●私の中で好きなメーカーであるダイヤトーン。その職人魂とも言える上位スピーカーの中に
今回紹介する DS-A7 があります。
このスピーカー、初めて見た時より、ただならぬ雰囲気を感じていました。
これよりも値段の高いA5よりもです。
そんなA7ですが、ようやくじっくり聴くことができました。

すぐに音出ししたいところだが、ダイヤお決まりのガチガチエッジ。
まずはエッジを軟化処理させる必要がありますね。でははじまりはじまり。

↓のスペック表、周波数帯域の39なんて、測定値そのままの律義感むき出しで、粋っすね^^
DIATONE DS-A7 1995年 94,000円(ペア)
メーカー解説:ダイヤトーン工房50周年記念作品の第3弾として、DS-A3型の基本設計を踏襲したスピーカーシステム。
方式 2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式
使用ユニット 高域用:4cmドーム型 ・低域用:16cmコーン型
再生周波数帯域 39Hz〜40000Hz
インピーダンス 6.3Ω
出力音圧 85dB/W/m
クロスオーバー周波数 1.5KHz
外形寸法 幅256×高さ410×奥行300mm
専用台(DK-A7)
幅285×高さ490×奥行320mm 5kg
重量 11kg
●オーディオ好き、特にスピーカーが気になる人にとっては、よだれものの” ”↑でしょう(笑
過去に扱ったスピーカーも多いのだが、あらためて聴いてみると
「 あれ?こんなにいい音だったけ? 」とか「 もっと低音出るように思ってたが・・・ 」
なんて事もあり、2回目の視聴もあなどれませんね。

さて今回のDS-A7、ペアで10万という現実的な値段のスピーカー。
物を評価する時、値段は一つの目安であり、大事な要素でもありますね。
そのあたりもふまえたうえで、レビューしていきます。
問題のエッジはしっかり軟化させ、エージングは無し、部品はノーマル状態での音出し。
まずは一言
これは!? 真のダイヤサウンドで間違いありません

 エージングもままならないうちから良音が飛び出してきた。
簡単にいうと、落ち着きのあるやさしい音色、そんな感じですかね。
柔らかい中・高域の中にも、一本芯のあるクリアーな中域。
その中域は長めのポートということもあり、フロントポートのわりにはそれほど凸ではない、いい塩梅。
 低域の量感は十分、伸びもあり重厚な音が飛び出してくる。
その量感のわりには、箱鳴りがけっこう押さえられているので、ぶよぶよとぼやけることも少ない。
ユニットそのものの音が、十分に感じられました。
とにかく
素晴らしいスピーカーですね
日本のモニター調、日本の音という言葉が、おおいにあてはまりそうです。

重心はやや低めだが、全体のバランスも良好。
耳当たりのよい音色は、ダイヤの象徴である中域によるもの。
その中域はフロントポートなので、300Vよりやや凸気味、甘めのセッティングにも感じた。
だがそこはダイヤツィーター。
ダイヤトーンのツィーターは、適度な厚みがありつつ輪郭がシャープという優秀なユニット。
そんなツィーターが中域・声の鮮度上げを、定位感の向上にも一役かっている。
 加えて中域周辺には雑味がなくスッキリしているので、解像度も高く感じられる。
とにかくニュートラル。SX-V1のような癖もないので、ベンチマークにもできそうなスピーカーです。

で、せっかくこれだけのスピーカーが揃ってますので、簡単に比較してみた。
わかりやすい中域の比較だが、

こもり S270<SX-V1<DS-A7<E757<M500 クリアー

という感じ。S270が一番こもっており、ONKYOのモニター500が一番クリアー質ということ。
ただしダメスピーカーのような、完全なこもりではありません。わかりやすい表現として”こもり ”と書いてみました。
 基本的にこれらは、メーカーの代表とも言えそうなほど優秀なスピーカー達ですから。
この中ではビクターのSX-V1と、ONKYOのモニター500が、
やや癖があるといったところで、そこには好みも入り、評価も難しくなります。

話がずれていきそうなので、ぼちぼち内部検証へとうつりましょう。
●背面にネジがある場合、とりあえず外してみます。
●板が外れました。
ターミナルへの配線が短いため、これ以上開きません。
ウーハーが見えますね。
その後ろ、白い吸音材の下、四角い口があるが
これがポートの入り口で” ”の字のような形になってました。
●ユニットを外します。
●まずはウーハー。
ゴムリングを外すとネジが出ます。
ツィーターは300V同様で、表面のシールをはがすとネジが出る。
柔らかいスエードのような素材のシールで、
無理にはがすと破れそうになる。
指で触れば、だいたいはネジ位置がわかります。
300Vのように全部剥がす必要はありませんが
十分に温めてから手をつけたほうがいいでしょう。
●ツィーターの振動板にはアラミッドという素材。
初めて聴く名前だが、見た目はカーボンに似ており
カーボン同様に硬いらしい。
その周りのフェルトを剥がすとエッジ(布)があります。

他の方が見過ごしそうな箇所ですが、
私はここのエッジもしっかりやり直します。
メンテしたものとしてないもの、聴き比べれば一聴瞭然で、
特にダイヤの場合、中域に大きく影響するでしょう。
●分厚いフロントバッフル。
ノギスの目盛が裏側で忘れてしまったのだが
確か21mm×2。
とにかく剛性が高く、しっかり作られている箱です。
●これはウーハー・エッジの裏側で、
ダンプ剤を綺麗に落とした後の写真です。
●ドUP。
エッジの裏側にシンナーを流し込み
ダンプ剤を柔らかくして取り除く。
それを3〜4回繰り返す事で綺麗にしていきます。
ほんとに布ーって感じの布で できてるのが
わかりますよね。
●ダンプ剤を除去したあと、しばらく乾燥させ様子をみます。
ダンプ剤は透明色なので、量の加減が分かりずらい。
少ししか取らないとまた硬くなり、音が安定しません。
完全に取り除いても、そのままだととカサカサしており
大音量でビビりが出そう。
そこでダンプ剤を取り除いた後、液体ゴムをしっかり塗り、
しなやかさを保持してやります。
肌でいうとこのヒアルロンサンかな。
これでエッジの機能としては完璧になります。
●これが元の状態。
強く押してもビクともしない。
これではコーンが動かず、低音が出るわけがありません。

●下が軟化処理後。
液ゴムを塗ってるので、しなやかさがあります。
ダイヤのエッジ、特に密閉なんかは
元々少し硬めなんです。
それは鳴らし込みも想定しており、通常であれば
使っているうちに柔らかくなってきます。
だが昔のダンプ剤の特性上、柔らかくなる前に硬化しはじめ、
どんどん硬くなっていき、しまいにゃ動かなくなる。
それがエッジが固まる原因です。
 固まらないダンプ剤もあり、FOSTEXなんかは多いが、
逆に垂れ落ちたり、コーンにシミたりしてるものもあります。

ウレタンエッジもかなり硬いものもありますし、
ゴムエッジでもボロボロになります。
全てにおいてメンテナンスは必要であり、
”永久 ”なんて事はありえません。


ユニットの写真を取り忘れたのだが、
正直、DS500や300Vと比べると見劣りするウーハーです。
ただカーボン調のコーンは、とてもかっこいいですね。
センター部の網網はコーティングされておらず
若干の柔軟性があります。
凸凹してるので、ティッシュでふくとぼろぼろになる具合でした。

ツィーターはコーン以外、フレームやマグネットは
DS500や300Vと同じです。
完全な日本制作のおかげか、部品の息が長いですね。
●さてさて、メンテと一緒にチューニングするのも
スピーカーいじりの醍醐味です。

これはネットワーク。
相変わらずつぼを押さえたセッティングです。
こちらもユニット同様、
80年代から変わらない部品構成が感じ取れますね。
純度にこだわる、ダイヤらしい作りでもあります。






●チューニング後が下の写真。
嫌みな音がなく、重なりもうまく決まってるネットワークですので、
あえてクロス値を変える必要はありません。

そこでここは、部品のグレードをそのまま上げてやるのが
一番のベストチューニングになるでしょう。
ただし注意点があります。
昔のスピーカーは大型コンデンサー多く採用しており、
例えば4.7uF表記でも、実測は6.0uFというよな
おおきく差がでるものがほとんどなんです。
 そこで4.7uFのコンデンサーを付けてしまうと、
差が1uF以上となり、音質も変わってきます。
だからきちんと実測値を計り、それに合わせるのが
基本的なセオリーになります。
今回はツィーター、ウーハーのコンデンサーを交換。
共に2個並列使いです。
ケーブルはいいものが付いているのと、圧着方式なので
一部だけ交換しました。
●コンデンサーはこれを使いました。
ジャンセンのコンデンサーを使おうと思ったのだが
容量が微妙に合わなかったので、
ピッタリだったこちらのシヅキ(MP)を使いました。
大きさもさることながら
250VDCと余裕もあり、緻密ないいコンデンサーです。
ユニットを取り付け
●完成!!! いかがでしょう。外装は半艶仕上げにしました。
リアルではなく塩ビシートで残念ですが、オイルを塗っただけのようなものとは違い
上質な質感を演出できるような仕上げで、手間がかかってます。
 オイルのみでは小傷は消えませんが、下地調整をおこない、塗装やWAXも併用してるので
小傷・すり傷はほぼ完璧に消えます。

さてさて、チューニング後5〜6時間エージングしたあとの一言
素晴らしい!!!空気が震えてるのが見えそうなほどの躍動感

最初のインプレ以上、さらなる音質向上です。
もうこれに言葉はいらないでしょう。
あえて付け加えると、ソースによってはかなりの低音が出る時があります。
ブーミーと言えるか言えないか微妙なところですが、一応対策として
フロントポートにスポンジを詰めました。
どこのメーカーでも標準的なやり方であり、一番簡単な方法です。

 ダイヤトーンのラインナップは多く、このA7以外にもA1、A3、A5、A6などのAシリーズがある。
その上さらに受注生産品の上位機種もある。
1台150万円というダイヤofダイヤと言えそうなスピーカー”2S-3003 ”というスピーカーがあるのだが、
実は2S-3003の思想をストレートに引き継いでいるのが、この”A7 ”なんじゃないかなと、私は考えてます。
 ペアで10万円という値段は、普及されやすい価格帯であり、メーカーとしても大事な位置です。
だからこそ、そこに2S-3003を彷彿させたデザインであるこの”A7 ”をぶつけたのは、メーカーとしての狙いなんじゃないですかね。
50周年記念作品という武器もありますし。
そんな素晴らしい出来栄えに加え、音質までいいとなれば、これ以上ないくらいの存在になるでしょう。
私はこれぞ「 ザ・日本のスピーカー! 」と思えてなりません。
当時の評判はわからないが、それほどでもないのなら、きっとタイミングが悪かったんでしょう。
とにかく、この値段でこんなスピーカーは、もう2度と出ないことは間違いありません。

矛盾してると思われるかもしれないが、音質だけに限って、特に中域の塩梅は
どちらかというと 300Vの方が好みです。
それはリアポートの影響が強いのだが、
ダイヤトーンらしいサウンドといえば、A7を置いて他にはないでしょう。

 そんなんで、私が過去扱ってきたきた中型2wayスピーカーの中では、
間違いなく 「
NO,1 」 キング と言えるほどのスピーカーでした。

●最後に。
純正台(DK-A7)を入手し合わせてみた。
音質はいいのだが、デザインは一般的ですよね。そこで、右写真のような感じ、デザインを考えてみた。
重厚感がでて、高級度が増してると思いませんか。
 これだけのスピーカーなら10万くらいかけ、台を作ってもいいと思えるほど魅力あります。
ただし一つ問題があり、本体A7と同じシートじゃないと一体感も生まれません。
シートが入手できるのか???ですが、そこがクリアできれば作ってみたいです。
台自体はいい雰囲気でてるので、作ってみてもいいかもしれませんね。
このような加工写真と実物では、差が出るのも間違いないでしょうし。
 DS-A7。とにかく、ダイヤファンなら入手必須のスピーカーでした。

次回、スーパーツィーターはもう一息なので、メーカー製を先にUPします。お楽しみに♪

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