●満を持して DIATONE DS-500 の登場!
「 あれ?こんなとこにDS-300か? 」と思っていた段ボールの中身、実はこのDS-500で、
想像以上に小さな外観でした。というか500が小さいのではなく、300が大きいのかもしれませんね。
 そんな初めての出会いでしたが、未だに人気があるこのDS-500。
何か秘密があるのか?今回はじっくりと真相に迫りたいと思う。

まずはエッジ。ダイヤ=エッジ× と言えるほど、ほとんどのダイヤトーンはエッジが硬化してる。
過去に例外はなく、このDS-500もカチカチ、コーンが1mmも動かないほどでした。
 コーンがストロークしないから、低音はおろかまともな音さえ出ません。
知らない人は少ないと思うが、かちかちエッジのまま大音量にすると、コーンが割れる恐れがあるから注意が必要。
とにかくこれではレビューにならないので、まずはエッジを軟化させました。
DIATONE DS-500 1988年 \92,000(ペア)
メーカー解説:等速液晶ポリマー
方式 2ウェイ・2スピーカー・密閉方式・防磁設計(EIAJ)
使用ユニット 高域用:2.5cmドーム型 ・低域用:18cmコーン型
再生周波数帯域 42Hz〜30000Hz
インピーダンス
出力音圧 88dB/W/m
クロスオーバー周波数 2KHz
外形寸法 幅230×高さ401×奥行242mm 約13L
重量 10kg
●エッジがだいぶ柔らかくなったところでレビューに入ります。エージングはほぼ無しの状態
まずは一言
中高域が綺麗だなァ〜

まず初めに耳についたのがやはり中域。
ダイヤトーンは飛び出してくる中域が多く、このDS-500も、どちらかと言えばそんな傾向でした。
ただし全体の中でも中域だけが主張しておらず、バランスはわりと良好である。
密閉だからという利点もあるでしょう。
 そんな中域周辺はスッキリしており、柔らかい高域と交りながらも、透明感を維持できる音色でした。
これは人気が出る・あると言えばいいのか、解る気がする。
ただ一つ、やはり密閉方式という事もあり、少し低域が軽く、
ONKYOのM55と比べると物足りなさを感じてしまう。インフィニティと比べるとドッコイ程度。

さて、後日じっくりエージングし、割と大きめの音量・ステレオで視聴してみた。
大音量で聴くと小音量時より、やはり中域の凸が目立ってくる。
私の場合かなり大きな音で聴くので、どんなスピーカーでも”うるさい ”と感じる時もあるほどです。
このDS-500、ここまで音量を上げて聴く事もないと思うが、これだとバランスはギリギリな感じ。
 まだまだウーハーがこなれてないのか?動きが硬いという印象もいなめません。
ダイヤ全般に言えることだが、元々のエッジ自体が硬く、ダンパーが柔らかく馴染む前にエッジが固まってしまう。
だからダンパーは新品同様で動きは硬い。
さらに密閉方式が拍車をかけ、内圧がストロークの動きを鈍くするという原因もある。
とにかくこのDS-500、そうとう鳴らし込みが必要であり、その時には今以上真価を発揮することでしょう。
ではぼちぼち、内部検証にうつります。
●いつもなら寝かせた状態でユニットを外すのだが
これはネジが見えません。
ウーハー・エッジ周りのゴムを外したがネジはなく、
完全な内側固定でした。
●背面のネジを外します。
ネジは10本で、しっかりと取り付けられていた。
●ネジを外すと、背面板はさらっと外れる。
ギリギリサイズではなく、1mmほどの余裕があった。


内部の第一印象だが
とにかく細部まで気配りをおこたらず
しっかりと作り込んである事がわかります。
●全面に配置された吸音材、ツィーター背面をずらすと
金具とネジが見えました。ネジは普通の+と六角。
ウーハー普通の六角ナットでした。
●これ、巨大なホチキスの芯といったところだが
それよりも太めでしっかりしている。
吸音材を留める為、こんな芯が何十か所にも打ち込まれている。
ダイヤ全般に言えることだが、
内部吸音材はとにかく”がっちり ”留められている。

この芯は外すのも力が必要で、それが何十か所ともなると
そうとう困難な作業です。
だから吸音材を全部外した作業、内部塗装はおろか、
部分的なVCC(セメント補強)すら施工が困難です。
箱の補強もしっかりしてるので、よほどの事が無い限り
内部吸音材はいじらないほうが無難でしょう。
元に戻す事すら、ままならなくなりますからね。
という事で今回、内部はノーマルです。
●ユニットの紹介。まずはツィーター。
この時期のダイヤのツィーター、やっぱいい音ですね。
中域にほどよい厚みがあります。
所々まじめな作り込みが見えると思うが、
内部まで入念に接着し組み立ててあるので、
分解するのがひじょうに困難です。
へたすると逆に壊しかねないので
ダイヤトーンの修理はあまりやりたくありません。
●ウーハー。
こちらもかなり入念な作り込。
ダンパー周りにフェルトを配置するなど、初めて見るほどです。
フレームは頑丈なアルミ。
一目見ただけでダイヤと分かるほど、特徴のある液晶ポリマーは
淡いブルー。
ドールアイにも見えてくるほど、奥深い模様です。








●さて問題のエッジ。
エッジが硬くなる原因は、エッジに塗られている
ビスコロイドというダンプ剤が、固まってしまうからです。
軟化させるには、そのビスコロイドを取り除くしかありません。

左写真は、裏側よりシンナーを流し込み、
ほとんどのビスコロイドを取り除いた状態。
そのままではカサカサしてるので、
右写真のよう液体ゴムを塗り、弾力をつけてやります。

ここでアドバイスだが、このビスコロイド、
ちょっと取り除いたくらいでは、エッジが柔らかくなりません。
布の目じにまで浸みこんでおり、またすぐに硬くなってしまいます。
完全に柔らかくするには、シンナーを流し込み、
柔らかくなったビスコロイドを取り除く作業を
3、4回ほど繰り返す必要があります。
けっこう手間がかかりますが、そこまでやらないと完全に軟化しません。
ここが差のでるところです。
●お次はネットワーク。
いじる必要性は感じないので、ツィーター側のコンデンサーを
グレードアップさせました。
ウーハー側も変えようと思ったのだが、
容量が8.2uF、実測9.1uFという微妙な値だったので、
とりあえず純正を使う事にしました。


それよりも、
パッと見感じた人もいるかもしれないが、この配線、
ハンダを使わないという拘りに加え、
独立配線 ”でした。なんか数が多いでしょ。

いや〜凝ってますね〜
この情熱こそ日本の物作りの原点でしょう。

コストというより、これはもう手間ですね。
どれだけ手間をかけたのか、一目みただけで分かり
感心させられるほどの内容でした。
●こちら背面のターミナルカバー。
ネジ留めされているのだが、
ネジを外しても中々はずれません。
●その秘密はこれ。
カバー周りのちょとした隙間に、グル―が流し込まれてある。
すごいですね。
これで気密性は完璧、1mmすら動かないほどです。
こんな風にやってあるスピーカーは初めて見ました。
●ですがやはりカバーはカバーであり、
プラスチックという弱点がある。

細部にわたりこだわりが見え隠れする設計。
ではいっそのこと、
他の追随を許さぬようリファインすることにします。
そこでここはやはり”板張り ”ですね。
10%は耐振性が上がりそうです。
ターミナルカバーを外した後、まずはネジ穴を埋めます。
こういうネジ穴には、爪楊枝がひじょうに役立ちます。
●で、ターミナルカバーの代わりに取り付けるのは
これ。
ご覧のよう、”バイワイヤリング仕様 ”です。

このDS-500、上の写真でわかるよう独立配線。
その配線を最大限に活かすのが、この仕様でしょう。
たぶん設計者方々の中には、こうしたい!
なんて思ってた人、いると思いますよ。
●制作したカバーを、補強と共に接着。
あと配線を接続して完成。
ここはハンダ付けになってしまうが、他は圧着のままです。
●ネットワークと配線ができたら、次はユニットです。
ツィーターは分解・清掃しました。

ツィーター・ウーハー共にフレームがアルミなのだが、
そんなアルミは、ほとんどが腐食しています。
で、磨いたあと塗装してみた。
パッと見わかるよう”金仕様 ”です。

これはクリアーイエローとオレンジを混ぜたもので、
それを50%ほどに薄めたものを塗りました。
50でもちょっと鮮やかすぎるかな?とも思ったが
ハッキリわかるので、良しとしましょう。
ユニットを取り付けたあと、
背面板を取り付け
●完成!!!
Fバッフルは無垢板でそれなりの味があるのだが、それ以外の周りはビニールシート。
DS-300や他にも同じシートが使われているので、高級感が足りなくてちと残念。
だからなるべくいい雰囲気の質感を重視し、半艶で仕上げました。
クリアー仕上げなので、細かい線傷はほとんど消えてます。

さて、今回のチューニング、体感できるほどの変化はないが、硬化した状態から比べると、
新品時の音色、新品時以上の音色は出てると思う。
ネットワークは部品グレードを上げるだけで十分と判断。
ケーブルは元々2mmという太めなうえ、圧着なのでわざわざ代える必要はないでしょう。
 内部検証の結果、DS-500の一番のチューニングポイントは、なんと言っても”ターミナル ”でしょう。
この手のスピーカーをお使いになる人は、ほとんどが上級者でしょうから、
バイワイヤ接続がこのスピーカーの持ち味を、最大限に発揮できるのではと考えました。
見た目もいいので、オーラ(雰囲気)での音質アップもあるでしょう(笑

ソースだが、密閉で解像度が高いので室内楽とかも十分にいけます。
ですがやはり、最も相性がいいのはボーカルでしょう。くどくない艶っぽさが堪能できます。

最後に。
ダイヤトーンのスピーカーをメンテしていると、日本人の” ”すら見えてくる気がします。
それほど情熱が込められているのでしょうね。
現状は安物・大量生産に押されがちですが、こういう” ”なものは大切に守ってやりたい、そんな気持ちが芽生えてくるほどでした。
次回、とその前に、純正スタンドの紹介です↓
●こちらメンテ前の純正スタンド。中心に配置された鉄芯が特徴的。だがその芯は、ご覧のよう錆だらけ↑
本体は黒で写真じゃわかりにくいのだが、縦板と上板は一般的な、ちょっとザラっとしたビニール系。
底板のみ、何か弾力性のある塗料で塗装されてます。
その弾力性塗料、音質効果を狙ったものだと思うのだが、傷や汚れが付きやすく”汚く見える ”というデメリットがある。
とにかく、まずは綺麗にしましょう。
●で、完成!!!スピーカー同様、ゴージャスな金仕様。
でもまじ、とにかく大変でした(^^;
鉄の支柱は錆の根も深く、グラインダーで削り取るほどの作業になり、時間もかかるわで骨が折れました。
完全に錆を取り除いたあと塗装、その上からクリアーを吹きました。
本体は全体にクリアーを吹き、半艶仕上げ。底板は倍の手間がかかりました。

そんな努力があるからこそ、かっこよく?仕上がるというものなんです。
部屋に華があると、それはそれでいいですよね。
この金色、一般的な金より、ちょっと色味が強く鮮やかに見えるが、そのぶん”運気を上げてくれる
そんな分かりやすい雰囲気を醸し出してます(笑

最後にU
スピーカーはきちんとした台に設置すると、やっぱいい感じで鳴ってくれますね。
10%ほどは能力があがってるでしょう。
いずれにせよ、そろそろ新しい台でも作りたくなりました。
そうそう
このDS-500、実はターミナルの改造前、カバーを外したまま音出ししたのだが、
びっくりするほど、重くて深みのある低音が、ズドドーンとでてきました。
 それはそれで魅力ある音であり、ユニット本来のポテンシャルが発揮された。そんな感じすら伺えます。
実はこれ、バスレフ化にしようかずーっと悩んでました。
自分で長く使うなら、これ絶対バスレフ超おススメです。
ただし穴を開ければいいってもんでもなく、バスレフにはバスレフのセッティングも必要になってきます。
別のスピーカーだが、今も密閉をバスレフ化し、セッティングに励んでいる最中なんです。
 では元々バスレフのDS-500N、とても気になる存在になりました。
いずれ並べての比較視聴をしてみたいもんです。
次回、ちょっと一息フルレンジのメンテです。お楽しみに♪

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