●2011年3月11日午後2時46分ごろ、三陸沖を震源に国内観測史上最大のM9.0の地震が発生。
津波、火災などにより広範囲で甚大な被害がでました。
 ご冥福をお祈りするとともに、被害にあわれた方々に、心からお見舞いを申し上げます。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
更新が滞っておりまして、久々のUPになります。地震を含め、ご心配をおかけしました。
A/D/S  S700 Monitors  1994年頃 145,000円
メーカー解説:
方式 2ウェイ・2スピーカー・密閉方式
使用ユニット 高域用:2.5cmドーム型 ・低域用:18cmコーン型
再生周波数帯域 40Hz〜30000Hzくらい
インピーダンス
出力音圧 90dB/W/m
クロスオーバー周波数 2.5KHz
外形寸法 幅225×高さ435×奥行225mm 約10L
重量 1台 10kgくらい
響きを出さないような方向で作られた頑丈な箱は、おもわずパイオニアのS-X50(アルミダイキャスト)を思いだしてしまうほどでした。
ただいくら頑丈で分厚い板を使ったとしても、それはMDF特有の響きであり、馴染み深い音です。



リアルな中域と正確な低域、それらをうまくまとめているのが、柔らかく刺激の少ない高域。聞き疲れしないやさしさがあります。

オーナー様は久々の音出しで、カスカスポコポコと感じられたようです(ハーべスとの比較)。
密閉・モニターなので、そんな言い回しもよく伝わってきました。
そんな弱点を改善するには、チューニングするのが一番です。
オーナー様には、とことんやっていいとの了解を得ているので、俄然気合も入ります。
 まずは低域の量感ですね。その音を確定させてから、中・高域のバランスどりをします。
音像を豊かにするには、中域の響きがカギになりそうですね。
モニターとしての音色を保ちつつ、臨場感の拡大を狙いたいと考えてます。
●さてさて今回は、A/D/Sというメーカーの”S700 Monitors ”というスピーカーのご紹介です。
adsと聞いてパッと思い浮かべたのがカーオーディオ。
ただホーム用でadsと聞いても、ピンとこない人が多そうですね。私もそうでした。
このads S700 Monitors は名前の通りモニタースピーカーで、made in アメリカである。

レアな存在に感じてしまいそうなスピーカーだが、実際のところ、
PA機器・モニタースピーカーに関しては、聞いた事のないようなメーカーが数多く存在する。
ヤマハやローランドと聞けば誰もが知ってるメーカーだが、
GENELECやMACKIEと聞いても???となってしまうのではないだろうか。そんなジャンルに分けられるのが、このA/D/S。
フォステクスから発売されてる完成品スピーカーなんかも、どちらかと言えばこちら側のジャンルでしょうね。


●それではさっそく、ファーストインプレッションにいってみましょう。
まずは一言
「 うわ、重っ!!!深っ!!! 」

音出しと共に飛び出してきた音は、とにかく重くて深い低域。
まさにアメリカンビックトルク!?60kくらいって感じ。すごいわ、これ。この低域。
何と言えばいいのか、イコライザーで30〜50Hzあたりの低〜い音を、無理やり持ち上げてる感じというか。
この重くて深い音がこのスピーカーの最大の特徴でもあり、いいスパイスになっている。
加えてこのS700は密閉方式。ご存知かと思うが、密閉はバスレフに比べ、低域の量感と伸びが足りない。
だが余計な音が無い正確無比な音質は、おもわず”本物の音 ”と思ってしまうほど上質である事も事実。
メーカー的に言うとトランジェントが良い。
ネットワークもモニターを意識してのセッティングだと思うが、とにかく中域に雑身の無いスッキリとした音質は、
こういうのがモニターなんだよ 」と、自信を持って言える音質であり、素晴らしい中域である事は間違いありません。

ただし、普段使いでこのような真面目なモニターをチョイスした場合、果たして満足できるのかは疑問です。
特にボーカルものを聞く場合、中域の艶がなさすぎる音は躍動感まで奪ってしまい、味気なく感じてしまうからです。
 逆に楽器のみの独奏や室内楽などは、気持ち悪いくらい”リアル ”な音を奏でてくれるでしょう。
そういう独特な雰囲気を望む、モニターとはそういうものです。

このS700、メンテナンスの依頼品になるわけだが、オーナー様よりはチューニングもして欲しいとの事でした。
さて、この素晴らしい中域を活かしたまま、低域の拡大をどう狙っていくか?
そんな所が、チューニングポイントになりそうです。さっそく検証していきましょう。
ユニットは全て六角ネジ。

ウーハーを固定してるネジは、
エッジの外周で隠れ気味になっているので、
その部分をめくってネジを外します。
●ユニットを外しました。

まず目に飛び込んできたのが、赤い吸音材。
見慣れない色だから、一瞬ドキッとさせられたが
普通の黄色いグラスウールと同じ感じです。

次はケーブル。
アメリカ製をメンテしたのは少ないが、
どれもグレードの高いケーブルの標準装着でした。
日本人とは、拘るポイントが違うのかもしれませんね。
●吸音材を外すと、ネットワークが出てきました。
良い部品を使ってます。
●箱の内部。
特別な補強は無かったが、
ツィーターとウーハーの間(写真中央)に四角い補強があり、
それは一枚板をくり抜いたものでした。

この箱はMDFの24mmを使っており、
それだけでも重くてズッシリ。
補強が無くても大丈夫そうなほど頑丈にできてます。
●こちらはもう一台。
パッと見わかるほど、↑のネットワークと違いますよね(^^;
アメリカン・アバウトといったところでしょうか。
ばらして、実測値を計ってみる必要がありそうです。
●さていきなりだが、
バスレフ化にする為、背面に穴をあけました。
もちろんオーナー様の了承済み。

密閉で色艶を出すなら、バスレフにするのが
手っとり早いチューニングです。

直径10cmくらいだったか、結構大穴ですね。
●ツィーターのうしろ、
ちょうどこの辺りになります。
●使うダクトはこれ。
これでウーハーの音を、直接引き出してやろうと考えました。

結構簡単なチューニング思えますよね。
がしかし、これが思ったより大変な作業なんですよ。

密閉に穴をあければバスレフになる。
そこまでは簡単ですが、そこから煮詰めるのが大変。
まずはポート周波数をどの辺りにするか?
これはユニットの馬力でも変わってくるし
聴くソースによっても変わる、一つ目のハードルです。

一般的には、50〜80Hz辺りだが、このウーハーは18cmで
けっこう低い音も余裕なので
50、55、60、65辺りが狙い目です。
最終的に60と65でかなり迷った結果、
間取って62Hzくらいにしました。
低い音と迫力の出る音の狭間くらい、といったところです。

ポート周波数は、実際にヒヤリングして決めるわけだが、
10Hzほどの差で感じ取れる音になり、5Hz程度の差は
実際に聞き分けても差が微妙なところです。
50と60はけっこう違いますが、60と65は変化は解り難いんです。
変化の差が少なくて迷ったというところでもあります。
だから62Hzなんていうのも、アバウトなんですけどね。

でポート周波数が決まったら、内部吸音材の調整、
響かせ具合の調整に入ります。
最後は、量感の増えた低域でもバランスが取れるよう、
ネットワークを調整する、そんな工程になります。

何が大変かって、内部調整をおこなうために、
ユニットを付けたり外したりと何回も繰り返すところ。
ここはかなり面倒です。
木ネジの場合はネジ穴にも気を使いますしね。
●ツィーター。
パッと見たとき、このリード線、怖いですよね(笑
こういうのもアメリカンなのか?
●さっそく硬めのウレタンスポンジで接着しました。
●マグネットは結構大きいですね。
インピーダンスやメーカー名の刻印など一切無し。

この手のツィーター、
外国製品では、似てる物をよく見かけますよね。
それらのほとんどが、透明感のある刺激が少なくて柔らかい音。
そんな特徴も似かよっているような気がします。

分解・清掃しました。
●ウーハー。
まずはエッジに目がいきます。
ゴムでできており、まだまだ柔軟性に問題はありませんでした。
コーンは普通っぽいプラスチック。
のちほど登場させるDENON SC-E212もそうですが、
この普通っぽいシンプルな所が、
良音に結びついているのかもしれません。

上まで綺麗に伸ばしたい、という意図があると思えるほど
小さめなセンターキャップ。
●マグネット口径は小さめですが、そのぶん厚みがあります。
フレームは普通のプレスものなのが、少し残念です。
●ネットワーク。
片方がノーマルで、もう片方がチューニングした方です。

という冗談さえ本気にされそうなくらい
見た目が違いますよね。
部品が足りなかったのか?(それはありえないか)
狙いなのかは解りませんが、
使われてる部品の色艶が違います。
コンデンサーの実測値はほぼ同じでしたので、
まあ良しとしましょう。
同じスピーカーを見てみるまで解りませんが、
お札の印刷ミス!
というような貴重品なのかもしれません!?
●バスレフ化にあたり中・高域のバランスを取り直しました。
クロスは変えてません。
部品は抵抗とコンデンサーを交換。
ちょっといい部品をあてがいました。

外国製に見られるパターンだが、ツィーターより
ウーハー(18dB/oct)に気を使ってる感じがします。
だから日本製とは違う!
なんて事も言えるんですけどね。

左右のネットワークで音の差はなかったので、
あえてこのままの部品構成にしました。
左右で同じ部品に付け替える事もできますが、
とりたて必要ないレベルでしょう。
なによりこれは
いろんな意味で”おもしろいっす ”よね(笑
●ネットワークを取り付け、吸音材を装着します。
密閉だろうがバスレフだろうが、
内部・吸音材の調整は音の出方にかかわる
大事な項目でもあります。
だから一切手をぬけないので、写真も公開できます。
●ユニットを装着し、完成!!!写真で見ると、武骨で渋いですよね。
そんな外観とは似つかない、繊細な音を奏でます。

今回はちょっとレアなスピーカー、密閉モニターのメンテ&チューニングをおこないました。
出音は割愛しますが、かなり量感が増えました。
ひょっとしたら、「 低音出過ぎだよっ! 」なんて言われそうです。
 でもそういう色艶に変化させるのも、チューナーとしての醍醐味ですからね。
いちおう低域・量感の処理で、写真ようなスポンジを作りました。
これで塞ぐだけでも、かなり元の密閉音に戻ります。あとは片方だけ付けるとか、
台所用の四角いスポンジを使い、穴を少しだけ塞いでポート周波数を低くしてやるととか、
いろいろできそうですね。

このS700、とにかく中域の出方が素晴らしく感じましたが、
少しだけアメリカ人の好みが、解ったような気もしてきました。
●最後に。
T様のお部屋。素敵ですね♪
このくらい広い部屋になると反射音も増えるのか?ホール感が出てくるのかもしれませんね。
だから艶のある中・高域よりも、響きの少ないモニター音の方が、気持ち良く感じられるのかもしれませんね。
こちらはS700をお預かりする前のお写真で、試し鳴らしの様子です。(置き場所が不自然ですもんね)
私のチューニングしたS700、活躍できる事を願いましょう。
 
そうそう、今回から、またページレイアウトを変更してみました。
最後は最初に戻るのか?前回の写真6枚をまとめたものは、見ずらかったですよね?たぶん。

*かなり遅れておりますが、新HPは制作・進行中です。
そのHPでは、このようなオーナー様のお部屋の様子を、どんどん載せていきたいと思っております!!
 次回、メーカー製スピーカー、チューニングだらけを、一気にどんどんUPしていきます。お楽しみに♪

      ・・・        ・・・・・