●今回はONKYOの上位機種、モニター500と、そのマイナーチェンジ版、500Xのご紹介です。
世の中にスピーカーは数多くあるが、モニターと名がつくスピーカーは、なぜか武骨なものが多く
このモニターも例外ではない。
そして見た目からは想像しにくい音色は魅力的で、
このスピーカー聴いてみたい!! 」という衝動に、ついかられてしまう。
加えてこのモニター、なぜこんなに重いのか!? というくらいヘビー級。
魅惑的な香プンプンだが、果たしてその実力はいかに!?
ONKYO Monitor 500  1984年 \90,000(1台)
ONKYO Monitor 500X 1988年 \98,000(1台) ( )赤はXで( )無しは共通
メーカー解説:
方式 2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式・(防磁設計)
使用ユニット 高域用:2.5cmドーム型 ・低域用:23cmコーン型
再生周波数帯域 30Hz〜45000Hz
インピーダンス
出力音圧 87(88)dB/W/m
クロスオーバー周波数 1.3(2.6)KHz
外形寸法 幅257×高さ452×奥行308mm 約20L
重量 17(16)kg 1台
●スペック的には、ほぼ同じですね↑

500と500X、どちらもエッジが×なので
まずはエッジを張り替えてからの音出しとなる。

今回は指向を変え、マイナーチェンジ版のXからいってみましょう。
まずは一言(500X)
「 深くて重い重低音、重戦車 」

パッと聴いた時、まずは重みのある重低音が耳に飛び込んできた。
とにかく重みの感じられるその音色は、どんなソースでも安心して聴けるほど、余裕がある。
高域はシャリシャリしすぎず、少しの透明感もあり、伸びも上々。
中域はやや凹気味の乾いた音。
高域・中域ともに、やさしくマイルドな感じが伝わってくる。
甲高い声の女性ボーカルの場合、やや金属味ある癖が顔を出すが
それほど嫌みは感じないし、うるさくもない。
そして低域。
このスピーカーが他と一線を画すのは、この低域と言って間違いないだろう。
低い音・重低音はもちろんだが、とにかく奥が深い。
超トルクフルとでも言うべきか、極太で高解像度。
バスドラはもちろん、スネアの軽くて速いビートまでも、リアルな質感でなんなくこなす。
そんなハイレベルな低域が、最大の特徴でしょう。

全体のバランスはややドンシャリ気味、ヨーロピアンモニターを意識してるのか!?
ボーカルよりも楽器系との相性がいい。
総じて、ほぼ完成されたような音質であり、いじる必要はあまり感じない。
私は初代500を熟知してるだけに、このXの進化には拍手を送りたいほどです。
そんなところですが、さっそく内部検証へとうつりましょう。
7 ●モニター500はわりと多く扱ってきたのだが、
初代 < X前期 < X後期

となるにつれ、色がだんだん
濃い < やや濃い < 薄い
となっていく気がする。
●ユニットを外しました。
ネジはオール六角で鬼眼ナット式。
残念ながら、1ヶ所だけ
空回りするネジがあり、
冷や汗たっぷりで、なんとか外しました。

内部は硬めの綿がわりと多めに入ってる。
この吸音材もそうだが、
前期は多く、後期になると少なくなっている。
(写真は後期)
密閉にしてもいいくらいの量感があるので、
ここは前期のよう、ビッシリ入った方がいい気がする。

その綿をずらすとネットワークが顔を出す。
独立型になってました。
●ユニットを外した瞬間からわかるほど、
作り込みが凄い!!
それが各部にわたり処理されてる。
こんな凝りに凝った作り込は、
日本人ならではの技でしょう。

●そしてなんと、
分厚いアルミが入ってた。
●とにかく凝った作りの箱なので、
こんな説明のほうが解りやすいと思い、記載しました。

重いのはコンクリートが原因だったのですね!!
ただしユニットも、超重量級なんです。
●箱の凄さがわかったところで、
背面ターミナルを外します。
●ネットワークが出てきました。
こちらはツィーター用、
やや良い部品が使われている。

バカみたいな値段がするスピーカーでも、
平気で電解コンデンサーとか使ってますから。
そういう意味では、いい方だと思う。
●さっそくターミナルを改造します。
まずはウォールナットをペタっ。

こんなのないでしょ(たぶん)
だからこのウォールナットが、
私が手を入れたという証なんです。
●次に穴をあけ
ターミナルを取り付ける。

写真だと一見簡単そうに見えるが、
ばらすのはとても難しい作業なんですよ。
何個やっても神経使います。
●お次は箱の仕上げ。
傷が目立ちますね。
それ以外にも小傷が多い。

ONKYOの一つの特徴と言うべきか、
ニスのようなものが厚めに塗ってある。
例えばオレンジ色の箱、
元はベージュだったりする。

そんなニス仕上げ、ONKYOの箱は、
傷補修がすごく難しい。
完璧に色があえば、だいぶ楽になるのだが、
ツキ板使ってるので、所々に色差がある。
そして微妙な位置の違いで
色も違ってきたり、見る角度によっても変わってくる。
とにかく、補修泣かせの箱なんです。
●傷の多いONKYO箱を見ると
ついタメ息が出てしまうが、
気を取り直して補修しました。
・・・
そして全体を入念に研ぐと
●あら不思議!?
傷が目立たなくなる。
工程写真が2、3抜けてるが
企業秘密ということにしてください。

ただし研ぎすぎると、よけい
色ムラになるので注意が必要。

このあと、クリアー・研磨・クリアー
で仕上げます。
●さてさてこちらはウーファー。
左が500で右がX。
Xは忘防磁型なのでカバー付き。
大きく見えるが、たぶん500の方が
大きいと思われる。

どちらも特徴的なのが、真ん中の穴。
この穴は貫通しており、コーンが動くと
ここから空気の動きもある。
このように穴のあいたユニットは、
どれも低音がよく出る特徴がある
FOSTEXもやればいいのにと、つい思ってしまう。

そしてどちらも頑丈なフレームだが、
初代500の方が物が良く、20%ほど重量もある。
黄金期はあなどれません。
●こちらツィーター。
パッと見わかる、金属ドームが特徴的。

この金属ドームはONKYOの象徴的存在。
高域はぐんっと伸びるのだが、
やや金属臭さの癖がある。
そこで内部に、

あるダンプ処理を施しました

またまた企業秘密で申し訳ないが、癖が軽減され
2〜3割はマイルドになった気がします。
これは自分的にかなりいいチューニングとなり、、
過去の金属ドーム、全部やっときゃよかったと
思うほど、効果的なものとなりました。
今後は全てやるつもりです。
●端子がマグネットに近いので、
ビニールテープで絶縁します。
その他細かい所も含め、
このようにしっかり処理します。

見えない所だが、こういう施工が
安心感につながります。
●ネットワークを取り付け、
最後にユニットを装着し
●完成!!! いかがでしょう。
ものによって度合いが違うのだが、どれも厚めにコーティングしたので、
鏡面のような仕上がりになりました。これはこれで高級感が増すのでいいでしょう。
ユニットのゴールドだが元々塗装なので、劣化による色ムラがありました。
だから全て落とし、フレームを磨き、再塗装。
純正のような仕上がりにできたので、良い雰囲気になったと思う。
なにより綺麗ですしね。

今回は各所のレスポンスUPをはかる、「 極みチューン 」としました。
最大の功績は、やはりツィーターのオーバーホールでしょう。
別物!? と思えるほど、いい仕上がりになりました。
JBL4301の背面板しかり、こういうツボを抑えたチューニングは、私の特徴。
そして中域・声質には、特化したこだわりを持ってます。

今回、「 初代500はより自然へと 」 「 Xはより明瞭に 」
というコンセプトのもと、チューニングを進めていきました。

例えば
ザ・クロマニヨンズの「 ナンバーワン野郎! 」とか、
The Birthdayの「 ROKA 」などは重なりが超多く、
スピーカーによっては聴けたもんじゃないほどのソースです。
特に金属系や、ボロンドームなども苦手な音でしょう。
そこで気持ち良く聴けるよう、ツィーター・ダンプ処理をおこなった訳だが、
効果はわりとはっきりでて、だいぶ気持ち良さが増しました。

高級なユニットになればなるほど、分解能力も高くなるのだが、
気持ち良さは比例しません。
TVのしょぼいスピーカーの方がいい!! なんて場合もあるから不思議ですね。
私は「 いかに気持ち良く聴けるか
そんなところにも、重点をおいてます。

最後に。
車と同様、スピーカーもマイナーチェンジされる。
前身となるモニター500は 1984年 の発売。
後継の500Xは 1988年 の発売ということから、4年の期間で熟成されたことになる。
マイナーチェンジのほとんどが、間違った方向性へと行ってしまうなか、
この500Xは、良い方向への正常進化が、多いに感じられました。
ただし食と同じよう好みがあるので、初代500がいいという人もいるでしょう。

ノーマルで使う事を前提とするならば、
私のおススメは、どちらかと言えば「 X 」です。
詳しい内容は次回の500に持ち越すが、
初心者からマニアまで、扱いやすさのあるスピーカーでしょう。
そして至る所まで凝った作りは見えないが、「 所有する喜びがある
こんな怒涛のスピーカー、今後出そうにもないので、
末永く可愛がってあげたいものですね。

次回後編、初代モニター500のインプレッションです。お楽しみに♪

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