●KENWOOD LS-11 M
スタンダードな大型3wayを、まんまコンパクトにした、このLS-11。
見た瞬間「 かわいい 」と思えるほど愛嬌がある。
もぅ20年選手で、10年前なら「 古臭いなぁ〜 」かもしれないが、今見ると「 超新鮮! 」
黒と2種類あるが、こちらは濃いブラウンに、うっすらしたゴールドフレームが洒落ている。
YAMAHA 1000MM や JBL 4312M もこういうノリなんですかね?
さてエッジがダメなんで、さっそくメンテナンスに取りかかりましょう。
KENWOOD LS-11/LS-11M 1988年 \50,000(ペア) |
●メーカー解説:デジタル対応の小型高性能をコンセプトとし、
先進のテクノロジーを投入して開発された小型スピーカーシステム。 |
方式 |
3ウェイ・3スピーカー・バスレフ方式・防磁設計 |
使用ユニット |
低域用:19cmコーン型
中域用: 8cmセミドーム型
高域用:1.6cmドーム型 |
再生周波数帯域 |
40Hz〜50kHz |
インピーダンス |
6Ω |
出力音圧 |
91dB/W/m |
クロスオーバー周波数 |
1kHz、5kHz |
外形寸法 |
幅215×高さ382×奥行205mm |
重量 |
7.5kg |
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●ダイヤトーンDS-200Zと並べてみたが、いかに小さいかが分かるでしょ。
エッジを張り替え、エージングしてからのインプレです。
まず一言
「 何だこれ?低音がぜんぜん出ない上、中域がかなりつっぱってる 」だめだね。
高域
キラキラとした伸びは少ないが、柔らかく疲れない音。
変に突き刺さるような刺激や癖も無く、
アッテネーターを全開にしても、うるさくならない。
中域
金属ではなく、紙っぽさのある柔らかい音だが、
妙なつっぱり感があり、ここが一番(かなり)主張してくる。
特にモノラルで聴くと、つっぱりが目立ち、ボーカルは不自然。
つっぱりの恩恵として「 浮上感 」があるのと、小型特有である定位の良さも備わってる。
なんかに似てるなー、としばらく考えてみると、
DENON E757のニュアンスに似てるかもしれません、中域がね。
低域
中見ちゃってるんで、あれですけど・・・
フロントポートだが、前に出る押し出し感や、箱の響きは少なめ。
その分、ユニットからきちんと音が出ており、タイトなキレ具合はいい。
19cmというサイズを考えると、量感はかなり少なめ。
全体音
飛び出す中域のせいで、バランスは悪く感じる。
だが、変にうるさい音ではなく、このまま聴けない事もない。
時代のせいか、いかにもTVで使えますよ!的なノリで、
ボーカル・声は非常に”聴きとりやすい ”
しばらく聴いてると、その聴きとりやすさは、妙に馴染んでしまいそうになる。
だがその妙なつっぱりは、ボーカルに不自然差を与え、ソースによっては、
バイオリン・ラッパなどが、変に聞こえるものもある。
アッテネーターでツィーターを、完全OFFにできるわけだが、
メーカー公称のクロス5KHzというより、フィーリングは2Kzくらいに感じる。
そんなところは3wayとして、”役割分担 ”はしっかりしてる、とも感じた。
だが現時点では、POPしか聴けないような音である。
つっぱり具合にも色々あり、文章でニュアンスを伝えるのは難しい。
中域のつっぱりは3wayの性なのか?
この手のスピーカーをチューニングすると、根詰めそうで、あまりやりたくないが、
このバランスの悪さと、不自然さはいだだけません。
一目惚れするほど愛着のある外観だが、やっぱ音が伴ってないとダメですよね。
長く使われるよう、がんばってみますか。 |
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●元はウレタンエッジでボロボロ。
この手のエッジを剥がすと、手が真っ黒・ベトベトになるが、手でやるのが一番効率がいい。
右は張り替え後。最近の自作エッジは、調子がいい。 |
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●マグネットサイズは普通だが、アルミフレームはしっかりしてますよ。 |
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●左、スコーカー(MID)。右、ツィーター。 |
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●フレームはプラ製だが、マグネットはしっかりしている。
スコーカーはツィーターとしても、ギリギリいけそうなほど伸びてるが、
ネットワークは、上をきっちりカットしてある。
その分、ツィーターから出る中域部分が多めに感じた。 |
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●ユニットを全部外します。
見てくださいこの箱、小さいからといって、妥協してるような点は、まったく見られません。
ツィーター後ろには、びっしりと吸音材。
スコーカーは完全に箱(MDF)で覆われた、独立型。
ウーファー後は、硬くて丈夫な綿がカップ型に配置されており、ほぼ密閉のようなノリ。
箱は一周、綿が貼られている。
ネットワークも完全独立型。右写真で見えるのが、スコーカーとウーファー。
アッテネーターの上辺りに、ツィーター用ネットワークが取り付けられている。
これほんとに5万円?実売価格は×6〜7くらいでしょうが、これだけ入念に作り込まれている事や、
部品点数の多さから考えても、大丈夫?と心配するくらい、コストがかかっていると思われる。
現在、安い材料を探し、自作したとしても、5万で納まるかどうか?
いやァ〜立派なもんです。比率で考えるとゴッキュッパより上ではないでしょうか? |
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●矢印はスコーカー裏の独立箱。
右はウーファーのネットワークで、約1.1Kカットの12dB/oct |
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●部品を外していきます。右はスコーカーのネットワークを外しました。矢印にある、爪(3点)で取り付けられている訳だが、
場所が場所だけに、外すのに苦労します。
部品を交換し、出音をテスト。 |
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●で、チューニングが完了!コンデンサーを2個交換。丸コイルの巻き数を変え、抵抗を追加。
ツィーター側は、アッテネーターがあるので、オリジナルのまま。
最近は特に振動対策にも凝っており、がっつり補強してる。 |
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●ユニットのクリーニングが完了。TWとMIDのフレームは奇麗だが、ウーファーに少し錆が出ています。
これうっすらしたゴールドなんで、それが消えないよう、軽く磨く程度に留めました。
右はウーファー・コーンに、ブチルゴムを均等に4ヶ所貼りました(ポイント1)。
これで中域の癖もだいぶ治まり、低い音の量感もアップします。 |
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●箱の傷や剥がれを補修。半艶で仕上げます。
右の写真だが、このカップ型の吸音材、外したりひっくり返したりと、色々試してみた。
結果、完全に外すのが一番量感出るが、箱鳴りも大きくなり、少し不快に感じる。
ここでポイント2だが、少しだけ折り返し、音道を作る。
1との相乗効果で、かなり質感の良い低域が出るようになる。これでひとまず、安心できた。 |
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●ネジもフレームに合わせたゴールドで、凝ってます。そのネジを取り付け |
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●完成!!!硬派って感じで、見たくれいいですよね。 |
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●3wayの場合、アッテネーターは必須かもしれませんね。 |
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●スピーカー背面に、大きなKENWOODのロゴ。
これ何かで見たような記憶があるが、こんなノリのスピーカー沢山ありました? |
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●↑図はチューニング後のイメージが一目瞭然ですよね。
簡単に言うと、元は軽くて薄っぺらい音。
まずは中域の凸をフラットにする。
次は低域に厚みを持たせたいのだが、わざわざポイントと書いた通り、
結構苦労した。
だいぶ重みは出たが、私的にはもぅ少し、ごっつい音が欲しいとも思う。
オリジナルで唯一の特徴と言えるのが、ボーカルの”聞きとりやすさ ”
不完全なバランスの中にも、中域には”浮上感 ”があった。
そんな特徴を少し残しつつ、バランスを均等に整えた結果、
抜群の「 リアリティ 」が生まれた。
三つのユニット、それぞれの繋がり具合も十分に配慮。
極自然、当り前のように一体化したバランスは、
感動が生まれるほど”気持の良い ”音になった。
「 こんなに違うのか! 」と自分でも驚くほど変化したスピーカーは、数多くあるが、
このLS-11は群を抜いた変わりよう。
まさに激変に価するチューニングで、潜在能力を十分に出し切れたと言えるでしょう。
私はメンテやチューニングの完成後、6時間以上ぶっ続けで聴き込みます。
その後、ここに載せる文章の後半を書くわけだが、長時間聴く事により解る事があります。
それは「 気持ち良さ 」
これは、長時間聴いて始めて感じる事でもあり、
いい音だと感じても、その気持ち良さが味わえないスピーカーもあります。
これは意外に、大事なところではないでしょうか。
他に感じた事だが、
2wayは、「 リアル⇔厚み 」などの表現は容易だが、奥行きや浮上感を出すのは難しい。
3wayは逆で「 浮上感 」を出すのは容易だが、自然な厚みやリアリティを表現するのは難しい。
だから2wayでは「 浮上感を 」3wayでは「 自然なリアリティを 」
そんな所に重点を置く事も、心がけており、
チューニングでしか出せない、世界観でもある。
元はPOP以外、とても聴けたもんじゃないくらいに感じたので、
今回は、どれだけ自然にクラシックが聴けるか?に焦点を絞った。
その結果として、上記のように変化した訳だが、
POP6:4クラシックくらいのノリですかね。
最後に。
写真で見ると、このLS-11の後継機、ESやEXの方が、お洒落でいい感じにに思えたが、
実際にこれを所有してみると、何かジャンルが違うと言うか、妙な愛着が沸いてきます。
これが「 古き良き時代のパワー 」なのか?
だが見たくれだけでスピーカーは成り立ちません。
その愛着を維持するには、音が伴ってなければなりませんよね。
SX-V1Xの後だけに、聴いた瞬間がっかりしましたが、
フルチューンでセッティングも決まり、なんとかいい塩梅にもってくる事ができました。
この手のスピーカー、他メーカーもそうかもしれないが、
非常に凝った作りや部品点数の多さなど、それだけでも感心でき、価値がある。
なんかKENWOODが、好きになってきたかもしれません(笑
そうなると、気になるのはLS-10やLS-100。
LS-CX7なんて高いスピーカーもあったんですね。
機会があれば、聴いてみたいものです。
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