●何カ月か経つと聴きたくなるONKYO。
今回はメーカーのチューニングモデル D-202
AXLTD の紹介です。
初登場となるこのAX、ノーマルとチューニングモデルのLTD(リミテッド)がありますが、
ONKYOのLTDモデルは、もう超メジャーな存在ですよね。
そんなLTDモデルですが、音質に関しては 元のAXが無いと、どこをどうアップさせたのか分かりませんよね。
そんなんでさんざん比較をやってきましたが、
今回ただのAXは入手できなかったので、LTDモデルだけの検証になります。

 ONKYOのこの手の商品、どれがどれだか分からなくなるほど沢山あります。
現行モデルもそうですが、中古でもどれを買っていいのか迷ってしまいますよね。
そんなときは躊躇せずに”LTD ”を選んでください。
それほどONKYOのLTDモデルは、ハズレがありませんでした。
冒頭でこんなことを書くとは、今回はハズレなのか?そんな感の鋭い人もいるかと思いますが
ぼちぼちはじめましょう。
ONKYO D-202AXLTD 1989年 \98,700(ペア)
メーカー解説:
方式 2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式・防磁設計
使用ユニット 高域用:2.5cmドーム型 ・低域用:16cmコーン型
再生周波数帯域 30Hz〜35000Hz
インピーダンス
出力音圧 89dB/W/m
クロスオーバー周波数 3KHz
外形寸法 幅205×高さ333×奥行352mm 約14.5L
重量 7.9kg
●エッジは問題ないので、てゆうかこのエッジセーム皮?
まずは一言

「 落ちつきある柔らかい音だなァ。ONKYOらしさが無いかも 」

まず外観を見た時、「 俺は高級機種だよ。いい音出すよ。 」
そんな事を言ってるような、余裕ある雰囲気が漂ってきました。
そして音出しするとそのまんま、ONKYOとしては高域をあまり強調しておらず
中低域に比重をおいた、落ち着きある柔らかい音色でした。
フロントポートなので自然と中低域が凸傾向になるが、それほどこもっておらず
ボーカルの声は、わりとナチュラルなバランスを保っている。
ただ男性ボーカルが少し軽かったり、雑味も見え隠れするときがあるので、
個人的にはもう少し煮詰めたいところだ。

エッジを触ってみると たぶんセーム皮だと思うのだが、きちんとダンピングしてるのか?と心配になるくらい
激薄でヘロヘロなものだった。
ゴムのような弾力がまったくないので、低域のキレが甘いところなど、もしかしたらエッジの影響があるのかもしれません。

前回まで甘くて色気のあるサンスイだったので、ONKYOは違和感あるかな?と思っていたのだが、それほどでもなかった。
自然にスーッと入ってくるほど似てる傾向は、LTDだからなのかもしれません。
どんなソースでも鳴らしてやるよ。
そんなオーラが漂う202AXLTD。さっそく内部検証してみましょう
●こじゃれた雰囲気と言いますか
見ためは中々いいですよ。
●ユニットを外します。
ネジは六角。
すべてのネジに白錆が浮いており、白くなってました。
●箱の内部。
いかにもLTDって感じがしますね。
特にケーブルなんかは普通なんだけど
こたつケーブルのように布が巻いてあり
それだけでもググッとくるものがありました。
●ちょっと珍しいのはこの補強。
基本に忠実な補強のようですが、
意外とやってあるスピーカーはありません。

この十字に組まれた補強、
5mmという薄いMDFで作られているのだが、
”ガチガチにしすぎない? ”のがミソ。
設計者の、こだわりなのかもしれません。

それとこれもONKYOとしては珍しい
長〜いポート。
なんと19cmもありました。
このあたりの設計が、ONKYOらしくない
ポイントかもしれませんね。
●ツィーター。
ONKYOのページを見るとわかるが
まいど同じような内容ですね。

ネジに白錆が浮いてるのが気になります。
●背面マグネット。
●こちらウーファー。
フレームもマグネットも よくみるONKYOなのだが
唯一違う点が”エッジ ”です。

このエッジ、たぶんセーム皮だと思うのだが
どうなんでしょう。
触ってみるとスェードのような、気持ちのいい手触りです。
ただ一つ気になったのが、
めちゃくちゃ柔らかいこと。
セーム皮って伸びないぶん、弾力もありません。
指で凹ますとそのままの凹の状態になってしまいます。

エッジは種類や硬さなどにより、音への影響が強いものです。
最初に聴いた時のあまい(あいまいな)低域は
このエッジの影響もあると踏みました。




裏側。
LTDモデルだからか どうかは分かりませんが
フレームには布のような、薄いものが貼られてました。
鳴き留めのつもりなんでしょうね。
でも何もないよりは雰囲気でてます。
●一番気になってたエッジ。
さっそくやり直しました。

ウレタンエッジと同じ工程で、
油性→水性と塗りわけました。
これにより、プルンっとした弾力が備わりました。
音もかなり変わりそうです。

この写真はエッジの裏側だが、左の写真は塗る前です。
セーム皮ですよね?
●次はもう一つ気になってた、ポートを補修します。
使うのはこれ、5mm厚のウレタンスポンジ。
切り出したものだが、ちょうどA4くらいのサイズですね。
●それをこんな感じに巻きました。
紙筒を口にあてて息を吹くと、ボーっという音が出ますが
それが紙臭い音なんですね。
そこにスポンジを入れると適度な吸音効果があり、
ボーっという音が少しクリアーになります。
”紙臭さが抜けた ”
そんな感じなんです。

筒が長い分効果が大きいです。
この措置によりポート周波数も、
5〜10Hzくらいは下がったと思います。
たぶんエッジとポートだけでも
かなりの音質改善になったことでしょう。
●さて、こちらはネットワーク。
手が入りずらい奥に爪があるので、外すのが大変でした。
ネジ留めにして欲しいです。

これツィーターのネットワークで、
ウーファーはなんと スルーでした。
最初のインプレで”雑味 ”を感じたと書いてますが、
そんな時はだいたいスルーなんです。

しかもこのネットワーク、コイルを後から足したのか?
そんな取り付け方でした。
ひょっとしたらただのAXは、6dB/octなのかもしれません。
●ネットワーク基盤の裏側。
小さいコンデンサーが2つ、表に1つあります。
ONKYOはこんなのをよくやってますよね。
ある意味ONKYOらしさがでてます。
ヒヤリングで気にくわないから、
後からやり直してるんでしょうか。
●ケーブルを変えました。
これも けっこう解像度・SN比なんかが上がります。

コンデンサーはフォステクスのUΣが付いてるので
あえて変える必要はないでしょう。
やるならば低域のネットワークを
作ってやったほうが良さそうです。
●ネットワークを箱に装着。
この補強のせいで、作業性がえらく悪いです。
●パッと見綺麗な箱だが、よ〜く目をこらすと
薄い線傷があったので、ぜんぶやり直しました。
さらに高級感が増してます。
●最初から気になってたネジの錆。
ぜんぶ錆を落とし 再塗装しました。
●ユニットを取り付け
●完成!!! 半艶仕上げ。 いかがでしょう。

今回チューニングするつもりは無かったのだが、聴きこんでいくと気にいらい点がでてきたので、
けっきょく極みチューンをおこないました。

まず最初に感じたのはONKYOらしくないと言いますか、締りのないプアーな音色。
低域の量感を なるべく下げないよう注意しながら、できるだけ解像度を上げてやりたいと思いました。

ウーファーには元々ネットワークがないので、足してやろうとも考えてましたが、
その前にエッジとポートを改善させました。
それらがかなり効果を発揮してくれて、プアーな音が見事改善されました。
だからネットワークは作らずに、ケーブルだけの交換にいたりました。
小さいコイルを付けてもいいかもしれません。

最初にくらべかなり”自然な音 ”に変わりました。
特にボーカルに関しては”リアリティが抜群になり ”久々に背筋がゾクゾクしたほどです。
男性の声にも厚みが増し、よりナチュラルへと変わりました。
どちらかというとクリアー質傾向なので、オールジャンルこなせます。
最初はなんだかなァー、これでLTDか?なんて思ってましたが、
今回のチューニングは大正解で、
LTDモデルの名に恥じない音質になったでしょう。

最後に。
ONKYOは現役メーカーで ファンも多いですよね。
だからつい、ONKYOにはONKYOらしさを求めてしまいがちです。
80年代や90年代のモデルは現代のモデルと違い、上品でシックな風合いが出てます。
それは他のメーカーにも言える事ですが、
LTDモデルの場合、どこか違うオーラが出てるような気がしてなりません。
それだけ、作り手の熱が籠ってるのかもしれませんね。
202という微妙な立ち位置かもしれませんが、そんなスピーカーを一度聴いてみてはいかがでしょうか。
きっとお気に入りになるでしょう。
次回、これまた激レア!?平面・同軸ユニットの登場です。お楽しみに♪

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