さて、パート4一番目は、思いれもあるメーカー「 DIATONE 」の DS-200Z 。

この分野、日本が堂々と誇れる、すばらしいメーカーです。
ですが残念な事に、今ではもぅこの手のスピーカーは作っておりません。
そんなスピーカーですから、今後も大切に使われるよう、しっかりとメンテナンスをしたいと思います。


DIATONE DS-200Z 1992年 ペア 60000円
メーカー解説:★ダイヤトーンの上級機の技術を継承しつつ小型化を図ったスピーカーシステム。

★トゥイーター振動板には、固有共振を抑制する新合金素材であるH.D.(ハイダンピング)アロイを採用。

★独自のウーファー・ダイレクト・コネクション技術が投入されており、ウーファーの高域共振を物理的に分散させる事で
自然なロールオフ特性を得ています。
これにより、ネットワークを介さずに直接駆動することが可能となり、より純度の高い駆動を可能にしています。

★ネットワークにはハンダを使わない圧着配線方式を採用しています。
方式 2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式・防磁タイプ
使用ユニット 低域用:16cmコーン型 ・高域用:2.5cmドーム型
再生周波数帯域 45Hz〜32000Hz
インピーダンス
出力音圧 90dB/W/m
クロスオーバー周波数 5KHz
外形寸法 幅206×高さ333×奥行240mm
重量 6kg
DIATONEのスピーカーを所有された方は、お分かりかと思いますが、ほとんどのスピーカー
エッジが硬くて まともな音がでません
購入時より、毎日鳴らし続けている強者がいるかどうかは分かりませんが、
まずはエッジの修理が必須になります。
このスピーカーも発売より、18年近く経ってる。でもそんな風に見えないところがスピーカーですかね。
作業しやすいように、本体を寝かせます。
ウーファー、センターキャップだが、2重構造で外側はちょっと硬めなナイロンのような網になってます。
ウーファーのゴム枠を外します。接着ですが、ベリベリやっちゃってください。
コーンはFRPでリッチに見えるが、その他は普通ですね。
もぅガッチガチで、1mmも動いてないんじゃない?って程度。
エッジの色が茶色で珍しい。塗料でも混ぜてるのか?という具合です。
その表面に何が塗ってあるかわからないが、まずは表面を刃物で削ります。
どの道、このままじゃ使い物になりませんから、破れる事は心配せず、がっつり削ります。
右写真中央部はカス。硬いから削るのは楽ですよ。
↑は約半分削った後。これでもぜんぜん硬い。
一度全面を削った後、シンナーを塗りまた削ります。右は約3回くらい。
カスがセンター部に入ると取りずらいので、マスキングしたほうがいいでしょう。私はティッシュですが(^^;
これでも柔らかさは、40%ってところでしょうか。
次は裏側。 シンナーを浸した後、マイナスドライバーでゴリゴリ。
すると、溶けたダンプ剤が取れます。
シンナーを塗った後、溶けたダンプ剤を取るわけですが、シンナーが乾いてくるとダンプ剤が変色し、また硬化します。
それをゴリゴリやって取り除きます。この白いカスがダンプ剤で、ボンドの塊のような感じです。
フレーム裏はかなりやりずらいが、根気よくやるしかありません。
左は作業前で右が作業後。時間を測り忘れたが、5時間くらいかな。換気に注意で、私はマスク2重でやってます。
1日放置後、指でエッジを押し状態を確かめます。ここでまだ硬いようでしたら、裏のダンプ剤ですね。
ベストは、’へなへな ヘロヘロ ’状態。 その後、半分に薄めた液体ゴムを塗り、弾力が回復し完了。
(ひょっとしたら、新品時よりストロークしてる可能性もあります。)

以前オークションで、’エッジトリートメント ’なるもの見つけたが、そんなの塗って柔らかくなるはずがありません。
そんなのあれば、私が真っ先に買って試してるでしょう。(元はアーマオールのようなもの?とも感じました)
強力シンナーを塗った後は、グニャーと柔らかくなりますが、乾けばまた硬くなります。
だからこんな面倒な作業が必要なわけですが、はっきり言って素直にエッジを交換した方が、楽でいいと思います。
エッジが硬い状態だと、本来の音が出ないのはもちろんですが、ちょっと硬いかな?程度でもダメです。
こういう布エッジは、ヘロヘロにまでもっていかなと「 100%の力 」を出しきれていません。まったくの別音です。
しっかりとストロークするようになると、ダイヤのウーファーって、単発でかなり低音でるんですよ。

ではインプレに入ります。
まずは一言
おっ、これは、まぎれもないダイヤサウンド!

高域
柔らかく刺激の少ない、聴き疲れしない優しい音。

中域
ダイヤサウンドは、中域が凸のものが多く、この200Zもその一つ。
少し、前に飛び出してくるボーカルは、輪郭が甘く、定位はイマイチ。

低域
フロントポートという所もあり、ブォーンと伸び深みはあるが、キレがあまい。
中・高域に、多少かき消され気味だが、上まで引っ張っているような出方にも感じる。
量感は平均すると、サイズ同等だが、低域の目立つソースだとズンドコ出る。

全体音
簡単に言うと’フルレンジ ’のような音。
バランスはやや中域が凸で、いわゆるつっぱりボーカルだが、’ダイヤは一味違う
つっぱりボーカルは、ウーファーからの中域や、箱の響きで生まれ、とんがった癖のある印象だが、
この200Zの中域は、全体に広がり、マイルドな凸。

ダイヤは、他のスピーカーと決定的に違うのは「 ツィーター 」だと毎回感じている。
下の帯域まで引っ張っても、歪みや癖のような音は感じられず、男性ボーカルも軽くカバーしてしまうほど余裕がある。
このツィーターから出る中域は、とにかく「 自然 」で 素晴しい 音が出る。

ウーファーは’箱鳴り ’を通り越して、「 箱全体で鳴ってる 」ように感じられる。
その強烈な響きと、ウーファーから出る凸中域が加わり、つっぱりボーカルとなる訳だが、
そんなつっぱりボーカルを、すっぽりと「 覆い被せてしまう 」のが、このツィーターの中域から出る音だ。
だから何とも言えがたい、不思議な’バランス ’の持ち主。

そんな不思議な音の正体を突き止めるべく、内部を探ってみよう。
これがその、強力な中域が出るツィーター。
センターは何かの合金だが、少しくすんでいる。そのまわりの、黄土色はフェルト。
マグネットはカバーに覆われていて、サイズ的には普通。
鉄の網が変形していた。
矢印部、アルミだと思うがこのフレーム、中抜けではなく見たまんまの厚さ。だからかなり重量がある。
すごいね。
箱はパーチクルボードで、各部に補強がある。吸音材は上下に普通のフェルト。
特徴的なのは、ポートが’ゴム ’でできている。共振に効き目がありそうだが、これで癖も消してるのか?
ポートの共振周波数は約70Hz。
ツィーターのネジがかなりでかいのにも、驚いた。
ネットワーク。 音を聴いた時なんとなく感じていたが、ウーファーがスルーで、
ツィーターは、コンデンサー抵抗が各一個。コンデンサーは大きく、わりと良いもが付いてます。
詳細は 6dB/octで、実測値よりカットは約9KHz
ネジ留めで簡単に外せます。 右の圧着端子、ちと見ずらい写真だが素材は’ ’でした。
素材もそうだが、ハンダを使わずに’圧着 ’ってところも、ダイヤのこだわりなんですね。
ネットワークをいじるというか、音色を変えようとは、まったく思いませんでした。いじるのは、もったいない。
だからユニットの能力を存分に発揮しやすいよう、ケーブルを追加しました。
箱の補修に入ります。このスピーカー大きなえぐれ傷が2ヶ所、小さいのが1ヶ所、
全体に多数の線傷が見られる。
まずは一番大きいえぐれ。後方・左下角で幅は約3cm。
家具などを補修するロウで埋め、形を整えたあと、底より拝借したシートを貼ります。右が完成。
最後に全面を仕上げるので、右写真よりさらに目立ちにくくなります。
これが底面より拝借したシート。切り取った後は、突き板を貼っときます。
この補修方法が一番目立たなく、奇麗に仕上がるでしょう。
ここは前面・左角上部。ここも3cmくらいあり、左写真は埋めてシートを貼った直後。
ここは前角のR部分も削れていたが、結構奇麗に直せました。
右は、つなぎ目を目立たなく仕上げ完成。ちょっとシートの’色差 ’が気になります。

ここは右の角で5mm程度のえぐれ。こんな傷は、スピーカーによく見かけますよね。
シートではなく、ロウを埋めて仕上げました。
最後は全体にペーパーをあてた後、家具用WAXで仕上げます。
家具用WAXは艶有りなので、うすい線傷に有効なWAXです。
ただ塗料の艶とはニュアンスが違い、あんまり’テカテカ ’していると、何か下品に感じます。
ですので、全体的な見た目を優先し、半艶程度の仕上げにしました。
艶消しスプレーを吹いて、リアルウッドに見える3部艶程度が、一番好みなんですけどね。
底にはコルクシートを貼り、箱の補修が完了。
昔はボロボロのスピーカーでも、お構いなしで購入していたが、手間がかかるので最近は避けていました。
こんな補修をしていると、昔を思い出します。
ネットワークを取り付けます。
写真を撮り忘れたが、ユニットは分解清掃・コーティングを施しました。
ユニットを取り付け後、ウーファーのゴム枠を接着し
完成!!!
奇麗に仕上がると、どんな物でもかっよく見えますよね。
エッジは間近だと、傷跡や少しの凸凹がわかるが、音に影響はありません。
このネット、本体よりも少し濃い茶色でおしゃれな感じだが、
写真だとなんかグレーっぽく見えますよね。光のあてすぎでしょうか?
今回のバランスイメージは、ノーマル音です。図のとおり、中域は凸といより、広がりが感じられる音。

さてインプレの後半です。
ウーファーは、完全なストロークを取り戻し、期待以上の音を出してくれました。

この200Z、最大の特徴が、’超ワイドレンジ
一般的なワイドレンジとはニュアンスが違い、ホールでの響きのように広がる音。
モノラル(方側1個)で聴いているにもかかわらず、まるで’ステレオ並の臨場感 ’が出たのには、驚いた。
こういうのがまさに「
音に包み込まれる 」感覚、と言えるしょう。

ボーカルものは得意だが、もっとも得意なのが’JAZZ
JAZZ聴くのに何かいいスピーカーない?
そんな質問があるのなら、迷わず「 ダイヤトーン 」か「 JBL 」と答えますね。

最近、柴田淳sunの ’Love Letter ’という曲を聴いてから、彼女にハマるようになったのですが、
この方の録音、バリバリの 中域キラー である。
他に
masumi san
YUI san
いきものがかりsan
などの曲も、とにかくボーカルが際立っている。中域が凹み気味のスピーカーで聴くのが、ちょうどいいくらい。
だから私が、中域を’浮かせ ’メリハリある音にチューニングスピーカーは、
ボーカルが際立ちすぎ、出すぎ、浮きすぎ、なんて聞こえる場合がある。
中域キラーのソースを使い、いかに’自然な声 ’がでるか、そんな所も注意してセッティングしてます。

そんなキラーソースでも、そつなくこなすのがこの200Z。
これで聴いた ’mink ’sanなんか、もぅやばいっすね。

定位とか解像度とか、そんなのどうでもよくなるくらい、とにかく
聴いてて「 気持ち良くなる 」これがまさに「 ダイヤトーンサウンドの真骨頂 」だと感じます。

’マニア向けの音 ’かもしれないが、臨場感、空気感を存分に発揮できるダイヤトーン、
一度は体験してもらいたい音の一つです。
ただ200Zの場合、エッジの交換を前提と考えたほうがいいでしょう。
もしくはゴムエッジで、箱が少し大きい’ZA ’でも同感覚を味わえると思うが’ZX ’は微妙です。

最後に。
今回は、本来の姿’修理&メンテナンス ’にもっともらしい形で終わったと、感じています。
ほかに感じた事だが、ダイヤはユニットに対し’
コストのかけかたが尋常じゃない! ’だから他部品が、どうもピンッとこない。
こんだけユニットに金かけたんだ、あとはギリギリまでコスト削っていこう
そんな気がしてなりません。
やはりコストも、バランスが大事なのかもしれませんね。
全てのダイヤスピーカーに、あてはまるわけではないが、
このツィーターだからこそ、ダイヤサウンドが成り立っている、と言っても過言ではないでしょう。
高域や低域が気持ちいい、ってのはたまにあるが、
ダイヤは、音そのものが気持ちいいんですよ。以前もあったが、今回も聴きながら寝てしまいました(笑
メーカーの写真だが、部屋がかっこいい。
撮影場所をこんな雰囲気にすると、どんなスピーカーでもかっこよく見えそうなんで、参考にしたいですね。

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