●今回はmarantz(マランツ)の LS-5A というスピーカー。
marantz と聞いて、あまりピンとくるメーカーではないが、
他社との提携をへだて、ハイエンド機種などを作っていたようです。
アンプやCDPの外装を見ると、確かにゴージャス(GOLD)な雰囲気が出てる。
そしてオーディオメーカーなら外せないスピーカーも、しっかり作ってます。
人気・評判はわからないが、激レアであることは間違いないでしょう。
名前がロジャース・LS3/5Aに似てるのは、意識してるのか?定かじゃないが、
そんなところで、さっそくレビューに入りましょう。
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marantz LS-5A 1988年 \20,000円(ペア) |
●メーカー解説: |
方式 |
2ウェイ・2スピーカー・密閉方式 |
使用ユニット |
高域用:2.5cmドーム型 ・低域用:10cmコーン型 |
再生周波数帯域 |
80Hz〜22000Hz |
インピーダンス |
6Ω |
出力音圧 |
84dB/W/m |
クロスオーバー周波数 |
2KHz |
外形寸法 |
幅128×高さ204×奥行121mm 約1.5L |
重量 |
約2kg |
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●ユニットに問題はないようなのでささっそく音出し
まずは一言
「 ちょっとエコー強すぎだなァ 」
全体のバランスは上より、高域はもう少し抑えてもいいような気がする。
中域はやや凸気味だが、そこが最大の長所とも言えるほど”ワイドレンジ ”
よく、鳴りっぷりがいい!! なんて表現が合いそうで、
このサイズでは考えられないほど音が広がってくる。
そして余裕がある。
このサイズの場合、ボリュームを上げすぎないよう気をつかうが、
これはわりと普通の感覚で使える。
カタログでは能率が84dBとあるが、実際は90くらいあるんじゃないの?
と思えるほど軽々しく鳴ってくれる。
意外に気づかないような点だが、そんなところが優秀に感じました。
ただし音量を上げていくと、中域が少しうるさくなってくる。
短所はあいまいな中域、エコー感の強すぎる音。
声質・輪郭がぼやけており、TVの音も聴きとり難いほどです。
低域はこのサイズ・密閉という事を考慮すると
期待するものではないが、ポコポコしないのが唯一の救い。
中・低域、男性の声など、もう少し厚みが欲しいところ。
総じて。
本格オーディオ用スピーカーとしては、とにかく最小と言えるほどのサイズ。
これだけ小さいと、何を求めるかがポイントになりそうだが、
「 小さいからこんなもんだろ 」
そんな解りやすい結果でした。
近いサイズのスピーカー、FOSTEX G700を例にあげると、
あちらは解像度の高いリアル系、そしてG750はもっとマイルドにした感じだが、
このLS-5Aは、G750に近いフィーリングです。
これはこれで悪くはないのだが、
やはりG700のような、クッキリした中域・リアリティが欲しいところでもある。
中域を明瞭にするのは、まず高域・ツィーターの能率を上げればいい。
すると中域・声がクリアーになり、リアリティも増してくる。
だがこいつの場合、高域の能率を上げるとシャリシャリがさらに強くなり、
うるさくて不快な音になりかねない。
だからネットワークをやり直す必要がある。
ネットワークチューンはわりと難しいので、おいそれとはできないが、
この”LS-5A ”は、何か手をかけてやらねばならぬ、そんな雰囲気がある。
そんなところで、さっそく内部検証にはいりましょう。 |
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●写真じゃわかりにくいが
かなり小さい。
そしてパッと見綺麗だが・・・ |
●ユニットを外します。
ネジは全て + 木ネジ。
普通に外れます。 |
●で外してみると、
なんだか煙・ほこりが舞い上がる・・・
これも写真じゃわかりにくいと思うが、
かなりやばい・汚い。
もう錆びやら、カビやら、何やら
とにかく何かわからない白いものが
大量に付着してる。
とても部屋の中ではできません(やりたくない)
なのでこのままベランダにもっていき、
そこで作業しました。 |
●こちら背面。
箱の素材はパーチクルボードで普通の作り。
外国製なら、もっと分厚い作りでしょうね。
そしてこのようなクラックが、何ヶ所かありました。 |
●ターミナルカバーを外すと
ネットワークが取り付けられている。
この部品、AIWAやSONY、TEACなんかでも
何度か見ています。
同じ部品、同じ構成なので
どこかで大量に作った、共用品なんですかね。
上記メーカーの共通は、いずれも日本製ということです。 |
●だいぶ綺麗になりましたね。
もう白いのが、びっしりこびりついてた始末。
思わず丸洗いしたくなるほどだったが、
パーチクルボードは水ぶきは厳禁なので
ぐっとがまんしました(笑 |
●まずは箱の補強から。
この状態で半日おく。 |
●その後塗装します。
内部もしっかり、防腐・防カビ剤を配合してある
塗料(ステイン)を使いました。
断面は全て接着剤を流し込み補強。
元がやばかっただけに、15%は強化してるでしょう。
外装はツキ板(リアル)仕上げなので
小さいのにいい雰囲気が出てる。
だが薄くなってる(焼け?)ので、再塗装しました。 |
●ユニットのオーバーホールに入ります。
こちらはツィーター。
年代のせいか?
フレームが鉄でマグネットも大きく
しっかりした製品です。
高域の伸びも上々でした。 |
●ウーファー。
ツィーターに比べると、フレームが薄いのが残念。
エッジはウレタンでまだ大丈夫そう。
紙コーンでポピュラーな作りは、
一昔前のような古さを感じるが、
耳当たりのいい、やわらかい音質は中々いい。
だがいかんせん汚い。
ツィーターもこれも写真じゃわかりにくいが
けっこう錆びだらけ。 |
●そこで錆びを落とし
全塗装しました。
エッジにもダンプ剤を浸透させたので、
安心して使えます。 |
●もう一つの問題。
高域がシャリシャリしすぎてる、
そのわりには中域は”あいまい・あまい ”音。
方法は
ツィーターの中域をいじるか、
ウーファーの中域をいじるかの2パターン、
もしくは
それら両方やるパターンがある。
とにかく色々やってみて、
具合のいい音を探っていく。 |
●そして完成。
元々が簡素だっただけに、
これでようやく標準
といったところでしょうか。
簡単に書いてるが、
経験や感が必要な作業です。 |
●ネットワークを取り付けたあと
吸音材をセッティング。
吸音材は、もちろん新品に変えました。
そしてユニットを取り付け |
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●完成!! いかがでしょう。サイズ比較のコーヒー↑
外装はオイル・3部艶仕上げ。
元々のツキ板が薄いうえ、クリアーも塗ってあったので、
完璧な外装にすることができませんでした。
少し納得いかないが、パッと見だいぶ綺麗になったので、まァ良しとしましょう。
肝心の音質だが、
中域の改善と能率変更をおこない、
中域・ボーカルにリアリティがよみがえり、
かなり良いフィーリングになりました。
やはり密閉だけに、正確無比な音が欲しいですよね。
そして中・低域。
このサイズで重低音を求める人はいないと思うが、
低域はわりとしっかり出ており、軽くないので聴きごたえがある。
能率を何度かやり直しながら調整したのと、
ユニットのオーバーホールも効果が出てるようです。
内部塗装や補強も加わり、安心して鳴らせるようになりました。
最後に。
今回もフルのフル、フルオーバーホールとなりました。
いかに新品に戻せるか、そんなところがポイントだが、
ネットワークもしっかりチューニングしたので、
たぶん、新品以上の出来になってるでしょう。
元々の雰囲気がいいだけに、
音を聴いてがっかりでは悲しすぎますよね。
ユニットを外した時はびっくりの状態だったが、
逆に言うと、それだけ”気密性 ”が良かったのかもしれません。
汚かったので色々と手をかけたが、サイズがサイズだけに すんなり作業できました。
チューンドLS-5A、
色々なところに そっと設置したくなるような、
そんな味のある、高品位なスピーカーへと変貌しました。
次回、続けてマランツ、さらに激レア!? お楽しみに♪
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