●スタンダードな大型3wayスピーカー。
88年、何もかも脂がのってて、豊かな時代のイメージがある。
その時の象徴である”ゴッキュッパ戦争 ”の真只中にいた、この D-77XD。
コストを度外視したような作り込みや、パーツなどが隋書に見られる。
この価格帯では、次の年に発売されたXGと、このXDだけMIDに特徴がある。
ダイヤトーンのボロン風でもあり、コストがかけられている感がするこのMID、
そこが、選ぶポイントになり入手に至った。
さてこの大型3way、「 何をみいだせるか? 」
それが今回の着眼点であり、大型3wayをチューニングする上で、非常に重要な事だと思う。
奇麗な声が聞きたければ中型2wayで十分。
だからこそ、大型3wayに ”何を求める? ”何をみいだすかが、重要な鍵だと感じている。
チューニングが必要なのか?簡単か?難しい?は、やってみないと解らない。
そんなわけで、D-77XDのメンテナンスに入りたいと思う。
ONKYO D-77XD 1988年 \62,000(1台 |
●メーカー解説: |
方式 |
3ウェイ3スピーカー・バスレフ方式・防磁タイプ |
使用ユニット |
低域用:28cmピュア・クロスカーボンコーン型
中域用:8cm超硬度チタンドーム型
高域用:2.5cm超硬度チタンドーム型 |
再生周波数帯域 |
25Hz〜45000Hz |
インピーダンス |
6Ω |
出力音圧 |
91dB/W/m |
クロスオーバー周波数 |
400Hz、3KHz |
外形寸法 |
幅375×高さ680×奥行361mm |
重量 |
30kg |
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●ご覧のようにエッジがボロボロ。
なのでまず、エッジの張替が必要だが、ついでにTWとMIDもオーバーホールした。
その後のインプレです。
まずは一言
「 ちょっと中域が張りすぎですねー 」
高域
だいぶ多くの音が出ているようで、繊細な音が感じ難い。
明るめと言うより、うるさい。POPを長時間聴いてると、疲れます。
中域
見た目に特徴のあるMID。それが目当てで、このXDを選んだのだが・・・
悪くはない。だが見た目の特徴どおりというか、ここが一番主張してくる。
少し張り気味はいいとして、ツイーターとのバランスが悪いのか?”声が不自然 ”
ある帯域で、嫌味な音(癖)も目立つ。
そんな所は、D-200Uにそっくりと感じた。
低域
量感はそこそこある、だが少し中・高域にかき消され気味。
箱の響きは抑え気味で、ボーボー伸びる音は少なめ。
だが逆に、”タイトなキレ ”は気持ち良く感じられる。
だから解像度も高く感じられ、長時間聴いていても不快に感じる事はない。
全体音
重心が高めで、明るめと言うより、少しうるさい。
ドンシャリ音に、無理やり中域を飛び出させたというか。
箱の響きを上手に抑え、低く設定されたポート周波数も相まった低域は、中々良い。
だが、いかんせん中・高域が主張しすぎるので、良い部分も半減してしまう。
特に声の帯域、不自然で癖が感じる音はいただけない。
男性ボーカルはわりとましだが、女性ボーカルは電子音的。
ONKYOは低域が弱く感じるが、これは大口径な分、逆に”ちょうどいい ”と感じた。
当たり前かもしれないが、レンジは広い。
そんなところが、良いわけだが、
普段2wayを聴いていて、特別これに換える必要性は感じられない。
特にボーカルは、断然2wayのほうが自然に聞こえる。
だからこの手のタイプは、消えていくのかもしれませんね。
だからといって、大型3wayに魅力が無い訳ではありません。
D-200Uと同じように、何かが”もったいない ”という気がするわけで、
うまく説明できないが、優位性を感じるところはあります。
そんな訳で、とりあえずチューニングですね。
このサイズ、本格的にチューニングするのは、初の試み。
やってみないと解らない面もあるが、自信はある。
今回のメニューだが、
まずはきちんと”役割分担 ”させる。
次に、団子にならないよう注意しながら、自然な音を目指す。
最後にバランスを取る。
といったところ。さてはじめましょう。 |
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●ユニットを外します。ネジは六角。 ポートがでかい!ポート周波数は、約37Hz、低っ。
吸音材はD-200と同じようなノリで、周り一周にフェルト。
TW後は厚めに丸められたフェルトで、白い綿は、ネットワークを覆うよう背面に取り付けられていた。
背面の上半分、ターミナル周辺のみ、むきだしになっている。 |
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●この吸音材を剥がすと、ネットワークが出てきました。 |
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●ウーファー。
この手のものとしては、若干小さめ28cm。そこは、メーカーのこだわりらしい。
ご覧のようにゴムエッジはボロボロ。フレームは、わりとしっかりしている。マグネットは小さめ。 |
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●コーンは、他社も多く採用しているカーボン。何かと問題があるようだが、見た目は好みである。
とりあえず元のエッジを剥がします。温めると簡単で、注意点は矢印部、剥がし残しが無いようチェックします。 |
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●表。ゴムリング(接着)を剥がしてから、紙製のガスケットを剥がします。矢印部は段差。
この段際にエッジを貼るので、ちょっと剥がしにくいが、できるだけ奇麗に剥がします。 |
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●久々にエッジを作りました。大きいから楽というのもあるが、中々良いデキです。
私の場合、コーンに貼ってから、フレームに貼ります。
1個作ると、ついでに何個も作りたくなる。 |
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●ゴムカバーを接着し完成。念のため、フルパワーは翌日にします。 |
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●これはMID(スコーカー)。埃がすごい。
中々インパクトある形でしょ。ただこうしてバラして見ると、ちゃちく見えたりもします。
これはこれでいい音がします。
この後、ONKYOのMIDは普通になってしまうが、音が原因ではなく、コストダウンのように思う。 |
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●ドームは簡単に凹んでしまいそうなので、気を使いながらクリーニングする。
エッジは布製。動きを確認した後、極薄で液ゴムを塗っときます。
バラして清掃・組み直す。ようはオーバーホールですが、これをやるだけでもシャキッとします。 |
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●フレームの所々にサビが浮いてる。ここは簡素にペーパーのみの処理をおこなった。
簡素といっても、手作業なので大変。だからうっすらと、跡が残ってます。
完全に消すには、磨き込みが必要になり、手間なのでこの程度で収めました。 |
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●オーバーホールの完了。ツィーターも同じようにしたが、写真を取り忘れました。
取り忘れの原因が右写真。
TWとMIDは、バラす為にグレーのスポンジを剥がす必要があります。
個体差と思いたいが、この一個だけスポンジが極薄。
他はわりと奇麗に剥せたが、これはもぅビリビリに破ける始末。
破けて伸びたスポンジを、無理やり接着したので、右のようにしわが所々にできてしまう。
こういうの、ほんと困りますよね。 |
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●箱の補修に入る。
3cmほどの剥がれ・欠けが二ヶ所。天板にすり傷が多めだが、サイドは比較的奇麗。
底より拝借したシートで補修。木目を合わせてみたが、色味が微妙に違った。 |
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●ビニールなので、WAXで半艶に仕上げます。
こういうビニールシートに付いた傷の場合、ちょっとコツがいるが、アイロンで補正してやると奇麗になります。 |
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●背面。でかいですよね。100φで長さ20cm。
約37Hzなんで、相当パワーかけないと、空気の動きが感じられません。
念のため、内側にスポンジを貼っといてやります。 |
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●ネットワークを外しました。なんだかよく解りませんよね。逆に言えば、それだけしっかり作られているという事。
ターミナル裏(左)はMID用。右はTWとWF。TWとMIDが12dB。WFが18dB/oct。 |
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●裏、パターンの足りない所に、ジャンパーしてある。ツボは抑えた組み合わせです。 |
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●さて大改造を始めましょう。
こんな感じで音を確認。まずはMIDから始めます。
スルーでパワーかけるのが、一番悪い所を見ぬける場合もあるが、飛ぶ恐れもある。
やはり嫌味な”癖 ”は、ネットワークが原因でした。 |
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●次にTWを単発で確認後、MIDと音合わせをする(左写真)。
最後は右写真のようにWFも合わせ確認し、改良していく。
裸の場合、癖が出にくいので、ここまでは比較的簡単に終わります。
大変なのは、ここから。
箱にユニットを装着し、最終確認をするわけだが、一発でうまくいった事などありません。
大量のソースを使い、何度も微調整を繰り返します。 |
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●こういうの面倒なんで、ある程度メドをつけた部品は、先に外してます。
右は最終・一歩手前。
コイル4個、交換・巻き直し。コンデンサー2個交換。最終で部品の追加・交換して完了。
まァ詳しい人なら解ると思うが、こういう改造は音が激変しますが、チューナーしだいの所があり、
あくまでも私のフィーリングで、不快な音を改善しています。
例えば気に入ってる音ならば、同じ容量のコンデンサーをグレードアップする。
そんなんで、いいんじゃないでしょうか。
昔の大型コンデンサー、記載は10μFでも実測は13μFくらいあるので、そんなところが注意点になります。 |
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●ネットワークの取り付け部がひ弱なんで、厚めのスポンジをひいてやります。
チューニングしたネットワークを取り付け |
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●完成!!! 綺麗でしょ。 |
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●今回のバランスイメージは、改善したところが解りやすいかと思います。ノーマルの細い棒が不快な音(癖)の帯域。
さて、チューニングも完成し、じっくりと視聴します。
まずは一言
「 大型3wayって、こんなにいいのか!? 」
と自分で言うのもなんですが、ようやく3wayの優位性、魅力を感じる事ができました。
まず、不快な音を消す作業から始めたわけだが、6dB/octにすれば、簡単に改善できます。
だがそれだと、音が団子になり、3wayの意味が全く無いように感じました
次にTWとMIDの能率を落としてやる。
うるささは無くなりますが、癖は消えないし、低域が主張しすぎる、なんて事におちいります。
癖を消すには、そんなに単純ではありませんでした。
チューニングポイントは「 完全分離 」
これの場合、元はMIDから出るつっぱり音を、TWで覆いかぶせてる。
だから、中・高域が主張しすぎ”うるさい ”と感じた。
そこを改善すると、WFのつっぱりが気になってきたので、それも改善する。
3つのユニット、それぞれから出る帯域をきちんと”役割分担 ”させ、
適度に主張しつつ、かつ”自然 ”にする。
難しく感じるかもしれないが、あたりまえの事を、あたりまえにやっただけである。
簡単だが、元の400H、3KHzのクロスを、少し引き上げました。
その結果
「 一音一音がきちんと分離した、奥行きのある音 」が、しっかり感じられるようになりました。
こういうのを”高解像度 ”と言っていいかどうか分らないが、
ボーカルの後ろにいるバックコーラスや、ドラムとギターの位置関係などなど。
そんな分解能力は、フルレンジや2wayの比ではないほど、よく感じられました。
そんな魅力を発見できたわけだが、もぅ一つの魅力である”ワイドレンジ ”
特にLive録音などは、ふわ〜っと広がり、
Diana Krallなんかを聴いてますと、まるで”特等席 ”にいるかのような、錯覚さえ覚えます。
感動を長時間、聴き疲れする点も、だいぶ改善できたようです。
難しかった点は、能率合わせ。いわゆる全体の”バランス ”
ちょっとでも上を下げ過ぎると下が出すぎるし、逆もある。
これは、大口径ウーファーという点でもあり、ソースによって激変するので、かなり神経削られる。
面倒だが、必ず箱に入れステレオで視聴、そんな事を繰り返しました。
今回は私の好みに合わせたと言うより、癖をマイルドにし、バランスを整えたチューニング。
だから必然的にドンシャリ傾向になり、中域・ボーカルをフラットに持っていくのが精一杯でした。
そんな訳でソースだが、
クラシック全般、JAZZ・楽器系は、抜群に相性がいいです。
どちらかと言うとリアル系「 モニター調 」の音色。
派手さは無いが、落ち着いた音で、ソースの善し悪しが簡単に判別できてしまう。
だからボーカルものはソースにより、合う合わないが激しいと感じました。
最後に。
今回のチューニング、好みの方向ではないが具合は良く、「 自信有り 」に仕上がった作品です。
2、3年前なら、このようなチューニングはやらなかった、
というか、できなかったでしょうね。
それだけスキルが上がったのかな? なんて実感も沸いてます。
簡単と難しいが乱立した大型3wayですが、懐の深いところなど、おもしろ味もある。
今後、はまりそうな予感がします。
ただし作業スペースを拡大しないと厳しいですね。
YAMAHA NS-1000Mは、ぜひやってみたい、と思ったしだいです。
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