今となってはかなり古い、コンポ用のスピーカー(だと思う)
DENONは今でも、コンポ用のスピーカーが何種類かあり、差別化として単品スピーカーも2、3種類販売している。
1万円と10万円のスピーカーの違い。
それは部品点数や種類、ユニットの違いが考えられるが、ユニットや箱は極端な違いは無いと思う。
最終的に音の違いは、セッティング、ユニットの使い方である。と私は大いに思います。
下位クラスを上位クラスに化けさせる、そんな事を踏まえながら、メンテナンスを開始する事にしましょう。


DENON USC-M7 1990年頃 
メーカー解説:
方式 2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式・防磁型
使用ユニット 10cm同軸2ウェイ+10cmウーファー
再生周波数帯域 55Hz〜20kHz たぶんこれくらい
インピーダンス
出力音圧 92dB/W/m たぶんこれくらい
クロスオーバー周波数 メーカー口承値はなく、WF 1.5KHz TW 7KHz
外形寸法 幅160×高さ285×奥行26mm 約6.5L
重量 4kg
このスピーカー、最大の特徴は何と言っても、同軸型ユニット。
ただし、TEACの500シリーズもそうだが、+ウーファーにすると同軸のおいしいところが半減する。
中・低域の拡大が狙いだと思うが、できれば同軸の味を生かした使い方をして欲しかった、とも思う。
エッジも問題無さそうなので、さっそくインプレに入ります。
まずは一言
 「 ちょっとこもってるな-
しばらくエージングしてインプレを再開。
今度は中・高域が出るようになり、なんだかシャリシャリしてきた。
全体的には、中域が凸の面白みのない普通の音。Wウーファーのわりに、低域はそんなに強くない。
TWは柔らかめで、TEACより、こっちの方がいいな-と感じるが、最終的にはバランスです。
このTW、E212と同じかな?

中・低域の比重だと、なんでもかんでもこもりと表現してしまうが、こもり方にも色々あって、
ウーファーをスルーで出した時の音や、フルレンジの上をカットした音、そんな音がこもりです。
こもりに似ているのが厚みだが、輪郭がシャープになると、厚み、という表現に変えます。
その音に雑味が無いと、ボーカルが浮いて奥行きが出る。それが一般的な、高級スピーカーにありがちな音。
そんな前フリですが、これを高級スピーカーの音に変身させようと思います。
最近作ったスピーカーと並べてみました。 どれも卓上でいけるサイズです。
ユニットを外します。ネジは六角で作業しやすい。
この手のタイプを見ると、下のウーファーはパッシブと思われががちだが、パッシブではありません。
逆にパッシブ付きのスピーカーなんて中々無く、私の経験だと、20年以上前のKEFとFOSTEXの2台だけです。
おっ!これはちょっと珍しい。 ダンパーの径が大きく、マグネットまでのクリアランスがあり、
その部分が矢印の所で、BOSEばりのエア抜きようか?穴があいてます。
普通はダンパーからヨークまでの距離は短く、密閉されています。
このエア抜きともとれる、穴をあけた構造は、とにかくダンパー(とコーン)の動きを鋭くしたい、ものと考えられます。
鋭い動きを生むために、最も効果的なのは、「 軽量化 」になります。
この構造が、どれほどの効果をもたらしてるのかは解りませんが、発想に拍手したいと思う。
箱の材質はパーチクルボード。箱鳴りを抑えるような形で、吸音材が配置されてます。
この吸音材はポリ綿だと思うが、DENON製品にはよく使われてますね。
ポートはフロントでW。一個だと50Hzくらいだが、2個だと1.5倍くらいですかね?
径の小さい二個で、中域を出さずに低域だけを出したい、という考えだと思われます。
背面ポートにすると中域が控え目になりますが、低域も感じにくくなる場合もあるから、Wってのもありですね。
ターミナルを外します。 またまた、おっこれは!
右の写真、矢印部分やパーツ構成など、まるで私が改造したかのようなノリです(笑
人の考える事は同じなのか、私がDENONと似てるのか?
自(独学)でやってる私にとって、メーカーと同じなのは嬉しい事でもあります。
ネットワークの構成ですが、WF 1.5KHzカット、TW 7KHzカット、ともに6dB/oct
6dB/octなんで、つながりは悪くありません。 WFを少し引き上げて、クリアーにしてもいいと思うが、
それだと低域が弱くなる、微妙なところですね。
テストしています。写真に何か違和感を感じませんか?同軸を二つ並べてます。
私の改造ポイントは、8割方中域です。
高・低域はアンプで多少調整できますが、中域はできません。
ここがビシッと決まれば、奥行きのある味わい深い、高級な音に変わります。
こんな風に同条件だと、テストがやりやすいですね。
どうも低域の出方に違和感を感じたので、エッジをよくチェックすると、若干だが、スカスカと抜けてる気がする。
なので補修します。すると、いきなりドーンという音が出るようになりました。ただし中域もさらに飛び出してくる。
書き忘れていたが、TEAC同軸シリーズも、すべてエッジを補修しています。エッジは低域の命ですね。
ネットワークの方向性が決まったところで、改造に入ります。まずは部品をバラします。
ばらしたほうがクリーニングもしやすくなります。この金メッキ、色が濃い目で高級感があり、精神的にもいいですね。
真ん中・上部だとクリアランスが取れず、ターミナルを回す際、邪魔になります。
そこで、右利きの人がほとんどだと思い、左側に穴をあけます。
が、やってしまった! コンデンサーの外し忘れで、そのまま穴をあけてしまいました。
しっかしメーカーって、よく3.3μF使ってますよね。
TSW(トグルスイッチ)を取り付け、ネットワークの完成。
素晴らしい中域を作るには12dB/octは必須ですね。 ウーファーは中域を抑えたいので6dB/octのままです。
抵抗は、元々付いてたままだが、0.6Ωなんて、泣かせますね。 ちょっと、ほんとに少しだけ下げたいんですよねDENONさん(笑
わかりますよ。TEACシーリーズも同じ、ちょっとだけ下げたい、って思ってました。
奇麗に磨きます。バナナOK、太いケーブルでも余裕で入る。
ユニットもクリーニング、接点を磨き、ネットワークをテストします。
さて、箱のメンテナンスに入ります。 まずはクリーニング。
傷はほとんど無いが、とにかく汚れがひどい。ひどい汚れのシートは沢山あったが、何か色落ちしてるのか?
と思わせるほど、どんどん汚れが出てきます。もちろん色落ちではありません。
右写真・右がクリーニング後。一皮剥けた感じですよね。新品時、汚れが付着しやすい何かが塗ってあるんですかね?
ちなみに一面で、ティッシュ5、6枚使ってます。
底にコルクシート(私のお決まり)を貼り、蜜蝋WAXで仕上げます。
このシート、光沢にするとE717(727)と同じです。似合わないので、蜜蝋WAXを強めに拭きあげ、艶消しに近い仕上げにしました。
ターミナル、ユニットを取り付け、
完成!
手頃なサイズです。
ネットワークに取り付けたTSWだが、音質の切り替えではなく、ウーファーのON-OFFにしました。
なんかエッジをやり直したら、一個でもバランスの取れる音になったので、このようにしました。
TEAC 500シリーズも、最初ON-OFFにしようかとも思ったが、バランスが取れなかったので止めました。
これはウーファーのケーブルですが、ON-OFFできる方に目印を付けました。
上下、ウーファーの配線を逆にすると、一番右のように音がでます。
一番右、箱の中央から音が聞こえ、バランスは悪くないが、ただの2wayになってしまいます。
エッジをやり直したので、またエージングし、インプレに入ります。
まずは、ON
ちょっと中・低域が出すぎですね。
これを突然聴くと、こもり気味に聞こえるかと思うが、TW側の中域、ボーカルの輪郭をシャープにしてあるので、
ギリギリ大丈夫かな?という程度。
そんな高域だが、元は7Kカット(6dB/oct)で、柔らかく、押しの強い中・低域に呑まれて、ボーカルが団子でした。
なので4Kカット(12dB/oct)にし、メリハリをつけ、少し硬めの音にしました。
ボーカルの輪郭がシャープになり、艶・色気のある中域は素晴らしい、と自負しているが、
これでも少し、のまれ気味かな、と感じます。
色気のある飛び出すボーカル、これはこれで面白みがあっていいと思うし、私好みでもあります。
次にOFF
このOFFは、完全OFFにしました。
ONよりも中・低域が抑えられ、定位も良くなり、バランスはこちらの方がいいです。
なにより、同軸の音が体感できますしね。
私的には、もう少しだけ低域が欲しい、と感じるところもあります。
好みで言うと、5割OFFくらいで、バランスが一番良くなりそうな気がします。
普通はありえないが、Wウーファーなので、ウーファー側にアッテネーターを付けても、面白いと思う。
あとは抵抗で能率落とすか、つき詰めるなら、一個のウーファーから低い音だけでるようにする。
などが考えられます。
同軸の場合、厚みのあるボーカルよりも、クリアー質のほうが、能力を発揮できるかもしれません。

総評として。
メンテ前に音出しした時より、中・低域がグンッと出るようになり、OFFで同軸の音も十分に味わえる。
高級感のある音色、という意味では50点くらいだが、元よりは、だんぜん良くなってます。
ソースはONでボーカルもの、それ以外はOFFがいいかと思います。

最後に。
こもった音は、輪郭をシャープにする事で、厚みのある音に変わる。
そんな微妙な違いを理解して欲しい、とも思うが、実際そんな事はどうでもよく、
いい音か悪い音かは、パッと聞いた時の第一印象で、ほぼ決まってくると思います。

一つだけ、この文章を書きながらも、ずっとバランスの面がひっかかってて、正直、心残りがあります。
まァ、そこは簡単にやり直せるし、好みの問題があるので、新オーナーさんに合わせてからでも遅くないかな、
なんて事にしておきます。
とにかく、安いとかコンポ用だからダメとか、そんな印象が強い、下位クラスのスピーカーだからこそ、
改造する意義がる!と言えるでしょう。
次(実はもぅ終ってますが)は超やばいです。お楽しみに。


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