●今回はイギリスのメーカーCELESTION(セレッション)から UL6 の U
レストア&フルチューンをご紹介します。 U |
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●ツィターとウーハーの2wayにパッシブラジエーター(ドロンコーン)が加わった構成のUL6。
80年代前半頃の製品でしょうか?その頃のイギリス製品はパッシブラジエーターがお家芸のようですね。写真ではサイズ感がわかりにくいですが、ウーハーは16cmで箱の横幅は40cmと、比較的コンパクトにまとめられています。
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●パッと見やばそうな感じはしないので、さっそく部品を外していきます。左は+ネジだが、イギリス規格か○と+が合わさったような形状です。遠目で見ると+がなめたようにも見えますね。
ウーハーのフレームにネジ穴は無く、ご覧のよう爪で留める珍しいタイプでした。 |
●なめて見える+は大きめドライバーでも少しゆるい感じです。ネジは全てナット留めで、ツィーターのネジが若干固くてびびりましたが、その他固着もなく無事に外せました。
ユニットを外すと厚めのスポンジで覆われています。これもイギリス製品に多い特徴ですね。 |
●スポンジを外すとネットワークが現れました。
これは・・・例の(KEF104)コンデンサーが付いています。音を聴いた限り問題はなさそうでしたが、このコンデンサーなら本来の音かどうか危ういですね。 |
●ユニットにうつります。こちらはツィーター。
ドームは布製で若干固められているような素材感でした。デンマーク製品をかわきりに、ほとんどのヨーロッパ製品は構造や部品構成が似ているので安心して分解できます。OILの飛び散りは少なめでした。錆を完全に除去してコーティングします。 |
●こちらはパッシブラジエーター(以下ドロン)。日本製品には少ないので見慣れませんが、ウーハーのマグネットを外したような状態です。コーン部は強度の問題で肉厚な作りになっており、KEFでは柔らかめの発砲スチロールでしたが、こちらはそれよりも固い発砲ウレタンでした。表面は劣化により白く見えますが、元々は淡い青色のようです。固めなので傷に強く、変形もなく良い状態を保ってました。 |
●こちらはウーハー。遠目で見ると黄色いウーハーかと思ったが、実は白(乳白色)いコーンにダンプ材が塗られた構造でした。上のドロンからの推測ですが、エッジに使われた黄色い接着剤を薄めてコーンに塗ったようにも見受けられます。
ダンプ材は裏側まで浸透しており、ベタツキが残っているので汚れやゴミが付着し凸凹しています。完全に落とすには難しい素材で、強引にやるとコーンを痛める恐れがあります。なのでまずはベタツキを押さえる処置を施します。
センターキャップは布製で、やはりダンプ材が塗られており若干固めでベタツキます。
エッジはウーハーもドロンもゴムで劣化により固めでした。16cmユニットで箱が小さいという事もあり、動きが少ないため固くなるという要因も考えられます。ただエッジが固いおかげでダンパーの沈み込みが少なく、良い状態を保ってました。
このままではこじんまりとした音しか出ないのでエッジのしなやかさを復活させます。
ゴムの場合復活するかどうかは50/50で、ダメな場合はボロボロに崩れる恐れがあります。そうなると張替えが必要ですが、音質の為ならやむおえません。
●フレームは強固なアルミ製でマグネットも大きく、丁寧に作られている感じがします。大きいマグネットでパワーの出そうな雰囲気ですね。フレームやマグネットに錆が若干出てますが、密閉としては状態がいいほうです。
●一度分解し内部をコーティングしたあと組み直し、さらに外側からも錆止め剤をコーティングしました。これをやるやらないでは、10年後20年後に雲泥の差が出ます。 |
●エッジは一度外して浸透液に1週間ほど漬け込みます。その後表面が劣化しないようコーティングして完成です。ダメなエッジは浸透液に付けて1日もたたないうちにボロボロになりますが、こちらは大丈夫でした。ビニール系(合成ゴム)はボロボロになりやすいです。ただドロンは簡単にできましたが、ウーハーはコーンとの密着感が強くコーンを痛めかねないので、コーン側は外さずに施工しました。 |
●20%くらいは柔らかくなり、ストローク量も増え動きもだいぶスムーズになりました。低域の増量も見込めそうです。
ウーハーコーンはできる限りクリーニングしましたが、ダンプ材の凸凹やベタツキがまだ残ってます。 |
●そこで塗装する事に。このまま水性で塗装してもははじくので、サーフェーサーを塗ってから油性塗料で仕上げます。質量を上げたくないので、できるだけ薄めにした塗料を見場が良くなるまで重ねていきました。
一回塗りとか適当な施工ではないので、乾燥など時間がかかります。 |
●その間ネットワークの作業に入ります。
例のやばいコンデンサーですね(笑
現代の電解コンデンサーのよう、サイズが小さい割に容量は大きめです。計測するとどれも4〜5uFほど高めでした。ツィーターのネットワークは18dB/octなので12dBと違い、若干高めでもギリギリ許容範囲と言ったところです。ですが今後の事を考えると交換した方が良いでしょう。で用意したのがジャンセンのコンデンサー。どれも容量が大きいのでご覧のよう、サイズもかなり大きくなりました。値もはります。 |
●振動の影響を受け難いよう、どこにどう付けようか試行錯誤しながら取り付けました。いつもは銅テープで保護するのですが、近接しているので万が一にもショートしないよう銅は貼りませんでした。このネットワークではこの方が安心して使えます。音質も本来のものに戻っているはずです。 |
●こちらは端子。物によって付いていたり無かったりとアバウトな作りでしたが、所々に錆が見られたので全て交換しました。金メッキでストレスも減り安心できます。 |
●最後はネットワークの取り付けに問題ないか、仮止め後吸音材を戻し具合を確認していきます。問題ないので次の工程、箱の作業に入ります。
全体をパッと見た時、程度はそこそこでしたが細かい傷や角の補修が目に付きました。 |
●↑前の方がパテで補修したようです。色など上手に合わせてますが実物を見ると気になってくるので補修し直します。まずは補修部をそぎ落とし、表面を整えてから突き板を貼ります。突き板は純正と同じチークですが、現代の物では色味が若干違います。ただパテよりは断然綺麗になりますね。 |
●こういうところを5ヶ所ほど補修、その他ちょこまかあった小傷も全部補修しました。最後は全体を磨きOILで仕上げて完成です。イギリス製のチークは傷の補修が難しいですね。何度やってもそう思います。 |
●こちらは背面のターミナル。
ターミナルはネットワーク基盤から独立されており、取り付けも簡単におこなえます。
今回は元に戻せる事も考えて、ネジ径の同じターミナルに交換しました。ポン付けなので戻す事も容易です。 |
●ユニットのオーバーホール+化粧直し、ネットワークのフルチューン、箱の仕上げ、全てのパーツが完成しました。
ウーハーのダンプ材と箱の補修が他よりも少し大変でしたが、無事完了しました。 |
●他のスピーカーもそうですが、私はネジ1本から外した場所を全て記録し、全て同じ物を同じ場所へ戻しています。特に今回のような爪留めの場合、それらが有効な手段となりました。確認しながら取り付けるので時間もかかってしまいます。
そんなユニットを付け終え |
●祝!完成!
いかがでしょうか。
パッと見新品レベルに復活したと思います。
イギリス製品は他の製品よりも大変な場合が多いですが、ネットワークが勉強になるのが励みでもあります。 |
●変わってこちらは1970年の製品、ダイヤトーンのDS-251です。
こちらも同じオーナー様からのご依頼で
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●日本で一番音の良い251にレストア&チューニングしました。密閉なので元々解像度は高めですが、高域の伸びが良くなりアルニコ本来のポテンシャルがより発揮されるようになりました。 |
●こちらは Goodmans というスピーカーで、イギリス製、50年〜60年代の製品でしょうか。
気になる人も多そうですが、色々と問題があるので保留中です。 |
●さて、フルレストア、フルチューンされたセレッションUL6のインプレですが、 U
エージングもそこそそにさっそく音出し U
まずは一言 U
「 素晴らしい音だ! 」
そつのない音とはたぶんこういう音を言うのだろう。 U
そんな風に思えるほど凸凹の無い限りなくニュートラルに近いフィール。 U
リアリティがあり、かつ艶のある女性ボーカルの声質はぐうの音も出ません。 U
しっかり良く作られ上手にセッティングされた物だとすぐに感じられるほどです。 U
ネットワークを良質なパーツに交換したのも効いてるはずです。 U
最初にパッと鳴らした時は低域が少なめで、本来の音が出ていないようにも U
感じられましたが、やはりレストアすると別物に変わります。 U
密閉ともバスレフとも違うドロンコーンによる低域フィールは、 U
押し出しや切れ具合などバランス良く心地いい音色を奏でてきました。 U
小さい箱なのに物足りなさがまったくありません。 U
これがドロン(パッシブラジエーター)の力か! U
そう思わずにはいられないほどでした。 U
ヨーロッパ製品はロジャースを基本としたクリアー質のドンシャリタイプか、 U
ハーベスのような艶を追求したタイプと両極化された傾向があります。 U
同じメーカーでも機種により変わりますが、私が感じたメーカー色は U
ボーカル向け ← オールジャンル向け → クラシック向け
ハーベス>スペンドール>タンノイ>ロジャース>KEF>B&W
CELESTION
CELESTIONはロジャースやKEFに近いあたりでしょうか。 U
ただあくまでも参考程度に思ってください。 U
最後に。
ヴィンテージと言えるほど古い機種ですが、今だ高値で欲しがる人が U
多いヨーロピアンモデル。ただ適切な技術で処置をしないとまともな音すら U
出ませんが、復活したフィーリングを味わうと病み付きになりそうです。 U
ドロンの素晴らしさはKEFで実感してますが、今回は箱が小さくても U
それが実証されたのが良い勉強になりました。 U
奥の深いヨーロッパ製品に、ただただ脱帽せざるおえないUL6でした。 U
次回、4311のフロント木目の依頼が来ないかなー、 U
なんて思う日々です。何が出るかはお楽しみに♪ U
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CELESTION UL6 1970年〜80年頃 |
●メーカー解説: |
方式 |
2ウェイ・2スピーカー・密閉型・パッシブラジエーター方式 |
使用ユニット |
高域用:3cmドーム型 ・低域用:16cmコーン型 |
再生周波数帯域 |
45Hz〜20000Hz(推定) |
インピーダンス |
8Ω |
出力音圧 |
90dB/W/m |
クロスオーバー周波数 |
2.5KHz |
外形寸法 |
幅406×高さ292×奥行198mm 約L |
重量 |
8kg |
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