ヴァリアスクラフト初登場となるトールボーイ、DENON SC-T11XG
トールボーイはその形から、TVの横に置き5.1chのフロントスピーカーとして使うのが一般的。
特に今回のような小型(8cmユニット)の場合、音楽だけを聴くというような使い方は少なく、その音質も向いてません。
だからあくまでも5.1chのフロント、極端に言うと音が出れば良い、そんなレベルのスピーカーです。

今回は、音楽を聴くのには向いていない小型トールボーイを、どこまで”聴ける音 ”にするのかが目的です。
ではさっそく始めましょう。
DENON SC-T11XG 2004年 1台 18,900円
メーカー解説:
方式 2ウェイ・3スピーカー、バスレフ型、防磁設計
使用ユニット 8cmコーン型ウーハー×2(P.P.D.D.方式)、ダイレクトドライブ・スーパーツイーター×1
再生周波数帯域 45Hz〜90kHz
インピーダンス
出力音圧 88dB/W/m
クロスオーバー周波数 4KHz
外形寸法 幅110×高さ920×奥行130mm 約7L
重量 4.8kg
購入は3年ほど前。梱包されたまま横に置いてあった為、スピーカー?だと思わずに手つかずでした。
大掃除のさい、これなんだ?と開封したところ、これが出てきたわけです。
さっそく音出ししてみると、あれ?音がまったく出ない・・・。接触不良は考えにくく、思わずやられた!と思ってしまう・・・。
近づいてよくよく見ると、ユニット・コーンが斜めになってました。指で押してもまったく動きません。
ユニットを外してみると、フレームとマグネットが浮いてました。全部外すと、すべていじられた形跡が・・・特に酷いのが右上。
 ようは過大入力でユニットが全て飛び、おかしく思った所有者が無理やりこじあけようとし、バラせないから断念した、そんな感じです・・・。
とりあえず分解してみると、見事にコイルが焼けており、完全に修復不能状態でした。それも全部・・・

購入後すぐに確かめない私が悪いのだが、自分でいじったならそれくらい書いて欲しいものです。過去最高に最悪な品でした。
はあ・・・新年一発目から・・・先が思いやられますね。

これはユニット(6個)の全てがコイル焼けで全滅でしたが、仮に断線程度なら直るので、へたにいじるのも止めてほしいです。
直る物も直せなくなってしまいますから。
さてさてこのスピーカー、外観も傷だらけ補修もうんざり、暗い気持ちのまま捨てようか?とも思いましたが、頭をポジティブに切り替える事にしました。
そこで、上部に穴を開け別のユニットを装着、前面の8cmユニットは”パッシブ ”として使う事を思いつきました。
ツィーターは飾りにするのも何なんで、別のツィーターを移植し機能を復活させます。
 8cmユニットはダンパーとエッジを再接着。上の真ん中写真がそれで、俗に言うパッシブラジエーター(ドロンコーンなんても言います)。
これはマグネットを取り外しただけで、ダンパーとエッジは普通に機能(ストローク)してる状態。この状態のまま、箱に装着します。
フレーム、コイル回りは歪んでいたので修正しました。そこを切って、さらに圧がかかるようにしてもいいが、このままでも十分に圧がかかります。
外国製品のパッシブラジエーターはコイル部分にオモリを付け、ストロークを重くしてある物もあります。

8cmユニットのパッシブラジエーター、それも2発使いなんて、たぶん日本でもやった人はいないんじゃないかな。
逆に興味が湧いてくるような企画かもしれません。

少し上昇気分になったところで、さっそく背面ターミナルを外します。だが・・・うわっ、ここもいじられてめちゃくちゃだよ・・・
これ元はツィーターにコンデンサーのみ、8cmユニットはスルーで、12Ωユニットを並列接続で6Ωにしてあります。
スルーの場合、過大入力で一発おしゃか、なんて事になりやすいですからね。
とりあえず配線を延長し、上部に開けた穴にユニットをポン乗せにします。どんな音がでるのやら。
で、さっそくの音出し。ユニットはSA/F80AMG。
まずは一言。「 ダメじゃんこれ 」
上の写真のように、2発パッシブ、1発パッシブ、無し(カバー)で試した結果、パッシブからは中域しか出ませんでした。
 箱の容量が7Lあるので、背面下にあるポートを塞いでもそこそこ低音は出るだろう、と思っていたところ、
お決まりの中域ばかりで、低域はぜんぜん出てくれませんでした。
 音の出るユニットが上部なのと、縦長箱という形状の影響も考えられるが、パッシブから低域出したかったら、それなりの大きさが無いとダメかもしれません。
ただパッシブとしての効果は出ており、ツィーターから音を出さなくても前に音が出て、定位は少し良くなりました。
ツィーターをONにすると、より定位がビシッと決まります。
結論。
2発より1発、1発より無し(カバー装着)で、音が少しずつまともになっていきました。
ユニットの上向きタイプは初めて聴きましたが、う〜ん微妙ですね。サラウンドとしては、役にたつかもしれません。
 それともう一つの問題点。この箱は7Lでカバー付きの場合、そこそこの低音が出てきます。
ただその中・低音が不自然と言いますか、筒臭いと言えばいいのかな、なんとも安っぽい音でした。
そのへんは内部に吸音材を入れ調整すると、だいぶまともになってきたので、一応安心したという感じです。
プラスツィーターをON(ON.OFFスイッチではありません)で聴くと、定位の落ち着きも取り戻し、だいぶ聴ける音になってきました。
結局のところこれの場合、パッシブラジエーターの優位性は見出せませんでした。トホホ
 塩ビ管でこういうタイプを作る人は沢山おりますが、初めての場合は内部調整にてこずりそうですね。

とりあえずカバーを付けた状態が一番まともな音だったので、本体と似たような色味、MDFを木目調で彩色しました。
それと底の黒いベース部分、これはネジ留めだがグラグラとバカになっていたので、新たにネジ留めしました。
まあなんとか形にはなりました。
ユニットが上向きのこういうタイプは、なんとなーくBGMを流しておく、そんな使い方がいいでしょうね。
5.1chのリアにもってきた場合、普通のタイプよりさらに臨場感が出て”いい! ”なんて場合もありそうです。
 これは前面のツィーターを生かしてあるので、定位もそこそこ良くなり普通に聴く事はできますし、フロントしても使えるかもしれません。
いずれにせよ、上向きは上向きに適した使い方をするのが、ベストだと実感しました。

最後に。
何年も前に比べ、今はトールボーイ型スピーカーも数が多く、その垣根が薄れているように思えますが、
どこのメーカーであっても、「 8cm 」のトールボーイに限っては音楽性を期待してはダメです。
あくまでも5.1chのフロントやリア使いとして考えた方がいいでしょう。
 トールボーイで音楽も聴きたいなら、やはり16cmほどの大型にするのが、無難ではないでしょうか。
逆に音楽性に特化した、素晴らしいトールボーイもありそうですしね。

今回は完全な実験になりましたが、ある意味パッシブの使い方が解ってきた気がします。
機会があれば、普通タイプの箱でも試してみたいですね。

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