古き良き時代の産物、オーラートーン 5C 初期型です。
これは80年代前半頃の物で、ワンオーナー品。とても程度が良い。
私は、メンテナンスを頻繁にやるようになってから、オーラートーンを知りました。
オーディオマニアの間では、誰でも知ってるメジャーな品で、スタジオには必ずあるらしい?
そんなスピーカーですが、ここのところフルレンジも聴いてるので、出してみました。
最近まで、ノーメンテで鳴らしていましたが、ここらで一度メンテナンスしてみようと思います。


AURATONE 5C SUPER-SOUND-CUBE 1977年〜 2台1組 38000円
メーカー解説:世界中のレコーディング スタジオや放送局のモニタールームで、ミキシングコンソールの上に、必ずと言ってよいほどお目にかかる、一辺わずか16.5cmの小さなキューブ・AURATON 5C。
12.5cmシングルコーンのフルレンジならではの音像定位感に加え、トーンバランスの素晴らしさなど、モニタースピーカーとしての必要条件を十二分に満たしています。
しかも、ミニサイズに似つかわしくないハイパワードライブ能力は、特筆に値するもので、信号のピーク時にも音くずれがありません。
さらに、AURATONEスピーカーのパフォーマンスを最大限に引き出す、同軸スピーカーコード・NSC-10によって、
そのサウンドは、さら輝さを増します。
方式 1ウェイ・1スピーカー・密閉方式
使用ユニット 全帯域用:12.5cmコーン型
再生周波数帯域 50Hz〜18kHz
インピーダンス
出力音圧 89dB/W/m
クロスオーバー周波数 KHz
外形寸法 幅165×高さ165×奥行150mm(ネット含)
重量 約2.5kg
ちょっとほこりかぶってますね。
ネットはALLスポンジで硬化しはじめており、崩れてはないが、弾力性がありません。
霧吹きで水をかけると弾力性が少し戻りますが、補修が必要ですね。
10cmかと思っていたら12.5cmでした。
エッジは硬化していないが、所々ムラがあります。

ここも補修しなければなりませんね。
ユニットはネジ留めで簡単に外せます。
マグネットサイズはやや大きめ、少し白錆が浮いてますね。
古いという事もありますが、密閉ならではの症状でもあります。
このスピーカー、何か所か特徴的なこだわりがあります。
まずは矢印部、配線をハンダ付けせずに、直接巻き付けてあります。
その配線だが、約24AWGの単線(たぶん銀メッキ)。 メーカー製で単線を使っているスピーカーは、初めて見ました。
これは全域を、クリアでシャープにしたいものと考えられます。
単線はストレートにパワーがかかり、中・高域が非常に奇麗ですが、線が細い場合、低域の量感を感じにくくなります。
メーカー文でも、専用スピーカーケーブルにふれてるほど、こだわってるんですね。
ユニットを外すと吸音材(グラスウール)が2/3ほど入っており、それを取ると、なにやらSと書いてあります。
なかをを除くと、なんと、かわいらし絵(落書き?)が書いてありました。
組み立てる前に書いてあったと思われますが、ダジャレにもとれるAURATONEとは、何か関連性があるのですかね(笑
作り手の遊び心が感じられます。
エッジは薄い布製で、ダンプ剤を塗ったもの。
硬化はしてないが、ダンプ剤がコーンに染みて所々ムラがあります。
まずこのムラを、できる限り伸ばし均等にします。その後、極薄の液ゴムを軽く塗ります。
右の写真は裏から光をあてたもので、エッジのムラを見るときに、こんな感じで確認しています。
ダンパーは一般的な硬さで、へたりはありませんでした。
ダンプ剤を伸ばしたので、これ以上コーンに染みないよう、極薄で塗装します。
センターキャップと周りのガスケットも塗りました。色味を変える事もできますが、極薄にしたので、ほとんど変わってません。
右は底に付いているゴム足ですが、きちんとクリーニングします。
こういうものは、一個足りないとかよくあるのですが、これは元の粘着が強力で、全部そろっていました。
そのゴム足を再接着。
箱はクリーニング後、蜜蝋WAXで仕上げます。その他、各パーツも磨き、徹底クリーニングしています。
ユニットを装着。配線が短く、巻き数が少なくなったので、軽く銀ハンダで固定しました。
ユニットはネジ留めなので、穴にタイトボンドを流し込み、半乾燥後しめこみます。
ささいな事ですが、良いと思う事はすべてやる、それが私の、小さなこだわりです。

スピーカー本体の金色部分(ABS樹脂)にトゲトゲが付いており、そこにスポンジをはめる仕組みです。
右写真、ネットはそのサイドと赤線部に、極薄の液ゴムを染み込ませました。
弾力は戻りましたが、色味が変わるので、中心部と表面は超超極薄にしております。
これで気軽に、スポンジを本体に装着できますが、できるだけ丁寧に扱います。
完成!
少し古い写真ですが、スタジオ系モニターを並べたものです。
いかに小さいかが、わかりますよね。
さっそくインプレッションにはいります。

まず特徴的な音は中域で、独特のつっぱり感があります。
高域は柔らかく、かなり控えめなので、中域のつっぱり感に拍車をかけている。
低域は低い部分も感じられますが、密閉特有の、キレがあり伸びが少なめな音。
エッジをやり直した事で、低域に重みが加わり、より自然な音に変わりました。
全体的には、軽い音と低い音の中間ぐらい、小箱として、それほどバランスは悪くありません。

簡単に言うと、こもった音、にとらえられるかもしれないが、2wayのこもりとは違い、
中域のある部分が、とんがった印象。
だからボーカルが浮くのではなく、飛び出す感じ。 凸なので厚み、色気はは少々感じられる程度。

この中・低域、ヤマハのテンモニにそっくりです。
テンモニは、もっとシャリシャリ感が強く、そのシャリシャリを取り除いた音という感じが、この5C。
記憶の印象ですが、5Cのほうが、低域の低い部部が出ているように思います。

バランスイメージは、聴いた音の印象をあらわしたものです。
測定器で計った場合は、もっとフラットに近いかな?なんて思いますが、高域の減衰の仕方なんかは、
いいせんいってる思います。
ダンパーやコーンを交換したフルオーバーホールではありませんが、エッジをやり直したので、
このスピーカーの潜在能力を引き出せた、と思ってます。
フィルターで中域を少し凹ませ、さらにバランスのとれた、落ち着いた音に改造する事もできますが、
この5C、作り手のこだわりが感じられたので、今回は素のままにしました。

最後に。
あくまでもスタジオでの使用、という事を前提に作られたスピーカーかと思いますが、
部屋で普通に音楽を聴くのも、十分に耐えられる音で、特にボーカルものを、しっとり聞くには、いいかもしれません。
何かこう飛びぬけて、こんなに・・・ここがすごい!とかはありませんが、一度は聞いてみたい!
そんな衝動に駆りたてらるスピーカーでした。

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