●今回ご紹介するのは、大型・高級スピーカーで有名なメーカー タンノイ(イギリス)
その製品の中でも 比較的廉価版の商品、マーキュリーm1です。
タンノイと言えば=同軸を思い浮かべますが、この普通の2wayも 一応タンノイなんです。
というか、
タンノイ製品自体、初めての取扱でわくわくしています。
どんな音が飛び出してくるのやら、さっそくはじめましょう。
TANNOY mercury m1 1999年 \29,000円(ペア)
メーカー解説:
方式 2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式
使用ユニット 高域用:2.5cmドーム型 ・低域用:13cmコーン型
再生周波数帯域 55Hz〜20000Hz
インピーダンス
出力音圧 87dB/W/m
クロスオーバー周波数 2.5KHz
外形寸法 幅170×高さ300×奥行200mm 約5.5L
重量 3kg
●タンノイ=同軸=クラシックという印象がありますが、今回は同軸ではなく普通の2way。
2wayは、私がもっとも得意とする分野なので、視聴が楽しみでもある。
ではさっそくレビューにはいりましょう。

まずは一言
「 あれっ?日本の音? でも温かくていい感じだなァ〜 」

タンノイ=クラシックというイメージは、なんとなくわかったような気がします。
ただそれよりも、一番印象的だったのは、
これ ヨーロピアンサウンドではなく”日本的な音 ”だったこと。
もし目隠しして聴いたなら、日本のスピーカーと思う方も多いはず。
それだけに、馴染み深い音でもありました。

このスピーカーの最も特徴的な部分は中域で、ほどよい凸加減・押し出し感が、まさに日本的な音質です。
そしてこの凸は非常にバランスがよく、少し聴いただけで心地よくなるほどでした。
上質な音色は、まさにダイヤトーン・DS-500を彷彿させるものがある。
唯一の弱点は低域が弱いこと。
バランスの良いナチュラルな音質だが、もう少しドスの効いた荒々しさがあってもいいと思う。
 聴き比べをした訳ではないのだが、視聴時にはDENON・SC-E232がありました。
このスピーカーは逆に、日本製らしくないヨーロピアンサウンドが最大の特徴です。
だからTANNOYとDENONが逆のような、そんな錯覚さえ感じられました。

ナチュラル指向でマイルドな音質は ボーカルものとの相性が良く、特にJ-POPとの相性は抜群です。
リーズナブルな価格帯もふまえて考慮すると、日本製よりワンランク上の実力はいなめない。
さすが外国製!! ”と、思わず言いたくなるほどの性能でした。
とにかくコストパフォーマンスが最高なうえ、タンノイというブランド力で最後のダメ押しをくらう。
市場がここまでの高評価をしたのかは解りませんが、私の中では かなりいいスピーカーです。
そんなところですが、さっそく音質の秘密を探ってみましょう。
●まずパッと見、ユニットの形(フレーム)が斬新だな
なんて思いました。
フロントバッフルは薄い茶色で、あとは黒。
こういうツートンカラーも珍しいですね。
デザイン指向でこうしたのかは解りませんが
ケンウッドも このてのスピーカーがありました。

スピーカーってなに?なんて言うほど
興味のない女性は
武骨な普通のやつよりも
”かわいい ”と言ってました。
ついでに”音いいね ”とも。
男性と女性の視点は違うことが多いと思うが、
いい音に関しては一緒でした。
これは背面に貼ってあるラベルです。
この文面を読むと、メーカーの態度や自信が伺えます。

そしてこのラベル、よくあるシールタイプではなく
なんと”アルミ製 ”のプレートなんですよ!!!
ご丁寧に、透明の保護シールまで
貼ってあります(角がすこしはがれてる)

メーカーの強いこだわりや意志が、
十分に伝わってくるしろものです。

●前置きが長くなりましたが、ユニットを外します。
ネジはすべて六角ですが、細いもの(2.5mm)を使います。
●内部はこんな感じ。
吸音材(白い綿)がびっしり入ってました。

箱の響きを抑えたい!そんな意思が、
ヨーロッパ製品に多く見受けられます。
●こちらはツィーター。
いたってシンプルな製品。
外国製品によく見られるワンタッチ式ではなく
しっかりとネジ留めで固定された構造になってます。
こんなところも、日本製に似てると感じました。
●で、これはツィーターを留めていたネジ。
これ、ネジの先に木材が付着してますよね。
それは
ネジ留めする前にボンドが流し込んである、
もしくはネジにボンドを付けていた、
そんなことがうかがえます。

外す時に硬かったので、あれ?
なんて思っていたのだが、
こういう細かい配慮も日本的なやり方に似ており
好感もてる技です。

小さな積み重ねがあるからこそ、結果的に”いい音 ”を
生み出すんでしょうね。
もしかしてTEACが作ってた?
なんてオチじゃないですよね(笑
●こちらウーファー。
パッと見プラスチックのフレームだが、
●見てくださいこのデザイン。
これでアルミだったら、
まさにダイヤトーン、メイドインJAPAN製品。
日本が向こうを見習ったのか?
それとも向こうが日本を見習ったのかは解りませんが
何か通づるものがあります。

強度を確保する為のデザインや、
ダンパーがスムーズに動くような空気穴などなど、
とても凝った作りです。
ちなみに薄い鉄板プレスのフレームと比べると、
強度や振動はどっちが有利なんでしょう。
コストも気になりました。
●こちらはネットワーク。
シンプルだがツボを抑えた設計になっていた。

細くて硬めの銅線(すずメッキ)は
ヨーロッパ製品に多く見られますが、
●やはり変えたいところなので
←変えました。
これで表現力も、より豊かになるはずです。
●ヨーロッパ製品が日本の製品と比べ
決定的に違うのはこのネットワーク。
どんなに廉価版製品でも、
細かい配慮やこだわりが感じられます。
そんなところは、
日本車とドイツ車の差のようにも感じました。

そうそうこのカバーだが、JBL製品と同じように
割れやすいプラスチックです。
少しでも強くネジを締めつけると
すぐにバキバキいってヒビが入るので
すごく神経使いました。
●ユニットのオーバーホールが完了。

ツィーターは分解・清掃。
ウーファーのエッジはゴムで、柔軟性も問題なし。
耐久性を考慮し、裏側より補強をほどこしました。
●箱にネットワークを取り付けたあと
●ユニットを取り付け
●完成!!! いかがでしょう。
箱はシックな3部艶仕上げ。木目のリアリティも増しました。

今回のマーキュリーm1、最初は低域を少し増量したいとも思ったが、
中高域が心地良かったので、ポテンシャルUPをはかる”極みチューン ”にとどめました。

隣にあるDENONとケンウッドが ドスドスいうスピーカーなので
このm1はよけい低域が弱く感じてしまいました。
ただ中域に厚みがあるので、それほど もの足りなさは感じません。
 箱をいじろうか?なんて悩みもしましたが、良い持ち味はそのまま活かすのがベストでしょう。
ソースだが最初と変らず、やはりボーカルものとの相性がいい。
中域の癖もほとんど無いので、TVの音もバッチリです。

ロジャースやB&Wのような バリバリのヨーロピアンサウンド、そんな音が好きな方にとっては
タンノイは違和感を感じるかもしれません。
逆に日本の音、ビクターやダイヤトーン、ケンウッドなどが好きな方にとっては、
タンノイの音はすんなり馴染めそうです。
 今回初めての扱いとなったタンノイ、
音質が日本的だったので やや拍子抜けした面もありましたが、
細かい作りこみや音質の好みも合わせ、好感度が上がる結果となりました。
ただしこの2wayだけでは タンノイのすべては判断できません。
はやく大型同軸を聴いてみたいものですね。

最後に。
現在日本の製品は、外国勢にどんどん追いやられてます。
その一つである液晶パネル(液晶TVなど)は、市場の半分近くがLGとサムスンという韓国メーカーの1人勝状態。
大型化するのが難しと言われている次世代パネル・有機ELは、日本よりも先に韓国勢が発表して話題になってます。
 このマーキュリーm1、定価3万円なので実売は2万円くらいでしょうか。
10年以上前の製品なので比較はできませんが、
現在2万円で買える日本製で これを越えるものが果たしてあるのか?
そんな漠然としたことが、ふと頭をよぎりました。
何かを考えさせられる、そんな奥深いスピーカーでもありました。がんばれ日本!!!
次回は日本勢の巻き返し!!! ケンウッドが頑張ってくれます!お楽しみに♪


          ・・・        ・・・・・