DENON SC-E717
717Rを、PC用で使い8年ほど経ちます。
もうすぐ時代の節目(2010年)に変わりますが、
以前よりスキルが上がった私にとって、このタイミングで717を出す事は、
90年代DENON製品の中で、代表選手と言えるほど、ポテンシャルが高いからです。
(実は757との鏡面繋がり、というところもあるんですけどね(笑)
そんな717は、元々オールジャンル向けの音質だが、ほんのちょっといじってやるだけで、
ピュアオーディオの音へと変化します。

さっそく開始しましょう。


DENON SC-E717 1997年 2台 40000円
メーカー解説:P.P.D.D.(Push-Pull Dual Driver)方式によりサイズを超えた低音再生を図ったスピーカーシステム。

SC-E717にはP.P.D.D.Serial方式を採用し、低域再生を改善しています。
この方式では、背中合わせに配置された2つのスピーカーが互いの非直線性分を打ち消しあう方向に振幅することにより、
スピーカー駆動時に発生する高調波歪を低減しています。
また、背中あわせに配置されているため、漏洩磁束の遮蔽が確実におこなえ、防磁効果が高くなっています。
さらに、スピーカーキャビネットを最適化設計することでスピーカーの位相干渉による音圧周波数特性のピーク・ディップを防止しています
方式 2ウェイ・3スピーカー・P.P.D.D.方式・ブックシェルフ型
使用ユニット 低域用:12cmコーン型×2 ・高域用:2.5cmドーム型
再生周波数帯域 45Hz〜35kHz
インピーダンス
出力音圧 89dB/W/m
クロスオーバー周波数 メーカー口承無し TW 10KHz(6dB/oct) WF 約3KHz(6dB/oct)
外形寸法 幅154×高さ250×奥行256mm
重量 5.5kg(1台)
音出しテスト。(この写真だと解りずらいが、このスピーカー、とんでもない問題を抱えてます)
かなり聞き慣れた音なので、特徴を随所につかみやすい。
簡単なインプレだが
全体音はバランスが良く、中域は少し凹み気味のクリアー質。
前に出る感じは少ないが、低域〜高域のバランスがいいので、どんなソースもこなしてしまう。
707と717はウーファーがこのサイズなので、「 こもり 」がほとんど無く、
ネットワークでも、こもりが出ないような、簡素なセッティングになっている。
これ以上大きいユニット、727なんかは多少こもりが強くなる。
だから、707と717は非常にバランスが良い。
何気なく使うスピーカーとしては、このままでも問題ないが、良いソースを聴くための
ピュアオーディオとして使う場合、少し弱点がある。
それは簡素なネットワークで、中域・ボーカル周りに雑味があり、少し団子状態にあるところだ。
ここを改善すれば、かなりハイグレードな音質が楽しめます。
まずはユニット(六角ネジ)を外します。
ユニット。今まで気づかなかったが、このウーファー12Ω。707は16Ωです。
バランスの違いはなく、気ずかないほどですので、音質は同じでしょう。
このツィーター(5Ω)が、とても優秀。
単発で聴いた場合、フラットでとても良い。
ブチルゴムが貼ってあり、ベトベトするので、あらかじめ紙を貼りました。
背面。ターミナルはあらかじめ外しました。
ネジ留めのカバーを外します。このカバー、少しゆるい物もありますので、その場合、
片側サイドにスポンジテープでも貼れば、さらに密閉され良くなります。この箱は大丈夫でした。
このくらい余裕があったほうが、いいですよね。ユニットを外します。
これはメーカーの写真だが、こんな感じになってます。(解りやすいですよね)
ウーファーマグネットがギリギリで、ケーブルが挟まると、ユニットが取り付けできないほど。
ノーマルネットワーク(6dB/oct)
コンデンサー実測(2.6μF)だと、約12KHzカットです。
何度か開け閉めしてると、ネジの噛みが甘くなるので、
私はあらかじめ、ボンドを塗っておきます。
これは717Rですが、音質確認の為、バラしました。こちらは何かの無垢板。
外装も全部無垢・塗装でとても質感が高い。 これで定価1万円UPですから、Rは断然お得な商品でしょう。
ただ若干だが、パーチクルボードに比べ、響きがよけいに出る為、少し低域に濁りがある。
だからスポンジを貼り、少し改善させてます。
音質だけの事を考えると、パーチやMDFのほうが、優秀にも思う。
以前より少し部品を変えましたが、完全セッティングのネットワークです。
これを参考にして、今回の717をチューニングします。
ウーファーにはこのコンデンサーを使います。 小さいからといって、あなどってはいけません。
これ抜群に抜けが良く、マイルドで癖が少ない優秀なコンデンサーです。
この手のビンテージコンデンサーは、容量が大幅にずれている事が多々あるので、必ず実測値を確認し取り付けます。
そのコンデンサーとコイルを追加。 TWは逆相を正相に変える。
配線はOFCなので、変えずにこのまま使います。
最初に書いた、このスピーカーの問題がこれ。 超やばいでしょ。
この面が一番やばいが、2個とも全面、ほぼこんな状態でした。
ユニットがほぼ無傷なのが奇跡だが、ネットはかなり破れてます。
どんな扱いをすればこうなるのか?全面ですよ。大概にしてほしいものです。
全面にカッティングシートを貼ろうとも考えたが、せっかくの鏡面なので、施工し直す事にしました。
まずは耐水ペーパーで水研ぎ。1000番→1500番
右写真、水研ぎしてもまだ傷が残ってますね。かなり研いだので、これ以上だと下地塗装が出てしまう。
なので、ここで一度クリアーを拭きます。結局クリアーを3回吹きました。
クリアーが完全乾燥後、1500番で水研ぎ。
次にコンパウンド、細め→極細でバフがけ。 最後に、ガラスコーティングで仕上げます。
機械でのバフ掛けなので、スクラッチが多少入りますね。パッと見は見えないが、光を当てると見えてきます。
ポツポツとした穴傷は多少残ってますが、艶はほぼパーフェクトに仕上がりました。
こんなえぐれが何か所かあり、写真左は黒で処理した後だが、ほぼ直りました。
SC-E101という超小型スピーカーがありまして、それは完全に塗装から鏡面仕上げにしましたが、
はっきり言って、一からやった方が楽ですね。
Fバッフルは、何か石目調の塗装で、鏡面ボディとのバランスが取れていません。
Fバッフルも黒鏡面にしようかと考えたが、突き板を貼る事にします。
一応、簡単に戻せるよう、両面テープで貼りました。
カットし、塗装して完成。
付き板なんで、カットがちょっと下手ですね。これ1台目で、2台目はもっと上手くいってます(笑
塗装だが、暗めのオークにしようか悩んだが、とりあえずオレンジ系のメープルにしてみました。
実際はもっと濃く見え、鏡面とのマッチングも、中々いい感じの仕上がりです。
くすんでますね。全部磨きます。
ユニットは歪み・音圧・ストローク量・コイルスレ・エッジの状態を確認後、分解清掃・コーティングします。
ユニット数が多いので、ここだけで何時間もかかります。
内部ユニット、背面板を取り付けます。
このスピーカー、ネジの本数が50本!(ペア)。これだけでも、コストがかかってるのが解りますよね。
フロントユニットを取り付ける前に、矢印部、ポートが塞がれないよう確認・調整します。
ユニット取り付け
完成!!! フロントの突き板がいい感じでしょ。
鏡面なんで撮影しづらいが、実際に見た方が、もっと良く見えますよ。
ネットの写真を撮り忘れたが、普通の黒布を貼りました。 
今まで色々な布を貼ってきたが、どれも音質には、ほぼ影響はありません。
ベルベットだけが異常に吸われますが、私はネットを付けないで聴いたり、セッティングしています。
直射日光をあてて撮影だが、このレベルなら大丈夫でしょ。
さて、さっそくインプレに入りますが、バランスはノーマルとほぼ同じなので、バランスイメージは載せませんでした。
ノーマルとの違いは中域・女性ボーカルの帯域で
周りの音に埋もれ気味なボーカルを、「
浮上感 」を持たせてやる事により、
輪郭もシャープになり、少し前に出る、メリハリある音に変えました。
元々バランスが良く、コンデンサーや能率を変えてないので、バランス感は同じです。

とにかく、このSC-E717、小型スピーカーの中では大変コストパフォーマンスに優れ、
ちょっとした音質改善はしましたが、
小型サイズの中では、まさに「
キング 」名がふさわしい、とても優れたスピーカーです。

このツィーターはレンジが広く、気持の良い、爽やかな音を奏でます。
私の価値観ですが、何倍もの値段がするELAC(エラック)のシャリシャリした音より、
こっちのほうが、断然いいですね。

癖の少ないクリアー質なので、基本的にオールジャンで使えますが、
どちらかと言うと、クラシック向けかな?なんて思います。
私のチューンしたこの717は、ノーマルより少し、ボーカルが気持よく聞ける仕様です。

最後に。
今では入手困難になってきましたが、中古で値段も手ごろだと思うので、
小型サイズを使いたい方は、一度聴いてみる事をおススメします。
良い音を聞きたいなら、どんなスピーカーでもそうですが、きちんとメンテナンスをした後に、
しっかりしたエージングCDを使い、癖をとってやる事も大事な事です。

早いもので、次回はパート3最終回ですね。ちょっと不人気?機種を登場させます。

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