●今回はちょっと珍品、RSLというメーカー(アメリカ)の、モニター2800 というスピーカー。
スタジオでは名の知れたRSLは、アメリカではJBLと人気を二分するほどのメーカーらしい。
でも日本ではあまりメジャーじゃないですよね。
この2800、ターミナル部に”ミッドサイズモニター ”と書かれており、
これより小さい2600や大きい3600が存在する。
確かにミッドサイズといいうだけの大きさではあるが、いささか微妙なサイズでもある。
情報も少なく、モニターということ以外何もわからないが、果たして実力はいかに!?
RSL 2800 1980年代頃 推定\10万円クラス
メーカー解説:
方式 3ウェイ・3スピーカー・密閉方式
使用ユニット 高域用:2.5cmドーム型 ・中域用:8cmコーン型 ・低域用:25cmコーン型
再生周波数帯域 40Hz〜30000Hz
インピーダンス
出力音圧 88dB/W/m
クロスオーバー周波数 800Hz、2.2KHz
外形寸法 幅285×高さ430×奥行310mm 約30L
重量 12kg
●エッジがXなのでまずは修理・貼り替え。エージングなしでの
まずは一言
「 うわ、なんだこれ、すごくいいじゃん 」

まず圧倒されたのが低域。
最近は小さめばかりだったせいか、25cmクラスともなると、質がまったく違いますね。
ただし大きいから凄い!!なんて言えるのは 以外に少ないのだが、この深みある低域には感服しました。
密閉ということも大きな要因だと思うが、重なり合った音とか、うねり具合とか、
そんな繊細な音がわかりやすいので、解像度高いなァ、なんて感じました。
そして量感もちょうどいい。
これでバスレフだったら、ブーミーすぎて聴けないような、そんな雰囲気すらうかがえる。
中域はやや凸気味で、いかにもモニターらしい質感。
そしてこの中域もかなりいい!!
濁りのない声質は浮上感が感じられるほど分解能力が高く、”抜群のリアリティ ”がある。
高域はニュートラル〜やや弱め、うるさいとか刺さるという嫌みは皆無。
低中高、それらすべてのマッチングがよく、非常にバランスのとれたスピーカーでした。
ちょっと驚きましたね。
低域の量感はすぐに感じるところだが、中域のリアルな声質が出てきたときは、
一気に引きこまれるほどでした。

アメリカのスタジオでは、JBLと並ぶほど人気のあるモニターらしいのだが、
その実力は十二分に感じることができました。
確かに物によっては、JBLよりいいような気がします。
いきなりの高パフォーマンスを発揮してきたモニター2800、さっそく内部検証にうつりましょう。
●高さ約40cm。
左隣の4311は60cm。
●奥行きはほぼ同じ30cm。
サイズのわりには、奥行きがある
といった感じですかね。
●ご覧のようにエッジがX
●ユニットを外します。
すべてのネジが六角ボルト&ナット仕様。
ボルトにはボンドが塗られており、
外れにくいのが何個かありました。

で、また切るはめに。
アメリカ製って・・・


ユニット外すと吸音材。
わりとビッシリ詰められているように見えるが、
実は4割程度で、空間もけっこうある。
●Fバッフルは2重。
シンプルな作りだが、こういうのを見ると
やる気が感じられますね。

左穴はミッドで、きちんと仕切られている。
フルレンジタイプのミッドなので、
仕切りが無いと大変なことになります。
●チクチクする吸音材をどけていくと
ネットワークが見えました!!
パッと見
 「 おっ、物量投資 」
そんな気さえするほど迫力あるネットワーク。
ハイ、ロー、ミッド、基本に忠実な作りでした。
●ツィーター。
一見ソフトドームに見えるが、ソフトじゃありません。
だが音質は比較的マイルド。
●ミッド(スコーカ―)
一見ケンウッドか?と思えるほどのデザイン。
音質は素直で、これ一個でも十分成り立つ音でした。
エッジはウレタンでまだ大丈夫だが、
耐久性を考え裏より補強します。
●ウーファー。
特にこれと言える特徴がないウーファー。
逆にそれがいいのかもしれません。
コーンは外国製品によくみられるようなプラスチック。
センターキャップも同素材で作られており、
そこがこだわりかもしれない。

口径の大きいユニットの場合、
コーンの動く量やエネルギーも大きいので、
エッジは伸縮性が強く、
やや厚みのあるものをチョイスしました。

実際に触れないと解らないが、
ダンピング具合がいい感じで仕上がりました◎
●オーバーホールの完成。
錆びがほとんどなかったので、
比較的スムーズにおこなえました。
●ユニットを取り付け
●完成!!いかがでしょう。外装は3部艶仕上げ。

最初にこのスピーカーを見た時、パッとYAMAHAのあれ↑を思いだした。
形からサイズから双子といえるほどよく似てる。
だから「 これも密閉だし、低音ちゃんと出るのか? 」そんな思いが、ふと横切っていた。

そして音出しした瞬間、そんな不安もぶっ飛ぶほどの音が出てくる。
密閉の長所である鋭いキレはもちろん、伸びるのにブーミー過ぎない、
そんな量感はまさに”絶妙の塩梅 ”で心地いい。
さらに解像度が高く、うねりや奥行き感も容易に感じ取れる、そんなすばらしい音質でした。
バスレフに改造することも考えていたのだが、音を聴いて すぐに必要ないと判断しました。

中域の程よい凸加減は、日本製スピーカーに多い傾向ですぐに馴染めます。
とくに浮上感が感じられるほど雑味の無い中域は、
アーティストの口元までリアルに再現 」するかのような解像度がある。
それがこのスピーカー、最大の特徴でしょう。

一般的な3wayの場合、ワイド感を狙うので、ボーカルはやや甘めになる。
甘いボーカルをシャープにしようとするので、高域が強過ぎる場合が多い。
こちらも3wayだが、”モニター設計が功を奏したのか ”、絶妙なフィーリングの中域は、
まるでそこに照準を合わせたような、そんな作り込みに感じました。
そのバランス感は”お見事!! ”というしかないほどです 。
今回はそれら持ち味を殺さぬよう、ポテンシャルを上げる極みチューンにしました。

元の音色がいいので、労せずに最高のボーカルが入手できました。
この背筋がゾクゾクする感じは、ロジャースのLS2以来でしょうか?中々聴けるもんじゃありません。
そして最後の写真にあるよう横置きも可能なので、
色々とセッティングを試したりと、変化が楽しめそうです。
低域の解像度が高いので、オーケストラの重厚な低域なんかも、十分堪能できるでしょう。
とにかくポテンシャルの高い スピーカーでした。


最後に。
久々に聴いた大口径の低域、腹にずんずんくる低域はやはりいいものですね。
これの前に聴いていたのがONKYOのD-40で、これだけサイズ差があるのは初めてかもしれません。
だからよけいに重低音が強く感じたというのもありそうです。
ただしこれの後にD-40を聴いても、ぜんぜん物足りなくなかったところは、D-40もあっぱれです。

アールニッパチと言う愛称をかってに付けたRSL2800、
JBLとはちょっと違った、まるでデトマソパンテーラのような、そんなスピーカーでした。
次回、引き続きアメリカ製モニターの登場。オーバーホールが大変なんです・・・。 お楽しみに♪

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