でかい(大型3way)のからやっつけようと、取り出そうとしたところ、その上に乗っていたスピーカーがこれM55
久々の70年代スピーカー。
古いスピーカーはメンテに難儀する事が多々あるが、現代にマッチするよう、リフレッシュしてみようと思う。


ONKYO M55 1978年 1台 27500円
メーカー解説 : 小型でありながら、大型システムにせまるゆとりと、パワフルな演奏を目指したスピーカーシステム。
方式 2ウェイ・2スピーカー・密閉方式・ブックシェルフ型
使用ユニット ・低域用:20cmコーン型
・高域用:3cmドーム型
再生周波数帯域 50Hz〜20000Hz
インピーダンス
出力音圧 90dB/W/m
クロスオーバー周波数 2KHz
外形寸法 幅235×高さ400×奥行238mm
重量 6.5kg
出力OKだが、アッテネーター、ガリ、飛び多い。エッジが×。傷もたくさん汚れもひどい。
さっそく、大変な作業を予感してしまう。
鉄製のカバーを外します。ウーハー側は接着されていませんが、ガッチリついていた。
内部、吸音材が6割ほど入ってました。
エンクロージュアは多少の補強があるが、いたってシンプル。
TW。やばいほどではないが、サビがでてる。
ひどくなると内部にカスがたまったり、マグネットが外れたりもする。
こちらもサビが少々。劣化の進行が気持ち悪くみえるエッジ。これもウレタンエッジでしょうか?
コーンは比較的頑丈でした。左右の色差はほぼないが、元色はどんなだったのでしょうね。
マグネットが小さめ。キャンセリングマグネットとカバー付きは大きく見えるが、中身はだいたいこんなもの。
とりあえず手で落とすのが、コーンなどにに負担がかからず良い。
右、完成。ガスケットは紙製で、エッジを貼る時に調整します。
センターキャップは布製っぽい。何を塗っているかわからないが、拭いても拭いてもベタベタする。
矢印はボンドカス。カッターを使ってもベトベトしてるし、誤ってコーンをザックリ、なんてしかねない。
マイナスドライバーで地道にカリカリやります。
サビを削り取り、サビ止め剤を塗ったあと、全体を塗装します。
マグネットから出るサビがほとんどだが、密閉だとなおさら多いです。
お次はTWの化粧直し。アルミ特有の白サビが浮いてます。
このサビも根が深いので、削り取らないと綺麗になりません。
1は120番のペーパーでザックリ磨きます。 2はルーターを使い、白→青棒という感じで磨き。
2でほぼ鏡面になります。
最後は200番のペーパーで一方向に磨き、ヘアーラインを入れていきます。
円形に入れるのは、大きめの丸いペーパーやドリルなどの工具を上手に使わないと難しいでしょう。
せっかくの鏡面が・・・と思いながらの作業だが、全体の雰囲気があわないので、このようにしました。
ユニット全部のフレームとかだったら、鏡面はかっこよくなるんですけどね。
さて、ネットワークを外します。
このツマミを外さないと、アッテネーターは外れません。ツラで付いているので、外すのが少し困難。
ラジペンとタオルを使ったが、少し傷ついてしまった。
ツマミが外れたら右の六角ナットを外します。通常のソケットでは奥まで届きません。これもラジペンで外します。
取り付けは逆の手順だが、ゆるくてグラつく、なんて事がないようしっかり締め込みます。
アッテネーターを分解。サビは無かったが、グリスと汚れで濁ってました。 磨いて保護してやります。
ノーマルのネットワーク。 テスターでコンデンサーの容量や、構成などをチェック。
古いネットワークは、ラグを使ってるのが多いですね。各パーツにグラつきが無いかもチェックします。
ウーハーのエッジも貼り終わり、ここらで音出しチェックにはいります。
ネットワークに問題が無いときは、一度箱にユニットを入れ、さらにチェックします。
で、ここにだいぶ時間がかかってしまったが、どうもこのTW、ボーカルがザラつきます。
ソースによっては問題ないので、機械的故障ではなく、こういう仕様のように感じる。 
特に私が気に入ってる何人かの女性ボーカル。それらは声がハッキリ録音されているもので、音質の特徴をつかみやすいのだが、
一度このザラつきが気になりだすと、どうしようもありません。
複数のコンデンサーで直につなぎ、色々とチェックしましたが、直りません。
古いTWにはありがちの音で、ダイヤトーンのTWにもザラつきはあります。ただダイヤの場合、カットする場所にもよるが、
下がストレスなく出るのと、つっぱり感(艶)が多めなので、ザラつきが目立ちにくいです。
こういうTWは、ネットワークで何とかするしかないと思うが・・・蟻地獄の始まりです(笑
ウーハーの音を聴く限り、クロス2K以上は厳しいと判断。
蟻地獄にはまり結局、結果が出ない。という事が十分に予想できたので、ここはキッパリ
TWを交換 」する事にしました。
使用するTWは、DENON SC-700 のTWで、マグネットがネオジウムのものです。
このTW、何かこう柔らかくて、余裕のあるような音が出る。金色のリングが付いていて、見た目も良かったので、
自作スピーカーに使おう、とストックしていた物です。
ONKYO D-200あたりのTWもいいかな?なんて思ったが、これから単品を探すとなると、一ヶ月くらいかかりそうで、
また放置になってしまう。 セットをバラして使うのは、私(TT)ますので(笑
ぶっちゃけ
不明のTWや、デイトンの安いTWが何個かあるので、それらを付ける事も可能だが、下(中域近辺)がイマイチって事と、
このM55、テストのときより何かすごい、潜在能力(ポテンシャル)を感じた。
「 低音は十分、上がもう少し綺麗になれば・・・ 」なんて思っていたからです。
だからサクッと交換にふみきれました。
右写真は、テスト中。もう黒い部分を削っちゃってます(笑
元のTWはカスが少しあったが、音に影響するレベルではなく、写真の通り各パーツに異常はみられなかった。
TW交換にあたり、能率合わせをしなければなりませんが、アッテネーターがあるので、それほど神経を使わなくてすみそうです。
ONKYO 4Ω DENON6Ωですが、音量はほぼ同等で、DENONが若干小さいくらいでした。
コンデンサーを追加。これは最終テストで数値を変える場合もあります。
矢印、トグルスイッチを付けました。これはウーハー側の切り替え。
今回は音色を変えると言うよりは、もう一つある問題点を改善する目的が強いです。
アッテネーターは、基本的に抵抗を付けなくてもかまいませんが、やはりメーカーもわかっているようです。
ここはポイントで、少しグレードの高い抵抗を付けました。
実測値を測っての交換ですが、中々ドンピシャに決まりません。純正抵抗は、表記1Ωですが実測2Ωでした。
右写真、TWの差分だけ、ウーハーの抵抗も交換します。
この能率合わせは、最終的な「 バランス 」になりますので、私の中では最も重要なポイントでもあります。
せっかくなのでケーブルも交換。 上の緑が元々付いていたもので、外形は1.5mm。
実際に見ると、かなり細く感じます。 すずメッキでコーティングされており、耐久性はバツグン。
下の赤は交換するもので、 普通のOFCケーブル。外形は3mm。
ケーブルもあげるとキリないですが、こういう普通のケーブルって癖が少ない、ストレート音質です。
だからまず、普通の物に変える事が先決だと思う。
バランス重視でいくなら、できるだけ太い物がいいですね。
高級だからといって、音の特性もわからないまま交換するのは、後々後悔しかねないです。
裸でテストした後、↑こんな感じで箱に入れテスト。さらに最終形態で再セッティングします。
しかし写真でわかるとおり、これじゃかっこ悪いですよね。
なので純正部品を流用、加工します。 右は、ネジ穴を開けた後、元のネジ穴をマスキング。
カチカチに硬くなるエポキシで埋めます。 さらにマスキング。
元は配線ガードのスポンジが貼ってありました。 雰囲気を出すために塗装、ついでにフレームも塗りました。
こだわりの半艶ブラック!と言いたいところですが、元がつや消しでしたので、3部艶くらいにしてみました。
矢印部も雰囲気を出すために、液ゴムで穴埋め。
最後はエンクロージュアの補修です。 写真のとおり小傷が多い。
これ光沢タイプなので難しい。だからまず、全面を塗装してしまいます。
右は、黒、赤、茶を混ぜて作ったステイン。これを薄く塗り、傷を目立たなくします。
角のえぐれは、こんな感じで埋めていきます。
ペーパーをかけ 蜜蝋WAXで仕上げ。
フラッシュ撮影。 真ん中が蜜蝋WAX塗付後。 全体的に目立たなくなったが、少しだけ深い傷は、凸凹が若干目立つ。
黒は簡単だが、微妙な色で光沢タイプは、やはり難しかった。
TW、本体取り付け後、鉄ネットを接着。
DENONのTW、移植完了。表から見ても裏→から見ても
純正みたいでしょ。
こちらの方が最高域が伸びてます。
元はアルミフレームの直付けだったが、振動対策のため、ブチルゴムを装着。
ユニットのオーバーホールが完成。 振動・衝撃に強い弾性エポキシで接着後、ネジ止め。
干しといた吸音材を入れます。
吸音材を入れずにテスト中、ソースによっては低音がブーミーで箱鳴がひどかった。
吸音材を入れ完全に密閉すれば、だいぶおさまると思うが、一応グラスウールを追加してみた。
高域がより吸われ、中域の響きも増えるのでバランス調整用にもなる。
密閉はバスレフに比べ、吸音材の量で音質が大きく変化します。
ユニットを装着 鉄製ネットを取り付け
完成! じっくりエージング後、視聴します。

やばっ!エージング中ふと思ったのが、ノーマルM55の音をまともに聴いていない・・・あちゃ〜
テスト中ボーカルの声質が気になりだし、一気に先走った結果です(^^;
まァ気を取り直し、インプレします。
はじめに
中・高域は、TW交換とネットワークもいじってるので、ノーマルとはかなり雰囲気が違うと思う。
ウーハーは能率を変えただけで、音質はトグルスイッチにより、ノーマル音と、上を引っ張った音の切り替えができる。
上の音を出すことにより、ブーミーさを軽減させる、というのが本来の目的。
最終的には、吸音材も効いたようで、ブーミーさはほとんどなくなりました。

いつもの事ですが、今回も中域、特に「 ボーカルの声質 」はこだわりました。
テスト中の事で印象が薄いが、ノーマル(オリジナル)音は、中域が凸でこもり気味でした。
この中域の出方は、どちらかと言うとYAMAHAのテンモニ同様なモニター系の音です。
ウーハーは上がまったくダメ、と言えるくらいなので、下の量感はかなりあります。
だから全体的に、こもった印象でした。

TWを交換し、クロスポイントを2Kから、約1.1Kに変更。
TWの役割を多めに取ったので、こもりが解消。 中域がクリアー質になり「
リアルボイス 」へと変貌をとげました。
リアルボイスは、人により捉え方も違うと思いますが、ただ単にクリアーにすればいいってもんじゃありません。
クリアー質にすればするほど、聞こえやすくなりますが、薄くて、温度感の無い冷たい音になります。
なのでセッティングは難しく、他のスピーカーと聞き比べや、何度もパーツ変更をおこないました。

高域、カタログ上では元が20KHz、交換したTWは40KHzです。
ですが、あまり伸びは感じられません。それは1Kまでがんばってもらっているので、全体音はやさしい、柔らかい音です。
あとDENONのTW全般に言える事だが、カタログ上では高スペック、だがあまり肌で感じる事ができない、と言ったところでしょうか。
ツンツンした音が好みなら、クロス4K以上が必須です。
TWを7K〜10Kあたりでカットすれば、どんなスピーカーでもそんな音になります。

低域、M55のスペックを確認、クロスが2Kでしたので、切り替えできる改造音は4Kあたりにしよう思ってました。
エッジを貼り終わり、音を確認すると「 まず無理 」と思うほど、上がふんずまっている。
ボーカル付近の凸は少なく、癖のない音だが薄っぺらい。 下の量感がある、だけが特徴でした。
だから必然的に、リアルボイスの方向へと向かいました。

総評
自分で言うのもなんですが、かなりいい仕上がりで、これが「 本物の音 」というように感じます。
これはほんとに「 予想外 」の事でした。

リアルボイスを作るにあたり、まずはクリアー質の方向へもっていく。
ボーカルがクリアー質になればなるほど凹んでくる。
この凹みをウーハーの中域、凸で微調整する。 と言ったかんじだが、このウーハーは中域の凸が少ない。
なのに最終的な中域は「 クリアー質なのに凸んでいた
で、↓下のバランスイメージ図の中域を、こんな感じで書きました。

右はカタログの写真。
このM55、チューニングというよりは自作スピーカーだと思ってもらったほうが、いいかもしれません。
なので説明が長くなりましたが、↑がセッティング例
切り替えのトグルスイッチはウーハーのみで、赤がノーマル(約1.3Kカット)、 黒は中域が少しだけ凸の、約6Kカット。
低域がブーミーじゃなければ、赤がいいかと思います。
SX-V1風はかなり中域が似ていますが、アッテネーターを絞っているため、高域は弱くなります。
2重の白線はメーカー推奨ですかね。そこからMAXまで回るが、構造上音がピーキーでダメ。
逆にMINで完全OFFになります。

このスピーカー、絞るのが難しいほど、どんなジャンルでもこなしてしまう。
密閉なのでバスレフに比べ、低音の量感は少なく、特に伸びはほとんどありません。
ただみなさんが想像するよりは、ドスドス量はあると思いますよ。ブーミーな音が出るくらいですから。
それよりもオーケストラを聴いた時に、低域の「 解像度 」が高いなァ-、なんて感じ驚きました。
これが密閉効果ってやつですかね。
ボーカルはもちろんですが、弦楽器やドラムのスネアなんかも得意で、特にアコースティックギターはかなりやばいです。

70年代のスピーカーなら、その時代の音楽がベストでしょう。という事で
Girls-JPAN BEST HITS COLLECTION MY MEMORIES U 」 収録曲
という7枚組みのCDを聴いてます。
全部聴くのに8時間くらいかかりますが、柔らかい音なのに解像度が高く、聞き疲れしません。
ただし癖は多少あります。
この頃の曲ってエコーが強く、聞きにくいものがあるじゃないですか。
そんな曲でも、このスピーカーで聴くと、響の塩梅が良く、いい感じで聞こえてきました。
リアリティだけをとるなら、私がチューニングしたDS-25Bに一歩譲るところですが
何かこう、色々なCDを引っ張り出して聞きたくなる、そんな楽しさのあるスピーカーです。

クリアー質はオールジャンルで使え良いと思うが、同時に冷たい音にも感じてしまう。
だからできるだけクリアーで輪郭がハッキリしているが、前に出る凸のボーカル、というのが私の一つの理想でもありました。
このM55改は、そんな理想に近いスピーカーです。

密閉はいままで何台かチューニングしましたが、それはネットワークをいじりたおすのではなく、品質を上げる改造でした。
このM55も、あと1万円くらいかければ品質はあがりそうです。
2、3万かけて外装のやり直しをしてもいいかな、と思わせる実力もあります。
リアルを追求すると密閉にたどり着くのか?
今回もいい勉強になりました。


      ・・・        ・・・・・