●今回はオーディオ黄金期(を少し過ぎた?)である1989年に発売された
DENON SC-700 Granada の紹介です。

バブリーな外観は少し派手目な仕上がりだが、ゴージャスとシックがうまく調和されている。
フロントバッフルに貼られたコルクシートは、
一目見ただけ”グラナド ”とわかってしまうほど個性的で特徴的。
そんな味のあるスピーカーですが、この下にはSC-400というグレードがあり、
この700とは一味違った雰囲気だが、中々個性的で高級感ある佇まいです。

 さて、もう22年選手となるSC-700、さすがにエッジ(ゴム)はボロボロで交換する必要があります。
それ以外は良好で、古さを感じさせない雰囲気すらあります。
まずはエッジの交換。
その後エージングしてからのレビューとなりますので、先に工程をご紹介しましょう。
DENON SC-700 Granada 1989年 90,000円(ペア)
メーカー解説:音楽の情感を、人のぬくもりを、伝えたい・・・グラナダ。
方式 2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式・防磁設計
使用ユニット 高域用:2.5cmドーム型 ・低域用:18cmコーン型
再生周波数帯域 40Hz〜40000Hz
インピーダンス
出力音圧 91dB/W/m
クロスオーバー周波数 3KHz
外形寸法 幅270×高さ460×奥行285mm 約24L
重量 12kg
●箱から出して「こんなに大きかったのか!?」とびっくりしました。
外観寸法はいつも書いてるが、それほど気には留めません。
だからこんなに大きかったとか小さかったとか、色々と驚かされることも多々ある。
そんな第一印象も、いい刺激になってるんですけどね。
このSC-700、ダイヤのA7とほぼ同等サイズでした。 ダイヤA7幅256×高さ410×奥行300mm
●エッジはご覧のようボロボロ。
加えてセンターキャップが凹。
こういう凸、つい指で押したくなるんですよね(笑
これは柔らかいタイプなので修復も簡単です。

外装は小傷が少しあるものの、概ね良好。
フロントバッフル全面コルクは、過去にないかな?
とても新鮮です。
●ユニットを外します。
箱はパーチクルボードで、あたりさわりのない設計。
白いのはさらっとした綿のような吸音材で、
ちょうど真ん中くらい、隙間が無いようきっちりと仕切られ
るように取り付けられていた。
箱鳴りは多少押さえられますよね。

フロントのコルクは1mmほどのシートだが、
表面に細かい穴があいている。
質感はいいのだが、掃除しにくい。
やりすぎるとボロボロと崩れそうだし、
こういうのはどこまでやっていいのやら、悩みますよね。
●ポート周波数は約45Hzと低めだが、
ユニットに馬力があるので、
低い音も十分に堪能できます。

底面の吸音材を外すと
●ネットワークが見えました。
こちらウーファーのネットワークで18dB/oct
ツィーターはターミナルカバーに取り付けられており
そちらも18dB/oct。

この18dB/octというセッティングが中域をスッキリさせてるのと
日本の音っぽくない、一つの理由です。
ケーブルはこの時代に多い?
少し太くて硬いものでした。
●いろいろセッティングを変化させてみたのだが、
これかなり煮詰まってるので、このままが一番でしょう。
今回はユニットのオーバーホールとエッジを張り替えるので、
しばらく鳴らして様子を見てから、また調整したほうがよさそうです。
なので今回は、ケーブルを交換しました。
最近の日本製では見られないような
とにかくいいネットワークでした。
●ウーファー。
元はこんな感じ。
エッジの凸すら変形してますね。

センターの凸だが、簡単に直るのはいいのだが、
柔らかいから逆に癖がついちゃって・・・
その癖がなかなか直りません。
ほっときゃだいぶマシになってくる気もします。
●エッジを張り替えました。
最近はシルクのような肌触りの薄い布を使っており、
薄いので作るのと貼るのが難しいのだが、
重さや弾力なんかが、すごくいいんですよ。
 それは音にも表れており、厚い布に比べ
締り・量感共にかなりいい感じなんです。
まだこの布は沢山あるので、しばらくは使えそうです。
他の自作エッジは微妙だが、
私のは両面しっかりやってますので、湿気はもちろん
水に濡れても大丈夫なほどなんです。
大事ですよ、エッジは。

そうそう、ユニットに取り付けるゴールド枠のカバーだが
これ” ”でズッシリしてます。
ツィーターも同じ素材。
今ではありえないにくいやつっすね。
●これはバイワイヤ用の線材。
赤い普通のやつだったので、5Nの単線に変えました。
この単線、そろそろ在庫が切れそう。
●こんな感じ。
ほんとはここも、
ブ厚めの金板が付いてるはずなんですけどね。
残念です。
売ったのか(笑 いやいやメッキですから。
●外装を仕上げました。
シックな風合いを残したかったので、
なるべく艶を抑えた、3部艶ほどで仕上げました。
●ユニットを取り付け
●完成!!! いかがでしょう。 ちょうど角のR部がテカッテるが、角はそう写っちゃうんですよね。

さてさて、まだ音出しすらできなかったのだが、ようやくエージングも進みました。
まずは一言 「 おっ!綺麗な音だなァ〜

 外観のイメージとDENONということから武骨な音を想像していたのだが、
予想に反し綺麗系だったので思わず驚いた。
簡単に言うと、中域がやや凹〜ニュートラルの綺麗なドンシャリタイプ。
音だけ聞くとONKYOの上位クラスと錯覚してしまうほど、とにかく高域が綺麗で煌びやか。
ツィーターにはダイヤトーンと同じボロンが使われているが、それよりも、
 「 新しいフレーム形状によって指向角を広げた 」 というメーカーの説明通り
中々のワイドレンジ具合は見事である。
最近の機種では多くみかけるソフトドームだが、それよりも何十倍もこちらのほうがいい。
とにかく素晴らしいツィーターでした。

中域も高域に追随しており、透明感があり輪郭がシャープ。
メーカー説明文では前に出ると書いてあったが、中域に関してはかなり微妙。
どちらかというと引っ込み気味か。ナチュラルなセッティングは、とてもうまく感じました。
(のちのエージングにより、説明通り少し前に出る音になってきました)
ONKYOとはっきり違うのが低域。
18cmユニットと箱の容量を考えると、やや重厚感に欠けるところもあるが、
その切れ具合や出方など、E757を彷彿させるものがあり物足りなさはない。
 ただし鳴らし込んでから20時間ほどたったあたりから、除所に重低音が出るようになってきました。

 で、低域に関しては鳴らし込みがたりないというのも一つの理由だが、
ポート周波数が約45Hzと、低めであることも関係している。
私がいつも聞くソースの場合、迫力ある重低音が出るのは 60Hz〜70Hz。
それよりも低い音が入ってるソースやTVなどのソースでは、腹に響くような傾向でもある。
リアポートということで環境にも左右されやすいのだが、
とにかくE757を彷彿させる音で、ついついニヤけ顔になってしまう。

かなり押しているのでヒヤリング時間も多く取れないのだが、家にいるときは鳴らしっぱなしです。
今のところチューニングの必要性は感じませんし、この自然な中域はとてもいじれませんね。
 あえてやるならばコンデンサーとケーブルの交換などのライトチューン。
完全に私好みにするのなら、ツィーターの能率を1〜2dB落とすかもしれません。
そんなところなので、今回はメンテナンスのみ。
 エッジ交換したスピーカーはどんどん変わるから、様子を見た方が無難でもあるんです。

 ソースはオールジャンルタイプだが、どちらかと言えばクラシック・楽器系向けかな。
ボーカルも十分だがややひっ込み気味なので、TVの音なんかは苦手気味。
とにかく高域が綺麗な鳴り方なので、ハイアットやJAZZボーカルなど、ソースによっては鳥肌ものでしょう。

このスピーカーは何か開発陣の思い入れが強いのか?背景(ストーリー)がとても素敵で、情景が浮かんでくるほどなんです。
そんな景色を読みたい方は”こちら ”からどうぞ。

最後に。
SC-700の外観を見ていると、思わず昔を思い出してしまう。
そんな時代を反映した物作りは、見ているだけで物思いにふけるほど 歴史を感じさせられました。
1989年は微妙な年代、泣いた人も笑った人も様々ですが、良いものはいつまで経っても良いものですね。
ロックグラスが似合いそう、そんなSC-700でした。

最後に一つだけ書きたいのだが、今回の3連チャン、

TEAC S-500R シャリシャリ強
自作 FOCAL シャリシャリ弱
そしてこの SC-700 シャリシャリ中

という具合で聴こえてしまう私の耳、大丈夫か?と少し不安になってきた。
それともダイヤトーンがこもりすぎなのか?
自作 FOCALとSC-700はシャリが強く感じるが、柔らかいので気持ちいいのも確か。
ちょっとニュートラルが見えなくなり危険な状態かもしれません。

そして次回、これまたシャリ感の強いONKYOモニター500&500X。
ようやく、ようやくの登場だが、一度F80AMGあたりで耳鳴らしをしてからのほうが
いいのかもしれませんね。

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