ONKYOの現行型、D-112E と D-112ELTDの登場。
ONKYOはラインナップが豊富で、これよりも上位機種、212、312、412、その他たくさんあるが、
基本はやっぱこれでしょ。ここがダメなら上位も期待できないという事が予想できる。

そんなツボを抑えた2台だが、下のスペック表でもわかるとおり内容はほぼ同じで、箱の模様とサイズが若干違う程度になる。
ONKYOのLTDモデルとは、ノーマルよりグレードUPを施した、メーカー製チューニングバージョン。
D-102EXGがあまりにも優秀だったので、それ以降LTDモデルは、かなり気になっている。
今回、べた褒めするという条件で、メーカーより借りたこの2つのスピーカー。
というのは冗談で((^┰^))ゞ
こういうインプレッションのほうが分りやすく、おもしろ味が出るかな?と同時購入(展示品)したしだい。
定価で約2万円の差があるが、それだけの価値はあるのか?
それでは、辛口でズバッと切っていこうと思います。


ONKYO D-112E    2006年 \42,000(2台1組・税抜\40,000)
ONKYO D-112ELTD 2007年 \60,900(2台1組・税抜\58,000)
メーカー解説:WEB D-112E  D-112ELTD
方式 2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式・防磁設計(共に)
使用ユニット 低域用:10cmコーン型 ・高域用:3cmリング型(共に)
再生周波数帯域 50Hz〜100kHz(共に)
インピーダンス 4Ω(共に)
出力音圧 82dB/W/m(共に)
クロスオーバー周波数 2.5KHz(共に)
外形寸法 幅156×高さ249×奥行221mm 重量 4.1kg 容量4.2リットル(D-112E)
幅162×高さ263×奥行243mm 重量 5.0kg 容量4.5リットル(D-112ELTD)
写真で分かるようユニットは同じ。色目と、箱のサイズが若干違う。
見た目での特徴だが、LTDモデル(左)はポートが大きい。
このポートサイズの違いによる音質変化は、大きいと予想できますね。

ではさっそくインプレに入ります。
まずはD-112E(以後112)から一言
うわーONKYOらしい!音。D-200の再来か!?

高域
透明感抜群!
だがTWの能率が高く、少しシャリシャリが強くうるさい。

中域
予想に反し、わりと凸。
響きも強く、音像・定位共に甘め。

低域
量感はかなり少なく、
特に気持ちいいとかんじられる100〜200Hz辺りがぜんぜん足りない。
その分それ以下の低い音が、多少聞こえてくる程度。
箱を鳴らして量感を稼ぐタイプだが、迫力がないしキレも悪い。
10cmだからいたしかたないのか?
フロントポートが絞りすぎのようにも感じた。

全体音
まず一発目に聴いた時、
D-200の再来かと思ったほど、高域の美しさが特徴的。
だがいかんせんバランスが悪く、POPを聴くとシャリシャリで疲れてくる。
例えば良いバランスを
10高:10中:10低とすると、
これは9:10: 5くらい。
ポートはフロントだが、サイズや形状から見て中域はあまりのってこない。
その分輪郭はシャープになるはずだが、ユニットの特徴か?
けっこう響きも強くつっぱってくるので、中・低域の音像が鈍く感じてしまう。
変な癖はそれほどないので、いやらしさは感じない。
もっと中域の凸を抑えるよう、ツィーターの中域でカバーすればいいのだが、
わりとカットが上なのか?カーバーされてる感は少ない。
一番の問題は量感の少ない低域。
そのせいで、より中・高域が強調されすぎになる。
でもアンプで調整でBASSを15〜20分強くすると、ちょうどよくなるから、
許容範囲とは言えますけどね。

これねぇ、ちょっともったいないと言うか、
あと少しっ!と言うところが本音。
ということはやはり!?もぅ予想できましたね┐( ̄ヘ ̄)┌
LTDはズバリ!低域が改善されてるでしょう!
聴きたい・・・・
・・・・・
そんな所まで想定していたので、同時購入に至りました((o(^∇^)o))

では次に、D-112ELTD(以後LTD)のインプレに入りましょう。
まずは一言
やはり予想通り!低域の量感が増している

ただ以外にも、それほど大きな変化はなく、
低域は1トーンくらいかな?気持ちいい帯域が、少し多めに出てる程度。
低域は良しとして、見て解るとおりポートが拡大されている。
そのポートの影響が強く、112より多くの中域がのってくる。
だから響きも112より強くなり、音像もさらに鈍く感じた。
さきほどのバランスで書くと

112が、9:10:5
LTDが、7:12:7 って感じ。

中域の響きやつっぱり具合は、ポートの影響大だと思うが、
その凸をカバーする為
ツィーターから出る中域が多いのか?ウーファーを上まで引っ張っているのか?
どちらかでの調整で被り気味にセッティングしてあり、
ボーカルの輪郭やクリアーな音像を、保とうとする傾向もみられる。

このLTDも、なんとも微妙ですねー。
低域の量感はUPし、迫力は増している。
だがどっちがいい!?と聞かれれば、(; ̄ー ̄)...ウーン・・・微妙で悩む。
素直にLTDが良い!とは言えない。

112は高域のシャリシャリ感は強いが、
その分中域も明瞭になり、透明感や爽やかさも感じられる。
LTDは凸具合と響きが多いところが難点。
箱鳴りも好みじゃないのと、中域の響がマイナスポイント。
だからこれらの場合、112を低い音だけ増量する。
それが一番ベストな、音質と言えるのかな。

改造なしで一般的に言うと、やはりLTDを勧めるのかな?
ぐだぐだでm(_ _;)m
なんとも微妙なんすっよ(笑
とりあえず考える前に、内部を検証してみましょう。

今回は2台同時検証、左が112、右がLTDになる。
↓↓ D-112E ↓↓ ↓↓ D-112E LTD ↓↓
ユニットを外します。ネジは六角。配線は共通 左に同じ
若干の長さと六角サイズが違う。
上がウーファー用でワッシャーなし。
下はツィーター用で、プラと金属ワッシャー。
上がウーファー用でゴムと金属ワッシャー。
下はツィーター用で、プラワッシャーのみ。
ウーファー用ゴムは、112にも追加して欲しい。
内部吸音材は共通で、荒目のスポンジが全体の8割ほど貼られている。
その吸音材を剥がすと
ネットワークが顔を出す。
外して無いのでカット位置は不明だが、両者ともほぼ同じ構成
12dB/oct。
上(赤)がTW、下がウーファー用。
コンデンサーはわりと良さそうな物が付いていた。
実際パッと見た時は、同じかと思うほど似た構成。
こうして両者を見比べると解りやすいが、
ウーファー用コンデンサー(黄色)はこちら(LTD)が小さいと思われる。音はその分、より高域まで伸ばされている。
中域・ボーカルの輪郭をつかさどる部分、これはウーファーによるものと判明した。
ウーファー。LTDと見比べてもまったく同じ。
ウーファーらしい逆ドーム。
カーボン調の模様で、見た目はかっこいいと思った。
左に同じ
裏。マグネッでかいですねー。 インピーダンスはもちろん、型番もほぼ同じ。
だがここで違いが明らかになる。それはダンパー。
形状の違いで、こちらは少し盛り上がっている。
中央のボイスコイルが、右よりも隠れているでしょ。
そのダンパーには4ヶ所、切り込みが入れられており、
若干だがLTDより、柔らかめの仕上げになっている。
こちら見た目にも一般的。
両者に言える事だが、10cmの割にボイスコイルが大きい。
いかにもウーファーって感じ。
特筆のできるのはこのフレームが金属製で、かなり頑丈にできている(両者)。
ここは共通。ちょっと見え難いかもしれないが、エッジは2段の凸凹で特殊な形状。
ふらつくコーンをしっかり押さえる、いわゆる余計な共振をすぐに止める事ができる、ダンピング強化策と言える措置。
ストローク量や硬さなどは、特に気にならないほど一般的だった。
ダンパーが柔らかくエッジが硬いのは、ONKYOの特徴か、キレやスピード感は出る。
JBLは逆で、ダンパーが硬くエッジが柔らかい。(ちなみにFOSTEX 138ES-Rは両方硬い)
他の構成によるところもあり、一慨に言える事ではないが、JBL構成のほうが重い音が出る。
ツィーター。
特徴的な十字型は、両者まったく同じ。
フレームは残念ながら樹脂でした。
左に同じ
裏。見た目、サイズは全く同じ。マグネットはやや大きめ。
違いはこちら5Ωで、LTDは5.5Ω。
0.5Ωの違いは、誤作の範疇でほぼ同じと言えるでしょう。
ネットワークが同じ場合だが、
ここの抵抗値が大きいほうが、大きい音が出る。
その面から言うと、左の112は4.5Ωくらいにして欲しかった。
両者同じこの特徴的な造形。メーカーはリングツィーターと言っている。
この十字と中心のドームは樹脂で、すべて一体型。
中央の白く光る部分は光の反射で、一見金属リングに見えるかもしれないが、ドームと同じ樹脂。
その下にそのままボイスコイルがあるらしい。外側エッジは、これも段々と2段になっている。
このツィーター、ソフトドームとは明らかに違う、良音を奏でてくる。
80年代製品に多く見られる、金属振動板と特性が似てるのか?硬質な樹脂ドームがその役目を果たしてるのが伺える。
十字の影響はどれほどのものか解らないが、久々のヒット!
ダイヤトーン・200Z系と同じくらい、このツィーターはいい品でした。
ただし写真がドUPのせいもあるかと思うが、ネジが見えない方がもっとかっこいいんでしょうね。
さてこの112、ここが一番変更点が多く、特に気になるヶ所になる。左のLTDは高級な雰囲気が出てますよね。
箱の違いだけで2万円の差はうなずけるものがある。だが112のライトな感じも中々良い。
右写真、12mmのMDFを載せてみた。違いはカタログ通りで、差が14mmという事が解ります。
底面。ネジ(プラス)が見えたらとりあえず外してみる。
これはメンテナンスの性かな?
左に同じだが、
奥行き22mmの違いが形に表れてますよね。
ネジを外すと底板が、パコッと外れました。
白いテープは私が貼ったもので、元はついてない。
こちらも同様、簡単に外れる。
ダクト入口サイズも違いますね。
共振周波数は解りません(^^;
外せるならこんな事ができるだろう!と、112のポートサイズを拡大してみた。
中央がそれだが、ここでどれだけ音色が変わるのか?低域、特に気持ち良く感じる帯域は増量できるのか?
などなど色々と実験してみた。
↓↓ ここからは112の作業工程 ↓↓
↑これは先ほどの実験用で、適当に合わせただけのもの。右はきちんと作り込んだもの。材質はMDF12mm。
きちんと作り込むという事は、それなりの結果が出た訳だが、どれだけ拡大させるかが大きなポイントになる。
形が形なだけに、円柱ポートを調整するような、楽にできる作業ではない。
塗装を施す。並べた底板。LTDもそうだが、見えない部分の作り込みは甘いですね。
この延長ポートの形だが、特別なこだわりは無い。
普通なら最初から底板と同じよう、コの字型で作るところだが、それだと開放しすぎるんですよね。
だからどこで絞っていこうか考えた結果、こんな形になった。
LTDもそうなんだけど、隙間があるでしょ。底がフラットじゃないんですよ。
メーカーはそれをテープを貼り対応していたので、私もそうしてみた。白いところは特に段差が目立つので、このようにした。
取り付けます。気になるほどではないが、元々底板と本体のサイズは微妙な誤差がある。
だからこれは底板に合わせて作った。右はノーマルとの比較写真。
厚みで12mm増えたわけだが、元のネジ留めでギリギリ大丈夫と言ったところ。
15mm厚にするなら、ネジも長い物に変えないとダメ。
で、完成!!!正面から見るとLTDとほぼ同じになったでしょ。LTDは今回ノー改造、メンテのみ。
さて、気になるポートの拡大だが、音出しした瞬間!LTDと同じ音に聴こえるほど、効果絶大っ!
ある程度予測はしていたものの、ここまで変わるとは正直驚きを隠せない。
加え、この2台はどちらも中古だが、あまり鳴らされていなかったようで、
じっくりエージングした事により、綿密度が数段UPし、高域もだいぶ柔らかくなった。

結論から言うと、LTDの傾向に近づいた112。
このポート拡大により、肉薄するどころかLTDを超える音質を手に入れた、と言える結果だろう。

112は低音出ない、LTDは低音出るが中音も飛び出す。
112の傾向を極力変えず、低域だけ伸ばしてやったのがこのチューニング。

ノーマルの112だが、
低域を増強したい場合、単純にツィーターの能率を落とせばいいわけだが、
これの場合それをやると、かえって中域が目立つようになった。
ネットワークで、クロス及びdB/octの変更がベストかな?と最初は考えていたのだが、
エージングの効果もあり、中域はわりといい塩梅に変化してきた。
だからポートの拡大のみで低域増量など、豊かな音場を表現できるよう、狙ってみた。
造作は簡素だが、労力は伝わらないほど、試行錯誤してできた形である。

LTDとの中域の差だが、112の方がコンデンサーが大きく、カットの幅も大きい。
そこが著しい差で、大きくカットされてる分、余計な付加帯域も無くスッキリしている。
ノーマル状態では、どっちがいいか悩むほどだったが、
この112、ポート拡大チューンにより、はっきり112がいいと言える程、音質が改善された。

苦労した点だが、最初はコの字型で作ってみたんですよね。
すると中域がドバッーと飛び出し、とても聴けるもんじゃなかった。
だから少しづつ絞っていき、この形にたどり着いたわけ。
だいたいだが112を50としLTDを100とすると、この拡大幅は80くらい。
LTDより気持ち量感は少ないが、中域の凸も少なく、逆に低い音は112の方がよく感じられるという具合。

ソースだが、どちらもPOPやボーカル向きの傾向、
112は、気持ちクラシックよりの傾向になる。

最後に。
ユニットは同じ、ネットワークパーツはウーファーのコンデンサー以外同じ。
箱の容量とバスレフポートサイズの違いが、112とLTDの違いの差である、という結果でした。
今回同時検証したので、解りやすい結果が出た訳だが、、
別々だったらLTDのほうが低音出る、それで終ってしまうような微妙な差なんですけどね。
結局のところ112の音質は、アンプで調整する事を前提とすれば、
2万円の差は見た目の差と言えるのではないでしょうか。

112を所有されてる方でもう少し低域が・・・などと思っている方、
ポートを拡大するだけでLTDを超える音質へと、生まれ変わりますよ!
このポートだが、10mm厚のカラーボードで作ると、簡単でいいんじゃないかな?
私も最初はカラーボードで作ろうと思っていたのだが、10mm厚の黒が無かったのでMDFを使ったまで。
カラーボードはカッターで切れるし、柔軟性もあるので密着させる手間も省けると思う。
ひょっとしたらMDFより音が良かったりして?
苦労した分それは無いと思いたいが、とにかくやってみる価値は十分にありますよ。

欲しい人もいるかと思い、この板だけ作って売る事も考えたが、
ぶっちゃけ一個や二個じゃ合わないんですよね。
確実に20個売れるようだったら作る事も考えるが、売れそうにないので止めときます。
そんな考えもあったわけだが、
最後には明確な結果が出ただけに、モヤモヤした気持ちも、ようやくおさまりました。
ちょっとエージングしただけだが、変化が大きいのも新しい証拠ですね。
これから鳴らし込めば、どんどん良音を奏でてくれるでしょう。

この文章を書き終えた後、メーカー文を読んでみたところ、詳細な情報が書いてありますね(^^;
音はもう一踏ん張り欲しいとも思うが、文章通りの内容は正直で、感心しましたよONKYOさん。


      ・・・        ・・・・・