前回の予告通り、今回はDS-25Bの兄貴にあたるDS-251。
この251も改良型MKUがある。
このシーリーズ、何かばか売れだったようで、私の説明よりみなさまの方が詳しいかと存じます。
見た目から入る私にとって、MKUよりもこの251の方がOLDちっくで新鮮でした。
格子と言っていいんだろうか、このネット、まさにヴィンテージのオーラがぷんぷん漂ってくる。
MKUはネットや角の造形など普通っぽくなってしまったが、当時はあれが斬新だったんですかね?
簡単に1970年と言ってしまえばそれまでだが、もぅ40年前ですからね。いや〜凄い。
他の家電ではありえない現状だが、オーディオに関しては他に、
アンプやレコードプレーヤーなんかも、まだまだ現役選手が多いと思われる。
4年前くらいかSANSUIのAU-777というアンプを所有していたが、ある日突然「 ボンッ 」と音がして、
先立ってしまう。その後AU-666を入手。たまーにしか火を入れてませんが、快調A元気です。
ヴィンテージには歴史の重みがあり、それに浸れる酔狂もまた、いいものではないでしょうか。
それではさっそく、気持ちを込めオーバーホールしましょう。


DIATONE DS-251 1970年 \25,000(1台)
メーカー解説:DSシリーズ第三弾として2ウェイのスピーカーシステムにスーパートゥイーターを追加した
3ウェイ構成のスピーカーシステム。
方式 3ウェイ・3スピーカー・アコースティックエアーサスペンション方式
使用ユニット 低域用:25cmコーン型
高域用: 5cmコーン型
超高域用:3cmコーン型
再生周波数帯域 40Hz〜25kHz
インピーダンス
出力音圧 91dB/W/m
クロスオーバー周波数 2kHz、10kHz  ・レベルコントロール 2kHz〜25kHz、3ポジション
外形寸法 幅315×高さ525×奥行215mm
重量 10kg
前から見ると結構な大きさだが、その割に奥行きはかなり薄く感じる(215mm)。
写真は奇麗に見えます?実物は所々傷だらけ、角の潰れもありますが、まァ許容範囲かな。
動作は問題なしでインプレに移りたい・・・だがこの写真で、何か違和感を感じたあなた、超鋭いですよ。
では、気を取り直し
まずは一言
「 やばいねこれ。すごくいいよー 」
聴いた瞬間から感じられる実像、リアリティに関しては一線を画す実力ですね。

高域
最近の物のような、伸びやかさは足りない。
だが繊細で、透明感バツグン、心地いい刺激。

中域
響は少なめで、とても自然に感じる。
凸加減はアッテネーターで変化できるが、
中立の位置では、ナチュラルでありつつリアルさもある。
ウーファーとの繋がりも自然で、癖や違和感はまったく無い。

低域
エッジのせいか?量感は微妙。ボーンというド迫力な伸びは少ない。
だがわりと低い音は聞こえてきて、うねりも微妙に感じられる。
大口径で紙コーン、特に古いウーファーは、中域に癖のあるものが多く、
完全なウーファーとしての使い方しかできないと感じているが
このウーファー、中域の癖がほとんどないような気がする。
これがアルニコの恩恵なのか?と考えさせられた。
ガウス計る機器を持ってないので、磁力がどのくらい?なんて事は解らないが、
どちらにせよ、いい音で鳴っているのは確か。

全体音
まさに”リアル ”のお手本のようなスピーカー。
すべてにおいて、バランスが整っている。
密閉にありがちな軽い音ではなく、すべてが”軽やかに ”鳴っており、
バスレフには無いスピード感も持ち合わせている。
中域のうるさく感じる帯域や、響きの生じる帯域をネットワークで、
抑え込んでいるのかもしれないが、
それにしても極自然で癖がない。
これは加え密閉方式特有でもある、団子にならない解像度の良さもある。

例えば、ピアノの鍵盤をタッチする力強さ、
アコギやウッドベースなど、弦の波打つ余韻、
そんな繊細な音を”鮮明 ”に描写できる実力が感じられた。

スピーカーで音楽を聴くのはあたり前だが、
これは「 音を聞く 」と言う言葉が、あてはまるのではないだろうか。

ユニットの口径が大きいため、体で感じる音圧は十分だが、
その大きさの割には、ワイド感が少ないところが唯一の弱点。
当時の人はこの辺りを、ホーンで対応したのだろうか?という風にも感じられる。
ただし、余計な響きや嫌味な癖が無い分、
演奏の良し悪しなどを感じるには、もってこいのスピーカーで、
ある意味、モニターとも言える気がする。

嫌味な癖がほとんど無いので、この時点でネットワークをいじる気は毛頭無い。
逆にきちんと動作するようになると、どれほどの音が出てくるのか!?
わくわくどきどきしつつ、ホーバーホールを始めましょう。
問題の一つであるキャップの潰れ。ここだけなんで、ちゃちゃっと直しました。
そのツィーターを外します。プラスチックケースにすっぽり覆われてるが、それを外すとマグネットが出てきました。
アルニコですね!周りはぎっちり綿で覆われてます。さびはほとんど無い。
こちらスーパーツィーター。先にクリーニングしときました。
こちらもマグネットはアルニコ。ドーム中央には黒いスポンジが接着してある。
ドーム振動板の外周が、同じ素材で多めにとられているので、一見、一体成型かと思ったほど精巧にできている。
これ当時はかなり新鮮だったのかな?それだけの輝きを今でも放っている。
裏は少々白錆が出てますね。
ウーファー。これでフェライトだったら(大汗・・・ちょっとドキドキしながら外します。
アルニコでした(゚∇^d)  251は初めてのバラしだが、このウーファー何か見覚えがある・・・
錆はほとんどなし。
ダンパー(右)はヘタリも無く、まったく問題なし。
それにしてもこのフレームは凄いですね!ぶん投げたら重みで割れるかもしれるが、変形はしなそうです。
アルニコマグネットの形に加え、フレームが水平・垂直なんで、やたら角角してるように見える。
箱。アコースティックエアーサスペンションと言うだけあって、吸音材がぎっしり詰まっていた。
その吸音材を外すと、ネットワークがありました。
↑補強はこれだけだが無くても問題ないくらい、頑丈に作られている。材質はパーチクルボード。
ネットワーク。
これパッと見た瞬間「 いじれないオーラ 」が漂ってきました。それだけ「 真面目に作られている 」という事です。
コンデンサーの容量は全て標準値で問題なし。
古いスピーカー、特に外製はコンデンサーがいってる場合もあります。
大袈裟かもしれないが、これはこのスピーカーの敬意に表し、このまま使うのがいいでしょう。
あえてやるなら、同容量のコンデンサーに交換、グレードUPを謀る程度でいいと思う。
ウーファー。一番の問題であるエッジ。ここがスピーカーの要ですね。
その前に、↑気づきました?そうなんです、ウーファーが違うんですよー(T T)
これネジやハンダの付け方で感じたが、オーナー様がメーカー修理に出したんでしょね。
どうせなら、両方変えちゃっててくださいよー(  ̄っ ̄)
左はMKUで右が純正。最初ネットを外さないでチェックした時、音に違いはなく解りませんでした。
で、ネットを外し解った訳だが、それでも音質はほぼ同じでした。
その後、この状態で入念にチェックすると、中域は問題無いが、低域に少し差を感じる。
フレーム以外、マグネットサイズも印刷されてる型番すら同じ。エッジの調整で直ると思うが、
正直、ここで一気にテンション落ちました┐(-。ー;)┌
放置する私も私だが、こういうのを何も言わず、平気で売りさばく図太い神経、ヤフオク怖いっす(笑
気を取り直し、エッジを補修します。まずは垂れ落ちたダンプ剤を取り除く。
以前なら全部取ったところだが、前回の25BMKUでしっかり勉強した通り、Uの底は残しておく。
それだけじゃ足りないので、裏側よりかさ増し補修をおこなう。
その後エッジの動きを目と手の感触で確認。ストローク量や硬さなど、検証をじっくりやる。
入念に出音チェックをし終了。
エッジの形はUだが、全てが均等に稼働する訳じゃありません。
フレーム側よりもコーン側の方が動きが大きくなり、
Uの底に塗られたダンプ剤を支点に、動き・振動を分散する役目も担っているようにも感じた。
内側と外側の動きの違い、それはスピーカー全般に言える事だが、これは動きのポイントが微妙に違う。
経験しなければ絶対に解らなかった事で、前回の経験がさっそく役にたちました。
この特殊な塗り方のほうが音がいい!
という事ではなく、あくまでも元に戻したい、今回はそんな考えで補修しました。
私骨董が好きで、なんでも鑑定団はよく見ているが、今だに本物か偽物か見抜く事ができません(笑
そんなのも、経験なんでしょうね。
さて、箱の補修へ入ります。サイズが大きく、傷も多いんで、けっこう手間がかかりました。
加えてこれシートではなく、リアルウッド・突き板。
だから全体を研磨し、オイル+蜜蝋フィニッシュで、しっとり感が出るような仕上げにしました。
突き板の補修は全体を塗装するなど、シートより手間はかかるが、見違えるくらい奇麗になります。
写真を撮り忘れたが、背面がぽろぽろ崩れ気味だったので、補修後再塗装しました。
ユニットを取り付けていきます。
これ珍しい。+側だけ鈴メッキされたケーブル。どんな意図があったのか気になります。
なんだかこれ見てたら、自作ケーブル作りたくなってきました。
そのケーブルを再度ハンダ付けし
箱に取り付けます。右のマジックテープはペラペラ剥がれてたんで、再接着。
完成!いかがでしょう。
コーンは超極薄で再塗装。
塗料を濃くすれば、染み・汚れや色差をもっと目立たなくする事もできるが、ほどほどにしときました。
ツィーターは、左右非対称にして欲しかったですね。
ネットは何か古い匂いが漂ってたんで、気を使いながら洗いました。
背面のターミナルとアッテネーター。ターミナルを交換しようか悩んだが、とりあえず磨くだけに留めました。
2mmがギリギリといったところだが、ワンタッチは使いやすい。
この3段式アッテネーター、増大でSTWを10とするなら、標準で3、減少で0(OFF)くらいの具合。
けっこうガツンと変わるから、ソースによっては重宝します。
↑グラフは見事なフラットだがこの時代、音がいい悪いじゃなく、フラットを目指してたんですかね?
さて、今回はフルオリジナル、色んな意味でいじる気はおきませんでした(笑
気になる音だが、エージングをしっかりおこない音出しすると、
う〜〜〜ん、素晴らしい!!!
やばいっすねこのスピーカー。
エッジを補修した事により、中域の厚みも増し、低いうねりも十分堪能できるようになった。
ここは特に大事で、効果絶大。
密閉はとにかく、分解能力が桁はずれに違うと感じさせられる。

前回のDS-25Bしかり、どちらも気持ち良さは十分で、
これが”音の原点だ ”的な存在感を持ち合わせている。
DS-25Bは低域が伸びて重厚感がよく伝わり、小音量でも厚みがある。
ただ大音量にすると癖が少し顔を出す、というマイナス面も見られる。
この251は、小音量〜大音量でも安定したレスポンスで、癖はほとんど出ない。

アッテネーターでの音色の変化も大きい。
「 厚みのある音〜クリアーでリアルな質感 」といった違いが明確で、
無段階アッテネーターは調整を目的とするが、
これは音を”
楽しむ ”事が目的、という風に感じました。
これが本当の意味での、”なんでもこなす ”で、
モニター的にも使えるし、気持良く音楽を聴くこともできる。そんなスピーカーです。
だからソースは、オールジャンル好みに合わせて楽しめる。

TVの声も自然だし、奥行きが浅いので、
5.1のフロントやセンターに使う!なんて超渋くていいかもしれません。
この音で小型があればいいなァーなんて思うが、残念ながら無いですね。

最後に。
壮観なグリルを外した時、あれれ?と、やられた思いをした。
だがオークションでなければ、この手のスピーカーは入手しずらいのも事実。
そんな所がオークションの、山谷でもありますね。
古いスピーカーは良いものを持っており、もう一度聴いてみたい!
という御方も沢山おられるかと思うが、
とにかく選ぶ時は”
慎重に ”吟味してほしい。
機械物ですから、車と同じで当り外れが大きいですよね。
見た目は奇麗でも、素人には中々感じ取れない面がある。
私、以前は旧車(アメ車)を何台か乗っていた事がありますが、
いきつく所は”
程度 ”でした。
有名なショップで、相場の倍はする値段で購入した車もあるが、
対応の良さなど”
安心 ”も買っていたのかな?なんて今は思えます。
だから少々値が張っても、良い物を、
とくにワンオーナー品がお勧めです。

このDS-251。現役時代、こういう音を聴いてた人は、今でも音に対する感性が鋭いんでしょうね。
そういう観点で見ると、今の時代本物が無いから、何がいいのか悪いのかさえ解らない。
だから音に対する拘りを持つ人も少なくなる。ある意味かわいそうかもしれませんね。

さて、同じくらいのサイズでボーカルの良さそうな、ハーベスが気になるところですが、
次回、久々の外製で攻めてみます。お楽しみに。

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