●今回はビクターのSX-L5という、ちょっと変わり種スピーカーのご紹介です。
自分のHPをざっと見返してみると、以外とビクター少ないですね。
他にSX-3とかSX-500があると思うので、おいおいやっていこうとは思ってます。
 ビクターというと、「 ビデオはビクター 」と、つい連想してしまいますが(CMの影響?)
さっそくインプレッションにはいりましょう。
victor SX-L5 1999年 \120,000円(ペア)
メーカー解説:
方式 3ウェイ・3スピーカー・バスレフ方式・防磁設計
使用ユニット 高域用:1.9cmドーム型 ・中域用:3.0cmドーム型 ・低域用:18cmコーン型
再生周波数帯域 35Hz〜80000Hz
インピーダンス
出力音圧 88dB/W/m
クロスオーバー周波数 3.5kHz、12kHz
外形寸法 幅220×高さ476×奥行345mm 約22L
重量 9.5kg
●エッジは布で動作も問題なし、さっそくの音出し
まずは一言
「 綺麗な高域だなぁ 」

パッと鳴らしてすぐ感じたのが、高域のキラキラ感。そう
この出っ張ったスーパーツィーターの音。
キラキラしてるのに刺さらない、そんなやさしい響きは心地よく、
ハイエンドスピーカーにありがちな傾向。
まるでこわれかけたライドシンバルを、やさしくやさしく丁寧に刻む、
そんな繊細さが感じられる印象でした。

中域はV1系と似た傾向で、やや凸気味。
だが上の方に癖ががあり、甲高い女性ボーカルの場合、まれに耳につくことがある。
超高域がやわらかくて良いだけに、非常に残念。
V1を熟知してるので何となくだが、たぶんネットワークで改善できるでしょう。

低域は、わりとタイトな綺麗系。
箱の大きさのわりにはブーミーにならず、密閉のようなフィーリング。
ポートを絞りすぎということも考えられるが、スーパーツィーターがあるので
もっと荒々しく、ワイルドな音でもいいような気がする。

総じて。
ドンシャリと凸の中間、わりとニュートラルに聴こえる傾向プラス、キラキラ感。
キラキラ感の特徴であるスーパーツィーターは、
その見た目からも華があり、人を引き付ける魅力もある。
だがそこばかりに注意がいきすぎたのか? ちょっと極端な言い方だが、
安いコンポ用のスピーカーに、高級なスーパーツィーターを無理やり合わせたような、
そんな感じというべきか。

そしてもう一つ、中高域の癖。
ビクターはユニットに過心しすぎ、その分ネットワークがおろそかになってる。
このスピーカーの思考は、2way+スーパーツィーターだが、
きちんと3wayとして考えセッティングしてやれば、耳につくような癖はでなかったと思う。

何もしなくても勝手に目がいくデザインなので、
全体のバランスはもっと、緻密で高度なものにして欲しかった。
音質にこだわるメーカーだけに、少し辛口になってしまいがちだが、
それだけ期待してるということでもある。 ということで、内部検証へと移りましょう。
●色といい形といい、
なんだか自作みたいなデザイン。

目をみはるものがあるのだが、
色味のバランスが、ちょっとと感じました。
ドーム・エッジがYAMAHAのような白系なら、
雰囲気もグッと変りそうですよね。
●上からみるとその凸形がよく解ります。
まるでピラミッドみたい。
となりにあるのもラウンドタイプですが、
どちらも珍しい形です。
●ユニットを外します。
ウーファーとMID(解りやすいようMIDにします)
の周りに白色(薄ベージュ)の枠があるが、
それはゴムで、外すとネジが出ます。
ネジはすべてボルト・ナットになり、
比較的かんたんに外せる。

内部、補強は少ないが、ウーファーとMIDの間に、
しっかりした、仕切り補強が入ってる。
上品な吸音材は全体の約20、30%ほど。
2つの黒●は背面のツインポート。
ビクターはツインがお好きなのか、
ポート臭さが出ないような処置だと考えられる。
● MIDの後ろ、ターミナルと直結された
ネットワークのお目見えです。
パッと見、V1とよく似てますね。

シンプルなネットワークの場合
その大きくは、ユニットに左右される事になる。
たぶんこれにV1ユニットを搭載すれば
癖が出にくくなると考えられる。
それだけ”諸刃の剣 ”と言いますか、
シンプルなネットワークはユニットに依存する。
簡素な分、ユニットの荒も出やすくなる。
だから逆に、難しくも感じます。
●こちらMIDの上部、天板の裏側になる。
上に載せられたスーパーツィーターは、
完全な独立型ということが解りました。
●そのスーパーツィーターを外してみると
内部はこんな感じになってます。
外見・デザインを優先させたような作りで、
そとからネジ穴とかは見えません。
内部にアンカーのような金具が固定され、
そのアンカーにツィーター本体を固定する
というものでした。
ずいぶんと綿密で凝った作りです。
ツィーターサイズがギリギリなので
太いケーブルは入らないようです。
●さてこちらはウーファー。
ビクターの特徴でもある、バランスド・オブリコーン型。
(中心をずらして配置したもの)
中高域の共振を、分散するのが狙いらしい。
そしてクルトミューラー社製のコーン。

マグネットは小さめだが、特筆するのはやはり、
オールアルミ製のフレーム。

パイプフレームのようなデザインは、
見ただけで音が良さそうな、そんな雰囲気がある。
メーカーはフルレンジに近い動作にしてるようで、
単品で聴くと、ここに問題があるように感じました。
●そしてこれも特徴的な、
スパイダーサスペンション(ダンパー)。
カタログには書いてませんでしたね。
(見てうわっと思いました)
 このスパイダーはわりと硬めで、
布ダンパーのような、こなれ感が少なく
終始安定して動作するのも特徴です。
タイトで密閉のようなフィーリングは、
このダンパーの要因が大きく関っている。

スパイダーの螺旋幅が、V1よりも若干幅広に見えたのだが、
ユニットが大きいから、そう感じたのかもしれません。

←それと端子は圧着式、
取り外しできないタイプでした。
●真横(左)から見ると、寄ってるのが解りますね。
右はバランスを取る為か?
片側だけに、ウエイトが貼られている。

バランスド・オブリコーンは、
たぶん世界でも類をみない構造。
だから世界で唯一、
まるでロータリーエンジンのような
感覚だと思いました。
ただV1Xもそうですが、
なんとなく無理してる・無理させてると言いますか、
良いところもたくさんあるが悪い所もある、
そんな印象もありました。
●さて、こちらはMID。
ユニットが3つあるので、わかりやすくMIDと書いてるが
動作的にはツィーターになる。

こちら一般的なソフトドームで、音質も一般的だが、
アルミフレームは剛性が高く、
厚めの音でもブレません。
70年代〜80年代初頭に見られるような
アルミ一枚からの削り出し構造は、
ま近で見ると質感も良く、ゴージャスに感じます。
●そしてこのスピーカーの肝となる
スーパーツィーター。

こちらのゴージャスぶり・輝きはそのまんま
ゴールド・金が使われたドームです。
端子やプラグの金メッキは一般的だが、
ドームの金は珍しいですね。
内部のオイルも十分に残ってました。

ミツビシ型の反射板からも解るよう、
V1と同じ材料だと思われる。
私には、見ただけで音がいいと、
つい錯覚してしまうほどでした。
●さてさて、一番最初に感じた色味の悪さ。

よーく見ると質感を感じ取れるのだが、
パッと見だと、派手なコンポ用にありそうな、
そんなスピーカーにも見えかねません。

そこで色味に統一感を持たせます。
重厚で重みのあるような
そんな雰囲気を出すのが狙い。

まずはコンパウンドで、ユニットを磨く。
その後にシリコンオフし、塗装します。
●MIDも分解し、磨いたあと塗装します。
●そして完成。
こんな感じになりました。
このような塗装は、なかなかやる人もいないと思うが、
前々回くらいより塗料を変えたので、
わりと良い仕上がりになったと思います。

極々薄い塗料を、10回〜15回くらい(濃さにおおじ)
うす〜く重ね塗りしていく。
一気に濃いものを塗ると、下地の輝きがなくなってくる
という事がわかりました。
だから薄いものを、何度も何度も重ね塗りします。
すると純正品のような見栄えになりました。
●塗る回数で濃さを決めるのだが、
今回はドームに合わせたので
やや濃いめの仕上がりです。

そしてツイーターの金ドーム、V1もそうだが、
わりとすぐに曇るので、磨いてコーティングを施します。
すぐにペコペコいってしまうほど繊細な
ドームなので、丁寧な作業が要求されます。

ウーファー(後ろに見える)のフレームも
塗装しました。
●ユニットを取り付け、その前に。
なんだか白いものが貼ってありますね。

これは、遊び心といいますか(^^;
アバロンのような三角形が際立つよう貼ってみました。
黒と白とで悩んだが、全体が薄色なので白をチョイス。
壁に溶け込ますのが狙い。
↓ちょっと薄目でみると、いい具合に見えるかもしれません。
昔モザイクを、必死に薄目でみたような
そんなノリで(笑

そしてユニットを取り付け
●完成!! いかがでしょう。
外装は元々鏡面タイプなので、傷を補修し軽く磨きました。
そしてユニットのキラキラゴールドが、綺麗にに輝いてます。
これを置いとくだけで、金運が上がるかもしれません(^^;

そして肝心の音質だが、まずはなんと言っても”癖を消すこと ”が最優先。
 今回はネットワークを40通りほど試し、何度も聴きながらセッティングしました。
地味な作業の繰り返しになるが、やはりヒヤリングが一番なんです。
周波数特性図は参考になるが、ピンスポットというわけにはいきません。
 嫌みな音って、一度聴くとの残るんですよね。
だからその後は鳴らさなくる、使わなくなってしまいます。
やはり長時間聴いてても疲れない、そんな心地良さは大事だと思います。

さてソースだが、どちらかと言うとクラシックや楽器系が向いている。
だが中低域に艶があるのと、甲高い女性ボーカルの癖もほぼ消えたので、
ボーカルものも安心して聴くことができます。
全体的には綺麗系な音色なので、どんなジャンルでもそつなくこなします。

最後に。
このL5、音質でも見ためでも、綺麗系なのが特徴でした。
全体が淡い色味なので、黒ドームが目立ち、シルバーと金色など、
最初はちぐはぐに感じました。
そこで統一感・一体感が出せるよう、同系色での塗装にいたったわけです。
白のカッティングシートは遊び心で、なんとなく貼ってみました。
最初は、側面や天板も貼ろうと考えましたが、どこまで貼ればいいのやら、
とりあえず正面に貼ってみました。

音質・デザイン・使い勝手などなど、すべてが完璧だと言うことないが、
完璧すぎるのも、考えものかもしれません。
 例えば週刊誌の漫画などは、つまらない・おもしろくない作品を
あえて「 掲載 」してるんですよ。
 それはパラパラと、気楽に見せるのが狙いであり、
すべておもしろいと、隅から隅まで読んでしまい、読み疲れする。
読みづかれる雑誌なんて、2度と買いませんよね。
そんな”意図 ”があるんです。

だからちょっと手作り感あふれる、そんな雰囲気も、受ける理由かもしれません。
今回は、ビクターの意思が、少しだけ解ってきたような気がします。
SX-L5のチューニングは想像より大変でしたが、
所有する喜びのもてる、そんなスピーカーになったと思います。

次回、まったくと言っていいほど紹介していない、パイオニアの登場です。お楽しみに♪

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