●今回はテクニクスから発売された10F10というユニットを使った、キットのご紹介です。
このEAS-10F10はシリーズもので、ラインナップもかなり豊富。
それ以前、テクニクスから発売されてるユニット(単品)の多いこと多いこと。
私はテクニクス=スピーカーの印象がなく、唯一あげるなら昔持ってたターンテーブルくらいなんです。
フルレジ、メーカー製・単品ユニットで思いつくのが、ダイヤトーン「 P-610 」
以前取り扱いましたが、鳴らし始めからのポテンシャルの高さには驚くほどの実力でした。
今回の10F10は1987年、83年頃の610DAと同じあたりで、十分に年代物です。
そんな古〜いユニットのインプレッション、実力はいかなるものか!? |
Technics EAS-10F10 1987年 |
●メーカー解説:独自の高耐入力・高能率設計を採用したF10シリーズの10cmコーン型フルレンジユニット。 |
方式 |
1ウェイ・1スピーカー・バスレフ方式 |
使用ユニット |
全帯域用:10cmコーン型 |
再生周波数帯域 |
50Hz〜20000Hz |
インピーダンス |
8Ω |
出力音圧 |
90dB/W/m |
クロスオーバー周波数 |
なし |
外形寸法 |
幅200×高さ300×奥行230mm 約L |
重量 |
5kg |
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●詳細がわからないので、パナソニック問い合わせセンターやら修理窓口やら色々聞いてみたが、詳しい人にあたりませんでした。
このF10シリーズが発売されたとき、何社かの既製箱に組み合わせていたようで、パイオニアのような専用箱はなかったものの、
お勧め箱は純正指定品としてあったようです。
だがこの時代は自作する人も多く、
メーカーとしては、ユニットのみに力をそそいでいたようです。
当時のテクニクス担当者もやめてしまったようで、
詳しい話が聞けなく残念ですね。
詳細わかる方、教えてください。 |
●まずはユニットを外します。
ネジは普通の+
最初に目についたのが白いコーン。
素材は紙でしょうか、けっこう黄ばんでます。
紙コーンにアルミキャップの組み合わせは、
当時の流行だったのか?わりと多いですよね。
フレームは一般的なプレスで、表面はヘアライン仕上げ。
錆も少なく、品質の良さを感じます。
マグネットはご覧のよう大きく、とてもパワーありそう。 |
●傷やへこみはないものの、コーンの黄ばみが気になります。
それとエッジが若干固めなので、ここもメンテの必要がありそう。 |
●まずは黄ばみのシミ抜きから。
16cm以上のユニットや、2wayのウーファーなら塗装も視野に入れるとこだが、10cmという小口径、正直塗装はしたくない。
そこで洗剤を使いシミ抜き作業をおこないました。 |
●以前キッチンハイターのような強力なものを使ったとき、
すごく綺麗になった。
だがしかし・・・紙がボロボロになっていたという症状も。
なので今回は、弱めの染み抜き剤を使うことにしました。
写真のような施工をおこないます。
乾いたらまた塗るを繰り返すこと3回。
約一週間後 |
●こんなに綺麗になりました。
まだ少し黄ばんでますが、ビジュアル的には十分でしょう。 |
●コーンの表面をよく見ると、細かい模様がありますね。
←どアップ、見えやすく暗くしてます。
一見布っぽく見えるこの網目があったので
塗装はしないほうがいいと判断しました。
お次はエッジを柔らかくする作業。
完全なガチガチではないので、付着のダンプ剤を薄く伸ばせばいいでしょう。それで驚くほどストロークするようになる。
軽そうなコーン、どんな音が出るか楽しみですね。 |
●さて、箱の補修に入ります。
入手前は綺麗に見えたが・・・手元で見ると程度悪い。
焼けたようなすすれ感が所々にある。
大きな傷はないものの、小傷や欠けも。
これは汚れを落としたのち、全体をサンディングしなおしたほうがいいでしょう。妙面処理してある箱なので、けっこうめんどうです。
木目が消えてないかを確認しながらOIL塗っていきます。
OIL塗るたびに磨きをこない、それを2、3回繰り返します。
すると見違えるような箱に生まれかわります。 |
●背面、ターミナルもこんなだったので交換します。
箱の素材はパーチクルボードのようですね。
パーチクルボードは一番好きな素材。
ですが湿気にめっぽう弱いので
しっかり補強してやる必要がある。
そしてユニットを取り付け |
●完成!!
ぱっと見、新品同様に復活しました。 |
●木目や艶の塩梅も
いい感じに仕上がりました。
写真より実物のほうが綺麗です。 |
●フルレンジスピーカー、どこもやるとこないじゃんと思われがちですが、コーンの染み抜き、エッジの軟化、端子、フレーム磨き・クリーニング
箱、傷・欠けの補修、塗装、補強、チューニング。
ネット、クリーニング。
吸音材、ターミナル、ケーブルの交換などなど。
ざっと書いてもこれだけの項目がある。
今回はユニットの錆や、コーンやキャップに外傷がなかったので分解はしませんでしたが、オーバーホールとなるとさらに手間もかかります。
2way、3wayになると・・・気が遠くなりそうですね。
ですが最後はいつも
「 きちんとやって良かった 」
と思えるほど、よく鳴ってくれるんですよ。 |
●さて、エージングもそこそこに、さっそく音出しインプレッション。
まずは一言
「 なんだこれっ! 凄くいい! 」
古いフルレンジ、しかも小口径ときたら、ついスカキンサウンドを想像しがちだが、
鳴らしてびっくり、上から下まで、なんとバランスのいいことか。
そして突き刺さるような刺激もなく、柔らかくて心地いい。
特に感心したのが中域。
フルレンジの中域は団子になりやすく、ボーカルの輪郭がスッキリしてない事も多々ある。
だがこの10F10、中域に雑身がなく「 実にスッキリ 」したいい塩梅の声質でした。
そして低域もクリアーでいい。
軽すぎず重すぎない、聴いてて気持ちのいいズンドコ感がピンポイントで伝わってくる。
私的には大きめに感じた箱だが、きっとマッチングがドンピシャなんでしょうね。
当時の設計陣には脱帽です。
昔はFOSTEXの人気に押され、テクニクスはぱっとしなかったようない印象があります。
だが印象とは裏腹に、今聴いても十分なほどの実力でした。
フルレンジと言ったらもう一つ、マークオーディオが頭に浮かびます。
マークオーディオは、スーパーツィーター付いてるのか?と思うほど、綺麗な高域が特徴的。
そんな音色はアカぬけすぎと言いますか、綺麗すぎて逆に味気なく感じてしまう面もある。
逆に対象的なのが10F10。
味のあるパンチの効いたボーカルは、聴いてて断然気持ちいい。
他のスピーカーもそうですが、音がどんだけ出るではなく、自分にとっていかに気持ちいいか
それも大事な要素です。
フルレンジを一度は聴いてみたい!!
迫力があり、体感できる臨場感が欲しい!!って方なら、ダイヤトーン・P610Aがお勧め。
そんなにビンビンこなくていい、もっとコンパクトで、さらっと気持ちいいボーカルが聴きたい!!
そんな方には、この10F10のような小型で、パンチの効いた味のあるものがお勧めです。
最後に。
いやー日本製品、侮れませんね。
古いスピーカーの音色を聴いてみると、まれに驚くことがありますが、今回の10F10もその一つでした。
昔のダイヤトーンやパイオニアしかり、こんなに音がいいと現代のユニットもかたなしですね。
素晴らしいです、日本の製品は。
でも・・・一つ一つのパーツ・部品の完成度は完璧・・・だが完成品となると、なぜか外国製に押されてしまう・・・
そんなところが弱点に感じますが、今後の日本製にも期待したいです。
あらためて、日本人のそつのなさには感心するほどでした。
次回、超激レアスピーカーの登場(予定)、お楽しみに♪ ハーベス遅れてますm(_ _)m
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