ヴァリアスクラフト・スピーカーメンテナンス、初の登場となるHARBETH(ハーべス)
ほんとうは HL Compact7 が欲しかったのだが、SpendorのClassic SP-R S3/5R を思わず買ってしまったので、
小型対決でもやろうなんて気持ちで、 LS5/12A にしてみた。
 この辺の外国製小型、特にLS3/5は多様なメーカーから出てるので、気になったらキリがありません。

この LS5/12A 、まったくのノーマークだったので、どんな音色なのかが?想像すらできないほどです。
一台18万円という定価から、「 値段負けしてんじゃない? 」という予測もよぎったが、
初のハーべス、違う意味での興味も湧いてます。
 サイズが小さいのとシートっぽい突き板は、高級感があまり湧かないほどだが、どれほどの音なのか?
さっそく検証してみましょう。
HARBETH LS5/12A 1993年 1台 \180,000円
メーカー解説:BBCが小型スピーカーの新しいリファレンスとして開発したLS5/12A Grade 1 Miniature Monitor Loudspeaker。
Grade1とは、スタジオから送信機へ送る前の段階での音声チェックに使用する最高グレードのモニタースピーカーという意味で、
LS5/8、LS5/9、LS5/12Aなどが使用されました。
ちなみに、LS3/5Aは
スピーチ・プログラムのチェック用でグレード2とされています。

低域には11.5cmコーン型ウーファーである15W7508BBC(Dynaudio製)を採用しています。
7.5cmの
大口径アルミボイスコイルを使用し安定した再現能力を得ています。

高域には2.8cm口径のドーム型トゥイーターであるD-260BBC(Dynaudio製)を採用しています。
このユニットにはフェロフルイド・クーリングが採用されており、
磁性のオイルをボイスコイルに塗布することにより、
ボイスコイルが高熱になった場合の
熱拡散を促進することで耐久性を高めています。
また、リア・チェンバーを入念に成型・ダンピングすることで優れたトランジェントと低歪を得ています。
方式 2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式・ブックシェルフ型・簡易防磁型
使用ユニット 低域用:11.5cmコーン型 ・高域用:2.8cmドーム型
再生周波数帯域 80Hz〜20kHz ±3dB(2m、グリル装着時)70Hz -6dB
インピーダンス
出力音圧 81.5dB/W/m
クロスオーバー周波数 2.5KHz
外形寸法 外形寸法 幅184×高さ295×奥行227mm
重量 1台 7kg
まずは一言
わっ、ザ・外・国・製って感じ! 高いだけの事はあるなァ〜

高域
間違いなくTOPレベルの解像度を誇るでしょう。
繊細・透明感・分解能力など、すべての言葉が当てはまりますね。
やっぱ高級機というだけの事はある。
廉価版との一番の違い、それは高域に表れると、感じさせられるほどです。

中域
背面ポートという事もあるが、それほど主張せず、ニュートラル〜やや凹傾向。
ボーカルが主張されているソースならいいが、
音数の多いJ-POPなどは、ドンシャリ傾向とも言えるだろう。

低域
まずこのサイズを考えると、かなりの量感がある。というか少し過多気味。
背面ポートのわりには、回り込むがの如く、伸びが広がってくる。
特に150Hz前後が、著しく盛り上がっているような感じかな?
キレは良さそうだが、いかんせんブーミーな音も強いので、そこは感じ難い。
音の出方については、日本製とは一味違う、ハイエンド機を連想させられるところもある。

全体音
柔らかくてやさしい、落ち着いた大人の音色。だがビシッと一本、筋は通っている。
刺激が少ない分メリハリも少なく感じるが、奥深さや解像度の高さで、それらをカバーしている。
中域が凹み傾向で臨場感は乏しいが、リアリティを追及した感が大いに伺えた。
低域は必要十分。
ただその低域、特にブォーンと伸びる部分が「 主張しすぎる・過多 」なのも否めない。
ソースにもよるがJ-POPやボーカルものの場合、ブーミーな低域は美しい声を消してしまう、邪魔してしまう。
そんな弱点も見受けられた。
 パワフルな音にもかかわらず、箱鳴りがぜんぜん感じないのは見事である。
特筆できるのはTVの音、人の声。
これは自然を通り越して「
素晴らしい! 」としか言いようがないほど。
ただそれはリアリティの追及でもあり、気持ち良さとは、必ずしも比例しません。
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↑上の右写真、片側ポートにタオルをつっこむ。はい完成〜終わり・・・(^^;
それでバランスがかなり良くなった。
もしくは、食器洗い用の四角いスポンジ。それを両方、ポートは完全に塞がぬよう詰め込む。
それもまた、バランスがいい。
まァその辺りの煮詰め方、低域の出方が、最大のチューニングポイントになるでしょう。

日本製スピーカーの傾向で言うと、DENON でしょうね。
最初にパット音出ししたとき、サイズのせいもあるが、”SC-E717R ”に似てるっ、と思ったほどです。
特に能率の低さが酷似してるせいか、切り替えたときの音量にはまったく違和感が無いほどでした。
私の717、チューンドの音に似てるという事ですが、これの静粛性・分解能力など、何歩も先を行く実力なのは確かです。

両者を聴き比べた場合、気軽に使いたいという意味では、DENONでも十分かもしれません。
ただもっと「 奥にある実力 」や「 所有する喜び 」は、ハーべスというブランド力に加え、なし崩しにされそうです。
ハーべス。
声・ボーカルが、「
うっとりするほど美しい 」そんなイメージがありましたが、
これは、「 ハッ!とさせられるリアリティ 」を持った音色でした。
いずれにせよ、中域にある拘りは、解りやすいほど感じる事ができました。

それでは、内部検証に移り、メンテナンスと共に秘密を解き明かしてみましょう。
前から外そうか、後ろから外そうか、一瞬考えてしまう。
とりあえずいつもどおり、まずはユニットを外します。 板は15mmのMDF。筋交いのような補強は無く、いたってシンプル。
周りにはブ厚いスポンジが貼られている。そのスポンジをズラすと、出ました!黒いの。
この黒い物、ウレタンスポンジだろうか?高密度で、元々なのか?接着材で固められているのか?とにかくガチガチ。
それが一周にわたり、貼られている。
 このようなやり方、外国製に多いですね。よけいな響きや共振を控えるという意味では、かなりの効果があるでしょうし、共感もてます。
コンクリートや樹脂など、素材そのものが硬い物もありますが、あくまでもナチュラルな響き、木材に拘っている感もうかがえますね。
 自作箱作る時ってね、ここまでやりたいなァ〜といつも思います。じゃぁなぜやらないかと言うと、
だいたいのユニットでは、”低音出なくなりそう ”それが本音なんです。 これのようにパワフルで、安価なユニットがあればいいのだが。
ひときわ目立つ黄色いスポンジを取り除くと、出ました”ネットワーク! ”凝ってますね〜。
静粛性・雑味・分解能力などなど、それらはユニットの能力にも関係ありますが、ほとんどがネットワークに依存される。
特にクロスオーバー周辺、中域には大きな影響力があると言えるでしょう。
 詳しく検証する為、背面板を外します。ネジは+だが、溝が浅めに掘られている。専用があるのか? 少し大きめの+が必要。ユニットも同じ。
ネジを外して感じた事だが、とにかく全てのネジが緩い。ターミナルも緩く、穴の位置がズレてるほどだし、
背面板も、高精度な板取りではなく、緩めですぐ外れる。
ここまで緩いと、わざとか?なんて思うほどだが、遊び(余裕)じゃないし、良い事は一つもないでしょう。
逆にそれほどまでに、”
振動 ”がひどいのか?とも感じてしまいます。
箱が頑丈なだけに、逃げ道的な部分には、振動が集中してしまうのかもしれませんね。

 ネットワーク部品は全て基板上にのっており、その基盤はターミナルの4ヶ所で固定されている。
それだけでは不安定な為、抵抗を逆付けにし(矢印)安定させるという措置が取られていた。
ただし抵抗だけでは不十分なので、何かを追加したい所です。 右は手書きのシリアル。遊び心の落書きは、ありませんでした(笑
ユニットに入ります。上の段はツィーター(TW)、下はウーファー(WF)。ともにDYNAUDIO(ディナウディオ・デンマーク製)
メーカーの説明分にもあるよう、TWはオイル注入タイプ。あえてバラすのも怖いので、ネットだけを外しクリーニングした。 ドームはソフト。
背面の筋が入ったカバー。これはプラだが、この筋にどんな意図があるのか?気になります。

下のWF。やばいですね、これ凄い!凝った造り。初めて見るタイプで、ビクター・スパイダーサスペンション以上の衝撃が走りました。
 TWもそうだが、フレームは鉄製で重く、強硬度をほこり形も凝っている。
左下の矢印。この窪み、穴は空いておらず、ただの装飾のようだが、空気のなんたらを設計したものなんでしょうね。
ロボの間接や背中のバーニア、そんなメカ風で好感もてます。
 真ん中の写真、エメラルドグリーンが美しい部分、なんとボイスコイル!センターキャップの大きさ=で、とにかくでかい!
まさにこれが「 ウーファーだぁっ! 」って感じがするほど。迫力もある。
 私がまだ、スピーカーチューンに馴染みが無い頃、自分で設計するなら「 でかいコイルにしたい!
まさにこれがそれでした!ずっと気になってるスピーカーがあり Technics SB-M01 これもでかいらしい。
(WFの続き)背圧がかなりあるのか?コイルの負担軽減なのか?左写真上下のように、空気を逃がすような設計が施されている。
上の赤○、目の粗いスポンジだが、もぅ風化してボロボロ。 ちょっと触れただけで崩れ落ちる。 だから一番右上のように、代用品で作り直した。

 真ん中上、これはコーンの裏側の写真。ここがが見えるという事は、中央部が貫通されているのが分かりますよね。
そこにはドーナツ型のフェルトが、3枚貼ってありました。
 左下の矢印、これは布エッジ的な凸のノリで作られており、固定されてるので動かない。ここも背圧を逃す為の措置でしょう。
同じ写真。エッジはゴム製で今のところ大丈夫だが、より安心できるよう、裏側より入念に補強した。
これで耐久性はかなり上がるし、メーカー的な言い方で、ダンピングやトランジェントも向上してるはずです。

 最後に真ん中下〜。一見どこにマグネットが?とも思えるが、赤○部はカーバーであり、かなり錆が出ていた。
錆を落としコーティング(塗装)する。
 日本製、特にバスレフの場合、錆が出てるのはほとんどみかけないが、外国製は何か多い気がする。素材そのものが違うんですかね。
肝心の音だが、裸で聴いた場合、癖が無いというのが特徴的で、
うわー、これ低音すごそう〜 」的なドスドスくる重い感じは、それほどでもなかった。
 とにかく、大いなる感動を与えてくれたこのユニットに敬意を称し、できる限りのリファインをおこないました。
こういうユニットを作っているからこそ、”
デンマーク製=有名 ”なんですかね?歴史と伝統もあるのかな?
普通の発想じゃ-、こんな奇抜なユニットは、そうそう作れそうにありませんけどね。
お次はネットワーク。一見落書き?ともとれそうだが、丁寧に値が書いてありました(笑
元々グル―で固定補強されているが、量もすくなく、かなりアバウトです。
 上の真ん中、ネジの緩みもそうだが、コイルを留めているナイロンバンドが切れて、コイルがブラブラでした。
ちょうど基盤の淵に当たるので、切れやすくもなりそうだが、ナイロンバンドはそうそう切れる物ではありません。
よほどの振動(ストレス)がかかってるのは、間違いないでしょう。
 基盤は四つのターミナルネジで留めてあり、簡単に外れます。基盤を外すと、矢印のワッシャ―が表れます。
このワッシャ―が、基盤と直接触れる接点になる。 写真のように黒ずんだワッシャ―はすべて+側。電気的作用?
ちなみにワッシャ―は銅製でした。 こういう所もメーカーの拘りなんでしょうね。とりあえず全て磨きます。
上の写真、もぅ、こ・れ・で・も・かっ!ってほど、全ての箇所を入念に固定補強。
グル―スティックという物を使っているのだが、もぅ何本使ったか。100本入りのものが、すぐに無くなってしまうほどなんですよ。
 下、まずはポート。吸音効果の高い、ウレタンスポンジを巻きました。
これだけでかいポートだと、振動もかなり伝わると予想できる。たぶん効果てきめんで重要なポイントでしょう。

 唯一の交換部品がケーブルになる。元は黒い方で、錫メッキされた銅線。 太さはφ1.25くらいだったかな。
それをわりと高級な、OFC(うす紫)に変えます。これは高級ってところに惹かれたのではなく、
外側シース→ナイロン→
絹巻き。この構造が”振動対策 ”には、かなり有効。 だからこれをチョイスしてみた。
一番右は作業風景。これ以上引くともぅ汚いので(^^; とにかく細部にわたり、入念な作業をしています。
ケーブルを取りつけます。ケーブル自体が太いので、ガッチがちに固めました。
基盤とワッシャ―、接点になる部分は磨き込み、ケイグ(ゴールド)でコーティング。
基盤裏には、写真のようにスポンジを追加。
 ギューっと押し潰しながら取り付ける。 簡単な措置だが、振動による受け具合は良さそうです。
ここは車で言うサスペンション。ガチガチに固めるだけが対策ではありません。
上、基盤→ワッシャー→ナット止め。最後にナットを、グル―で固めます。これで緩む事もないでしょう。
最後に。背板は本体に対し緩めなので、両面テープとクラフト紙を貼りつけ、ピタッと収まるように調整します。
そして完成!けっこう時間がかかりました。とにかく”
徹底的 ”にやれるのは、個人ならではの強みでしょう。業者はここまでやってくれるのかな?
最終工程、箱の補修に入ります。
底にはゴム足でも貼ってあったのか?色差がくっきり解るほど、○跡が残ってますね。 そこにコルクシートを貼りました。
地色よりだいぶ濃いめ(厚め)で塗装されているこの箱。 こういうのを補修するのが一番難しい(><)
 ○のような部分、傷も同じようにはげてるわけだが、部分的には塗装がのりずらく、厚めに塗らないと色が合いません。
厚めに塗れたはいいが、今度は境目が目立つようになる。
だからこういうのは、全体を均した後、同じよう全体を塗装する必要があります。だがこの厚塗り、一筋縄じゃいきません。
突き板の多くはJBL同様、割と簡単に補修できる場合が多い。
 だがこの厚塗り仕様の場合、ペーパーがけは塗料が付いてべとべとに、気軽に剥がす事すらできません。
ヘタにやると、かえってムラだらけになってしまい、よけい汚くなる恐れもある。
とにかくやっかいな箱です。
補修方法は色々あるが、乾くのに時間がかかる場合、最初にやっておくべきでした。
ユニットも綺麗になりました。強い溶剤を使うと、黒が剥げるので注意が必要です。
組み上げに入ります。
まずは背板を取り付け、ケーブル位置を調整し、ユニットを取りつけます。
ジャンパーピンは無かったので、内部配線と同じものを使いました。 その他ターミナル・接点等、完璧に仕上げました。
で、完成!!! いかがでしょう?

今回はネットワークはいじっておりません。唯一の交換部品はケーブル。
 そのケーブルの交換で、「 音が変わるのか〜? 」という気持ちが本音ですが、
結論から言いますと、
 「
わっすげっ。ここまで変わるかよ 」って感じです。

もちろん全てにおいて、うまく作用された結果だと思うが、この激変ぶり、自分でも正直驚いたほどです。
 特に低域のブーミーな音が軽減され、ボフボフという歯切れの良い、ハイエンド指向の音に変わりました。
全体の解像度が高くなったのは、言うまでもありません。
やはり”徹底的に ”やってみるもんですね。
ユニットのポテンシャルの高さゆえ、変化の度合いも大きいかもしれない。 全てが、うまく噛み合った結果でしょう。

このように”
徹底的に ”リファインするのが、私言葉で”極みチューン ”になります。

LS5/12Aの弱点は、かなり克服できたんじゃないですかね。
低域もそうだが、中域の変化も感じられる。
チューニング後は少し前に出るようになり、輪郭もよりくっきりシャープに、さらに付け加えると定位も良くなった。
それらがチューニング前よりも、生々しさが醸し出ています。

さらに欲が出ると、ウーファー本来のポテンシャルを引き出してみたい!
そんな切り替えスイッチを付けるチューニングがしたかったのも、本音です。
シンプル設計で、能率合わせまではやったんですけどね。
ただ穴をあけると価値が下がるかな?という思いもあり、踏みとどまりました。

さてさてソースだが、先にも述べたよう、これはクラシックとの相性が抜群。
スマートな中域に加え重厚な低域は、オーケストラでも物足りなさを感じさせません。
嫌みな音がほとんど出ない(感じられない)うえ、高域がサラッとしてるのもいいですね。
 ”このソースうるさいなー ”なんて感じる音源でも、落ち着いた音色で聴きやすくなるんじゃないですかね。
ボーカルものの場合、JAZZなどの綺麗系で音数の少ないソースが、より合うでしょう。
もちろん、最初のインプレッションよりは、格段に良くなってます。
TVの音は、まず聴いてほしいですね。
まとめると、
言い方が悪いかもしれないが、音に拘りのない素人さんが「 おおっすげー 」なんて「 大絶賛する 」音ではないでしょうか。
もちろんマニアでも、納得できるだけの実力を持ってます。


最後に。
今回は写真枚数もさる事ながら、いつものように長文になってしまった。
でもそこは、スピーカーにかける熱い情熱!と、受け止めて欲しいです。

 スピーカーは同じメーカーでも多種多様、物によっては音色・傾向がガラリと変わります。
小型というジャンルであてはめるなら、Rogers LS3/5a 11Ω版、
そんな外国製の味付けが、大いに感じられましたし、確かに格上かもしれません。
まァこればっかりは食と同じで、聴いてもらうしかありませんけどね。
ハーべス=ボーカルというイメージがありましたが、これに関しては「 Dynaudio 」と言った方が、解りやすいかもしれません。
高級機器でこれを鳴らしたら、どんなに凄い音がでるのか!? 私の環境ではまだまだ、秘めたるポテンシャルは眠ったままでしょう。

さて次回、自作の予定なので間があきそうです。合間にメーカー製をやるかもしれませんが、気長にお待ちください♪
凄いの作りますから!?ただ頭の中の、イメージだけなんですけどね(^^;
それとボチボチ、新HPの制作に入ります。

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