KENWOOD LS-11 M
スタンダードな大型3wayを、まんまコンパクトにした、このLS-11。
見た瞬間「
かわいい 」と思えるほど愛嬌がある。
もぅ20年選手で、10年前なら「 古臭いなぁ〜 」かもしれないが、今見ると「
超新鮮!
黒と2種類あるが、こちらは濃いブラウンに、うっすらしたゴールドフレームが洒落ている。
YAMAHA 1000MM や JBL 4312M もこういうノリなんですかね?

さてエッジがダメなんで、さっそくメンテナンスに取りかかりましょう。


KENWOOD LS-11/LS-11M 1988年 \50,000(ペア)
メーカー解説:デジタル対応の小型高性能をコンセプトとし、
先進のテクノロジーを投入して開発された小型スピーカーシステム。
方式 3ウェイ・3スピーカー・バスレフ方式・防磁設計
使用ユニット 低域用:19cmコーン型
中域用: 8cmセミドーム型
高域用:1.6cmドーム型
再生周波数帯域 40Hz〜50kHz
インピーダンス
出力音圧 91dB/W/m
クロスオーバー周波数 1kHz、5kHz
外形寸法 幅215×高さ382×奥行205mm
重量 7.5kg
ダイヤトーンDS-200Zと並べてみたが、いかに小さいかが分かるでしょ。
エッジを張り替え、エージングしてからのインプレです。

まず一言
「 何だこれ?低音がぜんぜん出ない上、中域がかなりつっぱってる 」だめだね。

高域
キラキラとした伸びは少ないが、柔らかく疲れない音。
変に突き刺さるような刺激や癖も無く、
アッテネーターを全開にしても、うるさくならない。

中域
金属ではなく、紙っぽさのある柔らかい音だが、
妙なつっぱり感があり、ここが一番(かなり)主張してくる。
特にモノラルで聴くと、つっぱりが目立ち、ボーカルは不自然。
つっぱりの恩恵として「 浮上感 」があるのと、小型特有である定位の良さも備わってる。
なんかに似てるなー、としばらく考えてみると、
DENON E757のニュアンスに似てるかもしれません、中域がね。

低域
中見ちゃってるんで、あれですけど・・・
フロントポートだが、前に出る押し出し感や、箱の響きは少なめ。
その分、ユニットからきちんと音が出ており、タイトなキレ具合はいい。
19cmというサイズを考えると、量感はかなり少なめ。

全体音
飛び出す中域のせいで、バランスは悪く感じる。
だが、変にうるさい音ではなく、このまま聴けない事もない。

時代のせいか、いかにもTVで使えますよ!的なノリで、
ボーカル・声は非常に”聴きとりやすい
しばらく聴いてると、その聴きとりやすさは、妙に馴染んでしまいそうになる。
だがその妙なつっぱりは、ボーカルに不自然差を与え、ソースによっては、
バイオリン・ラッパなどが、変に聞こえるものもある。

アッテネーターでツィーターを、完全OFFにできるわけだが、
メーカー公称のクロス5KHzというより、フィーリングは2Kzくらいに感じる。
そんなところは3wayとして、”役割分担 ”はしっかりしてる、とも感じた。
だが現時点では、POPしか聴けないような音である。

つっぱり具合にも色々あり、文章でニュアンスを伝えるのは難しい。
中域のつっぱりは3wayの性なのか?
この手のスピーカーをチューニングすると、根詰めそうで、あまりやりたくないが、
このバランスの悪さと、不自然さはいだだけません。

一目惚れするほど愛着のある外観だが、やっぱ音が伴ってないとダメですよね。
長く使われるよう、がんばってみますか。
元はウレタンエッジでボロボロ。
この手のエッジを剥がすと、手が真っ黒・ベトベトになるが、手でやるのが一番効率がいい。
右は張り替え後。最近の自作エッジは、調子がいい。
マグネットサイズは普通だが、アルミフレームはしっかりしてますよ。
左、スコーカー(MID)。右、ツィーター。
フレームはプラ製だが、マグネットはしっかりしている。
スコーカーはツィーターとしても、ギリギリいけそうなほど伸びてるが、
ネットワークは、上をきっちりカットしてある。
その分、ツィーターから出る中域部分が多めに感じた。
ユニットを全部外します。
見てくださいこの箱、小さいからといって、妥協してるような点は、まったく見られません。
ツィーター後ろには、びっしりと吸音材。
スコーカーは完全に箱(MDF)で覆われた、独立型。
ウーファー後は、硬くて丈夫な綿がカップ型に配置されており、ほぼ密閉のようなノリ。
箱は一周、綿が貼られている。
ネットワークも完全独立型。右写真で見えるのが、スコーカーとウーファー。
アッテネーターの上辺りに、ツィーター用ネットワークが取り付けられている。

これほんとに5万円?実売価格は×6〜7くらいでしょうが、これだけ入念に作り込まれている事や、
部品点数の多さから考えても、大丈夫?と心配するくらい、コストがかかっていると思われる。
現在、安い材料を探し、自作したとしても、5万で納まるかどうか?
いやァ〜立派なもんです。比率で考えるとゴッキュッパより上ではないでしょうか?
矢印はスコーカー裏の独立箱。
右はウーファーのネットワークで、約1.1Kカットの12dB/oct
部品を外していきます。右はスコーカーのネットワークを外しました。矢印にある、爪(3点)で取り付けられている訳だが、
場所が場所だけに、外すのに苦労します。
部品を交換し、出音をテスト。
で、チューニングが完了!コンデンサーを2個交換。丸コイルの巻き数を変え、抵抗を追加。
ツィーター側は、アッテネーターがあるので、オリジナルのまま。
最近は特に振動対策にも凝っており、がっつり補強してる。
ユニットのクリーニングが完了。TWとMIDのフレームは奇麗だが、ウーファーに少し錆が出ています。
これうっすらしたゴールドなんで、それが消えないよう、軽く磨く程度に留めました。
右はウーファー・コーンに、ブチルゴムを均等に4ヶ所貼りました(
ポイント1)。
これで中域の癖もだいぶ治まり、低い音の量感もアップします。
箱の傷や剥がれを補修。半艶で仕上げます。
右の写真だが、このカップ型の吸音材、外したりひっくり返したりと、色々試してみた。
結果、完全に外すのが一番量感出るが、箱鳴りも大きくなり、少し不快に感じる。
ここで
ポイント2だが、少しだけ折り返し、音道を作る。
1との相乗効果で、かなり質感の良い低域が出るようになる。これでひとまず、安心できた。
ネジもフレームに合わせたゴールドで、凝ってます。そのネジを取り付け
完成!!!硬派って感じで、見たくれいいですよね。
3wayの場合、アッテネーターは必須かもしれませんね。
スピーカー背面に、大きなKENWOODのロゴ。
これ何かで見たような記憶があるが、こんなノリのスピーカー沢山ありました?
↑図はチューニング後のイメージが一目瞭然ですよね。
簡単に言うと、元は軽くて薄っぺらい音。
まずは中域の凸をフラットにする。
次は低域に厚みを持たせたいのだが、わざわざポイントと書いた通り、
結構苦労した。
だいぶ重みは出たが、私的にはもぅ少し、ごっつい音が欲しいとも思う。

オリジナルで唯一の特徴と言えるのが、ボーカルの”聞きとりやすさ
不完全なバランスの中にも、中域には”浮上感 ”があった。

そんな特徴を少し残しつつ、バランスを均等に整えた結果、
抜群の「
リアリティ 」が生まれた。
三つのユニット、それぞれの繋がり具合も十分に配慮。
極自然、当り前のように一体化したバランスは、
感動が生まれるほど”
気持の良い ”音になった。

「 こんなに違うのか! 」と自分でも驚くほど変化したスピーカーは、数多くあるが、
このLS-11は群を抜いた変わりよう。
まさに激変に価するチューニングで、潜在能力を十分に出し切れたと言えるでしょう。

私はメンテやチューニングの完成後、6時間以上ぶっ続けで聴き込みます。
その後、ここに載せる文章の後半を書くわけだが、長時間聴く事により解る事があります。
それは「
気持ち良さ
これは、長時間聴いて始めて感じる事でもあり、
いい音だと感じても、その気持ち良さが味わえないスピーカーもあります。
これは意外に、大事なところではないでしょうか。

他に感じた事だが、
2wayは、「 リアル厚み 」などの表現は容易だが、奥行きや浮上感を出すのは難しい。
3wayは逆で「 浮上感 」を出すのは容易だが、自然な厚みやリアリティを表現するのは難しい。

だから
2wayでは「 浮上感を3wayでは「 自然なリアリティを
そんな所に重点を置く事も、心がけており、
チューニングでしか出せない、世界観でもある。

元はPOP以外、とても聴けたもんじゃないくらいに感じたので、
今回は、どれだけ自然にクラシックが聴けるか?に焦点を絞った。
その結果として、上記のように変化した訳だが、
POP6:4クラシックくらいのノリですかね。

最後に。
写真で見ると、このLS-11の後継機、ESやEXの方が、お洒落でいい感じにに思えたが、
実際にこれを所有してみると、何かジャンルが違うと言うか、妙な愛着が沸いてきます。
これが「 古き良き時代のパワー 」なのか?
だが見たくれだけでスピーカーは成り立ちません。
その愛着を維持するには、音が伴ってなければなりませんよね。

SX-V1Xの後だけに、聴いた瞬間がっかりしましたが、
フルチューンでセッティングも決まり、なんとかいい塩梅にもってくる事ができました。

この手のスピーカー、他メーカーもそうかもしれないが、
非常に凝った作りや部品点数の多さなど、それだけでも感心でき、価値がある。
なんかKENWOODが、好きになってきたかもしれません(笑
そうなると、気になるのはLS-10やLS-100。
LS-CX7なんて高いスピーカーもあったんですね。
機会があれば、聴いてみたいものです。


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