今回は ONKYO D-202A LTD のご紹介。

久々すぎて、一瞬何書いていいかわからなくなるほど、戸惑ってしまう(笑
1994年に発売された、ONKYO D-202A。
そのグレードアップ・バージョンであるLTDモデル。
 私が扱ってきた中でも、ONKYOのLTDバージョンは、
中々の優等生、好印象なモデルばかりでした。
だからついつい、期待に胸躍る。

90年代前半、あまり良いスピーカーの印象はありませんが、
実績のあるLTD。
果たして、その音色はいかに!?
ONKYO D-202ALTD 1994年 ペア \74,000
メーカー解説:D-202Aの限定バージョン
エンクロージャーは十分な補強を施したオールMDFの高剛性キャビネットの内側に、
ダンピング材料を貼り、その上から、鉄板で拘束し、優れた制振性能を発揮しています。
方式 2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式
使用ユニット 高域用:2.5cmドーム型 ・低域用:16cmコーン型
再生周波数帯域 36Hz〜35000Hz
インピーダンス
出力音圧 90dB/W/m
クロスオーバー周波数 4KHz
外形寸法 幅205×高さ327×奥行313mm
重量 約9kg
まず言っておきたいのが、これ、写真で解るようにエッジがセーム皮仕様で、
前オーナーさんの貼り替えによるもの?と思われる。

それではさっそく、セーム皮仕様のまま、インプレッションに入りたいと思います。
まずは一言

 「 まァ、わりと自然、悪くないですね 」

高域
少し雑未がある。その部分のみのせいで、印象がだいぶ悪くなる。
伸びはまァまァ、メリハリのある明瞭具合はいい感じで、ナチュラルな刺激。
 これバラしてみないと、なんとも言えないが、
最初の音出しで感じた雑未。 たぶんTWから出る音ではなく、WFから出る音のような気がした。

中域
見た目通り、想像できるようなONKYOらしい音。
フロントポートの影響もあり、やや凸気味傾向だが、変な癖はほとんどなく、わりとナチュラル。
ただやはり中・高域にかけて、
微妙なピーキー感、嫌みな音が顔をだす。ユニットの問題かもしれない。

低域
大きめのフロントポートらしさのある、いかにも広開放気味の音。
フロントポートなりの伸びは感じられるし、割と低い音も出ている。
箱鳴りは少なめで、響きかせ方が上手いと感じた。量感もまァあるほう。
 ただここのところ、さんざん密閉を聴いていたせいか、少し甘めにも感じた。

*箱鳴りと箱の響き、文章だと似てる表現だが、音色は微妙に違ってきます。

全体音
 大きめのフロントポートしかり、特徴的な中・低域は、ONKYO色が強く濃いものである。
だから全体の割合では、中域は凸傾向。
ただそれほど凸が目立つ訳でもなく、その辺は良く考えているようです。
 全体のバランスを整える、凸を目立たなくする措置として、TWの能率が少し高め、音数も多いという傾向がとれる。
なのでカタログではクロス4Kだが、聴いた感じでは2〜3Kの音に聞こえてくる。
それら全てをひっくるめても、LTDモデルは一味違い、中々好感のもてる音色でした。
 過去にD-502Aを扱い、印象だが雲泥の差を感じるほどです。
ONKYOのLTDモデル、今のところ外れがありません。

ただ一つ、
中・高域の高域にかけて、嫌みなピーク。
ソースにより出る場合と出ない場合があるので、特定の帯域である事は間違いない。
ボリューム上げた時に感じる場合もあり、ひょっとしたら歪、エッジの影響が出てるのかもしれない。

そのエッジだが箱から出した時、おもわず白色にパッと目がいくほど、インパクトがあった。
最近では珍しい?セーム皮のエッジ。
見た感じたるみ(余裕)が少なく、少し張り気味だったので、思わず指でゴシゴシやってしまう。
 最初はこれで「 低音でるのかなァ?
なんて思っていたが、わりと低い音は感じられたので、正直驚いた。
ただ少し、ポコポコというか、軽い音が気になる時もある。
 このセーム皮、洗車のケミカル用品でよく見かけますよね。
エッジを交換するべきか、手直しするべきかは、分解してから決める事にする。
今音を聴きながら書いてる訳だが、十中八九エッジは問題あるでしょう。
とりあえずメンテを兼ねながら、内部を詮索していきます。
まずはユニットを外します。
思わず目がいったのは、内部側面に貼られた”鉄板 ” 。 凄い!鉄板が貼ってあるとは、想像すらできません。
 その他の補強はそれなりで、吸音材の量しかり、ONKYO製品らしい特徴が、随所にみられる。
ウーファー後ろの補強バー、真ん中に穴があいてますね。 実はこれ、秘密があります。
 ネットワークは至ってシンプル。 まァ最初に音を出した時、なんとなく解ってましたが。
シンプル6dB/oct構成。 長所は自然でナチュラル。 短所は重なりが多く、雑未に感じる。
ネットワークでいくらでも調整はできるが、6dBのままじゃ難しい。 この味を崩したくないので、悩んだあげく今回は改造しませんでした。
ユニット。 上はTW。これはONKYO製ほぼ共通で、特徴はソフトドームになる。
マグネットもそこそこだし、フレームはプラ製だが、所々に制振対策がほどこしてある。
フレームがカットされてるのは、ユニット同士をなるべく近づける為の考慮。
 下はWF。このフレームも、外製にあるようなカットが施してあり、これはバッフル面を最小にした為だと思われる。
特筆できる点は、最後方に見える錘。これは” デットマス ”的な措置で、振動を徹底に排除したい!という表れだと思う。
横からの写真が解りやすいと思うが、凄いですね〜!
カバーのサイズから、マグネットは平均的な大きさだと予測できる。
ユニットを外す時箱を寝かせるんだけど、最初「 固着してんのか!? 」 と思ったほど重かった。
原因はコレだったんですね。とにかくONKYO凄いよ!メーカー製では”初物 ”、初めて見ました。
セーム皮のエッジと私が作った布エッジ。
上の写真だと解りやすいと思うが、凸が無く平らに貼ってるでしょ。↑は所々剥がれていた。
だから躊躇もせず、一気に剥がしました。 セーム皮の表面はフェルトのようなノリで毛羽立っている。
なので接着材が大量・・・で右下の写真、コーン周りが汚いでしょ。多めに塗らないと剥がれやすくなるのは解った、でも剥がれていた。
 あとセーム皮の特徴として”まったく伸びない ” これは記憶になく、ちょっと意外でした。
なんか伸びそうな感じもするでしょ。フェルトと同じかそれ以上のノリで伸びません。
だから太鼓のように”ピーン ”と貼ると、音がおかしくなります。
これ難しい素材ですね。
例えば多少山なりにするとか、凸にする事も考えたけど、とにかく素材自体が”柔らかすぎ
 仮にエッジの形にできたとしてもヘロヘロで、全てをダンパーに依存する。そんな構造になってしまう。
なので結局は、ダンプ剤を塗るような処置を施すでしょう。
 このユニットに関しての貼り方だが、無難な線だったと思います。張りすぎず緩ませすぎずで。
ただね、多めに剥がれてたのと、大音量時に微細だが歪んでました。
世に代用品が無かったとは考えにくいので、セーム皮エッジが販売されてる以上、何かしらのメリットがあるのかもしれない。
セーム皮エッジに拘りがあるなら別だが、エッジを貼り変えるさい、おススメはまったくできません。
ウーファーの作業だが、錘にガイド棒が付いてるので、台を写真のように配置し作業した。
これ一応、スピーカー台なんですけどね(汗 サイズと高さがちょうどいいので、つい作業台として使う事が多くなる。 そのうち塗り直しましょう。
 さて今回は、ネットワークチューンはおこないません。 代わりに吸音系チューンを施します。
まずはTW。 写真のように厚めの吸音フェルトで、すっぽりと覆い隠す。
その他、ウーファーも含め、振動しそうな場所は”徹底的 ”にダンプする。 これはいつもやってる事ですけどね。
最後は箱の手直しに入ります。 素材は完全艶消しのビニールシート。 大きな欠けや傷もなく綺麗。
せっかくなので、軽く”鏡面 ”タイプにしてみた。 すると表情はガラッと変わり、中々の高級感を醸し出せました。 ただDENON E727に、似ています。
 ユニットのオーバーホールが完了。
TWは分解・清掃、ドームのエッジ部にもダンプしてやった。
WFはエッジの貼り替えのみ。 吸音材やガスケットを、綺麗に貼り直した。 ご覧のように、コーンもだいぶ綺麗になりました。
ぶっちゃけ、他人が直したものを再び手直しするのは、メンドウです。 吸音材・ガスケットしかり、もう少し綺麗にやっていて欲しかったですよ。
底にコルクシートを貼り、ユニットを取りつけ
完成!

今回はネットワークはいじらずに、細かい点を煮詰めていったチューニング。
たぶんだが、開発陣が煮詰めるならこうするだろう!という事を考えながら、そんな方向で仕上げました。

音質の傾向は同じ。 だが最初の音より、俄然良くなった事は言うまでもありません。
中・高域の嫌みに感じた音。
これはウーファーのエッジを変えた事で、かなり改善されました。
なのでネットワークを変更するに至らず、フェルトで覆ってやり、ポートから出る余計な高域を、低減処理した。
元々音数や重なりも多いので、雑未もかなり低減したように感じられる。 より透明感が出て繊細な音になりました。
低域は量感のUPと共に、一番はキレがよくなり、解像度もだいぶ高くなる。
やはりセーム皮エッジも、問題だったようですね。

TWの能率を下げるか下げまいかで、最後まで迷ってました。
ただもし下げるとしても、0.5〜1Ωと微細な値。いってもせいぜい1.5Ωですかね。
これは中域の問題で、ポートから出る甘い中域を補うために、
TWの能率をほんの少し、高めのセッティングにしてあると感じたからです。
もちろん抵抗で能率を下げなくても、コンデンサーの値を低くして、バランスを取ってやる事も可能。
だがLTDモデルを尊重するのと、微細な調整になるので、このまま現状維持にした。

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このD-202ALTDのセッティングだが、
いい意味でのONKYOらしくない一面がある。 それはシンプルなネットワークが醸し出す音。
 ウーハーをスルーや6dB/octにすると、全体が自然になるという長所があるが、
音数の多い”雑未 ”や、ユニットの癖がそのまま出てしまうという、短所もある。
6dB/oct
ユニットの能力に大きく依存してしまう、そんな傾向でもある。

「 今日は寿司と焼き肉、どちらにしよう? 」 どちらも捨てがたい魅力がある。

そこでチューニングの主旨は、「 寿司と焼き肉、両方食べよう! 」


それを目標にし、満足感の得られる音作りを目指す。
しかしスピーカーに関しては、両方は無理です。
だから私は”切り替えスイッチ ”を付けるという手法をあみ出しました。
それで両方を楽しむ事ができます。
 そんな手法に慣れている分、今回は迷いどころ満載でした。

そうそうこないだ、親しいお方より、「 こんなに音が変わるのか!まさに久保田マジック! 」
なんて言われる事がありました。 照れくさいですが、とても嬉しいです。
私の活力源になってます。

さてさてソースだが、基本的にフロントポートの音は、
ボーカルものやJAZZなどと相性がいい。 全体音がわりとナチュラルなので、
楽器系やオーケストラもそこそここなす。TVの音なんかでも、自然に聴く事ができます。

最後に。
今回のD-202ALTD、LTDモデルだけの実力は十分に堪能できた。
”そこそこ良い音 ”それがチューニングする上では、一番難しいチューニングでもあるが、
大型3wayと違い、気を使わずに楽しめる事ができました。
その楽しむという行為が、結果として表れるのでしょうね。
とにかく”徹底した振動対策 ”には、他のメーカーさんも頷けるほど、脱帽ものでしょう。ONKYOさんお見事です。

次回は外製フルレンジ2連発!早めにUPするので、お楽しみにしてください♪

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