だいぶ前になるが、チューニングを施した事のあるDIATONE DS-25B。
その改良型が、このDS-25BMKUである。
これはチューニング依頼品。
このスピーカーに対する並々ならぬ愛情が感じられた事や、私のメンテナンスに
好意をもって頂けた事など、オーナー様の気持ちが十分に伝わり、快くお引受けしました。
他の依頼はそのほとんどが被っており、今まであえてUPはしておりませんm(_ _)m
実はこれも25Bだとばっかり思っていたが、実はMKUでした。
なのでご紹介する、というところも正直あります(^^;
かなり好印象の残るBIGな2way 25Bだが、どれほど改良されたのか興味津々。
ではさっそく始めましょう。


DIATONE DS-25BmkU 1979年 \29,000(1台)
メーカー解説:
方式 2ウェイ2スピーカー・バスレフ方式
使用ユニット 低域用:25cmコーン型 ・高域用:5cmコーン型
再生周波数帯域 45Hz〜20kHz
インピーダンス
出力音圧 90dB/W/m
クロスオーバー周波数 1.5KHz
外形寸法 幅320×高さ570×奥行294mm
重量 13.5kg
2wayでのサイズしかり、こんなスピーカー今時皆無ですね。だから時代を感じさせる面もある。
動作に問題ないどころか実はこのウーファー、オーナー様が三菱の郡山工場(福島県)に送り
メンテナンスされているものである。
何か一人だけ職人が残っており、エッジのやり直しが可能だったらしい。
そんな話を聞かされており、届いたときからウーファーに目が釘付けでした(笑
パッっと見解るくらい、とにかく綺麗になっており、ストロークも十分です。

さて、さっそくインプレに入りましょう。
まずは一言
「 やっぱバランス感が絶妙で、気持ちいいなー 」

高域
しかっりとメリハリある明瞭さの中にも、
どこか透明感のある繊細さも持ち合わせている。
超高域は伸び悩みに感じるが、聴いててうっとりするくらい気持いい。

中域
ツィーターから出る中域と、ウーファーから出る中域が
5:5のような高バランスに聞こえる、リアル系クリアー質。
箱はフロントポートだが、それほど中域は乗ってこず、
ポート、箱、共に響きは抑えられている。
分厚い中域を想像してしまうほど大きいウーファーだが、
ウーファー音の上部がだいぶカットされており、
ユニットの癖や響きが出ないよう、調整されている感もある。
だから意外とスッキリしており、音数が少ないタイプとも言える。

低域
ボーボー出そうな程大きいウーファーだが、実はハギレのいいタイトな音。
そんな中にも、時折見せる超低音のうねりが、重厚感を与えている。
長時間聴いても不快にならず、なんとも気持ちがいい。

なるほどね。
これが新品に近い音なら、納得できるほどの奥深さが感じられた。

全体音
とにかく自然でリアリティ抜群。
ウーファーの動作もポイントで、重厚な低域が十分に感じられる、ウーファーらしい音に蘇っている。
そんな音に負けないくらい下まで伸ばされたツィーター。
このツィーターもまたいいですねー。
とにかくこのツィーターは、MIDの役割も十分に果たしており、
中域〜高域をすべてカバーするという意味では、これに勝てる物があるのか?
と思えるほど実力がある。
このツィーターだからこそ、全体音を適度に引締め、
リアリティを生みだしていると言っても、過言ではない。
どうもこのツィーターは私と相性がいいのか、昔よりとても気に入った品でもある。

25Bの改良型であるこのMKU。25Bと比較した印象だが、
とてもマイルドで聴きやすい、角を落とされたような音色に感じた。
アッテネーターは4段階のステップ式。
+1でキャラクターが変わるくらい変化するが、その他3段0-1-2では、
音色の変化はなく、能率を変えられた程度の加減。
初代25Bはここが3段だが、それはどれも変化の大きい具合だっただけに
少し残念にも感じた。

ウーファーが大きいという事もあるが、この音
今時の小型では出せない、何かを感じさせる一面がある。
だから私には、貴重なスピーカーと思えてならない。
そんなスピーカー、腕によりをかけてチューニングしましょう。

ユニットを外します。ネジは全て六角ボルト。
ウーファーは一度外してあるだけに、簡単に外れました。
内部、上-下。上に見えるのがネットワーク。
凄いネットワークが付いてる!?って実はチューン中の写真なんです(^^;
箱はかなり頑丈に作られているにもかかわらず、分厚い吸音材で箱鳴りはほぼ皆無。
アッテネーター。1回路5接点のロータリースイッチ。さびも無く奇麗です。
ウーファー。マグネットは小さめだが、とにかくフレームがやばいくらい頑丈な一品。
気になる方も多いと思われる、メーカー補修後のエッジ。ドアップで撮ってみた。
この中央部に集められたダンプ剤は正常だたんですね。
かなりの振動制御にも感じるが、ストロークは十分に確保されている。
裏は全面にしっかり塗られ、しっとりしています(右)。
このダンプ剤、よくカチカチになるような物ではなく、けっこう柔らかめで、ブチルゴムに近い質感。
だから浸透力が少ないのか、上下が↑のように布目がはっきり見えるほど。
なるほど。時間をかけじっくり検証したので、動作を十分に把握する事ができました。
オーナー様ありがとうございます。大変勉強になりました。
今後この素材さえ入手できれば、まったく同じようにする事ができると確信しました。
ツィーター。前面のカバーが大きいせいで、マグネットが小さく見えるが、実はけっこう大きめで厚みもある。
このツィーター、最新のウーファーと合わせてみたいですね。
ターミナルカバーを外すと、裏にネットワークが付けられてます。
なんだかちょっと、雑な取り付けに感じますね。
TW - 基本値は約1.2k カット。ウーファーはコンデンサーが小さいので解らないが、共に-12dB/oct。
年代が年代なだけに、接着剤は全部硬化し全滅パリパリ状態。剥き出しの金属部は、所々さびも出ていた。
とりあえず全てのパーツを外します。
トグルスイッチを取り付けます。
私のチューニングは、ノーマルとの切り替えが標準なので、このスイッチは必需品。
どんっと完成!
コンデンサー4個追加、内2個はJentzen Audio、コイルは1個追加。
起電力の影響に害されぬよう、コンデンサーは銅箔でしっかり巻き、
振動の影響を受けぬよう、全てのパーツはがっつり固定補強した。
ウーファー側コンデンサーとコイル、抵抗は元の部品のまま。
ちと窮屈そうだが、見た目だけでいい音でそうでしょ。
箱を補修します。ちょこちょこと傷や剥がれがあったので、全て補修後、半艶仕上げ。
このような溝、目じがむき出しなので塗装した。
私はネットを付けないでチューニングするので、こういう所が気になってくるんですよねー。
元はネットワークがむき出しになっていたので、そこを覆うよう吸音材を追加します。
ネットのほつれ、毛玉を取り、完成!!!いかがでしょう。
パッと見新品に近いレベルに仕上がってると思います。
まずこの切り替え式だが、下はノーマルで上はチューン後の音色に変わります。

オーナー様はこの25BMKUで、TVの音を流すと言う事でしたので、
TVの音、特に人の声がより自然に聞こえるよう、セッティングしてみた。

チューニングはまずウーファーを調整し、最後にツィーターを合わせるわけだが、
癖が強い場合、12dB/octを6dBやスルーにし様子を見る。
するとだいたいは緩和されマイルドに変わってくれる。
だがこのウーファー、
緩和されるどころかリミッターが解除されたがの如く、暴れっぷりを披露してきた。
だから私は”通常のやり方ではなく ”フィルターを2段がませにし、特殊なやり方で対応、
その癖を抑え込む事ができた。
この”フィルター ”のセッティングは超シビア。
はじめにイコライザーで、嫌味な帯域のメドを付ける。
次にその周辺帯域を、コイルとコンデンサーで微調整。
イコライザーでは調整しきれない帯域を、微妙なさじ加減で調整。
ビシッと決まるまでには時間がかかり、研ぎ澄まされた神経と息抜きも必要になる。
トライ&ゴーを繰り返し、かつ他のスピーカーとも比較しながら、ようやく決定。
そんな流れになる。
FOSTEX FE138ES-R で、専用のフィルターを作ったが、
それと同じノリで、嫌味な凸をマイルドに打ち消す、
いわゆる「
耳フラット 」ってやつですね。
これは測定器を使うとやり易くなりそうだが、それに頼るだけでは無理でしょう。

最後のツィーター。
ここも12dB→6dBにするとマイルドにはなるが、
声(中域)の輪郭が弱くなり、埋もれた状態、いわゆる音が団子になるという現象がおこる。
だから12dBのまま、繋がりを良くするという措置をおこなった。

この25BMKU、
とにかくセッティングの幅が狭く限られていて、すごく難しかった。
特にウーファーの癖、パッキパキの音は古いユニットや、大口径にはありがちで、
さすがメーカーは良く解っており、その癖が見事なほど絶妙な域でカットされている。
だからネットワークの定数などお構いなし、完全にヒヤリングで調整された感も伺えた。

ちょっとでもハンドル切るとすぐにテールスライドがおこり、慌ててカウンターをあてる。
終始ゼロカウンターをあて続けるような緊張感の中、
ようやくゴール(決まった)する事ができた、と言ったとこだろうか(笑

このようなチューニングは、私を信頼してもらわないとできません。
だから信頼関係の上で成り立つ事でもあり、商売にすると体がもちません(笑。
ただ部品代や、多少の手間賃はもらってます。
まァいつもアバウトで、食事代くらいでいいですよ!なんて感じだが、
私は金には変えられなない、経験を頂いてますから。
ちょっと、かっこつけすぎですね(笑
いずれにせよ
業者はこの手のチューニングをするかどうかは解らないが、外装まで全部ひっくるめると
かなり高額な料金が取られそう。
私のフィーリングが文章より伝わるのか?ありがたい事に依頼も多数寄せられます。
ただ、今は時間が取れなくなってきたので、ほとんどは御断りさせて頂いてますm(_ _)m

最後に。
経験上、初代のスピーカーの方が、いい音で鳴る事が多かったが、
この25BMKU、初代25Bより更に自然な方向へと、煮詰められている事がわかった。

改良され引き継がれるスピーカー、果たして”何を求めているのか? ”
 それは、「 うっとりするくらい心地いい、幸せな気分になれる空間表現 」
  それが一つの答だと、このスピーカーをメンテしていてつくづく思いました。

ヴィンテージとも言えるほど年期のはいったスピーカー、
 だが実力はあなどれません。
70年代という時代のせいか、人も機械も勢いがある時は、さすが違うという印象。
スピーカーの改良は”こうあって欲しい ”と思えたなど、色々と勉強になりました。

次回、70年代Part2です。お楽しみに^^

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