●数少ない密閉スピーカーの中でも、群を抜いた実力の持ち主M55。
その改良版がこちらのM55Uになる。
 私の経験上、改良版には期待しない方がいい、という結果が多いわけだが
元の素材がいいM55の改良版となると、多少の期待は膨らんでくる。
それに年代が年代、1978〜80年という、オーディオ全盛期の真っただ中に投入されたモデルは、
メーカー開発陣の意気込みも、今とはぜんぜん違うものでしょう。
 年齢不詳の外観は、もう三十路を越えたベテラン選手。
だが年月を感じさせないほど、ボディがシャキッとしているのには驚かされる。

 こうして初代M55と並べて比較してみると、見た目の質感が低下しているのはすぐにわかるだろう。
コストダウンのしわ寄せがきているのか?少し残念に感じるのはいなめません。
 さてすぐにでも音出ししたいのだが、エッジがボロボロなので、まずはしっかり直してから
レビューにはいりたいと思います。
ONKYO M55II 1980年 1台 \27,500円
メーカー解説:M55をベースに、使いやすいコンパクトなサイズで
大型スピーカーに匹敵する性能と音楽性の確保を図ったスピーカーシステム。
方式 2ウェイ・2スピーカー・密閉方式・ブックシェルフ型
使用ユニット 高域用:2.5cmドーム型 ・低域用:20cmコーン型
再生周波数帯域 45Hz〜30000Hz
インピーダンス
出力音圧 91dB/W/m
クロスオーバー周波数 2.3KHz
外形寸法 幅235×高さ400×奥行243mm 約14L
重量 7kg
● はじめに。カタログなどではツィーターが外側で、アッテネーターが内側の配置にしてるようだが、
↑の写真のよう、ツィーターを内側にした方が定位が良くなるので、そうしてます。
エッジ(布エッジ)張り替え後、エージング少々。
まずは一言
「 おっ、迫力あるなァ〜。声も聞きとりやすくなってる 」

TとU並べての視聴、その違いは手に取るようにわかるわけだが、極端な違いは感じられないほどの差でした。
 なかでも一番の違いは中域で、声質が明瞭・明確になったのが感じられる。
これはユニットそのものの音ということが、誰でも解るほどツィーターが頑張ってる。
その分凸加減も多少強くなり、ホール感の響きも増えている。
 古いダイヤトーンやJBLにも多くみられる傾向で、とにかくツィーターに頑張ってもらうというバランスであり、
かのモニター500も、そういう音質傾向である。
 うやむやなウーハー音であろうが、箱がフォンフォン鳴きまくろうが、
とにかくツィーターで、声の全帯域を受け持ってやる。
だから中域・ボーカルの声は、とにかく”しっかり聞こえる ”そんな傾向なんです。

続いて低域だが、初代M55に負けず劣らず、しっかりした骨太な音が飛び出してきた。
量感は必要十分で迫力もある。
だがチューニング済みM55との比較が悪いのか、キレ具合の差を著しく感じてしまう。

高域。数字上では M55→20KHz、M55U→30KHz なわけだが、その違いを感じる事はできなかった。
Uは中域の張り具合・凸加減が増えたので、そのぶん逆にTの方が、しっかり伸びてるのが感じやすかった。
いずれもメリハリのあるしっかりした音質で、最近のツィーターより高級感のある音であることは、まちがいないでしょう。


 そんな感じのUだが、弱点も何点かある。
まずは全体の響き感が強くなった分、がんばりすぎているツィーターとウーハーのバランスが悪い。
中域の輪郭を、あえて強調させようとしてるのか?繋がりの悪さも耳につくようになる。
その2点が弱点であり、これはネットワークの改良で格段に良くなるでしょう。
 素材がいいだけに、チューニングして”もっとよくしたい! ”そう思うのがチューナーの常。
ここはTにも負けない、より気持ちのいい音を奏でられるよう、さっそくとりかかっていきましょう。
●ウーハーの鉄網を外します。接着はされてません。
ご覧のような状態で、エッジがほぼありません。
ツィーターは写真のままで、Tのような鉄網はなく
ソフトドームがむきだしである。

ソフトドームは割れる心配がないですから、
鉄網がなくても、気にする事はないでしょう。
●ユニットを外します。
ネットワークが丸見えの状態でした。

吸音材そのものの量は、Tとほぼ変わらずだが、
設置方法が少し違いました。
写真のようウーハー後ろ・周りは、特に念入りに配置されているのと
簡単に取り出す事さえできぬほど、
タッカーがびっしり打ち込んでありました。
だから掃除もままなりません。
●ウーハー。
上がUで下がT。
コーンの色が違うくらいで、その他の見た目はまったく同じ。
唯一の違いは印刷表記で、Uは耐入力が10Wアップでした。

音質も能率もほぼ同じ。
内部コイルなども、たぶん同じでしょう。
Tのコーン、新品時はどんな色だったのか気になります。
●こういうものは、まとめって一気にやるのが
私流なんです。

中央下2台はTのウーハー。
Uと比べるとなんとなくやれてる感じがしたので、
コーンを極薄で着色してみた。
塗りたてごでうすぐらく感じるが、乾くと明るくなります。
これは見た目うんぬんよりも、
耐久性が上がるほうに期待しています。
●ツィーター。
Tとの大きな違いはフレームで、
完全なプラスチックになってましたが、音質は上々です。
分解・清掃しました。

正面のアルミのように見える銀縁は飾り。
今時のツィーターはプラフレームが主流で、
よほどの高級機種じゃないかぎり、
完全なアルミフレームのツィーターなんて
なかなかお目にかかれません。

そういう観点から言うと、
昔の製品はほんとにコストかけてましたよね。
●アッテネーターの分解に入ります。
なぜかここのネジだけが錆びてます。
●ネジを外すと、周りはカバーでした。(プラスチック)
つまみをゆっくりとひっこぬき
その中にある六角ナットを回すと
アッテネーター本体が外せます。
●これが外したアッテネーターで、さらにカバーも外しました。
普通と言うか、廉価版の部品であたりさわりはありません。
ただ今回のメンテナンスでは、このアッテネーターが
一番劣化してました。(2セットとも)

端子部分が黒錆におかされ、今にもちぎれそうな具合。
それによる音飛びがおこる状況でした。(4個すべて)
いっくらグリグリまわしても、ガリが取れないのが不思議でしたが、
こういう原因がありました。
完全に直すには、ピンまでの全てを分解する必要があり、
手間がかかるし、逆に壊す恐れもある。
普通なら即交換でしょうが、ハンダできっちり直し、
逆に強化させときました。
●さてさて、ようやくまともな音が出るようになったので、
ネットワーク・クロスポイントの改良に入ります。
●コンデンサー、抵抗、ターミナルを交換。
元のクロスポイントを気持ち変更。
それに加え、スイッチを取り付け
クロスポイントの切り替え式にしてみた。

簡素な部品構成だが、音質は上々でしょう。
●箱の方だが、これからたぶん続けるであろう
VCCシステムです。

赤印がそれで、今回は天板裏に施工しました。
場所の一番理由は、重量バランスによるものです。
密閉の場合、箱の上に錘を置く、
そのようなやり方の方が、少しだけ良く感じたからです。
●内部・吸音材を、何度か再調整していきます。
Tでもそうしたが、
ツィーターとウーハーに仕切りをつける方が、
超高域部が繊細な音になりました。
●ネットワークの改造を含め、箱の内部が全て終わったあと
外装の仕上げに入ります。

傷をあるていど補修後、今回は鏡面タイプに仕上げました。
背面も塗装補修しました。
●ユニットを取り付け
●完成!! どうですか。綺麗に仕上げると、中々かっこいいでしょ。

さてさて、気になる音質は割愛させて頂きますが、たぶん聴いた人を”驚かせる ”ほどの実力でしょう。

T(初代M55)とUは甲乙つけがたい実力で、傾向の違いでもありますが、
Tは、オールジャンル〜楽器系向けの傾向。
Uは、オールジャンル〜ボーカル向けの傾向。

簡単に説明するとそんな感じだが、中域・声のリアリティに関しては、Uの方がいい感じで、J-POP向けになる。
いずれにせよ、M55TとU、今時のスピーカーでは味わいにくい、優しく包み込まれるような素晴らしい音質でした。
オーディオマニアには、ぜひ味わっていただきた一台ですね。

〜 スイッチによるクロスポイントの切り替え 〜
初代M55とは傾向が違うので、こちらはウーハーの音色を可変させました。(初代はTWの可変)
TWは特に中域のエネルギー感が強めなので、その音色にウーハーの中域を合わせ、マッチングを取るやり方です。
NORMAL(ノーマル)  、元々の音色ですが、厳密に言う若干変更しています。
TUNING(チューニング)、上を伸ばしてあるので、全体音はフルレンジのような動作になります。
ウーハーを切り替え式にする場合、TWほどの変化を感じにくいですが、より好みの音が出せるでしょう。


最後に。
VCCは自分で考え名付けたシステム、だからいつも褒めまくっているのは、多めにみてくださいね。
さて、そんなVCC効果だが、例えばギターでキュイ〜ンというような、かっこいい歪音を出してるとします。
それをいきなりアンプのスイッチを切り、無理やりばちんと止めてしまう。
 精心上悪そうな言い回しだが、バシバシ切れまくると言うか、制動力が鋭くなったと言いますか。
そんな傾向が、低域の解像度を上げると共に、気持ち良さまでぐんぐん引き上げてくれるんです。
  「 これで音楽聴いてると、いつのまにかノリノリになっちゃいます 」
そんなスピーカーでした。
 
 これをこえる中型密閉はあるのか?と思ってしまうほどだが
次回もどんどん密閉で攻めてきます! でも途中でバスレフ入ったらごめんなさい。お楽しみに♪

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