名詞ともいえるJBLブルーです。
この色、年代により若干配合が変わっているそうだが、
劣化状況も考えると、一台一台色合わせするのが無難です。
配合は正直教えたくないのだが、黄色、レモンイエローが
ポイントとだけ伝えておきましょう。

一般の方が補修する場合、アクリル絵の具が一番使いやすいかな。
ただし水性の場合は劣化や変化の度合いも大きくなるので
私は状態により塗料を使い分けます。

この程度の傷なら
簡単に目立たなくできます。
●大きい面で酷い場合は全体を塗りなおしますが
スリ傷程度の色差なら、指を使って馴染ませるのがベスト。
指はどんな道具よりも万能なんです。
●箱の補修が完成しました。

4301や4311は年数もずいぶんたっており
元の状態が良くても新品状態にするのは手間がかかります。
状態の悪い下なら中の上へ
普通の中なら上くらいに。
上物の中古といった感じでしょうか。
90年代後半〜2000年以降のものならずいぶん綺麗になるが、
それ以前のものはやはり
きちんと補修してやる必要がある。
OIL塗るだけでも綺麗には見えますが
比べるとまったくの別物です。
●お次はこれ
わりと重要なサランネット。
JBLは今でも木製フレームが多い。
特に年代物はほとんど木製で、
劣化は少ないものの、欠けたり割れたり
変形や膨張するような酷いものもある。
●今回は片方の膨張が酷かったので
作り直すことに。
●忠実に再現するのは、想像してたより大変でした。
一番はここで微妙な角度が付いている。
それと作り直すときのポイントだが
箱によって穴の位置が微妙に違っているので
一台一台現物合わせで作らないとスッポリはまってくれません。
以外な落とし穴かもしれませんね。
●最後はしっかり塗装して完成。
綺麗にできました。
●最後にネットを張ります。
今回は新品に張り替えました。
右は純正、ドラム式で念入りに洗ったもの。
左は純正ではないが、ほぼ同色の新品ネット。

ネットの張替えは以外に大変なので
ほとんどの方はファブリーズするだけだと思うが、
汚れに加え匂いなんかもつきやすいので
しっかりクリーニングしたい項目です。

 加え木製フレームの再塗装は必須でしょう。
後の耐久性にも大きく影響してきます。
私は全てのスピーカーをこのようにやってます。
 ●こちらは4301Bのプレート。
ネットに合わせて、プレートも新調しました。
赤丸がオリジナル。
何度も色合わせし、一番自然に見えるよう仕上げてみた。

ちなみにオリジナルは印刷が微妙に斜めってる。
これもアメリカンの特徴なのかな。
 ●ベースになる紙やOHPフィルムなど
自然な黒が出るように色々試しました。
少し綺麗すぎるかなとも思ったが、色味はいい感じに仕上がりました。
ネットも新品なので、相性はいいはずです。
●さて、ユニットのオーバーホールが完成しました。
全て分解
丁寧にさびを取り
保護剤でコーティング
組み上げて、エッジを張り完成。
今回はダンパーもやったので、3週間ほど多めにかかりました。
116Aは状態によりけりだが、
116Hは酷いものが多い。
ハーマンでダンパー部品か修理で1台2万くらいだった気がします。
ほんとうは新品のダンパーがベストだが
ウーファーだけに5、6万かかるのはちょっと考え物ですよね。
●こちらは4301WX
116A(ウーファー)アルニコと LE25-2(ツィーター)

LE25-2も、もちろん分解オーバーホールしています。
コーンは劣化や色差の状態にもよるが
極薄で塗装(カーボン系特殊塗料)してます。
時に見落とされがちなツィーターのエッジ部分。
ここもしっかりストロークできるよう、状態を復元させてます。
ただ拭けばいいってもんじゃありません。
●こちらは4301BWX
116H(ウーファー)と LE26(ツィーター)

116Aと116Hの音の違いは
わかりやすいが
LE25-2とLE26の違いは、単品で聞き比べしない限り
わかり難いレベルでした。
程度はどちらも似たような状態です。
●こちらも同様に仕上げました。
 ●ダンパーの状態。
円の中心に向かって動きが大きくなります。
構造より、たぶん新品ダンパーでも
中心部は微妙に下がっていると思います。
だからそんな状態で調整しました。
もちろん完全フラットにもできますし、
逆に上に上げた状態にもできます。

下がったダンパーはストローク量が減り
音質が違うのは当然だが、ビビリや劣化の原因にもなる。
116Aはやや下がっていても多少誤魔化しがききますが
116Hはしっかりおこうな必要があります。
ここまでメンテしてる方はほとんどいないと思うが、
まじめにやってるのはオーディオラボさんくらいですかね。
 ●端子はもちろん、
リード線や全ての接続部までしっかりメンテしてます。
 ●こつこつ仕上げて数ヶ月
 ●いよいよユニットを取り付け



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