凄いポテンシャルを持ちながら、じっと内に秘めている。
そんな秘めたる闘志は、まるで”羊の皮を被った狼 ”的なイメージのあるビクターJVC

80年代スピーカー、ビクターは多く扱ってきた訳だはないが、
その作りの良さ、特にネットワークには光る物があった。

現在は、JVC・ケンウッドに統合されてしまったが、
ケンウッドの発想力と、ビクターの落ち着いた音色が加われば、
2倍にも3倍にも、飛躍向上する事が期待できそう。(がんばれ)

ビクター、90年代を代表するスピーカーであるSX-V1-M
その後V1A、V1Xと改良されてきたスピーカーだが、
最終モデルが、このSX-V1Xになる。
幸いな事に、初代V1も所有しているので、
今回は「 SX-V1 vs SX-V1X 」と題しまして、徹底検証と解体マニュアルを織り交ぜ
紹介していきたいと思います。


VICTOR SX-V1X 1999年 \175,000(ペア)
メーカー解説:
方式 2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式・防磁型(EIAJ)
使用ユニット 低域用:14.5cmコーン型 ・高域用:2.5cmドーム型
再生周波数帯域 55Hz〜40kHz
インピーダンス
出力音圧 87dB/W/m
クロスオーバー周波数 4KHz
外形寸法 幅200×高さ343×奥行263mm
重量 8kg
まず目に飛び込んできたのが、この”美しさ
奇麗ですね-。マホガニーも、いい味でてる。
Fバッフルの黒鏡面だが、ご覧のように、縦帯のようなものが写ってますよね。
この反射的な帯は、見る角度で位置が変わります。
これは表面の仕上げが通常とは違い、たぶんスピンフィニッシュと言われるような仕上げ方ですね。
実際に見ると奥行きがあり、まるでアクリルスモークの中に、棒が2本入っている?ようにも見える。
この奥行感、何と言うか、合わせ鏡的なもので、素晴らしいギミックだと感心しました。
初代SX-V1(左)と、SX-V1Xを並べてみた。箱やユニットのサイズは、まったく同じ。
違いはユニット、ツィーターがアルミ?になった事と、この後ビクターが多く採用している、中心がズレたウーファー。
これは「 中高域の共振を分散し、滑らかな特性を実現している 」という物らしい。

さて早速インプレに入りますが、
今回はSX-V1を比較対象としながら、おこないたいと思う。

まずは一言(V1X)
落ち着きのある、紳士的な音色ですね-

高域
V1は、透明感、繊細差は持ち合わせているが、若干刺激が強い。
対して
V1Xは、その刺激が少しマイルドになっている。
体感的な伸びは、こちらがより感じられた。
ツィーター部に付いた拡散板的な物の恩恵か?レンジも若干広くなったような気がした。

中域
V1は、ユニットの能力が存分に発揮されてるが如く、非常に艶のある音色。
ネットワークの癖ではなく、ユニットと箱の響きによる凸が強め。
対して
V1Xは、その凸が抑えられ、響きも弱くマイルドになっている。

低域
V1は、フロントにポートがあるかの如く、押しの強い音がズンズン飛び出してくる。
響も加わり、少しブーミーに感じる時もあるほど。
対して
V1Xは、ここも響きが抑えられてる為か、前への押し出しは弱くなっている。
その分キレが増し、解像度の高い音が堪能できた。

全体音
基本的に音質は似ていて、傾向・出方に違いが感じられた。
V1の方が、明るく元気のいい音で、それに比べるとV1Xは、整った落ち着きのある音色。
V1は、完全な「 ボーカル専用スピーカー 」と思った方がいいでしょう。
中域の独特な癖は、少し鼻をつまんだような声に聞こえるソースもある。
ただこもっているのではなく、その辺りの” ”が独特の色気を醸し出している。
リアルとか自然と言える音ではないが、とにかく”声の美しさ ”に限っては、現存するスピーカーの中で
No,1の実力だと、私的に感じている。

V1Xは、
低・中・高域と全てにおいてマイルドになっており、聴きやすい音色に変化している。
能率が若干低めに感じられたり、中・高域の詰まった感じは否めない。
特筆できる中域の美しさは、V1と比較したので減少傾向に感じたが、
これはこれなりの響きも備わっている。
特にハイエンド的な”乾いたキレ ”が相まった低域は、
クラシック 」との相性が、抜群に良くなってる。
この低域、V1でいいっ!と感じたが、V1Xでは、さらに良くなってる。

V1(ボーカル専用)= V1X =B&W805(クラシック専用)

傾向として、↑のようにV1と805の中間的存在。
絶妙なさじ加減で、バランスの良さは光るが、
フルレンジ好きには、ピンとこない音かもしれません。

簡単な比較だが、かなりの優等生ぶりを発揮したV1X。
このままメインとして、十分に堪能できる実力がある。
だが直接対決したせいもあり、V1の不良的な音に魅了された私にとって、
何かが足りない、 と感じてしまうところもある。
特別音の傾向を変えようとは、まったく思わないが、
今の音を最大限に引き出してやりたい!そんな時は”
極みチューン ”に限ります。
という事で、さっそくメンテナンスに入りましょう。
〜 解体マニュアル 〜
さて、解体作業に取りかかります。
このスピーカー、他と比べ一筋縄じゃいきません。
多少神経を使う作業になり、SX-V1、V1A、V1X、全て共通になる。
まずは3本足の前2本(六角)を外します。
次は背面に四つある、ゴムキャップを外します。これが硬くて中々外れません。
緩いと困るものだが、本体に傷をつけぬよう、あて布をし-ドライバーなどでこじ開けます。
次に+ドライバーで、右写真のよう、奥にあるネジを外すわけですが、
長さ20cm程度のロングドライバーが必要になる。
V1はとにかくなめそうほど硬かったが、このV1Xは、逆に緩み気味でした。
ここでネジを、中に落としても大丈夫。ただユニットに傷をつけぬよう、ひっくり返し底に移動させておいた方がいいでしょう。
中のネジを外したら正面を向かせ、矢印の黒い凸(ラッチ)を外します。
手で回せないようなら、あて布をしペンチで軽く回すといいでしょう。
四つのラッチを外したら、六角ナットネジが見えます。
これを外せば、全てのネジ外しが完了です。おつかれさま。
本体をゆっくり起こしてやると、Fバッフルがゴツっとずれ、外れます。
この時誤って、ユニットのドームなどに指が触れると大変ですから、気をつけてください。
右は二個一で作ったドライバー。また必要になるとは、思いもしませんでした(笑
とにかく重い。ユニットも重いが、Fバッフル自体かなり重量がある。
ユニットの磁石はカバーで覆われており、ウーファーはアルニコ、ツィーターはフェライトだと思ったが、アルニコらしい。
裏を見ても美しさがありますね。
中心がズレたウーファー。中心に赤い点を付けてみたが、けっこう寄ってますよね。
パッと見た時、少し違和感を感じたが、慣れるものです。
コーンはクルトミューラー社製で、エッジはゴムが採用されてます。
弾力は申し分なく、今後も長く使えそうだが、より長持ちする為に、
裏側を液体ゴムで補強しました。これで安心できますよね。
出ましたスパイダーサスペンション(ダンパー)。これを初めて見た時は、衝撃的でした。
右はボイスコイル。フレームとギリギリの高さまで、紙が貼ってあります。
V1には表示が無かったような気もするが、なんと2Ω。
ただ、極端に聞こえないような感じはなく、一般的な6Ωと、同等の音量に感じました。
ツィーター。ここがV1、V1Aとは決定的に違いますね。
左の透明三菱は、少し柔軟なプラスチックで、ちょっとした衝撃でも割れる心配はなさそうです。
右は外したツィーター。振動板は何かの金属。フレームや受け皿も全て真鍮製で、
ゴールド振動板と相まり、非常に豪華仕様ですね。
音質はソフトドームに比べると硬めで、中域が凹み気味だが、伸びは十分に感じられる。
表示は6Ω。右の矢印、外した場合だが、リード線がむき出しになっており、誤って切れる事もあるので注意が必要。
これはいけませんね。
ネットワークやケーブル全般にも言える事だが、こういう部位に震動が伝わると、音質劣化につながります。
ツィーター振動板。
外した時、何か嫌な予感がしたので、メーカーに問い合わせてみた。
最初 オイル注入タイプに感じたが、 振動板に何か樹脂が塗ってあるもよう。
メーカーの回答もあいまいなものだったので、明確ではないが、たぶんダンプ剤的なものでしょう。
ただ現状は、かなり柔らかい液状になっており、オイルのような感じなんですよね。
その塗り物、目的は”空気漏れを防ぐ ”と言う回答でしたが
金属の振動板で空気漏れ?という所はピンとこないが、それのせいでとにかく汚れが付着していた。
付着したほこりなどで、部分的に凸凹が薄くできており、ゴミの付着により
この液体が維持できていた、という具合に感じられます。
メーカーが言うような、空気漏れを防ぐという目的は、このままでは達成できてないように思えます。

音に特別な問題はないので、このままにしようか?と悩みました。
ただ何事も見過ごせない性格と言いますか、結局
品質維持はもちろん、より良い音にする為に、オーバーホールする事にしました。

まずは精神上良くない、見た目をクリーニングし、汚れが付着しにくいよう、コーティング処理を施します(右写真)。
振動板裏側に、一応超極薄でダンプ剤を塗り、振動板を固定してるパーツ(黒丸)裏側周辺は、
スーパーXを極薄均等に塗り、再接着しました。

これで完全に”空気漏れを防ぐ ”という目的は、成しえてると思います。
こういうのは手の出しずらい物だが、このページを運営する上での真骨頂でもある。
結果オーバーホールをした事により、最初とは比較できないほど、より上品な音を奏でるようになり、
一安心できました。
箱に移ります。箱の内部、ネットワークや吸音材の量・配置など、こうして見てもV1と同じですね。
全てのパーツに比べ、ケーブルのみえらい貧相に感じます。
マホガニーの無垢板を使ってる事が確認できますね。ネットワークを外しました。
構成はV1とほぼ同じで、違いは抵抗が追加されている。
コンデンサーはu煤Aコイルも空芯で良い部品が使われている。
そのコイル、上の横置きに見える方は、グニャッとするわけではないが、いささか強度に不安もある。

ツィーターはコンデンサー2.2μF(実測)、コイル推定0.3〜4mH、12dB/oct、推定4Kカット。
ウーファーは2Ωで、推定値すらままならないが、おおよそ0.6〜8mH、6dB/oct、
耳で確認した限り、1〜2Kカットに感じた。
テスト。音の出方を確認をしてます。
さてここからは”極みチューン ”に入ります。
極みチューンとは、音の傾向は極力変えず、本来持っている能力を、そのままUPさせてやる。
だから部品グレードは、少々良いものを。ケーブルにはノイズ対策、マイナス強化など。
チューニング全般に言える事だが、振動対策はガッツリやる、そんなメニューになります。
コンデンサーはJentzen、ケーブルは1.25OFC銅線に、銀より線を追加したハイブリット方式。
コイルには、モールディング処理を施す。
左写真、上がそれ、下が何もしてない状態。
コイルを交換すると、本来の” ”が変わってしまう為、あえて交換しないが、
V1は交換してもいいかな?と思えます。
コンデンサーは写真の位置に追加。各部に震動対策を施し、完成!
ケーブル長は純正に合わせたが、もっと短めでも大丈夫でしたね。
ネットワークの取り付け。ただのネジ留めなので、ここも防振処理をしてから、ネジ留めします。
ちょっとした傷でも妥協無く仕上げる。全体は薄めに、ガラスコーティング処理を施した。
これは艶を出す為ではなく、汚れを付着しにくくさせる為。
あとは、逆の手順で組み上げていきます。
ここで最も注意しなければならないのが、背面からのネジ留め。
誤ってネジを箱内に落としてしまうと、またFバッフルを開けなくてはならない。
運が良ければ、ポートから出てくるかもしれないが・・・
ドライバーの先端部に両面テープを貼り、ネジをしっかり固定してから、作業に入るのがベストでしょう。
下側はポート穴より、ライトで確認できるが、上は手の感触でやるしかない。
しっかりネジ留めできたら、キャップをはめます。最後に足のピンをネジ留めし
完成!!!
とにかく奇麗。ツィーターはオーバーホールしたので、見違えるくらい奇麗に輝いてます。
補修したカ所以外、傷はありません。
写真だと鏡面テカテカにも見えるが、艶は上品な6部艶ってところ。
これは、元箱と説明書も付いてます。
同じマホガニーという事で、ケンウッドS270と比較してみた。上がS270で、突き板仕上げ。
S270は3部艶ってところなので、見え方が違うが、どちらも上品ですね。
マホガニーいいなぁ-。
今度これで、自作箱でも作ってみようかな?なんて思いますね。
これは説明書に載っていた周波数特性。上は40KHzまで、余裕で伸びてますね。
今回の”
極みチューン ”、右の赤丸あたりを、ほんの少し持ち上げたフィーリングにしました。
バランスイメージは載せませんが、上から下まで整ったバランスです。
こんな表があると、特徴が掴みやすい気もする。
だが音質向上につながるとは、思えませんけどね。
表から推察すると、1.5KHz辺りが凹んでいるが、これをフラットにする事もできます。
ただそれをやるとフルチューンになり、このV1Xの持ち味も変わってしまう。
V1Xを所有されてる方で、「 中・高域がもう少し・・・ 」って思ってる方は、チューニングをおススメします。

さて極みチューン後の、インプレに入りましょう。
傾向はほとんど変わらず、少しフン詰まり感のあった中・高域がぱーと明るくなり、
艶やかな衣装を身にまとったように変化した。
だからと言って、うるさくなったのではなく、
柔らかい高域が、より繊細に感じられ、超高域も気持ち良く体感できるようになりました。
V1のような聴き疲れするところは、まったくありません。
元々は、やや音離れの悪い面も感じられたが、
ツィーターから出る中域を、少しだけ伸ばした結果、ボーカルの輪郭はよりシャープに、
V1からは想像できないほど、リアリティが向上しました。

低域はV1もそうだが、元々素晴らしいものを持っている。
私の経験上、
ケンウッドのLSF-777、S270や、このV1系でしか”出せない音 ”があり、
金属バッフル ”のなせる技だと、大いに感じるところがある。

この素晴らしい低域を奏でる為の、一つの要素である
高剛性バッフル
これは今後、自作箱を作る際に、絶対にやりたい課題だとも思っている。

V1系は全て「 アルニコ 」ユニットが採用されている。
アルニコは少なく、どこがどうアルニコなのかは、ユニットによりけりになってしまうが、
このアルニコ、一つだけ言えるのは、誰が聴いても”いい音 ”に感じる事でしょう。
その独特の”
”が”色気 ”を醸し出しており、
そこがB&Wとの決定的な違いにも感じました。

ソースだが、基本的にオールジャンルで鳴らせます。
V1Xの場合、特にクラシックや楽器系との相性が、いいですね。
もちろんJZAAボーカルあたりなら、声の美しさも十分に堪能できるでしょう。
V1よりも癖が無く、自然でナチュラル傾向なので、TVや映画の音も楽しめるし、
5.1のフロントにも、もってこいでしょう。

最後に。
低域に関してだが、ウーファーの微細な違いなだけで、これだけ傾向が変わるとは、
正直驚きもありました。
数多くある2wayの中でも、これは優秀なスピーカーであり、また、それに負けない見た目の美しさも備わっている。
こういうのがまさに「 所有する喜び 」のあるスピーカーと言えるでしょう。

”いい音で好きな音楽を聴いてると、幸せな気分になる ”
同じ時間を使うなら、一度はこんなスピーカーを所有し、
音に癒される生活というのも、いいものですよ。
今回は特に”
美しさ ”を再認識、学ばされました。

こういうスピーカーの後って、正直やりずらいところもあるんですよね(^^;
次回は志向を変えて、古いのでも、ひっぱりだそうかな、などと考えております。

      ・・・        ・・・・・