●わりと大きくて重い、この微妙な大きさの段ボール、何だろう?
そう思って開けてみたらこいつ D-55F が出てきた。
パッと見「 おっ、かっこいいじゃん!! 」と思った。
だが同時に、ゴムエッジの微妙具合にも目を奪われる。
エッジはやや硬めなので、復活できるかどうかは微妙なところ。
このまま音出ししても問題なさそうだが、
一応メンテしてから音出しすることにします、その音色はいかに!? |
ONKYO D-55F 1989年 \39,800円(1台) |
●メーカー解説: |
方式 |
3ウェイ・3スピーカー・バスレフ方式・防磁設計 |
使用ユニット |
高域用:2.5cmドーム型 ・中域用:12cmコーン型 ・低域用:18cmコーン型 |
再生周波数帯域 |
35Hz〜30000Hz |
インピーダンス |
6Ω |
出力音圧 |
90dB/W/m |
クロスオーバー周波数 |
500kHz、3kHz |
外形寸法 |
幅260×高さ500×奥行270mm 約23L |
重量 |
13.5kg(1台) |
|
●そして時間をかけメンテナンス、エッジもだいぶ復活してきた。
エージング無しで まずは一言
「 上品な音だなァ 」
過去に聴いたONKYOとは一味も二味も違い、
最初に感じたのは「 すごく自然でナチュラルだなァ〜 」なんて思った。
高域はわりと控えめで、主張しすぎない柔らかくてやさしい音。
中域も同様にやさしい音色。
感心したのはその出具合。
凸凹具合はやや凸〜ニュートラルで、とにかく自然でやさしい。
ニュースを読むアナウンサーの声も、
「 ああ、このスピーカーから音出てるんだ 」
と 存在を忘れるほどナチュラル。
低域はタイトでハギレのいい音。
だからサイズのわりは、少し軽めかなと感じた。
ただし、きちんと低い音も感じられる。
全体的に、やはり”自然 ”という言葉があてはまるほど癖が無い。
中域にやや詰まった感もあるが、良い言い方をすれば
ヨーロピアン・モニター調。
コクがあるのに後味すっきりした軽〜いお菓子、
チーズビットだったかな?そんな感じ(^^;
パッと聴いたときのフィーリングは、DENON SC-E757 に似てる気がした。
ONKYOは中・高域に癖のあるスピーカーが多い中、これはほとんど無いと言っていいだろう。
レベルの高い音質は、たぶん基本設計も良さそう。
重たいですしね。
そんなところで、さっそく秘密を紐解いてみましょう。 |
|
●あまり見慣れないデザインですよね。
それは逆に新鮮で、
見慣れてくるとかっこいい!!
と思えるほどです。 |
●ユニットを外します。
ネジは六角で全て共通サイズ。
ある意味楽でいい。
コストは少し減ってるのか? |
●MID(スコーカ―)部は独立されている。
だが素材は発砲スチロール(白)。
強度が出るような段差もあり
悪くはないが、
触るとキュッキュッと嫌な音が出る。
ここはやはり、
しっかりした素材にしてほしかった。
振動にこだわってるのなら、なおさらですよね。
内部に吸音材はほとんど無い。
ツィーター後ろに少しあるのみ。 |
●矢印はカットした木(丸)を重ねたもので、
メーカーいわく
アコースティック・スタビライザー
というらしい。
ようはウーファーをガッチリ固定し
不用な振動を出さないようにするためのもの。
それよりも、
チラッと見えるネットワーク、
独立型でコストをかけた作り。
この価格帯のスピーカーにしては立派なものです!!
スピーカーの命ですから。 |
●背面まで穴が貫通しており |
●ボルトが飛び出している。
その周り、黒く見えるのはゴムで
ワッシャ―的に使ってある。 |
●で、これがウーファー。
この写真を先にしたほうが(順番)
わかりやすかったかもしれませんね。
この長いボルトが箱の後ろまで貫通しいる。
ただしナット留めはしておらず、
ボルトを穴に突っ込んであるだけ。
でもかなりきつめ、ハンマーで叩いてようやく
外れたほどでした。
そしてもう一つ外れにくくさせた原因が
”錘 ”デットマス
「 このユニットめちゃくちゃ重い!! 」
なんて思っていたら、錘が原因でした。
メーカーとしては珍しいが、ONKYOは他にもあったと思う。
設計者が自作好きなのかは不明だが、
外国製品では見かけませんね。 |
●これはツィーター。
マグネットも大きく、90年代のわりには
わりとしっかりした製品です。
上位機種との共通品かもしれません。
で、MIDの写真載せ忘れる・・・
完全に寝ぼけてました。 |
●これはエッジをメンテしてる様子。
ゴムエッジの場合、
私は指でダンプ剤を塗っていきます。
指だと微妙な力加減ができるし、
これで割れるようなら交換したほうがいい、
という目安にもなる。
プロフェッショナルな技ですよね。
昔フェラーリのワックスがけを
指でやってる職人がいました。
あの時は「 よくやるよな 」なんて思っていたが、
”指だからこそ ”なのかもしれませんね。
ちなみにWAXはザイモールです。 |
●今ゴロゴロ(雷)の音が超でかくて
おっかなくなってきました(笑
まれに電源落ちるときありますからね。
注意が必要です。
さてさて、これは背面ターミナル。
ここを外すと |
●ネットワークが出てきます。
これはツィーター用のネットワーク。
簡素な部品だがよく設計されてます。 |
●で、コンデンサーを交換。
柔らかい音を
さらに柔らかくするのが目的なんです。 |
●ターミナルは大きくて回しやすいものだが、 |
●交換しました。
このカバー、元のつまみ(赤黒)を外すと、
下側が凸加工されている。
まずはその凸を平らに削ります。
他にも金具とか付いてるので、それを全て外します。
すると部品を外した所に穴があく。
そんな穴を全て埋め、エポキシでさらに補強します。
もっと径の大きい大型ターミナルだったら
荒部分(削り跡など)を隠せそうなので、
楽かもしれませんね。
いずれにせよ、ビビリの出るプラスチック製品ですから、
しっかり加工する事が大事です。
|
●一番気になったMIDの発砲スチロール。
ここはギチギチに吸音材を入れました。
念の為、外側(箱の内部)にも
ブチルテープを貼りダンプさせます。
せっかくのアコースティック・スタビライザー
ですから、
他もしっかりとやりたくなりますね。 |
●ユニットのオーバーホールが完成、
そのユニットを取り付けます。 |
●背面、ウーファーから出てるボルトは
ナットとワッシャ―でしっかり留めました。
ここのナットがなぜ無かったのか?
たぶん元から無いと思うのだが、
(なくてもガチガチ)
これで本来の目的を果たせそうです。
これでもかというくらい しっかり固定、
箱とユニットが一体化しました。 |
|
●そして完成!! 艶消し仕上げ。
ユニットの大きさ・フレームのサイズや、センターキャップの大きさが、
上から下まで”見事なバランス ”です。
この辺りのデザインが、美しく見える最大の要因かもしれません。
ただしこのスピーカー、残念ながら箱の傷が多かった。
重量があるスピーカーは傷が多いのはよくあることで、補修には時間かかりました。
今回の55F、ご対面の時からその見た目に驚いたが、音出ししてびっくり
予想外なほど優秀な音色には、さらに驚くほどのものでした。
そしてさらなる解像度を求めたく、迷わず「 極みチューン 」をおこないました。
素体の良いスピーカーは、チューニングが楽でいいですね。
そして分解していくにつれ、凝った作りには驚かされた。
ウーファーをガチガチに固定する方法や、
これでもかというほど重いデットマス。
ネットワークは3分割されており、基本に忠実な作りなど
随所にこだわりが感じられます。
これだけ凝った作りを見てしまうと、「 音が悪いはずはないでしょう 」
フルレンジのようなMIDは、見た目だけで音が良さそうに見えるが、
3wayの要は、このMIDにあると言っても過言ではありません。
ここが柔らかくて癖が無いので、全体もマイルドで聴きやすい傾向になっている。
ただし低域に関して、私的にはもう少しドスの効いた音、荒さのある音が好みだが、
ここまでガチガチにした構造だからこそ、こういう上品な音が出せるんでしょうね。
とにかく「 あっぱれ 」なスピーカーです。
さてソースだが、癖がないのでどんなソースでもそつなくこなします。
中域がやや凸〜ニュートラルだが、
セッティング(ネットワーク)がしっかりしているので音が団子にならず、
オーケストラなどの細かい描写まで堪能できそうです。
そして3wayの特徴でもあるワイドレンジは、
小型2wayでは出せないやんわりとした音が、ごく極自然と出ており、空間に広がってきます。
最後に。
過去、この手のデザイン(縦に直列)はあったかな?
と思えるほど”新鮮 ”なデザインは高級感もあり、見れば見るほど愛着が湧いてくる。
そして音がいいとなれば、言う事なしでしょう。
サイズや値段など、微妙なポジションだと思うのだが、
大型3wayのような圧迫感は無いし、ある意味いいとこどり、
”フリード(車) ”のような、ちょうどいい存在かもしれません。
そして高級スピーカーにも、一歩も引けをとりません。
とにかく、こんないいスピーカーがあったとは、失礼だが正直驚きました。
ONKYOの3wayって、癖のあるやつ多いですし。
ONKYOはD102EXGやD100の印象が良かったが、55Fはさらに上をいくかもしれません。
モニター500と聞き比べてみたいものです。
そしてこの”デザイン ”素敵過ぎます。
これをこのまま半分ほどの縮小サイズで作ったら、ヒット商品になるかもしれません(私も欲しい)。
あとで文章を読み直した時、「 これ褒めすぎだろ 」なんて思えるほどの回になりましたが、
D55F、お世辞抜きで優秀ななスピーカーでした。
次回、いよいよ4301の登場か!? お楽しみに♪ |